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知り合いのいない飲み会と初戦闘開始

本日4話目。明日からどうなるかな。自分の状況見て投稿していきます。


冒険者組合に入ったときと同じようにまた連行されて、ザールの開店祝いの食事会になし崩しで参加させられてしまった。参加者はザールとデテゴが10年以上前にユーフラシアにいたときの知り合いを中心に呼ぶようだ。


イレブンは自分の扱いに不便を感じていた。はやく自活できるようにしなくてはいけないと考えていた。何か訳アリでどこかの村から逃げ出した少年と思われているようだ。扱いが『面倒見てやらないと』って感じになっていることが伝わってくるからだ。

結局は拾ってもらった謝礼も入門料も受け取ってもらえなかったし、このままでは夕食代も受け取ってくれないだろう。開店祝いに関しては何か盛大に贈り物をすることを重要度高めとして心のメモに付けておく。


食事会が始まってしばらく経過するとかなりいろんな人から声をかけられてしまい、顔と名前が一致しない知り合いも増えてしまった。この国では16歳から成人だったのでイレブンは酒は飲まないようにしていたが、特にデテゴの周囲は酒宴の様相が濃くなった。

対してザールの周りは商人が中心なのでまだ落ち着いた話がされている。


「イレブン君は街に戻ってくる途中で拾った少年ですけどね。デテゴのお墨付きです。将来は金級冒険者ですかね」

「ザール、それは言い過ぎだろう。デテゴでさえ銀級だろう?」

「おいおい。ボーグよ、知らんのか。デテゴは金級になると気楽に旅が出来なくなるからって断ってるだけだぞ」

「そんなワガママが通じるのか?」

「デテゴは怒らすと修羅だが、依頼達成率も高いから割と早いうちから声はかかってたんだぞ。ここからいなくなる前にも若い冒険者の面倒見も良く、素材採集も丁寧だったからな。この街で善良な商売をしていた俺らみたいなのはかなり惜しんだもんだよ」

「知らなかった…」

「まあボーグはどちらかというとデテゴとの付き合いは少ないですからね」

「あいつ武器防具は得意先の鍛冶屋で済むからな。俺の店とは付き合いは少なかったな」


当人がいないところで褒める人は良い人だと言うが、ここにいる人たちはそういった人たちのようだ。話の対象であるデテゴも内容から考えると良い人なのは間違いないようだと料理を摘みながら話を聞くだけに徹する。


「デテゴさんって何か怖がられてますけど何かしたんですか?」

「ダニイル…、お前この街で商売してるくせに奴の詳しい話を知らないのか?商人が情報に弱いのは感心しないぞ。あいつがこの街にしばらく寄らなかったのはなぁ」

「知らない奴にわざわざ言うんじゃねぇよ!」


あまりに自分の名前が呼ばれるので本人が介入してきてしまった。止めるなよ。面白くないだろうに。


「良いだろ?俺らからしたらお前の武勇伝だよ。若い奴にしっかり語り継いでいかねぇとダメだぞ」

「結局は逃げた負け犬の話だよ。頼むからやめてくれ」

「え~。僕は明日からしばらく仕入れで街を出るから話を聞きたいですよ~」


そこで引くな。もっとがんばれって。


「仕方ないな。ダニイル、戻ってきたらこっそり教えてやるよ」

「お願いしますね」

「やめろって!」


結局話はそこで終わりだった。くそ。聞きそびれた。俺も聞きたかったな。


「ザールはどこに店を構えることになったんだ?」

「商業組合に近いところに、海の向こうの国からの輸入品を売る店があったのでしょう?そこが店を畳んだので、他に取られないうちに即決です」

「あ~、立地は良かったのに良く分からん商品を売っていたところか」


海向こう?そんなのあったか?ってことは実際には世界はもっと広いのか。マジか~。もしかしたら続編とかあったのかなぁ。


「しっかし帰ってきて早々に店を構える気になるなんて気が早いもんだな」

「いや、ザールはいつでも店を持てただろう。相棒の隠れ蓑だよ。お人好しが過ぎるってもんだぜ。へっへっへ」

「おい!そこでまだいらんこと話してるだろう!」

「デテゴ、大声出すのはやめてください」

「ぐっ!」


既に飲み比べになっているデテゴ友人の冒険者たちだから、大人しくすると約束したデテゴはあまり飲まずに済むようにしている。ただ、こちらにいるのはザールの商人仲間だからどうしてもいじられる側に回っていた。

結局デテゴが過去に何をやったのかは話が回ってくることも無く、またあまりに大勢で人見知りが発動した俺はほとんど話すことなく馴染めずに色んなテーブルの会話を盗み聞きしていた。概ねザールの店のことや最近の街の様子、他の町ではどうだったのかの話へと移っていった。

満腹になって商人たちも切り上げる者とまだ続ける者が出てきたときに、ザールが話しかけてきた。


「食事もそろそろ満足しましたかね。色々と話を聞けて楽しんでもらえましたかね。イレブン君も疲れてるでしょうからもう宿に行くとしましょうか」

「もうすごくお腹いっぱいです。ありがとうございます。いつ抜けるのか分かりませんでした…」

「ははは。そうですよね。大人でもこういった席で抜けるのは難しいものですよ。ちょっと彼を宿に案内するので、ここは任せますね」

「あぁ。デテゴが逃げないようにしておくよ」


ザールはイレブンだけを先に抜けさせ、宿へと案内した。


「さて、ここはユーフラシアで冒険者が拠点とするのにお勧めの宿ですよ。一泊だけは料金を払っておいたので、明日からは自分で払ってください。これも貸しとしておきますので、いつか返してくださいね」


