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三人で組手、ときどき内緒話

お楽しみ頂けると幸いです。

「一度休憩するか?」

「いや、もう勘弁っすよ。これ以上は危険っす。地力の違いが分かったっす」

「地力の高さというよりも瞬間の威力を重視?」

「生き残りを懸けることを考えたらそうなることが多いっすよ」


現段階の俺の秘奥義も似たようなものだし、そうなるか。じゃあ安定して戦えるようにする必要があるか。


「イレブン、気にしないんすか?」

「ん?首を絞められない限り…って絞めようと、するな!」

「無視するからだろうが!」


背中に張りついていたと思ったら登って、更に首絞めへと発展しようとする。この村の最高権力者が横暴をはたらいているぞ!

お互いに本気ではないので、多少相手をしたら満足して離れてくれた。


「リセルも休憩か?ジェイコブさんは?」

「ジェイコブも見物に回るってさ。ぼくは休憩じゃないって言われたよ。見ることもまた経験って言われただけ。それにほら、周りのみんなが見てるよ」


周囲を見ると確かに見物していたと思われている獣人たちがちらほらと。もう一回始まらないかとか、相手しようにも実力差があるから迷惑だとか止められてる人もいる。

無理のない範囲の組み手なら全然相手してほしいんだけどな。


「前に言ってた『爪牙獣術』ってやつは?」

「割と狩りのときに仕留めるための技術っすよ。組手で使うようなスキルじゃないっす」

「ん~。仕方ない。リセルには見せておいてよ。使えるようになったらラッキーくらいの感覚だから」


一応スキル一覧の中には表示されていたけど、見たことがなくてイメージがわかないと使いこなすのは難しそうだからな。


「それくらいなら。村にいる間に行くことにすればいいっすかね。イレブンは一緒には行かないっすか?」

「時間があえば行くよ」

「ぼくの予定を勝手に決めないでほしいね!」

「戦力補強のためだ。熱意を持って行ってきてくれ」

「なんかあったんすか?」


説明をしていないなと思って、休憩ついでに事情の説明をした。買い出しから絡まれたこと、原因のアイテムボックスに無用な手出しをされないようにするために自分に箔を付けようと考えて武闘大会に出場して目立つ、金級冒険者になることを目標にすると話した。


「そうなったときに一人だと無用について来ようとするやつが出そうだろ?押しかけではあるけどリセルが強ければ『これくらい強くないとついて来てほしくない』って言えるし」

「武闘大会のためだけでもなかったんだ。露払いまでするの~?」

「ダメだったか?」

「ダメというより、リセル様?まだ言って―――」

「しーーーー!!!」

「何?何のこと?」


何かを言おうとしたミケンダの口をリセルが両手で塞いで黙らせた。そのあとタイミングがとか、ポンコツとか言っている。タイミングは良く分からないけれど、ポンコツって俺のことか?


「なあ」

「で、イレブン!さっきは何を作っていたんだ?」

「オイラも知りたいっす!」

「露骨に逸らし過ぎだろう」

「「ぎくーー!」」


リアクションが古いよ。二人して焦っている。ここまでして隠したいことなら聞かない方が良いのだろうな。


「分かったよ。誤魔化されてやるから、ちゃんといつか教えてくれよ?」

「うん。ありがとう」

「まあ、うちのリセル様次第なんで気長に待ってくれると助かるっす」

「で、何を作ったかだよな。『空間接続』を出来る魔道具を作ったんだ。これでリセルの家に戻ってくることが出来るぞ。一方通行気味になっているから多少時間の余裕は必要だけど」


一回で何を言っているか分かってもらえなかったので、再度説明するが逆に混乱しだした。


「それって、お話とかでよくある遠くの町に一瞬で行けるってやつっすか?」

「お話ってのが分からないけどイメージは近いかな。作ってみたら割と前準備が必要だから面倒ではあるんだけど、色々と使い道はあると思うんだ。実際にここからやってみるか。既に実験済みだから安全確認も済んでるぞ」


『空間接続』を使って実際に見せてみる。別のところで開いても同じように接続できているな。相変わらず向こうの方は気が付いてないみたいだな。そういえばさっきは思いつかなかったけど、通っている最中だったら向こうからでも通れるのかな。


「なあ実験したいから、ってどうした?」

「「いきなりなんてものを作ってるんだ~~~~!!!??」」


ハモること優先で言葉を変えなくても良いと思うんだ。まあそういうものだと割り切ってなかったらとんでもないことしてる自覚はあるけど。注目を集めたけど、実験はあんまり広めるものでもないから隠れてやろうか。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「は~、すごいもんっすね~」


