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疎かにしていたこととせっかくだからやってみたいこと

お楽しみ頂けると幸いです。

帰ってきたらまずすることはリセルに相談だ。


「リセル!ザールさんの店の新装開店のお祝い忘れてた!大丈夫ですよ~って言われたけど、何かしたのか!?」

「あ~、ぼくがイレブンのと併せて贈っておいたんだよ」

「へ?」


思わず高い声が出るときってあるよね。今まさにそんな声が出た。


「そういう意味ではザールさんって本当によく人を見てるよね。イレブンって時々そういうのが飛ぶって言ってたもんね」

「言ってた?」

「言ってた。正に今当たったし。ちゃんとデテゴさんやサティさんにどんなものが良いのか聞いてお願いしておいたよ。代金に関してはイレブンの素材在庫から支払うことで伝えてるから払っておいてね」

「あ…そうなのか…。そのあたりはあの人たちなら大丈夫だと思うし。っていうかなんでリセルが代行してくれてたって言ってくれなかったんだ?」


大丈夫だからって言われてものすごくショックだったんだが。すごい子ども扱いをされてしまったみたいな感じで。


「たまには怒られろってことだよ。自分のことだけでなくて周りのことももうちょっと気を遣いなさいって言ってた」


気を遣う、か。確かに相手のことを思ってっていうよりは自分のことだけを考えて行動してた。自分がこれが良いって思うことを相手にも押し付けてたのかも。

しかも自分の用事で相手への祝福を忘れてしまうし。今日のザールさんはどんな気持ちで俺を案内してくれてたんだろう。あとから気が付いて祝福の言葉を贈ったところで手遅れだったんじゃないだろうか。


「イレブンが多少ズレてることくらいは認識してくれてるよ。ぼくが事前に渡しておいたおかげで少しはマシだよ。今度会ったときにちゃんと伝えれば?」

「そうだな。本当にごめん。申し訳なかった。俺の分まで代わりにやってくれてありがとう」


素直に頭を下げておく。色々と経験していたつもりとはいえ、人間関係をおざなりにして生きてきた自覚はある。本当に誰かと関わって生きていくなら自分勝手が通用するはずがないもんな。

悪いことしてしまったり申し訳ないと思ったらごめんなさい、助けてもらったらありがとうは基本だ。許してもらえるかは期待してはいけないけど、ごめんで済んだら警察いらないってやつだ。ちゃんともう一度伝えよう。


「構わないよ。そのくらいのフォローくらいはするさ。その代わりぼくが年上ってのを認める?」

「認める。これは反論できない」

「ふっふ~ん。じゃあいいよ。でも友人のことは覚えておこうね」

「わかった。申し訳ない」


しかし、何して忘れてたんだっけ。ちょっと記憶にないんだけど、火山に行ってた時かな。記憶にない時点でダメだな。少なくとも村に行く前に渡しておかないといけなかったな。大事なことはメモするように気を付けよう。

それと、やっぱり何か作って贈り物をすることにしよう。何が喜ぶかな。それこそザールさんは商人だし、新しい商品のアイディアかな。


「何か生活していて困ることってあるかな?」

「やっぱり何か贈るの?」

「そのつもり。できれば商品化して売り出せるレベルのもので」

「そうだなぁ。ぼくは前回街に行ったのが初めてだったし。明日ミケンダに聞いてみたら?」

「そうしよう。悪いけど明日の出発前に少し寄らせてくれ!」

「はいはい~」


現状持っている物は、食材と火山で手に入れたものだ。ここからそのまま直接渡すだけでは芸が無い。持っていない物が材料でも良いから何か作りたいな。

ものづくりはほとんどしたこと無いのに今になってやってみたいって思うようになるとは。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「ってわけで何かユーフラシアで困っていることって無いだろうか」

「確かにザールさんが喜ぶなら新商品のアイディアっすよねぇ。人間たちが困ることっすよね。…寒いことっすかね」

「寒い?」


季節があるのか?結構過ごしやすい今は春か冬なのか?


