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冒険者の集う街ユーフラシア到着

本日2回目の投稿です


「もうすぐ街に到着だな」

「壁で街を囲んでいるんですか。凄い大きいですね。こんなの見たことないですよ」

「多少大きな街ならこれくらい普通だぞ。大げさだな」


街が見えたことでイレブンの胸は安堵の気持ちでいっぱいだ。デテゴの説明を聞いて、ゲームとは違うのだなと改めて感じる。

実際に門は現代にもあるほどの大きさだ。奈良にある有名な大仏のある寺の門と変わらないと言えば変わらない。壁で囲っているのは魔物が攻めてくるのだろうか。

境界から中には入って来ないはずでは無かったのだろうか。考えても分からないが、それなら聞いてみることにした。


「壁で囲わなくても、魔物は入って来れないんじゃないですか?」

「ん?知らないのか。やはり結構な田舎から出てきたんだな」

「デテゴ、失礼ですよ。イレブン君、あれはですね。街の領域を広げようとしているんですよ」


具体的に言われたのかもしれないが、ピンと来なかったのが表情に出ていたのでザールが更に説明を続ける。


「壁で囲っているのは、魔物からの防御なのはその通りです。それで一定陣地であると主張することで街として認識させるんです。そうすれば魔物が入れなくなるということですね」

「街の外側に兵士やら荒っぽいのがいるのも万が一守るのが理由だな。門兵は警備もあるだろうけどよ」

「ということはですよ。何も無いところに家を建てて暮らしていれば、そのうち魔物は入って来ないってことですか?」

「そういうことです」

「へ~」


一軒家でなぜか魔物に襲われないように町村判定されていることがあったが、そういう理屈だったかと納得した。一つの知識として覚えておこうと思う。

話しているうちに門への検閲の列に並ぶ。2人は準備があるそうで、イレブンは一人になる。


丸二日過ごしてきたが、もうそろそろ本格的にこの世界で生きていく覚悟を決めなくてはいけないなと考える。

いきなりゲームの世界に説明なしで飛ばされてしまい、辿り着いたのは危険だと国に判断されて廃棄された誰もいない村。

村を出てからの丸一日は誰にも出会うことが無かったのは思い返してみると心細かった。やはりここまで連れてきてくれた二人には感謝だ。

そう考えていると二人が外で呼んでいる。呼ばれた通りに出ると、話を聞く前に先に声を出してしまった。


「本当に助かりました。お二人とも本当にありがとうございます」


深々と頭を下げた。これで感謝が伝わるならばいくらでも頭を下げる。その上で続ける。言われた方が戸惑っているのは気が付かない。


「一つだけ、良いでしょうか」

「改まってどうしたの?」


戸惑いながらも話を聞こうとしてくれるのは二人が人格的に善に属するからだろう。それを利用するわけでは無いが伝えておくべきことは伝えておこうと思う。


「お二人とも、特にデテゴさんなんですけど。この街で危険に巻き込まれそうなので慎重な行動を取ってもらいたいんです。」

「はあ?」


両者から疑問が声や目線で向けられる。未来を知っているとは言えないから、言い訳は考えてきた。


「俺、ちょっと変わったスキル持ってまして。調子良ければですけど、周囲の危険が分かるようなやつです。それもあって気味悪がられたんですけど」


起きてから必死で考えた理由である。自分でも、それなら昨日話していた時に先に言っておけって言われてしまうんじゃないかと思った。

信じてくれるかは半々だ。表情を窺っていると信じられないとはなっているが、信じてくれないということはなさそうだ。


「お前、変わったスキルを持ってるんだな」


よし!勝った!


