リセルと買い物(事情を知っている周りから見たら…)
お楽しみ頂けると幸いです。
帰ってきてから2日はゆっくりさせてもらった。寝坊に関してはしっかりと怒られたが俺が疲れていることから少しは手加減してもらえたと思う。リセルもかなり庇ってくれたのも大きい。言い渡された判決も特に厳しいものでもない。俺の気の利かなさを考えると気付かせてくれてお礼を言いたいくらいだった。
最近はずっと何かしらを毎日していたので、まずは休暇を取れと大人一同に言われてしまった。全て自分のためにやっていることだが、たまには良いかと2日ほどゆっくりさせてもらった。
リセルも俺と一緒でずっと何かをしていた。よく考えたらメディさんもずっと働いていたが、こちらは開店前の追い込みなので構わないそうだ。在庫切れが起きそうなら俺たち二人も手伝うことも言ってある。明後日開店なのでリセルはしばらくは教わる時間が取れなさそうなので俺と一緒に付いて回ることになる。
いつまででも休暇で構わないのだが、さすがに今日で3日目になる。さすがに飽きてきたので明日からはまたすこしずつ動こうと思う。蜂娘たちの様子も見に行きたいし、その前に今日はリセルとユーフラシアの街をぶらっと歩くことになった。ちょっと買いたいものも出来たし。
何気にリセルはユーフラシアの街歩きをしていない。良く通る道から外れたりだとか、昼間の屋台や飲食店の食べ歩き、ただ何となく歩いて気に入ったものを買ってみたりなどさせていなかった。
声を大にして言うが、ステータス上ではリセルの方が年上である。ただ覆す要素はたくさんある。
その1、リセルの見かけが小さい。
俺個人の主観だが、せいぜいが小学生の高学年だ。10年前から成長が止まっているそうだ。じゃあ俺の見立てはピッタリか、少し大きく言ったくらいだな。
子どもの成長が止まるなんて不健康だが、神が関わるとおかしなことが起こることもあるので気にしても仕方ないそうだ。
その2、俺の意識とステータスの年齢が一致していない。
高校卒業後に足踏みはしたが、大学生活を2年過ごした記憶はあるんだ。つまりは酒を飲んでもおかしくない年齢は迎えていた。
そんなもんだから小さい子は面倒を見る対象と考えてしまう。俺の身長も縮んでいるが、それよりも小さいリセルに対して少々世話焼きになっても仕方ないと思ってほしい。
ということで、一応俺の方が年下だが様々な理由で俺がリセルの保護者ということになっている。まあ俺の方が世間には慣れているだろうからその方が良いのは確かだ。
だから今日はぶらっと歩くことになっている。それが判決内容でもあるし。
言い渡された内容を正確に言うと、リセルと俺の二人でユーフラシアの街をぶらり街歩き、だ。
今日だけは『帰宅』となるまではSPポーションとSPゼリーの摂取は禁じられている。先日のお叱りの中で言い渡された判決なので守ろうと思う。
さすがに今日くらいは効率ではなく純粋に楽しむ日があっても良いのではと言いたいのだろう。飽きがこないように工夫してもらっているが、たまには店売りのもので楽しむことも大事だろう。
「さて、じゃあ行くとしようか。俺も全部を見て回ったわけじゃないからあまり期待しすぎるなよ?」
「まあいいんじゃない?ぼくもいくつか行っておいた方が良い店を教えてもらったくらいだし」
「何かあと買っておきたいものがあれば言ってくれよ?俺も買いたいものあるし、余裕が出来てきたから戦闘用以外の服も少し買い足そうと思っている。あとは色々と今日は散財するつもりだ。好きなものがあったら言ってくれ」
「そんなこと言って良いのかな~?」
思いっきり高いものを買わせてやろうかという表情だな。ふっふっふ。
「全く問題無い!どれだけ『食材の宝庫』で稼いでいると思っているのだ。組合の昇級ポイントのためだが、その日の高めの食材も提出しているからな。さすがに今日はアリバイ的におかしいから行かないけどな」
「ありばいってのは知らないけど、イレブンが元気になってきて良かったよ。じゃあ行こう!」
「おう!行くぞ~!」
寝泊まりしている部屋から元気よく出たところで、なぜか機嫌の良い女将さんに出会った。すごくいい笑顔で見送られて宿を出た。
「なんで女将さんあんなに笑ってたんだ?」
「さ、さあ?分からないよ…」
リセルにも心当たりが無いので、戸惑っているようだ。
「そういえばメディさんとサティさんも昨日の帰り際は機嫌よかったよな?」
