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裏稼業の護衛なんてこんなもんだと思う

引き続きデテゴ視点です。

お楽しみ頂けると幸いです。

「貴族のものを自分のもののように扱うなど許されはしないぞ!」


あ~、うるさい。あれの相手は誰がするんだ。横を見てみると、一見笑顔だが全く笑っていない目と会話する。

断固拒否……俺がやるのかよ。めんどくせぇ。


「はいはい。もうお前は貴族じゃないの」

「なんだと!?」


話を聞くつもりはあるのか。言葉が通じるならまだマシか?


「お前がここにいる、今は坊主になっているこいつらをたきつけて獣人をさらおうとしただろ」

「俺がやった証拠はどこにある?」

「はぁ。なあ、どいつだ?」


打ち合わせ通り、元ボスが睨み殺すように一人の男を指す。


「そこの青髪のやつだ!」

「ってことだ。その必死に隠れようとしている青髪に黒がかっているやつをこっちに出してくれよ。そいつから獣人の人さらいを依頼されたという証言だ。聞いただろ?」

「そのハゲが何だというのだ!」

「失礼なこと言ってやるなよ。お前らの被害者たちでもあるんだぞ?獣人をさらおうとした実行犯のボスだよ。今は黒幕を暴くために立派に社会奉仕に目覚めた気の良いやつらだよ」


過去の罪もあるが、まあギリギリ踏みとどまっていたのが幸いしたな。戻れないラインのやつはザールの前には二度と立てないからな。


「なんだと!?わざわざ罪を消したやったのに…!?恩を仇で返すなど、俺様に対しての感謝と敬意は無いのか!!」


なんで敬意なくなったんだっけ?あ~、無罪でうろついてたらイレブンに殺されるかもしれないって思ったんだったな。


「今の発言もアウトだ。これで俺たち全員が証言者だ。冒険者組合に正式に登録している冒険者が犯罪者だと連れて来て、本人たちも罪を認めた。それなのに自分たちの保身のために無罪放免にするなど王国の法と照らし合わせてもあり得ない」


口をパクパクさせている。何だ?何が言いたいんだ?


「まさかバレているなんて思わなかったそうですよ」

「だから、なんで、わかるんだよ!」

「見れば分かるじゃないですか」

「分かんねぇよ!」


びっくりトンデモ人間はこの際置いておく。


「自覚が無かったとしても関係ない。主にお前が父親である領主にも無断で無罪になんてするからこんなことになってるんだ。もう一回言うぞ。お前が原因でお前の元家族たちは貴族であることをやめた。お前が原因でお前の父親と兄は貴族位を返上した。お前がどんな裁きを受けることになってももう庇わない、だとよ」


ようやく静かに受け入れるようになったか?


「この馬車は引き取り先がまだ決まってないから借りさせてもらってるんだ。絶対にお前が食いつくだろうからと残しておいて良かったよ」


これで完全に最初の勢いはなくなったようだ。俺の言うべきことは終わったぞ。顔を見ると頷いてザールが前に出る。


「では、ここからは僕の番です。ユーフラシアの商人組合の代表として来ています。あなたたちの荷馬車に積んでいる荷を改めさせてもらえますか?」

「なんだと!ダメだダメだ!勝手に触ろうとするな!」


はっと意識を取り戻して三男は強硬に主張するが、周囲にいるのは腰巾着たちは腰が引けている。全員が商人だ。少し持ち上げるだけで自分たちを優遇してくれるからと自分の親たちから派遣されてきているやつら。もはやどう判断して良いのか分からないようだな。


迷うだけ無駄なんだよな。ユーフラシアにお前らの帰るところは無いぞ。近隣の町から来ているやつらはまだギリギリ残っているかもしれないけど。あと3日くらいは。


「では、こちらの護衛の方々にお願いしましょうかね」

「そうだ!護衛だ!出ろ!こんな時のための護衛だろうが!」


おっ!ようやく戦闘か。少しは強い奴がいると思ってたんだよな。


「あ~。残念ですけど、この場で護衛をやめさせていただきます」


注目していたのは後ろにまとまっていた完全に護衛ですと主張している奴らだったのだが。

声を出したのは荷馬車の御者をしていた年配の好々爺然としていた男だ。さっきまでは話の成り行きをおろおろと慌てたように見せていた。見かけに合わない若い声で返事したかと思うと三男の横に立っていた。かなりやるな。身のこなしとしてザールのところのやつらと良い勝負するんじゃないだろうか。


「これ以上あなたに付いていたところでもう稼ぐことは出来なさそうですから。積み荷も代金としてもらって行きますね」

「デテゴ気を付けなさい。彼は老人であるとしか把握していませんでした」

「っち!不測の事態とはお前にしては珍しいな」


護衛と聞いていたのはちゃんと馬車に乗っているが、御者の爺さんが先頭切ってくるのは想定外か。まあこんなこともあるか。それに。


「では、馬車を乗っ取って全てもらって行きましょう。何、その犯罪者の坊ちゃんと周りに群がる商人のなりそこないは全員置いていきますから。こちらは僕らが有効活用させてもらいますよ」

