飛行中だけど魔法の特訓の説得をしよう
お楽しみ頂けると幸いです。
【リセル視点】
イレブンはザールさんと色々と相談している。強くなることと、武闘大会に出ること以外にも色々とやるみたい。メディさんとサティさんにはあの顔の2人には近づいたらダメって言われた。ぼくが聞いてもよく分からないから他に気になることを聞いておきたい。
ぼくは冒険者のことはあんまり詳しくない。村長っていっても今から思えば気が付いたら全部みんながしてくれていた。このままじゃいけない!もっと知識を増やさないと!今日から晩ご飯も別だし帰る前に聞いておかないと!
「ねえねえ、サティさん。どうやったら冒険者のランクって上がるの?」
サティさんはきれいだけど、剣舞の姫って異名があるくらいには強い金級冒険者なんだって。本人としてはデテゴさんと会うためだったから目的を達成できた今としてはもう引退のつもりなんだって。すごいよね!ぼくとは大違いだよ。そんなこと考えてる場合じゃなかった。ぼくから聞いたんだから!
「そうですね。イレブンさんは知っているようですしまだお時間がかかりそうですね。その間にお教えしましょう。最初は鉄から始まることはご存知ですね」
「うん!ぼくも今は鉄級だよ!」
身分証代わりなのでこれはイレブンにも預けていない。組合証を出して見る。
「それですね。ちなみにまだ小さい子どもや雑用用の木級というランクもあるんですよ。ここは冒険者が多いので新規では登録していませんけれど」
「なんでですか?」
「ケガをしてあまり動けない冒険者用に残しているんですよ。人数が多いのでね。残しているようですね」
そうなんだ。この街は冒険者以外にも色々と仕事がありそうだしな。村では狩りか農業って2択のあとにみんなが助け合って色々とやっていたなかなぁ。
「リセルさんの鉄級の話に戻しますね。依頼をこなして貢献していくうちに1つの組合が認めれば鋼級に昇格です。それは大きな事件解決でも、ポイントを貯めても構いません。同じように複数の組合に認められれば銅級に昇格となります」
「じゃあ、いくつかの町を旅していかないといけないんだね。思ったよりも大変そう」
にっこりと笑って頷いてくれた。そうか、旅にも出ないといけないのか。
「そういうことです。旅をするのは楽しいですよ。滅多に会うことはありませんが、リセルさんもお友達になれる方がたくさんいらっしゃると思いますよ。
「そうかな。そうだと良いけど…」
少し自分にある耳と尻尾が気になる。見てはないけどサティさんを焦らせてしまったことを感じる。ふつうの表情で顔を上げよう。
うん。サティさんもいつもの顔だ。
「更に上の銀級になるためには大国に1つ、中小国ならまとめて1つ置かれている場合もありますけど、組合統括支部で認められることが必要です」
「デテゴさんはそこまで進めたんだね!サティさんはその上の金級だよね?」
「ええ。金級は他の組合支部から更に2つ認められた上で本部の試験を受ける必要があります。本部の場所は支部3つから認められた人でないと教えてもらえません」
そうなんだ~。イレブンならすぐに金級まで上がってしまいそう。サティさんよりも強いって言ってたし…。
「そうならないようにリセルさんもがんばりましょうね。及ばずながら力もお貸しできるときは必ず力になりますよ(少しいじわるなことも言ってしまいましたし…)」
「ありがとう!」
やっぱりイレブンの周りは良い人が多いな。あ、聞いていたらイレブンの話も終わったみたい。
「話が聞けて良かったです。…リセル、帰ろうぜ~」
「分かった~」
☆ ★ ☆ ★ ☆
【イレブン視点】
さて、昨晩のザールさんとの話から色々と考えたが、武闘大会に行く前に色々と整えておく必要がある。案件を抱え過ぎだ。しばらくは増やさずに確実にこなしていくことにする。なるべくそうしたい。
今日は獣人の村に行く。強くなるには魔力草やハチミツは欠かせない。他の材料も必要だけど。確実にルートは抑えておきたい。リセルも鍛えないといけないしな。
「さあ、じゃあ乗るんだ」
「これ昨日の結界ってやつ?」
「そうだ。乗ったら飛ぶぞ」
実物を見るまでは信じられなかったようだが、見てもまだ疑いが晴れない。仕方が無いので俺一人で飛んでいるところを見せて納得させる。
「な?落ちないから大丈夫だ!」
「わかった。がんばるよ」
「ついでに言っておくけど、乗ったら『精霊魔法』の練習な。呼び出せる種類と強さの調節は練習したら身に付くから。それに慣れておかないと力の調節は中々出来るようにはならないぞ」
ジト目で睨まれた。なぜそんな目で見る?
