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よく知らない魔法は使うな

お楽しみ頂けると幸いです。

「では、しばらくの動きの確認だ」

「ぼくとイレブンは火山に挑戦だね!」

「そうだな。『食材の宝庫』では経験値と魔石は手に入ってももう訓練にはならないからな。素材のことも考えて火山に行こう」


とりあえずは試作品を作ってみないと分からないけど、たぶんうまくいくだろうし。必要そうなスキルも手に入れておくか。

いっそのことガッツリとやろうか。くっくっく。


「戦闘探索部隊は魔物の討伐を行って、進化できる個体を増やすことが出来るようにしてきます」

「うん。そんなすぐに結果が出るとも思わないからじっくりいこう。蜜集めの警護からしっかりとね」

「ハチミツが無いと本当に困るからよろしくね」

「かしこまりました」

「それは私も気を引き締めなければなりませんね」


珍しく自分から発言してきた。


「毎果もよろしく頼む。レベルも関係あるとは思うけど、その個体が好む作業とか適性のある作業が進化に関係する可能性がある。それなら全部を満遍なく仕込むよりも」

「専門的に取り組ませる方がよろしいということですね。今一度見直して取り組ませて参ります」


たぶんだけど、薙刀はあまり細かいことを言わずにフレンドビーたちに好きなようにやらせていた。結局蓋を開けてみたらその方が成果に繋がったことで自分の方針がまちがっていたことを悔やんでいるみたいだな。


「まあ俺も全員が同じように出来る方が穴が少なくなるって考えるよ。同じ作業よりも色々やってみる方が良いんじゃないかとか。たまたま戦闘方面が俺と一緒に行動するから分かっただけだからさ。内側のフレンドビーたちも機を見て少しずつレベルアップさせよう」

「お気遣いありがとうございます」

「私もお役に立てれば良かったのですが」


万花が残念そうに呟く。やっぱりお前も落ち込んでいるのか。無理ないけどさ。


戦闘ができる者は『真実の瞳』で見ればステータスが表示されるから分かる。逆に表示されない者はスキルは身に付いても戦闘の際に通常通りの力しか発揮できないため、あっさり殺されるしかない。

フレンドビーを生み出すことのできる万花と指導する側の毎果はステータスが見れなかった。俺のステータスでも表示こそされても数字までは表示されない。2人とも戦闘が出来ないのだ。

無理に仕掛けられた場合、普通の虫と同じようにやられてしまう。しかし、フレンドビーたちは2人がいないと成立しない。絶対に守らなければならない。

そういう意味ではフレンドビーたちが進化できるというのが分かって良かった。じっくりと力を蓄えていこう。


「仮に万花と毎果までレベルが上がる仕様だとあっという間に軍団が出来上がりそうだからな。俺があっという間に危険人物としてマークされそうだから今くらいで良いよ」

「2人はぼく達が全員で守るから僕たちのことを支えてほしいな」

「そうそう。何かあったときに内側を任せられる人ってのは簡単に変えが効かないからな。しっかりと守られてほしいね」


少々フォローが強すぎただろうか。2人ともが顔を見合わせて、万花は微笑みを浮かべて、毎果はいつもの無表情になる。


「何度ものお気遣い感謝します」

「薙刀にしか出来ないことがあるように私たちにしか出来ないことで皆様に報いて参りますね」


納得してくれて良かった。役割分担ってのは必要だからな。特に人手が必要な農作業を専門的にやってくれる人がいるのは助かる。


「よし、しばらくはそれぞれが地力を付けて行くように継続していこう」

「オッケー」

「「かしこまりました」」

「分かりまし、だっ!」


たまにボケ役にいくんだよな~。また言葉遣いがなってないお仕置きされてるし。ステータスが全てではない部分はあるのかもしれないな。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「で、ここはどんな魔物が出現するのさ」

「動物型もいるけど、樹の姿をしたフレイムプラントとかファイアゴーレムとかかな。あとは有りがちなのは火の玉状のやつが出てきてもおかしくないかな」

「そっか。あとここ熱くなったりしない?」

「火山だからといって常に熱いことは無いはずだ。噴火中ならともかくマグマが活動しているのは地下奥深くだからな。熱いのは苦手なのか?」

「苦手というか、何というか」


(あんまり服を脱ぎ過ぎて何かの拍子にバレたくないんだよ。そんなこと言ってもバレなさそうだけど)


「なんか言ったか?」

「なんでもないよ!熱いのが苦手なだけ!!」

「そうか。朱雀のいるところは熱そうなイメージはあるが、山に行くくらいなら特に問題は無いぞ」


妙な間があったような気がしたけど、リセル自身がそう言うなら信じておこう。


「俺たち2人だからな。リセルは自由に立ち回ってもらって俺がひたすら狩っていって良いか?」

「構わないよ。ぼくも『挑発』を使って良いんだよね?」

「ああ。ただ、精霊も控えさせておいて索敵には気を配っておくんだぞ」

「了解」


リセル自身にも察知能力はあるが、周囲から一気に襲い掛かられた場合は手が不足する可能性もある。そんな場合は気にせずに全方位に向けて精霊に暴れさせるように言ってある。俺もダメージを喰らいかねないが、それよりもリセルの身の安全の方が大事だ。


「「『挑発』!」」


近くにいた魔物が即座に反応する。遠くからも魔物が近寄ってきているような感じがするので、寄ってきているようだ。でも2人分の『挑発』にしてもあまり寄ってくる魔物の数はそんなに変わらないみたいなので、発動の仕方に工夫が必要のようだ。


