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もう1匹が合流、そして蜂が光る

昨日ブクマもPVも伸びました。ありがとうございます。今日もお楽しみ頂けると幸いです。

ちょっとは気分もスッキリしたかな。ジジイの頭を持ち上げて叩きつけた顔を確認するが、スゴイことになってる。ま、まあ呼吸はしてるから生きてるよな。

強制的に顔面を叩きつけてるからな。鼻は折れてるし、血まみれだ。でもいいや。これからのことを考えればまだマシだ。

獣人たちはデバフや状態異常はともかく、立ち合いでの不意打ちは嫌いだからな。狩りの時は許されるけど。正々堂々と戦いたがる。


知ってか知らずか獣人たちに不意打ちで昏倒させてその上でボコボコにしたもんな。


「自業自得だし、知~らね。ザールさんとこの人たちが情報絞るまではたぶん生きていられるよ。…聞こえてないか」


頭を持っていた手を離すとまた顔面から落ちる。


あ、帰る前に荷物を剥いでおこうか。とりあえずフレンドビーの巣となんか魔石っぽいのを撒いてたからそれは最優先で没収しよう。

現場にはフレンドビーの巣があまり残ってなかった。このジジイが持ち去っていたはずなんだけど、巣が入りそうな大きなカバンはないな。


「マジックバッグでも持ってるのか、な?」


やりたくは無いがローブを剥いで、身に付けているものを調べよう。少なくとも身に付けているとは言えない状態にしておかないと。

目当ては袋だったのですぐに分かる。中に手を入れても何が入っているか分からないけれど、フレンドビーの巣と念じると一部だけ掴むことが出来た。

出して見ると確かに巣だった。残骸と言った方が正しい状態だったが、間違いない。これは俺の方で回収していこう。


入るのは怪しかったけど、アイテムボックスに入れたら入った。ややこしい状態になっていると思ったが、詳しく考えたら負けだと思ったので考えるのはやめておいた。

あとは何らかの価値のありそうなものも全て没収した。装備品、特に効果の無いただの貴金属の飾りもあったがこれらも全てアイテムボックス行きです。


ある程度の処置が終わったところでどうやって運ぶかを考える。背負いたくは無かったので、戦闘の余波で倒れた木を一本選んでその上に縛り付ける。

寝てようが起きてようが関係ない、ジェットコースターを味わっていただこう。


そんなときに何か震える音が聞こえた気がした。


「ん?」


幻聴でも無さそう。実際に聞こえるのは間違いない。でもいま気が付いたくらいだからすごく遠くから聞こえるのもあるし、どこか弱弱しい感じがする。

どこから聞こえるかを探してみると、音の出所は戻ろうとしている方向だ。しばらく待っているとハッキリと聞こえてきた。虫の羽音だ。


飛んで来たのは、1匹のフレンドビーだった。


「お前、この巣の生き残りか?」


呼びかけてみると肯定の意思が返ってきた気がする。あの状況から生き残り、巣を追いかけてここまで来たものがいたのか。追いついたところで殺されるだけだっただろうに。その強い意志に驚きを隠せない。


「ただ、残念ながらお前の巣の仇はもう捕獲してるんだ。攻撃したところで死ぬなら無茶なことはするなよ。2匹だけだけど戻れば生き残りがいるからな」


そう言うとそうっと近づいてくる。思わず手を出すとその上へと乗ってきた。傷は見当たらないが、エネルギーが不足しているんだろう。


「お前のところのじゃないけど、少しだけハチミツ持ってるから食っていいぞ」


アイテムボックスから取り出すと小皿の上にハチミツを出す。手の上に乗せながらでも歩けるので、ジジイを括りつけた丸太は風魔法で浮かして移動を始める。

歩いてだと時間がかかり過ぎてしまうが、この3匹目の生存者が元気になるまではゆっくり進もう。それから急げば大丈夫だろう。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「イレブン!」

「戻ったよ」

「良かったのよ」


しっかりと夜になってから帰還した。迎えてくれたのはミケンダとメラノさんだった。ちょうど見張りが二人の番だったそうだ。

遅くなったのは念のためフレンドビーの巣があったところにも寄ってみたが、他に生き残りは見つけられなかった。付近に獣人たちも見当たらなかったので村へと帰ってきた。


「フレンドビーの生き残りたちはどこにいる?」

「リセル様の家を用意してるのよ。時々みんなが掃除してるからきれいだし、今は知っている同士の方が良いだろうと思って」


すごい良い心遣いだと思う。メラノさんの考えたのかな。懐が深いな。


「分かった。ありがとう、メラノさん」

「隊長の案なんだけどね」

「そ、そっか。じゃあ行ってみるよ」

「なんかあったんすか?


