隠れ家確保。どんな家にしようか夢膨らむ
お楽しみ頂けると幸いです。
「これで手に入れた小魔石109個だ」
「ありがとう」
中魔石は使い道が多いので、道中に手に入れた小魔石だけを先にリセルに吸収させる。
「レベルが1個上がったよ」
「よし。これで少し感覚がズレるからそれをすぐに修正できるようになってくれ」
「わかった。上昇するポイントが大きいとしんどいや」
「俺からしたら贅沢な悩みだがな。それに急激に上げない限りは元が高くなってきたからそこまで影響出なくなるよ」
「うん。もう大丈夫だと思うよ。これからはぼくも狩りをするようになったら、ぼくが一人で手に入れたの中魔石は生産用だね」
「そうだな。俺の手に入れた魔石は生産用にも使うがリセルのレベルアップ用にも残しておきたいところだ」
リセルは自分で手に入れた魔石も吸収できないルールみたいだからな。自分が必要な分は自分で取りに行くのは冒険者の礼儀らしい。依頼を介せばこの限りでは無いが。
一緒に行動した方が面倒が無くて良い。ある程度強くなればどこでも連れ回すことができるからもう少しだな。
「しかし結構スキルポイント貯めたな」
「動くと結構汗かくし、ゼリーは自分の好きな味にしたらたくさん食べられるからね」
「自分で作っているからこそ出来ることだな」
俺も自分で料理を作れるような状況を整えたい。
「たまに違うのも挑戦はするけどね。明日はユーフラシアに一度帰るんでしょ?」
「『思い出の楔』を打ち込んできたいしな。向こうの準備も出来ているだろうし」
「ぼくも行かなくていいの?」
「初回は俺だけで確認しておきたいからな。すぐにまた行けるようになるから、な」
デテゴとザールさんがどんな場所に準備してくれたかは見てみないと分からないからな。
「わかったよぅ」
「で、スキルポイントはまだ保留でいいか?」
「いいよ。まずは今身に付いているものを使いこなせるようになってからってのはぼくも納得してる」
俺も火山の狩りでレベルが上がったけど、しばらくは不自由しないので俺のスキルポイントは何も振らずに置いておく。
リセルは今のままで感覚を掴むまではしばらくそのままだ。無理に負担を増やす必要はないしな。
「じゃあ明日は家でゆっくりしてるよ」
「そうしてくれ」
「主!鍛錬を付けて頂けるとお聞きしました!」
食後にまったりしながら休憩していたんだが、今まで村の外にいて何も知らなかったのであろう薙刀が飛び込んできた。
少し毎果の様子を伺うが、動く気配もなくいつも通りだ。特に制裁が加えられるようなことは無いらしい。何かあったのかな?
「そのつもりだよ。いなかったけど今まで鍛錬してたのか?」
「ありがとうございます!身に余る光栄です!」
感謝を伝えてきた後はダンスを踊り出した。
「何のダンスなんだろう?」
「ぼくもくわしくないから分からないな~」
「これは感謝と友愛のダンスですね。私も昼頃に踊りました。毎果は毎日朝晩にイレブン様に捧げて踊ってますよ」
「万花しゃま!?」
お~。毎果の表情が崩れて真っ赤になってる。そんな表情も出来たのか。しかも噛んでるし。
「毎果っててんこ盛りだね」
「!?」
「…飛んでいった」
「迎えに行ってきますね」
万花も後を追いかけて行ってしまったが、いつものことを考えると。
「万花が迎えに行く方が余計に止めな気がするけどな」
「まあいいじゃない。ぼくは少し前にこんなににぎやかに過ごせるとは思っていなかったよ」
「それは良かった。酒が飲めたら飲む雰囲気だな」
「ぼくも飲んでみたいな」
「10歳児の外見でやめてくれ。犯罪にしか見えない」
「なんだよ~!イレブンの方から話を振って来たくせに!ぼくの方が年上だぞ!」
「精神年齢ではほとんど同い年だ!」
薙刀はまだ踊りを続けている。あ、倒れた。
かなり状況が散らかってしまったが、倒れた奴を放っておくことはしない。介抱しているうちにだんだん落ち着いていく。
グイっといつものを飲み干してリセットする。
「明日の話をしよう」
「そうしよう」
「承知いたしました」
薙刀は疲れているところに踊ってしまったので疲れ切って横になっている。食感を楽しむために作った普通のゼリーに、ハチミツをかけたものを毎果がスプーンで一口ずつすくいながら与えている。口は動いているが起きているか良く分からない。
毎果はいつもの表情でいるつもりかもしれないが、いつもよりは顔色がほんのり赤い気がする。色々と恥ずかしいらしい。その中でも仲間のために動いているのは優しいからかな。
「俺はユーフラシアでの拠点を確保するために行ってくる。行くのに時間はかかるけど帰りはすぐだし、晩ご飯までには戻って来られると思うよ」
「ぼくはどうしようかな。料理とかポーションのストックを作っておこうかな。なんかやっておくよ。何やるか決めてないから必要なもの出してもらえる?」
