新しい狩場の下見と実験を兼ねて、久々の一人活動
お楽しみ頂けると幸いです。
俺が強くなるには、何と言ってもスキルポイントだ。レベルを上げるか、SPポーションもしくはSPゼリーだ。時間があれば解決してくれると言える。
取れる手段として秘奥義を正式に取得するか、特技、奥義で使えるやつを取得していくかだけど、これは必要かどうかを考える必要があるな。
ステータスの底上げを期待しようにも、伸び幅が増えるのはレベル100以降だから必要経験値が大量過ぎて計算には入れられない。そこまで経験値を稼ぐころには武闘大会になっているだろうし。
リセルが強くなるのは手段がたくさんある。レベルを上げたらステータスがグッと上がるから良いし、スキルポイントを得る方向でがんばっても良い。
あとは戦闘の感覚を掴むための訓練をしても良いし、自分だけの得意攻撃を身に付ければ生存確率はグッと上がる。選択肢としてはこれも選ぶ価値がある。
俺と比べてリセルの伸びしろがかなり多いのは一体何なんだろう。贔屓が過ぎるのではないかと思うが、仮にも神獣の獣人だもんな。地上に敵無しになるくらいまで強くなってもおかしくない。
まあ、いいか。冷静に万が一を考えたら俺でも勝てないくらいに強化しておく必要があるもんな。ついて行くことは大丈夫みたいだけど、俺が朱雀と戦えるかは別問題じゃないかということに気が付いたからだ。
「まあ本当に危なくなった時に助けられるようには方法を考えておこう。俺の本番は神獣対策はするにしても、一応武闘大会だと考えておこう」
イレギュラーな手段として迷っているのは薙刀を加入させるかだ。テイムした魔物も認められるみたいだけど小さいからな。この件は少し様子見で。
チーム戦も強化したリセルと俺がいれば大きな問題にはならないだろう。ステータスだけでも既に銅級を名乗るくらいにはなってるからあとは戦闘慣れをすれば銀級はすぐだと思う。
他に有力な候補は今のところ無し。これも構わない。神獣用に鍛えたら武闘大会はやりすぎになるのは俺でも分かる。
個人としては銀級でもチームとしても金級と認められている冒険者もいるから、個人のランクだけでは測れないとは聞いた。
PVPの場として開かれていた闘技大会を勝ち抜いた俺を舐めないでいただきたい。基準がどれだけズレているかは知らないけれど、俺の思う準備をしておけば問題無いだろう。
公的権力に関しては、その道のプロみたいな人がいるから全部丸投げだ。経済と政治に強い友人がいることの頼もしさよ。俺は武力担当です。
あとはリセルの装備品くらいは整えておきたいところになるわけだけど、出来れば魔力補助が付いた装備にしたい。これは魔石や魔鉄だけではなくて宝石・鉱石系が欲しい。
属性が付いていると偏るけど使い道はある。装備の換装については少し考えていることがあるので、それも後日だ。とりあえずはその装備の素材になりそうなものを手に入れておきたい。
「というわけで下見を兼ねてやって来たのが、朱雀がいるとされる火山です!ここ良いね~。本当に中魔石の魔物ばっかりが出現するんだな~」
場所としてはゲーム内に存在していないポイントもしくはダンジョンのようだ。ただ、出現する魔物は火属性がほとんどだが、見たことのあるものばかりだった。魔物に未知のものがいないのは非常に助かる。あ、神獣と戦うことになったら未知だが。
様々な形状の火を噴く四足歩行型動物の魔物、体の一部分から高熱を発する爪や角を持つ大型動物、高温の枝を振り回す樹、シンプルに火属性のワイバーンもいるそうだ。今の例に挙げたのはよく出現する魔物だそうだが、シンプルに火耐性のある魔物も多く出現するらしい。
「まあ接近戦が得意な獣人は苦手だよね~」
あの獣人の村で接近戦最強と思われる隊長をして
「あそこは相応の準備が必要だ。できれば俺は行きたくない」
と言わせるような場所だ。自分の得意が通用しないところになって行きたがる奴はいないよね。
そんなわけで来ているのは俺一人だ。リセルはまだまだ学んできてほしいことがある。この辺りは隊長でも来たがらない。つまり隊長を攻めあぐねさせるくらいにはなってもらわないと話にならないのだ。
