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獣人の村がこっそりと人間の国の中に作られていたのか

お楽しみ頂けると幸いです。

食後にお茶を頂いたところで、ふぅと息が漏れる。蜂娘たちは再び部隊を編成し直すといって再度巣へと戻って行った。なんか、ごめんな。

今からミケンダが話すことも既に聞いているようだ。なぜに俺たちが一番最後なのか。答えは簡単、村にいないから。しばらくはいるから教えてもらうとしよう。


「じゃあミケンダ、教えてくれよ」

「はいはい。なぜここに獣人がいるのかってことっすよね」

「確かに知りたい。ぼくも知らないから」

「え?」


なんで当事者のはずのリセルが知らないんだよ。俺の表情も分かりやすかったように思う。


「村で役割を与えられるか一定の年齢になるまではナイショっす」

「えっ?」

「リセル様は理由があって特別にナイショだったっす。悪い意味では無いから安心してほしいっす」


すかさずミケンダがフォローを入れる。この辺りの配慮が早いってところがこいつが周りに好かれる理由だろうなぁ。単純にいいやつという言う方がしっくりくるけど。

そう言われてもリセルは少し動揺しているようだ。自分だけがナイショっていうのは辛いものがある。ミケンダがフォローをしただけ少しマシなんだろう。


「ミケンダはいつから知ってたんだ?」

「イレブン用に対応することが決まったときに教えてもらったっす。リセル様が一緒に行くならその内オイラが話すだろうって言われたっす」

「ミケンダもつい最近なわけだ」


これで少しはリセルのフォローになったかな?


「どんな理由があるの?」


微妙なようだ。ミケンダだって教えてもらったのはつい最近のようだが、リセルは自分だけが立場はあったはずなのに教えてもらえていなかったことに少なからずショックはぬぐえないかな。


「リセル様は何の神獣かは分からないというところまでは御存知っすよね」

「そこまでは知ってるよ」

「この村は神獣を秘かに祀るために作られた村っす」


ゲームや物語のイメージだけど、秘密の理由は分かる気がする。力を持ったものを妬むのが権力者の修正みたいなものだもんな。

多少は縁がありそうな獣人がその守り役となっていてもおかしくはないか。

俺はそういうこともあるだろうとすっと納得いってしまうがリセルは驚いてしまって声も無い。こんなに近くに神獣がいるとは思ってもみなかったらしい。


「なるほど。どんな神獣が近くにいるんだ?」

「相変わらず動じない男っすね!どこまで知ってるんすか」

「神獣が実在するというのはリセルの話を聞くまで知らなかったぞ。そういうこともあるだろうなと思っただけだし」


2人に変な目で見られてしまったが、そのあたりはいつものことだ。先に2人が溜息をついて折れてくれる。


「この村の近くにいるのは神獣『朱雀』っす」

「でっかい火の鳥か~」

「その言い方はダメっす!」


苦笑しながらハッキリとダメ出しをされてしまった。前にリセルがどの神獣の獣人か分からないと言っていた時の例に出したが、近くにいるらしい。


「人間の多いところにいるのは獣人にとってリスクなのにいるのは見守らないといけないってことが理由だったんだな」

「そうっす。まあ神獣も手出しされない限りは穏やかに暮らしているか眠ってるだけだそうっす。危なくなったら起こしに行ったりってところっすね」

「でも獣人そのものに手を出そうとしてくる奴がいて困ってるってことだよな。それも俺が手を出すなっていう睨みが効けば解決かな」


達成するまでは可能な限りこの村に顔を出すようにすれば良いか。どうしても滞在しないといけないところには『思い出の楔』を打っておけば行き来が出来るわけだし。


「そう言ってくれるとは思ってはいたっすけど。恩に着るっす」

「まあなんかここで暮らしてる人たちには世話になってしまっているし。持ちつ持たれつって感じだな。乗り掛かった舟ってやつだよ」

「会いに行ったら自分が何者か分かるかな?」

「……その可能性は大きいと思うっす。だから会いに行けるようになるまでリセル様はこの村で過ごすことになったそうっす」


ミケンダがハンス話を聞いてリセルの目に真剣さが灯る。


「ただし、条件が必要だと思われるっす」

「それとリセルに教えなかった理由も教えてくれよ」

「了解っす」


俺も聞きたいし、リセルも口をまっすぐ結んで頷いている。


「シンプルなことらしいっす。神獣が自らの意思で助けてくれるなら願ったことをすぐに叶えてくれるだけだそうっす。でも、非協力的な場合は力試しが要求されるっす」

「力試し……。え?何するんだ。もしかして神獣と戦うの?」

「その可能性も大いにあるっす。他の条件を出される場合もあるらしいっすけど。何を課されるかは途中の移動のごたごたで正確には伝わっていないっす。ただ、朱雀は獣人が把握している中でも一番温厚と言われているっす」

