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順調にいくこととそうではないこと

今日もたくさんの方に読んでいただき感謝しております。お楽しみ頂けると幸いです。

さて、領主のバカ息子が帰ってくるまであと4日となりました。前日は余裕を持たせるとして今日は獣人の村に行って様子見、明日は戦闘訓練としてもう一度『食材の宝庫』に行く。

というわけで獣人の村に到着したんだが、これはすごい。


「もう魔力草がバッチリ育ってるな」

「そうなんすよ。なんでなのか不思議なこともあったもんっす」

「特別なことやった?」


リセルに言ったように、何が要因となって成長したのかを掴みたいところだが。


「一応紙にまとめたのがこれっす。直接聞くならこちら、なんかやったっすか?」

「水やりは毎朝やったよ!」

「ちゃんと1つ1つ水かけたよ!」


元気にニッツとラッシーが答えてくれた。特に要素が見当たらない。ふつうに種まいたし、肥料も小魔石の粉を撒くくらいは特に変なことでもない。


「う~ん。ふつうの育て方だ。このまま育てて収穫したら同じようにもう一回育ててもらっていいかな」

「分かった!任しといて!」

「わたしもがんばるから!」

「頼むな。ありがとう。そんな2人には俺からプレゼントだ」


前に考えていたように、水やりに便利であろうジョウロを2つほど出して2人に渡す。シャワーヘッドまでは無かったから作れるようになったら自作しよう。

ひしゃくや桶で水を運ぶよりは効率良く仕事が出来るだろう。これくらいは村に持ち込んでも許されるだろう。

最初は何か分からなかった2人も、実際に水を入れて試してみると理解した。


「「ありがとう!」」


2人には状況を確認するために来てもらったし、ジョウロさえ渡せば俺の用事は終わりだ。これでお役御免と解散してもらった。宝物のように抱えて笑顔で走って行った。


これ、たまらんな。自分の財力にモノを言わせた感じがすごいが、子どもの笑顔を見るのって良いな。リセルが喜んでいた時は少し違う感じはあるが。


ん?何が違うんだ?何かひっかかるぞ。


「大丈夫っすか?」

「あ~。ごめん。考え事してた」

「この調子でいけばあと数日で通常の魔力草として採取するくらいには成長するっすね」


ボーっとしていたらダメだな。ちゃんと話を聞かないといけない内容だ。


「そうだな。俺が必要なのは葉だけだから、それ以外は自由にしてもらっていいよ」

「いや~、助かるっす。村の中で魔力草が育つってのは楽でいいっすね。魔法使う獣人が喜んでましたよ」

「なんでもそうだけど大量生産できるってのは、1つの武器になるからね。ザールさんと取引するなら作物1つだけに頼るのもマズいだろうけど」

「そうなんすよ。魔力草だけってそんなに大変なものでもなかったから余裕はあるみたいっす。他にも薬草系を育ててみようかと話しているみたいっすよ」


色々とやってみてくれ。何だろうとやろうと思えば育てられるはずだから。ソースは俺が過去に聞いた話だけど。


「全然良いと思うぞ。収穫と土づくり、種植えは頻繁で大変かもしれないけど。試作期間でモノが足りないなら魔力草のお礼に必要なものは用意するぞ。差し当たって肉を渡せるけど」

「にくって、なんすか!?」

「肉だ」


アイテムボックスからいくつか取り出して見せる。ミケンダは一瞬驚くが、すぐに落ち着いてため息交じりに指示してくれた。


「こんなところでやめてくださいよ。あの子らの家にも持って行きましょう。村で分けても良いっすか?」

「たくさんあるから遠慮しないでよ。大量過ぎて消費できないからさ。何度も言うけどこれで魔力草の代わりになるならいくらでも」

「じゃあ、ありがたく。でも価格は適正にするっすよ。イレブンと取引できなくなってから困るっすからね」

「ザールさんの教えか?」

「そうっす。好意をそのまま受け取るだけではダメだって何度も言われたっすよ。(特にイレブンが大量にものを大量に持って来た時はって言われたっすよ)」


ザールさんも良い商人だな。何も知らない村人からむしり取るような商人だっていてもおかしくないのに。でも最後の一言は向こう側を向いて何を言っているのか聞こえなかった。