そのレベルまで強くなってもらわないと少なくとも連れてくるわけには行かない。最低限の近接格闘能力と、自身の武器になりそうな『精霊魔法』をきちんと使いこなせるようになってもらいたい。
他にも何か奥の手が用意できれば良いし、候補があるけれど俺から言うよりもまずは自分で考えてもらいたい。周囲から渡すのは基礎だけで、そこから何を自分にとって一番使える武器だと認識するのは本人であるべきだ。口を出すのはそれからの方が良い。
今はリセルがどれくらいの強さになったら来ても大丈夫かどうかを確かめておきたい。俺も実験して確かめておきたいことがある。
「今の俺はバリバリ魔法攻撃タイプだからね~。申し訳ないけど隊長が感じた苦労は避けさせてもらいます!」
狙いを定めて準備する。『連魔』を少し上げたからか魔法の制御力が少し上がっている気がする。
「多連氷槍」
火球を吐き出そうとしていたフレイムウルフを火球を掻き消してそのまま命中させる。周囲を囲んでいた他のフレイムウルフも1発当てれば確殺だったようだ。余裕で倒しきれた。
「魔力も上がってるからこの辺りは余裕だな。さて、実験だ」
まず火を発生させているタイプは酸素が必要な火を発生させているのかを検証する。そのためにフレイムウルフを1匹残して結界の中に入れて確認してみる。閉じ込めた後は体を閉じ込めるくらいの大きさに縮小させる。
暴れているけど残念ながら体当たりくらいでは壊れるような結界じゃない。体内から出ている炎が酸素を必要とするならすぐに消えるはずだ。だけど結果は予想と違った。しばらく待っても炎は消えなかった。元気に牙をむいて威嚇してくる。まだ元気なようだ。
じゃあ最後に代わりにストックしておいた火の付いた松明を結界に入れる。すぐに閉じる。酸素が無くなって火が消えるころにはフレイムウルフも呼吸が出来なくなって死んだ。倒せたってことで魔石などドロップも発生する。
「体内から発生している時には酸素は消費しないけど、魔物も呼吸はしている。ベースが動物の場合はそうなるんだろうな。じゃあこの手段は使えないか…。力押しでいくしかないのかなぁ。おっ!次は」
現れたのはフレイムプラントが一体。どうやら魔物だと樹でも移動が可能のようだ。しなる枝を振り回して複数方向から襲い掛かってくる。
「一人でいるときの俺を倒すには枝の鞭くらいじゃ威力不足だね」
今度は自分の周囲にも結界を発生させて身を守る。後ろからも音がしたので振り返ると当たったところから結界にへばりついて背後に枝が回っていた。植物って怖いなと思う。
「当たらなければ意味はないけどね。『滝水』」
手を上に掲げて言葉と共に振り下ろす。空中から大量の水が発生してフレイムプラントへと降り注ぐ。植物という属性が勝つのか、火属性という特徴が勝つのかの実験だ。関係なくHPを削りきることで倒すことになるのか。
結局は倒すことが出来たため、HPを削りきることは成功という結果になった。本来なら植物が水ではダメージを受けなさそうなものだが倒せた。
ということで、この世界はHPを削りきることが優先される。急所を突けば別だろうけど、植物だから水ではダメージを受けないことも無いようだ。
「明確に攻撃意思が乗っていればどんなものでもダメージになるってことかな。となると確認しておくべきなのは、ただの水をかけることでダメージを与えることが出来るかどうかってところかな。でも相手のHP状況が見れないと分からないか」
『真実の瞳』を使ってそれも確認してみることにする。
捕まえたフレイムウルフを再度結界で包んでただの水を流し込んでみる。しかしただの水では効果が無かった。HPは減らない。呼吸をするためには暴れはするものの、水に浸かっているだけだった。念のため水で溢れさせて溺れさせると倒すことは出来た、
もう1匹捕まえていたフレイムウルフは『生活魔法』を使って水を溢れさせる。攻撃意思は無い。しかし、徐々にHPは減っていく。頭は水面から出ているので呼吸は出来ている。ゆっくりと減っていってゼロになったと同時に魔石が発生した。
「ってことは魔法なら微々たるダメージでも入っていくわけだな。これはこれで使えるだろうな」
あと確認することはあるかな。考えながらでも倒せるくらいには力の差には余裕があるし、狩りの続きでもするか!
お読みいただきありがとうございました。




