VS魔物軍団(ハンデ無し、よって瞬殺)
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見た感じは普通のゴブリンはいないようだ。全部体格が良いホブゴブリンばかりになっている。手には何らかの武器も持っているので、どういう位置取りをしようと遠近構わず何かの攻撃が来る感じだね。
周囲をぐるっと囲まれている。観察していると、器用なことにホブゴブリンたちは警戒しながら俺が倒した男たちを回収している。防御陣形を維持しながら彼らの馬車へと運び込んでいく。
まあその方が逃げやすいよね。どういうつもりでホブゴブリンを呼びだしたか分からないけど人手のあるうちにやってしまう方が作業なんて早く終わるもんだし。
「どうやら貴様が最大の障壁のようだ。全力を持って倒させてもらうぞ!」
もう時間もないだろうね。デテゴ達が後ろにいてもおかしくないと思う。
「いけ!」
その言葉と共にゴブリンたちが一斉に襲い掛かってくる。学びが無いな~。
「ガッ!?」
「ゴブッ!?」
ホブゴブリンたちは俺から一定の距離で何かにぶつかったように止まってしまう。止まりきらなかった後続に押されてしまって先頭で近づいて来ていた数体は結構なダメージを喰らっている。
流血沙汰です。戦闘なんてそういうものだとは思うけどさ。
「なっ…な…」
今思い出したかのようにふるふる震えているのは見える。
「とりあえずすぐ片付けるからね。逃げられないだろうけれど逃げないでよ~」
聞こえたかは知らないけれど、一応忠告はしておいた。さて、とりあえずこれらは片付けましょうかね。魔物なら何しても心は痛まないぞ。でも時間との勝負だしな。
ということは覚えたてだけどこれが一番かな。両手を左右に向けると、守るように張っていた結界を解除する。一斉に飛び掛かられる前に無差別攻撃を開始する。
「無魔法『魔弾』、連射~~~」
4属性の魔法を覚えることで解禁されるのが『無魔法』だ。『結界魔法』を覚える過程で必要だったので習得した。これは状況さえ整えれば最強の攻撃の1つと言われていた。
名前の通り属性が無い魔法を使うことが出来る。これは結構お気に入りである。簡単に言えば魔力が上がれば上がるだけ硬度を増すことが出来る。
何も考えずに発射しているだけで、近寄ってくる敵なら一方的に倒していくことが出来る。魔力至上主義でステータスを固めればこれだけを使っていても戦闘が終わる。
ただ、これをやり過ぎるとゲームの種類がRPGからガンシューティングゲームへと変化する。銃型の武器を用意すれば雰囲気を持って遊ぶことが出来るが、ゲームらしく杖を使ってもそれっぽく見せることが出来る。
これさえ覚えておけば何かあったときの切り札に使える手段だ。今使うのもあながち間違いでもないだろう。
なぜ滅多に使わないか?ただのヌルゲーになるから。それと弱点はガチガチに防御を固めることだ。無魔法の防御判定は物理的な攻撃力を持つので、守備力と魔防力の高い方が採用される。どちらかが高いやつに当たると太刀打ちできなくなる。
それと、PVPでやったら友達を無くす。ハメ技に近いからね。初心者からは嫌われ、ガチ勢からは手札が割れたら対策をすぐに取られる。
自称上級者の取る最強(笑)の手段かな。俺は魔物相手にはやく終わらせたいときや面倒な時に使うことがあるかな。積極的に使わないだけであって困る手段ではない。
硬いってだけで使い道は他にもあるので。
ある程度左右から無いことを確認すると、前方からの接近にもいくらか放って接近を拒む。後ろを振り返ると丸太に縛り付けていたのをちょうどほどかれているところだった。
「それは無しだろ!」
完全にそちらから潰しきる思考に切り替える。『魔弾』を途切れさせずに放ちながらホブゴブリンたちの頭を潰していく。当然ながら魔物が消えるときは煙と共に消えるエフェクトである。そのまま残っているなんてことは無い。もし、そうならとんだスプラッターである。
特に問題無く倒しきる。後ろからの攻撃の気配が近づいていたので避けるように横へ逃れる。ジジイには不本意ながら結界を纏わせておく。邪魔だな、あいつ!誰だ、連れてきたやつは!(お約束)
数秒とはいえ目を切っていた間に接近してきているので近いものから順に撃墜していく。
「そんなわけで、ホブゴブリンは全滅だね。あとはそこに残っているゴブリンキングだけだね。あと、馬車を動かして逃げないの?」
「ふっ、ふふふ…」
顔色は決して良くは無いが、まだ余裕がありそうだ。
「ボス!馬車が…」
「少し黙っていろ…!」
「ひっ!…し、失礼しました!」
馬車は動かない。動かせないと言った方が正しいかな。別に馬には手を出してはいない。車輪の接地面あたりから土を盛り上がらせて車輪の下半分近くを土に巻き込んだだけだ。