ハチミツを食べた後に一度眠り、巣のところで弾かれるように起きた。今は再度動かなくなってしまっている。常時『手当』を発動している。


「うん。もう一匹生き残りがいたんだ。一緒にいる方が良いと思って」

「あぁ…、それはその方が良いっすね。行ってあげてくださいっす」

「そうするよ。今回の犯人のジジイなんだけど任せて良いかな。俺が街へと連れて帰るから明日の朝まで頼みたいんだけど」


途中で目を覚ますことが無かったので何度か脈拍を診たが、まだあったのは死んでは無い。狸寝入りだったらどうしようかなと思ったが、まあ関係ない。

ザールさんが持たせてくれた魔力封じの印が仕込まれた縄で縛ってある。魔法は使えない。荷物も取り上げた。体はダメージを与えてから回復していない。ついでにちゃんと言い含めてある。逃げたら氷漬けか、雷を遠慮なく無限に食らわすからなと。

うっすらと汗をかいたので、逃げることは無いだろう。そうでなくても傷だらけの体を回復する手段も無いし。


「了解っす。預かっておくので任せるっす。メラノさん誰か呼んでほしいっす」

「任せるのよ」


こっそりとミケンダと話す。


「頭を下にしておくと頭に血が降りてきてヤバいらしいぞ。一種の拷問らしい」

「獣人はそんなことしないっすよ。こいつの今後を考えるとそういうのに慣れさせる方が良くないんじゃないっすか」

「それもそうか。じゃあ逃げそうになったら好きにして良いからな」

「当たり前っす。同胞を傷つけたやつを逃がすほど甘くもないっすよ」


ミケンダから寒気を感じるのは初めてだ。なんか奥の手でもあるのかな。まあいいや。引き渡して、2匹の元へと向かう。


しかし、俺の中で隊長の謎がまた一つ増えてしまった。無骨なだけではなくてそんな寄り添った考え方も出来るのか。他にも隊長と慕われるだけの理由が何かあるんだろうな。


リセルの家が見えたところで、手の中を覗く。寝てるのか起きてるのか分からないけれど声はかけよう。


「よし、起きてるか。話してた通り生き残りがいるぞ。今日はここにいて構わないからな」


反応が無いことに少々迷いつつ、扉を開ける。2匹は扉を開けた瞬間にこっちを見た。その瞬間手の中にいた1匹が飛び立ち2匹のところへと飛んでいく。


自分がここにいるべきではないなと判断して、ハチミツと水だけ置いて外へと出た。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


翌日、ジジイが逃げ出すことも無く朝を迎えた。何かあったら困るので、俺はリセルの家の前で野営した。村の中だから特に大きく問題も無い。何かあったときに動けるという保険も含めていたし。

リセルの家の中を覗いてみると既に3匹も起きて室内を飛んでいた。


「おはよう。大丈夫か?」


返事が返ってくるわけでは無いが、何でも心掛けが大事だ。


そうすると3匹が何か俺の周囲をぶんぶんと飛び回る。これは?


「何か言いたいことがあるのかな?」


なんかそうっぽいな。変にボケなくて良かった。しかし何だろう?3匹とも小皿にとまっている。


「追加のハチミツが欲しいのか?」


これは違うみたいだ。お代わりでないなら、他に俺が持っているハチミツ…となると…?1つ思い当たった。


「お前らの巣のハチミツか?」


あ、正解みたいだ。


「家の中で出すのも何だから外でやろう。外出るぞ」


仕切り直してアイテムボックスから外に出す。改めてみるとかなり叩き壊されてしまっている。3匹も飛んでいくと巣の中へと飛んでいく。

何かすることがあるのだろうと思って見守ることにする。なぜかここで見守っておかねばならない気がしたからだ。


待つこと10分。


3匹が外へと飛んで来た。それぞれが自分の体よりも大きい巣のかけらを持って飛んで来た。俺の前で3匹並ぶと示し合わせたように汲んできたハチミツを飲み干す。


その瞬間、3匹の体がそれぞれ黄、赤、青と光を放った。治まった頃には体は一回り大きく、また見た目がそれぞれ全くバラバラに違っていた。


≪主殿とさせていただきたいのですが宜しいですか?≫


真ん中のフレンドビー(?)から声が聞こえた気がした。

お読みいただきありがとうございました。

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