「イレブンって教えるの厳しいし、下手だよね」
「う…。俺も一緒にやるからさ」
「見本を見せてね。あと感覚も教えて」
「魔力を扱う系のスキル取ってなかったな。取得しておこうか。…ちょっと足りないからゼリー食べて」
アイテムボックスからいくつか出して飛行結界の上に置く。ついでにバンバン叩いて乗ることを急かす。リセルは渋々といった表情を浮かべるが乗ってゼリーを食べ始める。
「なんか思ったよりも違う生活してるな~」
「リセルはレベルが上がったときの上昇が高いんだよ。使い慣れてないのに筋力上げ過ぎると困るのは自分だぞ?」
レベルをあと2個も上げたら筋力はリセルの方が上になるし、防御に影響する頑丈は既にリセルの方が高いくらいだ。俺のスキル選択が偏っているだけだけだが。
「分かったよ。みんなと組手も出来ると思ったら悪いことばかりでもないしね」
「俺も結局あんまり組手はしてないからな。少し楽しみだ」
移動中はリセルはしばらくゼリーを食べてスキルポイントを貯め、俺はその間に移動の制御をしながら簡単な魔法を使って感覚の言語化を練習する。結論は練習中に言われないと試せないという最もなことを言われた。じゃあ自分の魔法の練習しておこう。
スキルポイントが貯まったので早速リセルに『魔力センス』と『魔力放出』を取得して練習させてみるとあっという間に魔法の制御に成功する。
「これを先に取っておけば良かったよ。生産のときもうまくいきそうだよ」
「そういえばそうだった。俺のミスだ。ごめんなさい」
「まあこれから修正するから良いよ。なんとなくイレブンとの付き合い方も分かってきたし」
「いや、本当に悪いことをした」
最初に必要だろうと思って取得したものは先に取らせておくべきだったんだ。ここまで劇的に効果があるとは思ってなかった。痛恨過ぎる。
「そこまで落ち込まなくて良いよ。それに今までだって十分に異常だよ。最初からこんなのだったらメディさんがもっと落ち込んでたよ。もう簡単には見せられないレベルかもしれないね」
「あ~、確かにそう言われたらそうかもしれないけど」
「操作の感覚が変わったら大変だよね。しばらくは慣れていくから、他にも役立ちそうなものがあるならまた言うから頼むよ」
「分かった。自分のステータスを見ながらリストアップしておくよ」
「うん。お願い。じゃあ魔法の練習しよう!ずっと高いところにいたら慣れてきたし!」
訓練は俺が発生させた色んな属性の球を同じ属性の魔法で狙うことだ。『火球』とか『水球』とかだな。それを同じ属性の精霊にお願いして当てることをさせてみた。
魔力の操作がスムーズになったことでより円滑に、効果も上がったような感じだ。これなら色んな事が出来るようになりそうだな。
「慣れたのならちょっと難度を上げてみようか」
「ええっ!?」
思った以上の反応に俺も驚く。
「抗議の声を上げてもダメだぞ。可能性を伸ばすためなら色々やっておきたいんだが」
「まだ早いかなって思っちゃうんだけどさ。精霊にお願いしているだけだし」
「結構しっかりと狙えているし問題無いと思うぞ。限界を知っておくことは結構重要だ。それにリセルは絶対に武闘大会のパーティメンバーに入ってもらいたいし。最低でも2名以上の参加なんだから絶対に強くなってもらうぞ」
「いや~。ぼくは今まで戦闘の才能無いと思ってたから…、自信はあんまり無いかな」
自信が無いか…。今までレベルも上がらず、それに自分が何者かも分からずってなってたら自分について自信が持てないのも当然か。それでもリセルは絶対に必要だ。
「そう簡単に自信なんて持てるもてるものじゃないと俺もわかってるさ。まずは成功するだろうってことからやってみよう。同じ100回やるにしても、難しいことをたった1回成功するよりも簡単なこと100回成功する方が良いってのが俺も経験したことだし」
「まあそれはそうかもね…。やるだけやってみようか」
取り組む姿勢は見せてくれたけど、心の底からやろうって思ってもらえてないな。やることの難度が低いから安心しただけって感じだ。
「リセルのために考えたんだからがんばってほしいんだよ」
「………」
ん?リセルの動きが止まった。
「…………かい…って」
「何?」
「さっきのもう一回言って?」
どれだ?後ろ向いてるから表情も見えないし。
「リセルのために?」
「そうそれ」
合ってたか。何て言ったっけ?
「リセルのために考えたんだからがんばってほしいんだよ?」
「………ふうぅぅぅぅぅっ……」
大きく息を吐いた。なんか震えてる。えっ、泣いた?泣かせたのか?顔を見に回り込むのも悪いような気がしてどうしようかとオロオロしてしまう。
「それはさ、頼りにしてくれているってことだよね?」
「そうだな。同じステータスが見られる仲間ってのもあるし、たぶん一緒に出場できそうなのはリセルくらいだしな」
スキルポイントで伸ばしていくから補強がとんでもなく出来るし、強化が済んだら他にもリセル連れてやりたいことあるからな。むしろリセルのことだけを考えたら武闘大会の方がおまけだ。
「『調合』とか『料理』よりもイレブンの役に立つかい?」
「ああ。間違いなく。極端な話だが、生産は他に任そうと思えば任せられるが、一緒に戦闘できるのはリセルだけだからな。俺のためにもがんばってくれると嬉しい」
「………ほおおぉぉぉぉぉぉぅぅぅぅぅ………」
思わず力をこめて言ってしまった。やけに長い深呼吸だ。だが、背中から見ていても分かるぞ。何が原因か良く分からないけど!
ぐるんと回転してこちらに顔を向けたリセルの瞳には確かにメラメラと揺れる熱い炎が宿っていた。
「やってやろうじゃんか!なんでもやってあげるよお!まず何からやるのさあ!!」
「た、頼もしいぞ!まずやるのはさっきの続きだ。同じように『火球』とか『水球』を発生させるけど、今度は少し俺の意思で動かすから、それをちゃんと操作して当てるんだ」
「わかった!始めようか」
「じゃあ行くぞ!慣れたら数を増やしていくからな!」
「任せて!」
良い返事だ。さすがリセル。すばらしいぞ!
お読みいただきありがとうございました。