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魔鉄を使って作りたかったものは、空間を繋ぐ魔道具

お楽しみ頂けると幸いです。

「主、再会を喜ばしく感じております!」

「うん、良かったよ。怪我の無いように無理せずにね」

「はっ!お心遣いありがとうございます!」


倒してきた魔物を聞いた上で考えると薙刀は戦闘探索部隊の中で頭5個分くらい飛びぬけて優秀だった。ステータスが戦闘向けでキッチリ備わっていたのが大きい。

これは戦闘メンバーとして引き抜いても良いくらいだけど、それはちゃんと相談した上で決めた方が良いかな。ちゃんと彼女たちにも生活があるんだから。


「微力ながら自分たちで魔物を倒すことが出来るようになりました。魔石を基に仲間たちを増やしております」

「お~、助かるねぇ。可能な範囲でどんどんやってよ。魔石が多く手に入る分には困らないからさ。薙刀並みとまではいかなくても強い個体が増えて巣を守ってくれるようになるとより安心できるし。お願いね」

「はっ!お言葉を励みに致します!」


場が落ち着いたので薙刀を先頭にした挨拶を受けた。薙刀が毎果から受けたダメージは俺が『手当』をかけて癒したので、すっかり回復している。

大きさは違うが女子の顔に傷が付いている状態を良しとしたくなかったのだ。毎果が顔以外か…と呟いていたのが怖い。あの子だけ何かベースになったのが別の魔物じゃないかな。


「で、昼からは何をするの?」

「俺はもらってきた魔鉄で作りたいものがあるからちょっと今日はそれに手をかけたいかな。リセルはみんなと組手なりして混ぜてもらってきたら?」

「じゃあそうしようかな。しばらくは『調合』はしなくて良いんだよね?」


必要そうなものはある程度俺が最初に作ったし、常時消費しているのはSPポーションとSPゼリーくらいだ。となると急いで作らないといけないものは…無い…かな。

敢えて言うなら装備品だけど今は後回しだ。補強くらいに考えておけば良い。


「必要になるにしても3日後くらいかなぁ。在庫は使わなければ良いし。うん、戦闘訓練中心で」

「わかった~。ミケンダ、非番の人たちに手合わせお願いしたいんだけど都合着けてもらえそうな人だけ集めてもらえるかな」

「承知っす」

「俺も早く出来上がったら混ぜてもらうよ。お前もちょっと鈍ってそうな体に喝を入れておけよ」

「ほほぅ。そのケンカ買うっすよ。首を洗ってから来るっす」


互いに悪い顔で笑う。ミケンダはすぐに声をかけるためにかその場を後にする。俺はSPポーションを食後の茶の代わりにグイっと一飲みして立ち上がる。


「そうそう。今日作るものが完成したら万花たちも俺らが旅に出るのについて来れるぞ。割と自由に戻って来れるようになるから少し考えておいてくれ」

「は、はい」

「検討するまでもありませんが、体制の組み直しをしておきます」


そこまで大げさに考えなくても良いけどな。まあ新しく部隊の編成はしておいてもらう方が良いか。


「イメージだけ伝えておくと、巣の持ち運びは出来ないからそれはここに置いておく。この村の農作業もここまで発展させたならその維持も必要だろうし、その守護部隊も残った方が良いな」

「はい、承知しております」


返事したのは万花だけど、毎果も薙刀も神妙な顔をして聞いてくれている。


「その上で、俺について来てくれる部隊だ。巣を作る必要はない。日中に活動できるようにしてくれたらあとはこっちで何とかする。毎果の……育てた部隊に名前はあるの?」

「はい、万能作業部隊と呼称しております」


すごい名前だけど、あながち間違ってないか。巣作りに蜜集め、花も育てた上で魔力草や作物の農作業まで手伝ってるんだもんな。数が多いからの一言では済まないくらい色々できる。まだ出来ることは増やすらしいからまだ成長するみたいだし。


「万能作業部隊に守るように薙刀の戦闘探索部隊からも連れて来てくれたら良いかなと思う」

「かしこまりました」

「すぐに選別に入らせていただきます。薙刀もよろしいですね」

「わかっ……しょ、承知!」


ぽわわんと昼食を食べて満足していた薙刀は油断していたが、途中で視線に気が付いて引き締めた。が、少し遅かったかな?


「毎果、言葉遣いはこの際俺が気にしないからやめてあげて」

「かしこまりました」


う~ん、でもあんまりかばい過ぎると毎果がイヤかな?これ、バランスが難しくないか?


「では主殿、御前失礼いたします」

「あ、あとさ」

「堅苦しいから呼び方変えてくれない?」

「いえ、それは…」

「イレブンとしては仲良く楽しくやりたいんだよ。そうでしょ?」


リセル、ナイスフォローだ!親指を立てておく。返してくれた。いいね!