と部屋を取ってくれていた。こうされると断りづらく、既にかなり自分の性格を読まれているとイレブンは思ったが、スキルポイントを溜めさえすればいくらでも借りは返せる。もう腹を括って甘えることにした。

ザールを見送った後に女将さんに聞くと、この宿はかつてデテゴが駆け出しのころにもお世話になっていた宿で駆け出し冒険者がよく使う宿らしい。その日はすぐに寝た。個室のありがたみ、布団の柔らかさ、ベッドの寝心地が最高だ。


ただ、寝る前に考えることがある。ザールが店を構えるつもりだと言っていた。デテゴの命が狙われる動機や手段も分からないし、誰が犯人かも分かっていない。

そこまで裏設定が決まっていたのかさえ疑問である。


俺はどうするのが正しい?あんなに周りから好かれている人を見殺しにするのか?


俺のエゴでハッキリと言わせてもらうなら、助けたい。知り合い、ましてや助けてくれた人が死ぬのを見るのはもう嫌だ。


ここで気になるのはザールが三国に広めた道具屋カンパニーの社訓だ。『毒は扱うな。薬は常に備えておけ』というものだ。これがもしザールの体験談から来ていたものだとするとどうだろうか。デテゴは毒を盛られたのではないだろうか。

大人しくしておくように伝えたが、それだけでは安心はできない。心配しだしたらキリは無いが、ずっと見張るわけにもいかない。早い話が犯人を押さえるか、なにがあっても大丈夫なように薬を整えておくのが良いだろう。

外注が出来ないため、上級スキルの『調薬』は必要だった。他とバランスを考えながらそこを目指すことにしよう。


平たく言えば、安全のために強くなるという途中に別の目標が挟まっただけだ。別に寄り道にもならない。となると解決すべき課題が一つある。


こちらの世界に来てからどうも力の調節が出来ていない気がしていた。少しレベルが上がってスキルを獲得したことでより顕著に感じる。常に全力を出して戦っている気がするのだ。確かにゲームの戦闘では手加減などするわけがない。普段の食事など何気ないときは問題無いが、特に戦闘中はうまく力が抜けていない感覚があった。

まだ魔物相手にしか戦っていないが、『ホシモノ』では人型の生物とも戦う。たとえ現状で戦ってもおそらく勝つことに問題は無いが、人型と戦った時の後始末が心配だ。気絶で済めば良いが、そうはならない気がしている。何がとは言わないが、飛び散らしてしまうと色々とまずい気がする。

そう考えると手加減も覚えた方が良い気がするのだ。早速戦闘訓練として初めての依頼を受けよう。こういった時は体を動かすに限る。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


翌日、早速依頼を受けようと組合へ行くと受付にはリネッタさんがいた。昨日の組合を出てからの話を聞かれたので説明していくとまずは宿は組合もお勧めしていたところだった。1泊2食付きで80ガルは良心的だと組合でも太鼓判を押しているそうだ。ご主人と昨日見た女将さんも元は冒険者だったそうだ。

自分たちが駆け出しのころに、こんな宿があればと考えたところから始まった宿だそうだ。昨日は何が何やらの状態で宿が決まったので、今日戻ったときに改めてしっかりと挨拶から始める気持ちを固めた。


選んだのは酔っ払い寸前の冒険者たちに勧められた魔石の納品を選んだ。この世界では魔石は使い道が非常に多いそうだ。加工の一手間はあるが、魔石は手軽なエネルギー源のようだ。現代で言うところの電気に近い扱いなのだと考えてもらって良い。だから需要はいくらでもある。

魔石を確定で手に入れられるイレブンからしても美味しい依頼だ。ただ、フィールドを適当に歩くだけでは魔物には滅多に出くわさないそうなので、よく出現するポイントを教えてもらった。昨日登録したばかりなので1か所だけ。


ダンジョンでは無いが、ある程度の広さを持った魔物が出現しやすいエリアだ。リネッタさんとしてもイレブンが登録したばかりだからと様子見と心配の気持ちが大きいが、昨日の飲み会で酔っ払いたちから既に何か所か教えてもらっている。

デテゴが強いと太鼓判を押した結果、ユーフラシアから日帰りで行ける手ごろな狩場を教えてくれた。。最初は組合に教えてもらったところに行くつもりだが。

色々と巡りあわせに感謝しながら出かけた。ちなみに装備はこの世界に転移した時から何も変わっていない。組合で教えてもらった森に行く途中に見かけた冒険者に比べるとただの一般人臭がすごい。戸惑い、嘲り、心配と色々な視線を頂戴してしまっている。


(まあ、テンプレみたいに手出しされないだけいいや)


イレブンは軽く考えると、街から出て走った。『走行』スキルのレベル10は伊達ではない。走っている方が体が温まって調子が良いのだ。多少疲れるが、レベルを上げるための行動なら苦ではない。

同じ目的地の冒険者はあまりいなかったようで、途中から見える範囲に人を見なくなった。気にせずにずんずんと森の奥へと進んでいった。ここはグレイブ村の前に訪れるはずのフィールドだ。敵の脅威度は一段下がる。つまり余裕だ。魔物に複数出現されても問題にならないと踏んでいる。

しばらく進んでいると魔物の気配を感じ取って進む方向を少し左へとずらした。近づくうちに向こうにも察知されたようだ。敵対意思を感じる。お互いに見えるところまで近づく。


「定番のグレーウルフさんだな。全部で6匹か。ゲームの時より多い数で群れてるんだな」

お読みいただきありがとうございました。続き読んでみようかなと思ったらブックマークだけでもお願いします。あと、評価といいねが元気の素です。

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