「正面にいる魔物はそれぞれで対応すること!」

「そう!左右の魔物は俺が引き付けてさっさと倒す!『多連氷槍』!!」


適当な狙いを付けて左右に放つ。火属性なら氷属性だろうと試したところ確かによく効く。更に魔力が遂に600目前まで上がってきた。本編クリア時くらいの数字だから当たった魔物が煙になって消し飛んでいく。貫通しないかも試してみたいところだな。そんな数の魔物を相手にすることはさすがに無いか。


「景気が良いね。魔法だけで終わらせるの?『シールドバッシュ』!」

「そうだなぁ。正直素手で触るには熱いんだよな『多連氷槍』!」

「なんだよ、そっちはもうほとんど終わり?」


発射した後でも多少の誘導が効くので、一度放ってしまえば軌道上の魔物はほとんど片付けることが出来る。最初に視界に現れた内の7割が片付けた。


「便利だぞ~。『多連氷槍』!そっちも手を出していいか?」

「本当に規格外な奴だな!いいよ!」

「じゃあ少し違うやつも見せようか。『結っっ界』!!!


自分たちの立ち位置を真ん中にして20~30メートルずつ左右に結界を発生させる。発生させた地点が近すぎてぶつかるものもいれば、異変を察知して踏みとどまるものもいる。高さも空でも飛ばなければ飛び越せないくらいの高さにしている。


「ジャンプじゃ飛び越せないね」

「そうだろう?」

「で、何する気?」

「規模がデカくなるから今まで使えてなかった魔法だよ。俺も知らない魔法なんだけどさ」


ゲームでは見なかったが、たぶんかなりの威力を誇るのだろうな。


「危なくないなら使って良いけど」

「使ってみないと分からないからさ。じゃあいくぞ。『狂嵐』」

「ちょっと待って。言葉の響きがこわいんだけど」


発動直後はMPを消費しただけで、すぐには始まらなかった。言葉だけで消費するMPを確認していなかったので、減った量を感じてつい口走ってしまう。


「やばいことしたかもしれない」

「なんて!?」


リセルには何も答えず、前方だけに張っていた結界を自分たちの周囲、上下左右と後方に改めて張り直す。


「後追いで結界を張るってな―――」


ゴオオオッと風が吹いたかと思ったら魔物が一匹残らず風によって上空へと持ち上げられていた。


「『狂嵐』はある程度の魔物でも吹き飛ばせるくらいの強い風を吹かせて、強いダメージを与えるって説明だったんだけど」

「魔物どころか、自然に生えてた木や転がってた岩まで一緒に飛んでったね」

「これで終わりかな」

「いや、風の精霊がまだこれからだよって言ってるよ。むしろここからだって」

「うわっ」


俺もリセルもドン引きである。まずは一緒に舞い上がった岩もろとも空中でじたばたと手足を動かしている魔物だ。目に見えるほど研ぎ澄まされた風の刃にズタズタに切り割かれて煙へと変わる。

次に目に入ったのは運良く木を掴んだ魔物だ。風に抵抗して一緒に舞い上がった木を壁にして乗り切ろうとしていた。しかし、狂った風に多少抵抗したところで意味が無く、木と一緒に無理矢理に捩じられて煙となって消えている。

動物型の魔物はほんの30秒の間に全て消えてしまったが、何体かファイアゴーレムが巻き上げられており、そちらは四肢を一部失っているもののまだ活動が可能だった。そして最後の攻撃を迎える。


たっぷり1分ほど上空での惨劇が終わると、風は何も無かったように止まる。巻き上げられていたものは地上へと墜落してくる。早いものは先に落ちてきている。前方の結界のおかげで、土埃を被らなくて済んでいる。


「後ろも結構激しいことになってるね」


上昇気流が発生したとなると上空へと舞い上がる空気は周囲からかき集められることになる。あとから追加した結界によって守られることになったが、風によって巻き起こされた被害は前だけではなかった。


「じゃああのゴーレムたちは落ちてきたら倒そうか」

「話し合いもしたい。あと、イレブンが使える魔法についても色々と聞いておきたい」


あれ~?最近リセルがこわいな~?なんとか平穏に済ませることは出来ないだろうか…。


「イレブン」

「何?」


いま一生懸命考えてるところなんだけれどと思いながらリセルを見ると上空を指差している。嫌な予感を感じながら指の先を追ってみると、上空に巻き上げられたものがギュッと圧縮されて歪な球状に纏められていた。

先程落ちてきたのは効果範囲外で巻き上げられていただけのものだったようだ。それでも結構広範囲のものが巻き上げられていたけどな~。現実逃避である。


ぼふっと煙が発生した後には風に抵抗するような動きのあるものは見当たらなかった。そのままゆっくりと風の塊が地上に降りてくる。着地と同時に周囲にいろんなものがまき散らされる。

風がゆっくりと収まっていき、土埃も何もしなくてもどこかに吹き飛ばされていった。俺が魔法で調節したわけでは無いからここまでが魔法の効果範囲らしい。


「イレブン」

「はい」


自分で言うのも何だが、あれをやっちゃった。体がビクッと反応するやつ。本当にあるんだね。

リセルと俺は今同じ方向を向いている。ただどんな表情をしているかは分かる。


「魔法の行使者は魔法の影響は受けないんだよね?」

「そうです」


くっ。精霊が教えているんだろうな。


「一緒にいる仲間も下手したら魔法の影響に巻き込まれるんだってねぇぇぇ」

「大変、申し訳ございませんでした!!!」


つい最近もしたはずだけどまたしても土下座をすることになった。

広範囲に影響のある魔法は使わないこと、よく知らない魔法は使わないこと。この2つを守れなかった時はどうなるか約束できないと通告を受けた。

いかん。引っ張っていく立場にあるはずだったのに、なぜこうなった。

お読みいただきありがとうございました。

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婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
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