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追いついて戦闘開始、次回終了

今日もたくさんの方に読んでいただき感謝しております。お楽しみ頂けると幸いです。

皆と別れて森の中を踏み入って進んでいる。ちゃんと途中で痕跡を確認して追いかけているからこの先にいるのは間違いないはず。追跡は初めてだから自信は無いけど、まあ大丈夫だろう。

しかしスキルを素早さ重視で上げたから速い。同じ力で踏み込んでいるのに進む距離が違う。速すぎて少し寒いわ。頭が冷えたりはしないんだけど。


よし、走るのにも慣れたから相手について考察しておこうか。無防備に仕掛けるのも危ないからね。

疑問点は見張りとして残っていた獣人たちが為す術なく傷だらけになっていたこと。人質を取られたわけでもないなら反撃の1つくらいはしたはずだ。なのに人によっては致命傷に近い傷を負わされていた。


反撃できていないから向こうは無傷だ。証拠に向こう側の血が落ちていなかった。俺が見つけた足跡や、隊長が気づいた臭い以外の痕跡がない。まだ何か見破らないといけないことがあると考えておこう。

面倒なことを考えずに力押しでいけたら楽で良いのにな。


以上で考察終了。材料が無さ過ぎる。証言取れたら良かったけど、まだ目を覚ましそうになかったから仕方ないね。


でも、段々近づいて来ているみたいだ。新スキルの『追跡』で追いかけているからこのまま進んで良い。それとは別に良く分からない何かから、こっちだよって呼ばれている気がする。

まあ本当は分かってるけど。1回も直接会ったことはないのに俺を味方と見てくれているのかな。ごめんなぁ。死んだら終わりなのにこんなことになってしまって。

俺に泣く権利があるなんて思えないから一滴だって目からこぼさないように我慢する。そう言い聞かせて再度足に力を込める。



進んで30分もしたくらいだろうか。速度にも慣れたときに『索敵』に対象を捕らえた。移動速度が遅すぎる。すぐにそいつの進行方向を遮る形で着地する。


「ストップ。フレンドビーの蜂の巣を返してもらう。それから色々と話をしてもらう」

「なんじゃ、お前は。恐ろしい速度で近づいてきおって。獣人かと思ったわい」


追いついた対象は茶色のローブを被っていた。ローブの中には何が入っているか分からないけれど顔だけは見える。

皺が多くはいったおっさん、どちらかというとジジイという方が近い。あまり良い人生を歩んできてはいないな。皺の入った笑顔に和みを感じない。


「それに何の話だ?儂はこの辺りで魔物を討伐していただけだぞ?」

「言い訳はいらない。フレンドビーと獣人をいたぶったことは分かってる」

「お前の思い込みでは無いかね」


ニヤニヤ笑いながらか。隠す気はなく、自覚有りの反省無しか。有罪確定だね。


「じゃあとりあえず黙らせるか」

「話を聞くのではないのか!」


反省か悔恨か悲鳴でなければ聞くわけが無い。俺の『嗅覚強化』に3つの匂いが嗅ぎ分けられてるんだ。ハチミツ、獣人の血の匂い、それに虫の体液の匂い。この3つが揃っていて無関係なわけあるか。


「今から洗いざらい事情を説明するなら少しだけ選択の余地をやるよ。説明してから地獄に落ちるのと、地獄に落ちてから説明するのとどちらか選ばせてやる」

「はっ。何らかの確信があるのか。ならば仕方ない。では選んでやろう!」


そう言って手に持っていた杖から魔法が発動する。同時に持っていない方の手をローブの中に突っ込む。すぐに手を出したかと思ったら何かを辺りに撒く。


「地獄に落ちるのはお前じゃ!」


じじいが叫ぶと杖から白光があふれ出す。光そのものに攻撃性能は無いようだけど、眩しいので直射を避けるように腕を前にかざして一時的に目を細める。

光が落ち着いて周囲を確認すると、じじいが見当たらなかった。


「お前…」


代わりに目の前に立っていたのは前世での叔母だった。自然と拳に力が入った。嬉しくてたまらない。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


【ジジイ(このあとぐちゃぐちゃに殴られます)視点】


『それ』は突然進む先に現れた。一仕事を終え、これからの追加報酬でどんな贅沢をしようかと考えていたところに水を差されて不愉快だ。


「ストップ。フレンドビーの蜂の巣を返してもらう。それから色々と話をしてもらう」

「なんじゃ、お前は。恐ろしい速度で近づいてきおって。獣人かと思ったわい」


巣のことも知っていてまっすぐに追いかけてきたのだろう。獣人とも知り合いなのだろう。変わった人間だ。それに関しては他人のことを言えたものではないが。

獣人だと言っても動揺も無いということはワシがやったことに関しては知っているのか?