「了解。あとで出すから一緒に見て指示してくれ」
「オッケー」
リセルもアイテムボックスが使えればいいんだけどな。そんな魔道具作れるかな。また今度考えてみるか。
「万花たちは?」
「まだしばらく手が足りないので今まで通りです。毎果は指導を行います。薙刀は部隊含めて休養させておきます。休んでくれませんでしたのでちょうど良かったです」
「そんなに大変なところだったら獣人に頼むか俺に言ってくれよ?」
いくら疲れていても食べているからには話はできるだろうよ。
「…寝てる?起きてる?」
「寝ています。寝ながら食べております」
「じゃあもう寝かせておこう。明後日はとりあえずレベルが上がるかの検証から始めるよ。現状の戦闘探索部隊はともかく薙刀も敵わないような相手と戦うだろうから大人しくしておくようにって伝えておいて」
「承知しました」
「じゃあ今日はこれで解散」
「は~い」
☆ ★ ☆ ★ ☆
「場所はここで良いですか?」
「適度に暗い森ですし、誰も来なさそうですね。ぜひここで!」
『空間接続』を設置する場所を紹介してもらうためにザールさんに来てもらっていた。ユーフラシアから適度に離れていて、魔物を狩りに行くために使いそうな、目立ちにくいところという面倒くさい条件を付けた。
割と見事に応えてくれた。既に大量の素材を寄付する約束があるので、それで構わないらしい。俺からしたら在庫処分に協力してくれているように感じているので、少々心苦しい。
「あまり人が来ないような場所とリクエストされた時点で変だとは思いましたけど。空間魔法ですか…」
「商売としては便利でしょうけど、なんか活用できるようになったら提供しますよ」
「対価が渡せなさそうですなのでやめておきます。狙われそうですし。今のままで十分です」
こんな感じで断られてしまった。
「何か必要なものがあったら言ってくださいね。行ったことの無いところでも飛んでいくし、帰りの移動時間は必要ないので」
「そう言ってくれる冒険者と繋がりがあるだけで商人には十分すぎる繋がりですよ。あとは地道にやっていきます。それでなくても充分に強い地盤があるのでね。これ以上は余計な横槍を入れられてしまいますからね」
「は~、そんなもんですかね。使える手札は全部切っていくと思ってました」
「最初から切るのは愚策ですね。イレブン君はどうしても必要な時に取っておく方が良いですよ」
なるほど、俺は止め要員か。声かけられたときは期待に応えられるようにがんばるようにしよう。
「ここはどのように使うんです?」
「まあ普通に隠れ家として使うのも兼ねますよ。あとはフレンドビーたちの分蜂にも使えるかなとも思ってます」
場所さえ提供してくれたらあとの建物とかは自分で用意する。極端な話、他のところで建てた家を地中の基礎ごと持ってきても良いし。
自分で使えるようにするかはスキルポイントの具合を見てになる。最初は自分ではなく、建ててもらうことにすることだけは決めている。あとは自分で増築する。
「いろいろと隠れ家を用意してると便利でしょ?」
「その意見自体は肯定しますよ」
「ユーフラシアの街中にいきなり入ったら門兵さんたちに迷惑かかるから中には作らないですよ」
「外に出るのは自由なんでしょう?それだけで十分ですよ」
すごく呆れられてしまった。やろうと思えば何でも出来てしまうからな。
「街中では緊急時以外は誓って使いません。犯罪になるようなこともしません」
「元から疑っては無いですけどね。どちらかというと使えることをバレないように気を付けてくださいね」
「それは自分でも心配してるんで使うときは気を付けます!」
自分でもそれが一番あり得そうだとは思ってるんで!使うときは必ず周囲を確認してから使うようにしよう。
「では各所からの預かった書類です。役所からはこの森の中に小屋を建てていることの許可書、冒険者組合からは特別活動許可印を組合証に刻むまでの臨時許可証です」
「ありがとうございます。確かに受け取りました。作業も見ます?」
「いえ、やめておきます。僕にとっては知っていること自体がリスクですよ」
「分かりました。周囲を確認した感じでは周囲には怪しい奴はいないみたいなんで」
「はい。聞いてます」
そう言ったら離れて行った。まだザールさんのお付きの人たちの気配掴めないんだよな。しかも聞いてるっていつ?ずっと俺と2人だったよね。
「まだまだ上を見ると果てしないな~…。作業するか」
すぐに終わることだからさっさと終了させる。あとはザールさんと一緒にユーフラシアに帰った。そのときにとんでもないミスに気が付いたが、それはまた今晩考えることにする。冒険者組合で余った肉の納品、メディさんの店で買い物、『食材の宝庫』ダンジョンで時間潰しをしてから獣人の村に帰った。
お読みいただきありがとうございました。