「そうだったかな。気にせずに行こうよ!」
「ん~、まあそうだな」
若干不機嫌になったリセルに強く言われたので俺も気にしないことにした。一日ぶらぶらする日の出発直後にもめることも無いと判断した。
朝食は済ませていたので、いきなり買い食いは無い。
「まずは服の買い出しに行こうか」
「オッケー」
「リセルも『裁縫』の練習に参考になりそうなものとか必要なものは多めに買っておいていいぞ」
「ん~。うん。分かってるよ」
多少の歯切れの悪さが気になったが、聞く前に何でもないから行こうと言われてそのまま店を目指すことにした。
店にあるもので気に入った布やデザインの服をいくつか購入していった。割とリセルは服にはこだわるみたいだ。色々と時間をかけて見て回っていた。
途中で別れて探そうとなってから俺が先に買い終わってもまだ店員と仲良くなって話しながら選んでいた。
「まだ選びたいか?」
「あぁ、色々と見るだけでも楽しくてね。メラノの気持ちがすごく分かるよ!」
「了解だ。時間ならあるしな」
「イレブンはつまらない?」
すごく悪いことをしたかのような表情で伺ってくる。まあ正直なところ、服なんて着れれば良いと思ってる。装備品は性能重視だから見た目も気にせずに使うけれど。
「楽しそうにしている顔見てそんなことは言わないよ」
「ありがとう!イレブンはやっぱりいいやつだな!じゃあちょっと今後の参考に女性ものも見て来るよ!」
「はいはい」
会話の後は女性店員さんとなぜか更に仲良く話しながらほぼ店内のものを全部見て回ったんじゃないかってくらい見てきた。
そこまで店員を連れ回したので服も色々な種類を購入していた。年齢層や男女別に考えても相当な量だが、なんとなく意図が見えた。店を出てから聞いてみる。
「村の人たちのお土産か?」
「うん。今回の支払いもいつか必ず返すから。メラノが得意でも材料が無くて服ってあんまりたくさんは手に入らないんだ。だから、ごめんね?」
「なるほどな。じゃあこれは俺からの魔力草のお礼ってことにしよう。思ったよりも収穫のサイクルが早そうだからな。みんなと仲良くなっておいて俺にも損は無いんだ」
「さすがに、そこまでは…」
メディさんのところで金銭価値を覚えたので、支払いの時に合計金額を見て慌てていたからな。悪いと思ったんだろう。
「気にするなって。さっきの買い物なら10回出来るくらいには持ってるから。食材を捌けば…ごにょごにょ」
「アイテムボックスって反則過ぎない?いやイレブンが反則なのかな…」
「まあ反則気味な自覚はあるからな。ということで気にするな。むしろ生活必需品は俺に任せて、もう少し個々に合わせたお土産でも考えてみようぜ。自分で稼いだ初めての金はそういうことに使うもんだ」
初任給で親やお世話になった人にプレゼントを贈るなってことは時々見るからな。
「じゃあ小物を作っているような店は装備品として装飾品も売っていたりするからな」
「なんでも戦闘に持って行くのはやめてよ」
「そういうつもりではないんだけどな。あぁ、途中で屋台とか出てるから気になったものがあったら言えよ」
時間的には少しはやい昼食くらいの時間にはなっている。
「いい香りがしてると思ってたんだ~。少しお腹空いたよね」
「だよな~」
と、ここで気が付いたようだ。
「あれ?ってことはもうお昼近いの?」
「そうだよ」
「えええ?じゃあすごく長い時間服を見てたってことだよね?ご、ごめん~!」
時計とか時間に縛られる生活をしてこなかったリセルにとっては太陽の傾きや村内の生活音などが時間の目安らしい。店の中というあまり経験していなかった中では時間の感覚を忘れてしまったらしい。
「集中しすぎてご飯を食べ忘れるところなんてイレブンにそっくりだよ」
メディさんに言われた言葉を思い出した。俺もSPポーション作ってるときにそうなったもんな。
「まあ自分が気になってる分野の店になったら時間が気にならなくなるのってよくあることだ。気にするなって」
「じゃあ少し先に何か食べよう!イレブンが最近ご飯を美味しく食べるようになったみたいだし、なんかおいしそうな香りをぼくが嗅ぎ分けるよ!」
獣人の本領発揮だな。まあ好きにやってもらおう。俺も一緒にやってみようかな。
「じゃあ頼むわ。うまいやつを頼むぞ~」
「任せといてよ!」
リア充感出てますかね。次も続きです。
お読みいただきありがとうございました。




