初戦闘とウザがらみ
今日もがんばって投稿していきます。1つ目です。2つ目以降は夕方以降になります。
ウルフ系はゲームでは定番の、グラフィック使い回しの魔物だ。本編通りに進んでいたならウルフよりも少し強くなった2種類目として登場するのがグレーウルフだ。
普通のウルフは最初の村の近くに出現する。いきなり途中の村に転移されてしまったのだから順番がおかしいのは仕方ない。モンスター図鑑みたいなものないのかな。現実となるとあれものすごく欲しくなるなと余計なことを考えていた頭を切り替えて目の前を再度確認する。
使い回しなのでウルフ種の大きさは共通のはずだ。実際は…少し違うかな?今目の前にいる6体でも大きさには少しバラツキがある。ステータスもウルフよりは強いはずだが、脅威かと言われるとイレブンにとっては何の脅威にもならない。
「じゃあ戦闘開始ってことで」
まずは2匹が飛びかかってくる。その間に他の4匹は逃げ場を潰すように包囲の動きを見せる。とりあえず序盤の魔物相手に負ける気がしないのは見飽きているからだ。
終盤でもウルフ種は出現するが、攻撃のための予備動作がどこまでいってもいつも同じだった。慣れてしまえば回避は容易い。何匹か倒せば大体の動きは読める。一度覚えれば何匹来ようと視界に入った攻撃なら避けられる。
ひょいひょい避けながら2匹の頭を木の棒で二回ずつ殴るとそれだけで倒せてしまった。全滅させないとドロップは出現しないし、レベルも上がらないがここで予想外のことが起こった。
初日から相棒になっていた木の棒が折れた。
「武器破壊なんて設定なかったのにな…」
いきなり勃発した事態にさすがに動揺する。おお、木の棒よ、戦闘中に壊れるとは情けない。無駄に力を籠めるのは武器が壊れてしまって危険だし、ステータスに合った武器に更新していく必要があることは理解した。
(とりあえず武器のことは後で考えよう。周囲を囲む4匹を片付けてからだな)
ウルフたちは一瞬で仲間2匹がやられてしまったのを見て警戒から囲むだけになってしまっている。1匹くらいは逃げられてしまうかなと考えつつ、素手で殴りかかる。
正直言えば、慣れない棒を使うくらいなら拳の方が使ったことがある分少しは強いはずだ。汚れた部分は、終わってから『清潔』をかければ良い。魔法があって良かった。
3匹目と殴り倒し、後ろにいるはずの最後の4匹目を確認しようと振り返るとも逃げずに飛び掛かってきた。振り返りざまだったので、噛みつかれないように何とか口を抑え込むので精いっぱいだった。
牙を抑えられたグレーウルフは勢いそのままでイレブンを押し倒す。上から抑えられたときにグレーウルフの前足がイレブンの服を引き裂く。そのまま爪が胸から腹をひっかきダメージを負う。
「っのやろう!」
腹を蹴り飛ばして吹っ飛ばすと地面に落ちたところでグレーウルフは煙となって消えた。途端に倒したところそれぞれに魔石が出現する。ほっとしたところで気になるのは服の破れだ。
「あ~あ~。服まで買い替えか。出費が嵩むなぁ」
とはいえ、手に入れたアイテムが売れば買い替えは十分可能だ。魔石の確定ドロップが金策に実に効果的である。まだ全てを揃えるためには金額が足りないことは確かだが。
ステータスを確認するとまたレベルが上がって10になっていたので、素手で戦えるように『格闘術』と自動回復を強化するために『呼吸』を取得した。
「これで先手を取るようにすれば無傷でいけるだろう。武器破壊があるなら筋力は置いといて、速度重視で強化するのが良いかな。防具までぶっ壊れる可能性もあるのかな。だとすると先に金策か?スキルポイント足りないか。あ~SPポーション欲しい。『調薬』スキルも取らないと。やること一杯だな、こりゃ」
そうしてまた探索を続ける。名前だけスキルと言われていた『虫の知らせ』も現実となると役に立つ。ゲームではシンボルエンカウントだったので探さずとも見えていた。今はあった方が良いスキルだ。似たような系統のスキルも余裕が出来たらやはり取得しようと決める。
スキルの種類が多すぎて、また現実になると勝手が少々違い過ぎて、何から取得していくかが場当たり的になっている。ほとんど戦闘系から取得しているので大きな違いがそこまであるわけでもないのだが。
とりあえず、今日の目標は可能な限り魔石を1つでも多く集めることだ。『索敵』は上位スキルなので、取得できるように残ったポイントは残しておく。あと1も上がれば『索敵』を取得できる。
MAXまで上げるとなるとまだいくつかレベルを上げなくてはいけない。効率良くいかねば、と決めてまた動き出す。まだ時刻は昼前ですらない。
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結果、途中のレベルアップで念願の『索敵』を取得した。今までは何となくだったのが確信を持っていることが理解できるようになった。
そのため思ったよりも魔物の群れを探し出し討伐することが出来た。見つければ見つけるほどドロップを手に入れることが出来、素材も集まる。そしてアイテムボックスで全て持ち帰りが可能だ。
「魔物がお金落とさなくても充分にやっていけそうだな。多めにドロップを納品できれば喜んでもらえるだろうし」