「何をさせられるかは分からないけど、リセルのことを聞くのに一番ちょうどいいんだな」


少し楽しくなった感じがしたが、すぐに冷静になって自分を押さえる。ゲームであれば隠しのレイドボスだろう神獣に敵うわけが無い。

勝てるかどうかで考えたら、まだ無理だな。すぐに結論が出てしまう。魔法を伸ばしたおかげでMPと魔力はクリア後でもおかしくないくらいにはなってるけど他のステータスがダメダメ過ぎる。

直接戦う以外の選択肢であることを願う。聞いて素直に教えてくれるならそれが一番だ。


「ぼくがレベル1のままだったから秘密だったんだね」


俯いて、でもどこか泣いているような声でポツリと言う。


「レベル1のままでは向かう道中で魔物に襲われて危険だったっす!それに万が一辿りついたとして!」

「分かってるよ。ぼくが殺される可能性の方が高いもんね」


感情が逆立っているわけではなく淡々というだけ、神獣と聞いて浮かれてしまった俺よりは冷静だな。本当に申し訳ない。


「この村はいい人が多いな」

「でしょう。ぼくと一緒にいてくれた人たちだからね」


ニコッと微笑みを見せてくれる。逆に俺の非道さが際立つ。何かのときにしっかりと穴埋めをしよう。すごく後ろめたい…。

リセルに対してこれ以上に失礼なことをしないように気を付けなくてはいけないな。


「秘密にしていたのはレベルのせいか?」

「そうっすね。さすがにレベルが上がらない状況で下手に希望を持たせても辛いだけだと判断されたそうっす」

「実際に幼いことから知っている身としては、レベルが上がらないまま突っ込んでいった可能性もあると思ったっすね」

「…今はちょっとは強くなったよ」

「まだまだこれからだけどな。俺も一緒について行ってもいいよな?」


小さい声でうん、と返事が聞こえた。ミケンダも頷いていることからも一緒について行っても問題無いようだ。

責任ある立場に据えていたのも、勝手に出て行くことの無いようにしていたんだろうな。ここにいる獣人たちは仲間思いのやつらが多いから。


「よし、神獣に勝てるように仕上げれば良いんだな」

「それはさすがにやり過ぎだと思うっすよ」

「強さに関しては、大は小を兼ねる!やり過ぎたと思ってもやり過ぎることは無い!」


ゲームの場合は定期的に新ボスが追加されるからであったが、ここでまで同じ理屈が通用するとは限らない。が、強くて損しないとは割と本気でそう思っている。


「誰かに迷惑をかけなければ別にオイラは何でも構わないっすけどね」

「ぼくは自分のためになりそうだからがんばるよ」

「俺も結局は自分のためだから気にするな。じゃあ更にがんばる理由が出来たな。ミケンダ、朱雀のところに行く下見をしたいから教えてくれ」

「はいはい、了解っすよ」


大体のこのあたりの地図をかきだしながら、そういえば、と言ってミケンダが追加情報を教えてくれた。


「ちなみに魔国本国から王国へはこの村のことを通達はされてると聞いてはいるっす。王国全員が知っているわけでは無いのはオイラもさすがに分かってるっす。互いに不干渉だと聞かされていたから誘拐まがいなことをされている現状はどうにかしたいっすね」

「だったらなおさら武闘大会で目立つことの理由が増えるな。神獣を目指して鍛えれば余裕で勝ち抜けるだろうし」

「だからやり過ぎだと思うっすよ」

「他の神獣はミケンダは何か知ってるの?朱雀だけでいいのかな」

「その辺りは話を聞いてもらえるようになってからでも良いと思うっす。朱雀が全てを話してくれるならそれで終わりっす」

「話してくれないなら他の神獣のところにも行くんだな」

「そういうことっす」


リセルは少し考えた様子を見せる。意思を固めたように俺に向かって言う。


「強くなるよ。だから、魔石をお願いしたい」

「任せとけ」


こっちの意思は既に固まってるぞ。

お読みいただきありがとうございました。

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