「あ、せっかく来たわけですし、フレンドビーの様子も見に行くっすか?」

「もちろん!」


話をごまかされた気もするし、何考えていたかを忘れたけども。まあいいか。


それにフレンドビーのところに行こうと向かっている途中でそんなことを考えている場合でもなくなった。


「ん?なんか羽音がするぞ。フレンドビーかな」

「獣人よりも先に音に気付くとかなんなんすか」

「うおっ!顔面来た!!」


一匹のフレンドビーが顔に当たった。ダメージとか関係なく、あの羽音は反射的に恐怖を感じるし、顔にぶつかられて驚かずにはいられない。

当たってきたやつは手のひらに乗せてやる。俺だと認識したのかすぐに巣の方へと向かい、立ち止まって観察しているとこちらを振り返ってもう一度顔面に向かってくる。


「なんだ?」

「何かあったんすよ!」

「ミケンダ!判断は任せた!先に行く!」


それだけ言うとミケンダの返事も聞かずに奥の手も使用して一気に加速する。あとで聞いたら「一瞬で消えて驚いたっす」と言われた。奥の手は強いのだよ。

知らせてくれた蜂は両手で包んで何も起こらないように守る。ついでに『手当』も発動しておく。効果は微弱でもステータスのおかげでわりとしっかり回復できる魔法になっている。加速の重力に耐えられないこともないだろう。


『索敵』も常時展開して情報収集をしながら進んで、ほどなく蜂の巣に到着する。そこには、警備に当たってくれていただろうマッツを始めとする獣人たちが傷だらけになって横たわっていた。


「大丈夫か!?意識のあるやつはいるか!?」


6人もいたが全員気絶で済んでいた。いや、俺が来なかったら回復できずに死んでいたかもしれないな。目の端に映る光景も気になるが、まずは話を聞かなければいけない。

奥の手を解除して直後は気だるさを感じつつも、回復ポーションを取り出して手当たり次第に傷口にかけていく。清潔な布を取り出してその上に寝かせて傷口の状態を確認、体内の損傷も考えてポーションを特製チューブで無理矢理飲ませる。

いくら俺でも獣人の男に口移しで飲ませるなんて真似は出来ない。それだけはまじで勘弁です。いや女ならいいというわけでもなく。そんな場合じゃないな。


気絶はしているが傷も塞がり全員の無事を確認してから目の前の状況に向き合う。知らせてくれた蜂は俺が出したテーブルの上に乗り、さっきからじっと見ている。



バラバラに叩き壊された蜂の巣の残骸を。



虫に感情があるかなんて俺は知らないけど。自分の居場所を無遠慮にぶち壊されるってのは本当に言葉では形容しがたいよな。分かるよ。


ふーっと大きく細く息を吹き出す。こいつが耐えてるのに俺が怒り狂うわけにもいかないだろう。まずは生存者探しと相手の確認だ。

獣人たちに付いていた傷と巣に残された傷から考えると、爪のようなもので切り裂かれたものと鈍器のようなもので押しつぶされたような跡を確認した。敵は2種類はいるってことだ。数やら何やらは起きてから聞くことにしよう。

あとはこのままにはしておけないんだが、どうしたら良いだろうか。壊された巣は外側ばかりでハチミツの残っていそうなところは持ち去られている。そこには戦ったのか、戦うことすら出来なかったのか蜂たちが無残な姿であたり一面にいる。


自分がこの状態だった時にどうしてほしかったのか思い出そうとした。けれどどうしても思い出すことが出来ず、頭をガシガシとかいたが出て来なかった。もう素直に話しかけることにした。

目線の先には入らず、でも目線の高さだけはしゃがむことで同じ高さになるようにする。俺はお前と同じ気持ちだってことが伝わるように。蜂の顔の向きは変わらなかった。それでも横からそっと話しかける。


「なあ、このままにしとくのは、…俺がイヤなんだよ。俺のいた国では死んだ人間は火葬して弔ってやるんだ。でも蜂だからそのまま埋めるでも良いかな。どうするのが良いとかあったら教えてくれよ」


話しかけた時から顔の向きは変わらなかったが、視線は向いていると思った。複眼だから絶対に見えているはずだ。無粋か。無粋だな。

なんとなく頷いた気がしたので、じゃあ任せてくれるかと確認をとる。それにも頷いてくれた気がしたので、立ち上がって言った通りの行動を始めることにする。


蜂の巣としてはイメージの通り日陰に作られていたが、少し離れたところに花畑がある。自分たちで世話した花だから好みの蜜が取れる花なんだと思う。そこを墓にすることにした。

花が正面に広がって見える場所を決めて手で土を掘る。道具も魔法もあるけど、使うのはなにか違うと思ったんだ。数は多いけど大きさは普通の蜂よりも少し大きいくらいだ。手でやっても労働にもならない。

ある程度掘ったところでミケンダが巡視隊のメンバーを何人か連れて合流した。

お読みいただきありがとうございました。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
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