「では、その辺りも含めて検討してまいりたいと思うのですが、お時間ちょうだいしてもよろしいでしょうか」

「そう言う時点で硬いんだけどな。まあそれでよろしく」

「ご理解いただき感謝いたします。では、万花様、参りましょう」

「そうですね。あ…えっと、失礼致します」

「うん、じゃあね」


俺も苦笑いで見送る。普通にイレブンって呼んでもらっても良いんだけど。変に助けてしまったからそれができない関係になってるんだろうな。

俺も助かってるわけだし、対等に考えなくてもあんなにあがめてくれないでも良いんだよな。


「自主的な結論を待つ感じなの?」

「そうだな。村長としての経験で考えるとどう思う?」

「良いんじゃない?お互いに尊敬しあってる関係なら余程のことをしない限りは大体全部OKで済ませても」

「はは。なんだそりゃ。ありがとう。好きにさせてもらうわ。じゃあがんばって作りますかね。ミケンダは残しといてくれな」

「りょうか~い。じゃあね~」


相談と呼んでいいか分からないけれど、リセルを見送り、食器その他を流し台に置いておく。洗うのは絶対にしないでくれと毎果に懇願されている。

『清潔』を使えば一発なんだが、後輩育成に必要だと言われると仕方ない。仕事を奪うわけにもいかないし、置きっぱなしにしておく。


「じゃあ、作りますかね。これで移動が楽になるぞ~」


作るものは『思い出の楔』というアイテムだ。自分が登録しておきたい移動ポイントに打ち込んでおくことで『空間魔法』による『空間接続』が可能になる。

普通と違うのは街の入り口に飛ばされるのではなく、街中の【ここ】という場所を指定することが出来る。宿屋の前とか、お金を貯めて買いたいものを売っている店の前とか。

『空間接続』を使える物が実際にその場を指定する必要があるので、行ったことがない場所や楔を打ち込んでないところは無理だ。だが、やっておけばこれ以上に便利なものは無い。


とりあえずは獣人の村で1つ、ユーフラシアはメディさんの店かザールさんの店のどちらか。あとはこれから必要になるだろうからいくつか余分に作っておこう。

このために『魔道具学』を取得したんだ。では、始めるとしよう。材料は木材と魔鉄、それからその登録地点の何かだ。土でも水でも草でも良い。登録地点での作業も必要だけど、元があればそんなものはすぐだ。


もちろん作ったことはないけど、材料を前に完成品のイメージと効果を思い浮かべていると手順が浮かんでくる。よし、作ろう。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


まずは魔鉄を結界で閉じた空間内で一度熱して融かし、『念動魔法』で望みの形へと整えてしばらく冷ます。おれは外側で見てるだけだから熱くはないよ。

冷ましている間に木材は杭の形に削る。ついでだから多めに削っておこう。魔鉄部分も20個ほど作ってあるが、削るだけならすぐだしそれ以上の数を作っておける。

さくさくと削り終わったが、魔鉄はまだ冷めそうにない。結界を一部解除して風を通しているが、まだかかりそうだ。


「あとは嵌め込むだけなんだけどなぁ」


熱いものを放置して手合わせに行くのも危険だ。それまでは待機しておく方が良い。自然冷却を考えると水や氷はともかく、風を吹かせるのも考え物だ。


「別のものかぁ。そう言えば何か作ったら見せてくれって言われてたな。魔鉄を使った何かを作るか?いや、結局冷ますまで時間待つことになるからダメだ。何を作るか決めるだけにしておこうかな」


何があれば便利だろうかと考えて一つ良いものを思い出したので、その基礎になりそうなデザインだけ考えておく。

作ろうにも材料を探しに行くところからになる。完成はまだ先になるけれどそれで良いだろう。手がかりは今晩あたりにたぶん知っていそうなミケンダにでも聞いてみよう。

粗方デザインが決まったら、目安の形や大きさを『土魔法』で大体の形を決めて試作品を作ってみる。


「よし、出来た!」


俺やリセルのは腕輪にするとこんな感じになるだろうな。代わりに万花たちはそこまで小さくは作れないから腹輪って感じだ。嫌がられたらまた別のものを考えてみるとしよう。


「そう言えば冷めたかな?触れるくらいには冷めたな。よし、これなら杭と合体させても大丈夫だろう」


接触させる部分に結合するようにと、『空間魔法』を使うことが出来る俺の血を付着させる。これで俺の『転移』の目印になる。先に決めてしまうか?後で変更も出来るし、やっちゃうか。

リセルの家の横、フレンドビーたちの巣の前の土を少し掘って『思い出の楔』の上の受け皿部分に入れる。魔力を少し流しておけば良いらしいな。…うん、これで良し。採取場所に打ち込んでっと。準備完了!のはず。


少し離れたところに移動してから試してみようかな。家の中から使うことにすればいいか。成功するかなぁ。大丈夫なはずだけど。


「じゃあ、いくぞ。『空間接続』!」


目の前に皹が入ったかと思うと、俺が楽に通れるくらいの大きさの穴が開いて正面に外側の景色を見ることが出来る。外からも同じように見えてるのかな。ちょうど目の前を通っているフレンドビーに手を振ってみるが、気がつく様子が無い。


「無視してるわけじゃないよな?お~い」


手を振ることに加えて声を出して見るがそれでも気が付かない。


「こっちから見えるだけなのかな。じゃあ通り抜けてみるか」


先に試しで木材の破片を投げてみたら何事もなく通り抜けた。大丈夫だと判断しよう。


「とお!」


かつてのヒーローよろしく飛び込んでみた。空中で一回転して着地を決める。ポーズはやめておいた。


「体!異常なし!接続、問題無く完了!あ、通り抜けてしばらくしたら消えるのか。時間延長も練習次第かな」


飛び出してきた瞬間からは認識されるようでフレンドビーたちが驚いているので、謝っておいた。ついでに家の中から同じように空間接続で外に出られるかを試してみてもらった。


結果、問題無し!


移動場所を設置するので戦闘には使えないが、決まった場所に帰ることが出来れば十分だ。さて、手合わせに行こうかな。

お読みいただきありがとうございました。

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