RPGにおいて、敵を倒すとお金が手に入るのは最大の謎だろう。現実はそこまで再現されなかった。ま、必要無さそうだから良し。
素材は何かの時に役に立つだろうと保管し、魔石だけの納品にする。街に入る前に袋に詰めることにする。それまではアイテムボックスだ。良い稼ぎと言えそうなほどに集まった。
とりあえずは間に合わせの装備や良さそうな品があれば購入しても良いかもしれない。店に売っている物も恐らくゲーム通りではないだろうから見てみるまでは判断は出来ない。
差し当たって『格闘術』を取得したわけだから、それっぽい装備にでも変更することに決める。帰りながらステータスのチェックをする。
「明日も同じところだとレベルの上昇が緩やかになるかなぁ。もう少し稼げるところにするか?」
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ステータス
名前:イレブン 種族:変人 年齢:15
レベル:12
経験値:157/377
保有SP:0P
HP :270/270
MP :170/170
筋力 :102
頑丈 :72
素早さ:142
器用さ:62
魔力 :52
運 :12
攻撃力:102
魔攻力:52
守備力:77
魔防力:64
取得スキル一覧
○基礎
武術:格闘術(☆)
感覚:視覚強化(☆)聴覚強化(☆)嗅覚強化(☆)目利き(☆)虫の知らせ(☆)
技術:走行(☆)分析(☆)
戦闘:強打(☆)疾風(☆)精度(☆)受け流し(☆)体術(☆)練気(☆)呼吸(☆)
魔法:生活魔法(☆)魔力センス(☆)魔力放出(☆)
○上位
索敵(8)
○特殊
ステータス閲覧 アイテムボックス(MAX) ドロップ率上昇 装飾品装備増加 取得SPアップ 生産成功率100% <封印>
装備
主武器:なし
頭 :なし
体防具:なし
上半身:布の服
腕 :なし
下半身:布のズボン
足 :布の靴
装飾品:女神の腕輪
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ちなみに『ホシモノ』はレベル8からスタートする。『初期設定特殊変更』でレベル1からにしたので最初こそ上がりやすいが、元からレベルアップに必要な経験値が多めに必要とされるゲームだ。もうレベルが2~3上がると途端に必要経験値は跳ね上がる。このタイミングで『索敵』を取得したのは今後を考えると良かったはずだ。
もちろん女神の腕輪の取得SP2倍も非常に有効に働いている。ちなみに特典でステータスを全てSPへと変更したからこそ、最初から所持しているSPが多かった。いくら予備動作で動きが見切れるからといってレベル1のステータスでサイウサギを仕留める方が異常だが、案外自分のしていることが常軌を逸しているなど自分だけで気づくことはあまり無い。
「今日一日だけだけど自分で手加減できそうだったし、スキルの『手加減』は取らなくても良いかな」
意気揚々と組合に戻って手に入れた小魔石23個と微魔石9個を納品して、合計で5050ガルを手に入れる。冒険者の一日の稼ぎとしてどうなのかはイレブンは分かりかねたが、納品時の受付さんの表情や宿泊する宿が一泊80ガルだと考えるとかなりの儲けを手に入れたことになることは分かった。デテゴにもらった袋に入れる振りをして、早々にアイテムボックスへと入れておく。
とりあえず組合職員に心配されているうちは明日も同じ依頼を受けることを伝えた。組合を出るとまずは服屋で破けてしまった服の代わりを購入する。ついでに今後も同じことが起こる可能性が高いので予備として何着か購入しておく。既に夕方というよりも夜の帳が下りかけていたので夕食のために宿へと帰る。今から装備を探しに行くよりは明日以降にしても良いだろう。
どこに店があるかはゲームの知識で良さそうなの事も確認済みだ。晩ご飯を楽しみにしていたところへ声をかけられる。
「おい、兄ちゃん。ちょっと待ってもらおうか」
「新人の初稼ぎは先輩に献上するって決まりがあるんだぜ」
「知らなかっただろうからな。こっちから取りに来てやったぜ」
楽して稼ごうと考える不届き者はどこにでも存在するようで。ましてや冒険者組合を出た時のイレブンは格好と受け取った金額が見合わなかった自覚がある。そうなると短絡的に判断する馬鹿が湧いて来てしまったようだった。実力者は見合った装備をしていないと不要な事態に巻き込まれることになるらしい。
何がおかしいのか分からないが、声をかけてきた3人の男は、へっへっへと笑っている。イレブンは一応声をかけられたのは自分だと判断はしている。店から出たばかりでアイテムボックスに荷物を入れておらず、手に持ったままだ。戦闘するにしても使えるのは足だけだし、億が一倒されたとしてもお金はアイテムボックスだから取られることは無い。逆上はされそうだが、現状は無視が一番だと判断する。
無言の全力ダッシュで逃げた。
数秒たってから後ろの方で男たちのわめく声が聞こえたが、徐々に遠ざかって行った。男たちの顔は見たから次は見つからないようにとだけ決めて、やはり『手加減』は万が一のため取得するかを検討した。何が起こっても自分のせいではないからと取得はしなかったけれど。
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