これで土を掘り起こさないと馬車は動かない。最初から逃がすつもりがあるわけが無いんだよ。『土魔法』を使える人がいれば別だけど、魔法スキルを身に付けられる人がわざわざ裏稼業なんかしない。
無理せずと条件は付けるが、冒険者でも貴族に雇われるでも生きる方法は色々あるそうだ。貴族学校とか魔法学院みたいなところで研究している人もいるし、魔道具作っても良いし。
いくらでもあるでしょ?技術があればいくらでもどこかで生きていけるんですよ。すばらしきは手に職だね。
話を戻そう。他にも車輪を巨大な氷と一緒に凍りつかせるとか手段は色々あったけど、一番地味でバレない方法がこれだったというだけだ。
「人数はいても実力は俺一人の方が上、ハンデ付けられても勝てなかったね」
ゴブリンの殲滅が終わったので、余裕を持って歩いていける。
「もう時間切れだよ。ほらデテゴ達ももうすぐ近づいて来ているみたいだし」
うしろを指差すと既にデテゴ達が見えていた。俺一人でも勝てないのに、味方が増えたら余計に勝率は低くなる。無差別攻撃でもされたら防御に回るけどね。
「なんか余裕ぶっこいてたけど全く勝てないよ。じゃあ素直に受け答えできるようにもう少し追い込みかけようか?」
この世界の人は空高いのは経験ないみたいなので同じ目に遭ってもらおうかな。そこで気が付いた。まだ何か召喚するみたいだな。
俺には背中を見せていたボスがゆっくりと振り返ってこちらを見る。ようやく最後の本気を出すみたいだ。ものすごい目をして睨んでくる。
「こんなところで、こんな誤算に出会うとは思っていなかったよ。正真正銘最大の切り札を切る。いいか!こいつは契約は出来たが僕の命令もまともには聞かない!だが、お前さえ殺せればそれでいい!」
手にはナイフとそれで傷つけたであろう手のひらからの血を魔石に塗り付けている。大きさでいえば中魔石サイズが5個。地面に叩きつけると共に叫んだ!
「出てこい!サイクロプス!!」
その言葉と同時に魔石が砕け散り、魔法陣が展開されていく。緑色に光り輝く魔法陣だ。書かれている文字は見たことが無い。さすがにこれはきれいだと言わざるを得ない。複数の魔石を使用しての召喚は言うなれば召喚術士の秘奥義みたいなものだ。通常よりも呼び出す魔物を強化した状態で使役することが出来る。
どういう理屈か制御は出来ないみたいだが。なにか抜け道でもあるのかな?そんなことを考えているうちに、地面に描かれた魔法陣から一つの角を持ち、一つ目の巨人が生えてくる。肌の色は赤色で口から牙も生えている。
上半身は裸、両手の爪も尖っているからひっかれたら痛そうだ。下半身は何かの毛皮を付けていた。良かった。見たくもない巨大なブツは見なくて済んだ。足の爪まで尖っているのを確認した。
全てが出現したことで歓喜の声なのか、威嚇のためなのか上を向いて咆哮をあげる。
サイクロプスは一つ目巨人という別名のためか、大きさも10メートルくらいある。地面からでは膝くらいまでしか届かない。膝を攻撃しても一撃で絶命させることはできない。倒れ込まれたら何かしらの被害が出てしまうし、この方法はダメだ。やっぱり一番は頭だ。
じゃあ始めますか。足元から結界を発動させると、パッと見は空中へと浮かんでいくように見える。今回は浮かせるというよりは結界の上に乗ったままそれを伸ばしているだけだが。
サイクロプスが叫んでいる間に俺は胸の高さで待機している。『風魔法』で音を遮断しようとしてもめちゃくちゃうるさい。終わるまでここらへんで待機しよう。
ふと下を見るとデテゴたちが馬車で到着したところだ。が、サイクロプスの咆哮のせいで何を言っているかまでは聞こえない。
『無魔法』を少しいじっていつもの手甲状にもちろん現時点での最高硬度に変化させる。名付けるとしたら圧縮手甲(硬)かな。腰だめに右手に力を込め、『覚醒』を発動してステータスを上昇させる。
サイクロプスの咆哮が終わったため、上昇を再開する。顔の位置まで上がると顔を正面に戻したサイクロプスの目と合う。
「じゃあ、おつかれさん。またどこかで。秘奥義『一拳』」
まずはサイクロプスの鼻まで結界の道を繋ぐ。結界が当たったところでこのサイズ違いだと虫が止まったくらいだ。ここからは最速でいく。しっかりと取っていた距離を踏み込み、左足で踏み切る。反動で得た力を微妙な回転で体幹まで上昇させる。腹の底に溜めていた気合を腹から声に変換しながら背中の回転を肩から腕へと伝えていく。あとは腕はまっすぐに突き出すだけ。
ドッパァァァァァァアアアンンンンン
あまり褒められたものでは無いが鼻から浸透した威力が頭部を破裂させ、音が響く。そのすぐ後には誤魔化すように大きい音と煙で魔物を倒したことがこの場にいる全員に周知される。
ちゃんと武器の練習もしよう。ちょっと今の感触は二度と味わいたくないや。そんな感想が出てくる時点でこの世界に染まっていることは確かだった。
お読みいただきありがとうございました。