「逃げられると思ってるのか?」

「曲がりなりにも人数は揃えてきたようですね」


最初から武装してきているから武器を抜くだけ。魔法を使えるやつはすぐにでも発動できるようにしてある。坊主たちも荒事向きの性格だ。今更気が引けるとかもない。


「だったらそれを上回る手勢を用意するとしましょう」


上着の中に手を入れると袋を取り出した。瞬間イレブンに聞いた話を思い出す。


「まさか!」

「そのまさかです!」


歪んだ笑みを浮かべたところまでは確認できた。そして何かを投げる動作であたりに何度も投げつけていく。そして土埃と共にどんどんと数を増やしていく。


「全員下がれ!」


その言葉を聞いて一旦距離を取る。その間に一旦出尽くしたようだ。まだこれから増えるかもしれないことだけは注意しておこう。


「ゴブリン、ホブゴブリン、オークも何種類もいるぞ」

「武器をしっかり持っている!陣形に注意しろ!矢に気を付けろ」


冒険者たちが注意事項をざっと言ってくれる。ザールは放っておいても護衛がいる。坊主たちも何とか生きて帰さないといけないからな。


イレブンが言っていたな。黒い魔石を媒介にして魔物を召喚するやつがいると。しかし聞いていたやつよりも召喚した数が段違いだ。イレブンの捕縛した奴は合計10匹と言っていたが、どう見ても数十体はいる。強さも弱いのから強いのまでしっかりと別れているが、陣形を取っているのが面倒だ。強い奴が壁になるために前に出てきているし、弱くても魔物だ。放っておくわけにはいかない。


「最近の邪人騒ぎの原因はお前か」

「そうですね。そこまで広まっているとは知りませんでした。金払いが良くて引き受けたんですが、あまりに暇な護衛でして、刺激が欲しくて冒険者たちに少し遊び相手になってもらっていました。有名になっていたのなら少し控えさせてもらいますよ」

「外道な!」

「冒険者に手を出して無事で済むと思うなよ!」


冒険者からの声にも堪えた様子はない。


「その言葉は僕には誉め言葉か応援にしか聞こえませんよ。さて、積み荷はどこか別のところに持って行きます。あ~。お気づきでしょうけど。あなた方が動いたらまず標的はそこの親不孝者とにけしかけますから。距離を取ってくれたおかげですぐにかばえる位置ではなくなったのが残念でしたね」


その言葉を合図に向こうの乗っていた馬車3台に向こうの人員がバラバラと乗っていく。方向転換して来た道を戻るような状況になる。


「おい、デテゴ!逃げられるぞ!?」

「このまま放っておいて良いわけ!?」

「ザールさんも何も言わなくて良いんですか?」


そうか、こいつらには言ってなかったな。


「何も心配しなくていい。あいつらは絶対に逃げられないから」


それだけ言ってなんとか我慢してもらう。冒険者たちは半信半疑のようだが、坊主たちは何となく察したか少し顔色が悪い。まあ俺もどんな手段を取られるのか分からない。あいつの出来ることは毎日増えていくから予想がつかない。


「それではまたどこかでお会いしましょう。さようなら」


一番後ろの馬車に乗ってわざわざ腹の立つ挨拶をして去って行く。馬車が見えないところまで進んだが、邪人系の魔物はまだ残されているし、あの疫病神たちも腰を抜かして少しも動かない。不意に口笛の音が響くと、魔物が反応する。


「動いたぞ!」

「おい!お前ら!助けろ!」


口々に助けを呼ぶ。ここまで何もないとは思っていなかったので、俺も初動が遅れた。慌てて駆けだす。イレブン?どうしたんだ?見捨てたのか?


邪人の最初の攻撃が加わりそうになった時、何か壁に当たったような音がしてホブゴブリンの持った剣が空中で止まる。それどころか剣が欠けた。


「なんだ?ありゃ」

「言ってる場合か!殲滅するぞ!」

「全員!攻撃開始だ!」

「おお!」


その言葉を皮切りに戦闘を開始した。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


まあ俺と手練れの冒険者パーティ1つ、坊主たちも人数は多い。数十体くらいなら人質の心配が無いならすぐに片付けられる。


俺ならどいつもほぼ一撃で倒すことが出来る。乱戦に気を付けるくらいだ。一応証人だからな。どいつも馬鹿どもを背にして守るように立ち回った。


しばらくして全て片付いたあとに確認したが特に大きなけが人も出なかった。そうなると自然と話題は気になったことへと移っていく。


「最初の剣が欠けたのは何だったんだ?」

「何も見えないところに壁があるように見えたよ」

「…それって『結界』ってやつなんじゃ…」


いつの間にそんなことまで出来るようになったんだ?俺も話にしか聞いたこと無いぞ。あいつは…。


そんな話が出ていた時、ある方向から凄まじい音が聞こえた。


「今度は何だ!?」

「やつらが逃げた方向から聞こえるよ!」

「なんだ?雷でも落ちたのか!?」


やっぱりまだ何かやりやがった!


「ザール!この場は任せるぞ!」

「はいはい。デテゴが行く必要も無いと思いますけどね」

「どちらにしても馬車を運ぶ人手は必要だろう!」


それが建前だってことは分かってる。どちらかというと何が起こっているのかを見に行ってみたいという気持ちの方が強い。


護衛と見張り、馬車を動かすための人員を残して、俺と冒険者パーティと坊主たちの一部を連れて先へと進む。何が起こってるんだろうな。


「おい。デテゴ、お前何か知ってるんじゃないのか?」

「別に何も知らんぞ」

「嘘つけ。割と表情に出てるぞ」

「言ったところで見ないと信用しないと思うぞ」


こいつらなら理解した上で黙っていてくれるだろう。そういう選別をしたし。しかし表情に出てたか。気を付けよう。


さて、イレブンは何をしてるんだろうかな。


「馬車の準備出来ました!」

「よし、追いかけるぞ!」

お読みいただきありがとうございました。

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