いや、それはない。


しかしワシの前に無防備に現れるということは、先程の獣人たちから話は聞いていないということだ。馬鹿め。それだけでも聞いておけば悲惨な死が確実な死くらいにマシにはなっていたであろうに。

とりあえずは気を逸らすか感情をかき混ぜるくらいはしておくとしよう。


「それに何の話だ?儂はこの辺りで魔物を討伐していただけだぞ?」


怒りの感情が増幅される。これくらいで感情が乱れるようでは若いな。新たに現れた生贄に笑いがこみ上げてくる。


「言い訳はいらない。フレンドビーと獣人をいたぶったことは分かってる」

「お前の思い込みでは無いかね」


戦闘を仕掛けてくることは見え見えだ。ならば迎撃させてもらうことにしよう。自身の二つ名とも言える魔法の展開を準備を始める。


「じゃあとりあえず黙らせるか」

「話を聞くのではないのか!」


思っていたよりも短気じゃな!感情を剝き出しにしてくれる輩の方が手玉に取りやすいがの。


「今から洗いざらい事情を説明するなら少しだけ選択の余地をやるよ。説明してから地獄に落ちるのと、地獄に落ちてから説明するのとどちらか選ばせてやる」

「はっ。何らかの確信があるのか。ならば仕方ない。では選んでやろう!」


若造は両手に魔力を纏わせて武器は無し。魔法も使うのかもしれんが、徒手空拳がメインか。直接攻撃のみで生きていこうなどとはまだまだ若いな。話している間にこちらの準備は完了しておる。


「地獄に落ちるのはお前じゃ!」


ワシの得意とするのは『呪幻魔法』、相手が一番感情を抱いているものを目の前に見せる。大体が親兄弟もしくは恋人のように幸せなものを思い浮かべることが多い。

見ている間は体の自由が利かなくなる。設定すれば幻視している相手が殺そうとしてくるようにも出来る。大抵は何が起きたか分からずに精神的に死ぬ。


こいつの見た目を信じるなら血縁関係を幻視しているのじゃろう。戸惑って固まっておる。


ではもう一つの武器、『召喚魔法』を使って魔物を召喚する。


「出でよ、ホブゴブリン!ブラックウルフ!」


発動と共に5体ずつ召喚する。まあ若造1人相手には十分すぎるか。

精神的に束縛している間に、肉体は召喚魔法で呼んだ魔物に殺させる。元から召喚魔法の素質はあったが、自分で手を下す方が楽だったから若いうちは自らの手を使っていた。

が、年齢による衰えで筋力が弱まった。仕方なく闇稼業の下請けを半分辞めるつもりで休業し、試してみたら存外習得が早かった。


「やってしまって構わんぞ。獣人どもと違って殺してしまって構わん」


喜びの声をあげて飛び掛かって行った。召喚した魔物とは固有契約を交わしているから付き合いも長い分、多少感情が分かるようになった。

先程の獣人はいずれ奴隷にするからと厳命され、無理に殺すのを抑えたことがストレスだったようだ。喜んで近づいていっている。くっく、薄汚い魔物風情でも付き合いが長いと面白く感じるものじゃ・


放っておけば勝手に証拠隠滅じゃ。呪幻に囚われている間は体の自由は効かん。無防備なところを襲われてはどれだけ強くとも赤子の手を捻るよりも楽なことよ。


「さて、せっかくじゃし。若者が散るところを肴に飯の休憩でもするかのう」


今までに上げてきたレベルがあるとはいえ、疲れやすくはなった。あと数時間もすれば帰還できるだろうが、出来るときに休憩はしておく方が楽だ。


「ギャッ!!」

「ほっほ。焦ってはやく終わらせては楽しくもなかろうに」


ゆっくり腰を下ろして再度顔を上げたときに既に血しぶきが舞っていた。

お読みいただきありがとうございました。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
私の魔法の使い方
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婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
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