実験してみたら俺がちょうど境目にいる間は双方向の移動が可能だった。俺以外がやってもダメだったので、『空間魔法』が使えることが条件のようだ。


「他の人も使えたら良いのにね」

「いや、これに関しては使えない方が良いぞ。色々と破壊することになるから」

「破壊?」

「まず流通業、馬車がいらなくなるからその人たちが失業するというライトな影響がある」

「仕事がなくなるのは困るね」


少しは納得してくれたようだが、まだ表面のことしか汲み取れていないな。


「次に重いのだと盗みがし放題になる」

「そうっすね。盗るだけ盗ってすぐに逃げられるっすね。侵入も何かしらの準備がしてあれば簡単かもしれないっすね」

「実際にその場に行かないといけないが、この杭を打ち込んで魔力を流しておけば良いからな。設置したところに目立たないような工夫をしておけば良いだろうな」


リセルは考えついていなかったようで固まっている。


「一番最悪なのは」

「殺しやテロもし放題ってことっすね」

「そういうこと。庭に忍び込んで杭を打つだけ打っておけば深夜にこっそりと忍び込める。あとは魔法を使っても良いし、爆弾系のアイテムを使っても良いし」

「ダメだ~~!みんなが使えるようになったらダメ~~!イレブンも悪いことに使ったら絶対にダメだよ!」


両腕で×印を作って大きな声で主張している。そこまで必死にならなくても大丈夫だって。


「しないよ。俺は悪いことしたやつが、絶望の顔をしているのを見るのが好きなんだよ。それに悪いことしなくてもお金なんて時間確保して狩りすれば手に入る。無理に盗む必要はないね」

「イレブン!それこそ悪徳なやつらから盗む義賊なんてどうっすか!?」

「それはそれで面白いな。いつかやる機会があればやることにしよう!」

「義賊ならいいのか?う~ん…?」


リセルって意外とこういうところは律儀なんだな。


「さあ、これは万花たちがついて来るために作ったものだからな。夕飯時には見せよう。じゃあミケンダ、もう一戦やるか?」

「え~」


視線をさ迷わせたが、リセルを見てにやっと笑う。


「リセル様も加えて、二対一でやりましょう。有効打が入るか音を上げるかの勝負ってことで」

「いいぞ~。結構細かい作業だったからしばらくは考えずに出来ることをしたい!」

「ぼくは遠慮したいんだけど!?」

「リセル様~。後生っす!でないと…」


ミケンダの瞳が怪しく光る!リセルはイヤな予感を感じ取った!

俺が観察してそう見えたってだけなんだけどね。


「ミケンダってそんな奴だったのか!あとでメラノに言い付けてやる!」

「それは関係ないはずっす!強い相手とやるのも経験っす。ほら今はオイラが一応兄弟子っす!やりますよ!」

「あとでおぼえてろ~」

「準備は良いな!さあ体を動かして食べるご飯はおいしいぞ!」


もう一度広場に移動して仕切り直す。ジェイコブさんも今度は見るだけに回るみたいだ。


最初こそ協力して動くことがイメージできていないリセルが足を引っ張った。でもミケンダがフォローに回ることで隙を限りなく削って連携してくるようになったことで良い動きをするようになった。


「それでも当たらないのか!」

「攻めの動きがしづらくなっただけでもかなりすごいことだと思うぞ!」

「リセル様!このままだと体力負けっす!」

「どうするっのさ!」


今の回転蹴りは中々威力が乗って良いな。動けなくなったところでミケンダが膝をひっかけに来るのも良い!


「オイラが主体に動くので、リセル様がフォローで!」

「やったことないよ!」

「どんなときでも初めてはあるっす!」

「そうだ!まずはやってみろ!」

「受ける側のイレブンが言うな!」

「じゃあ行くっすよ!」

「来い!」


このあとめちゃめちゃ組手した。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


夕ごはん前に万花たちが集まっていたので『空間接続』を見せたらすごく微妙な顔をされた。どうにか聞き出したら決死の覚悟でついて行くみたいな感じだったらしい。こんな緩く(?)行き来が可能になるとは思っていなかったようだ。

変に心配させてしまったことを謝った。たしかに詳しい説明はしていなかったけど、こんなことができるんだぞって少し驚かせたかったのもある。今度からはちゃんと相談するようにしたいと思う。


蜂娘たちからの呼び方は、イレブン様で統一してもらった。正直、様付けが一番外してほしかったけど命の恩人に付けないのは無理です、と毎果の主張を改めさせられなかった。俺自身そうかもなぁって気持ちになったことも大きい。


さて、これであとはミケンダから聞き出すだけだ。

お読みいただきありがとうございました。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
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