「今は夏の終わりから秋口ってところっすね。ここは大陸の南の方っすけど、冬ですごく寒い日は雪も降るっす。そうでなくても外での作業がしづらくなるから人間は外に出たがらなくなるっすね。オイラもっすけど」

「防寒具とか無いのか?」

「マント、毛皮、毛布はあるっす。あとは暖炉っすかね。温かいものを飲むことも多いっすよ」


そうか。温かさを求めるということならアイディアはいくらでも湧いてくるぞ。寒い地方出身でなくても暖を取る方法についてはそこそこ知っているぞ。


「よ~し、じゃあ芋づる式で色々と考えておいた方が良さそうだな。定期的に行くにも難しいかもしれないことを考えるとあるものだけで作るのと少し贅沢にいくのと2つくらい種類がある方が良いか。どうせなら大きいことも提案してみるか」


考えてみると安定供給って難しいな。しかも獣人の村には迷惑かけないようにって条件もつくし。ザールさんとミケンダを繋いでおいて良かった。多少のことなら2人でなんとかしてくれるだろう。


「サンキュー!ミケンダ。色々と考えてみるわ~。助かった。試作品出来たら持ってくるから、それを今日の礼だと思って楽しみにしててくれよ!」

「良く分からないけど期待して待ってるっすよ」


昨日の反省を活かして思いついたことをメモしているときに目に入ったことを思い出す。


「あともう一つお願いしたいことがあるんだ」

「何すか?」

「物置みたいな感じでいいから、一軒ほど小屋建ててくれない?材料は集めてくるから人の手配だけ頼むわ」


小屋の使用目的を話すついでに寒さ対策で考えたことを伝え、ミケンダが可能な範囲での協力了承の返事をたときに、家の中からひょっこりと顔を出した者がいた。


「なになに?どうかしたのよ?」

「メラノさんもこんにちは!今日はこれで帰るからまたね!」

「は~い、またね~」


ん?メラノさんも上手くいけば協力してもらえる可能性高いよな。そこも少し考えておくか。

帰っていくイレブンを見てミケンダは溜息が止まらない。やることが大きすぎる気がする。まあ軌道に乗れば大変なのはザールだから最初だけがんばれば良いと切り替える。


「イレブンはどうかしたのよ?」

「ん~、なんかまた大きいことをしようとしてるみたいっす。今回はメラノさんも巻き込まれるっすよ」

「まさか~。私が出来ることなんて服を作るくらいなのよ?」

「いや~、すっごく巻き込むつもりでいるみたいっすよ」


遠くでいそがしくなってきた~という声をミケンダは聞いて、何があっても動けるように仕事の整理から始めることにした。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「それで?何をするの?」


鍛練に行くべく戻ってきたら開口一番リセルは何かアイディアを得てきたのかを聞いてきた。そこまできにしてくれるなら答えておこう!


「大きくは3つ!簡単なのと快適に過ごすのと一大事業になりそうなのだね。間違いなく受け入れてもらえるよ。前の世界でもすごく喜ばれていたからね。とりあえず試作品か企画書は作るけど」

「そんなに一気に大丈夫?鍛錬まで手は回る?」

「大丈夫だよ。少しだけメモを書いたし、あとは帰ってきてから続きを考えるよ」


書きかけのメモを見せてこれで終わりとばかりにアイテムボックスに放り込んでおく。昨日の反省を活かしてメモ帳とペンのセットをアイテムボックスに入れておいて、必要な時にすぐ備忘録として書き残すだけという姿勢を見せたつもりだ。


「巻き込むなら早めに言ってね」

「そのときはまた頼むよ」

「はいはい。じゃあ行こうか。薙刀は外で体慣らししてるって言ってたけど」

「あぁ。リセルを呼んでくるって言ってきたからな。行くぞ~!」


リセルとしては早く言えとばかりに睨んできたので、これもごめんと思いつつ空元気を出して誤魔化されてくれと願う。


「とりあえずどこに?」

「お馴染みの『食材の宝庫』だよ。一番楽だし」

「そうなんだ。ぼくも通用するかな」

「ステータスとしては全く問題無い。あとは命のやり取りだから何が起こるかはやってみないとな。詳しくは移動しながら話そう」


家の外に出て探すと戦闘探索部隊が整列しながら一糸乱れぬ動きで編隊を崩すことなく飛んでいた。

集団行動でみた行進で呼吸を合わせて動く人たちを見たことはあるが、それと同じような感覚を受ける。先頭の薙刀の掛け声や誘導について行っている。

これは鍛錬を始める前に良いものを見せてもらった。彼女たちなりに考えて動いていたんだな。底上げしかできないかもしれないけど協力させてもらおうかな。


「よ~し、薙刀、戦闘探索部隊、いくぞ~」

「はっ!承知いたしました!」


『空間接続』で穴を開けて、早速昨日確保した今はまだ空き地へと繋ぐ。

お読みいただきありがとうございました。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
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