心の中でガッツポーズを決めつつ、思ったよりそのまま聞いてくれるんだなと若干拍子抜けしたイレブンだったが、受け入れてくれるならこのまま押し通そうと決める。

行動を制限されるのは嫌なのか、デテゴは嫌そうな顔はしているが話は聞いてくれるようだ。どちらかというとザールは乗り気だ。


「まあ良いでしょう。イレブン君は良い子ですし、今日は魔物の接近確認から討伐まで君よりも動きが速い場面もあったじゃないですか。わざわざそんなことで騙す必要があるとは思えません。信頼できると判断しても良いでしょう」

「お前がそう判断するなら間違いではないんだろうけどよ。何をするまでがアウトなんだよ」

「えっと……、危険なところには近づかないでください」

「おい、護衛って自己紹介しただろ。それに俺は冒険者もしてるんだぞ?安全なところでのんびりなんて…」

「僕も一緒にいると思って行動するようにしてください。それにしばらくは活動せずに休暇にしますよ。開店準備があるので護衛が必要なところには行く予定はありません」

「一人の時くらい好きなようにさせてほしいんだがな…」

「キミも考える時間が必要だったでしょう。しばらく大人しく考えたらどうです?」


腕っぷしではどう見たってデテゴに軍配が上がるが、パーティ内のやり取りとしてはザールの方が主導権を握っているようだった。イレブンの意見はザールの後押しで通ることになった。


(正直なところ俺にとって都合が良い展開だな。話したことも本当に信じてもらえてるんだろうか。あんまり深い関係の人は作らない方が良いのかもしれないけど。もう既に恩義を感じてしまってるしな。死ぬと分かっている人を見捨てるのも…。う~ん…)


やり取りをしている間に街の検問の列が進んでいく。多少出入りに列を作っているが、やむを得ない事情が無い限りは御者以外全員が馬車から降りてチェックされるのが慣習だそうだ。

それで外に出て待っていたのかと納得していると、さほど待つことも無く順番が回ってくる。門兵が近づいて来た。


「では身分証をお願いします」

「はい」

「ほれ」

「え?」


検問の兵士の言葉に一人だけ違う反応を返してしまったのは、当然ながらイレブンだ。


「あぁ、すいません。この子身分を表すものが必要ないくらいの田舎から出てきましてね。私が一時身分を証明するので中にだけ入れてもらえませんかね?中に入れば身分証はすぐに作りますから」

「そうか。星晶での確認と通行料だけは払ってもらうが良いか?」

「問題ありませんよ。通行料はどちらで払えばいいですかね。ああ、イレブン君。兵士について行ってください。門をくぐったところで待ってますからね」

「あっ、はい!ありがとうございます!」


こんなところで不意打ちのように入ってきた星晶という単語に反応してしまうが、まだこれくらいの使用なら問題無いのだろうと思い直す。兵器利用されているわけでもないから気にしないで良いだろう。


言われた通りに兵士について行くと入り口横の小屋に案内された。そこで案内の兵士は小屋の中に声をかけるとイレブンに中に入るように促す。

入った小屋の正面には優しそうな表情をした女性がいた。来ている服は制服なので、門を守る兵士には変わりはないようだ。他にも数人いるが、女性が手招きをしている。


「はいは~い。チェックの方ですね。こちらまで来てくださいね」

「わ、分かりました」

「では、この星晶に手を当ててくださ~い」


これが星晶なのかと考えながら青い光を放っている球状の石に触れる。触ると確かに冷たい石のようだ。言われた通りに手を当てていると、女性が質問をしてきた。


「触れたまま質問に答えてくださいね。お名前は?」

「イレブンです」

「年齢は分かる?」

「たぶん15歳です」(ステータスに表示されてたし)


質問に答えると一定の白い光が明滅する。イレブンには何が起こっているのか良く分からない。


「過去に犯罪を犯したことはある?」

「いいえ」

「これから悪いことをする予定はある?」

「いいえ」(どんな質問だ?)

「…問題無しね。大丈夫よ」


噓判定機みたいなものかなとあたりを付ける。最初の光で正直に答えているときのパターンを把握し、その後の質問が本筋か。中々だますのが難しい確認だな。それと何で出来ているのかちょっと興味あるな。

しかし、検問なんてゲームの中には出て来なかった描写だし、この星晶の使い方も見たことが無いがこの世界の裁判は嘘が分かるなら少しは楽なのかもしれないと考えてしまう話だ。


「では、門はこれで通ってもらって大丈夫よ。通行料ももう払ってもらってるし問題ないわね。それじゃあ、『冒険者の集う街ユーフラシア』へようこそ」


女性の笑顔にドキッとさせられながら小屋を出る。今度は門のところまで行くと問題無いと通してもらって街の中に入ることが出来た。

入ってすぐのところにデテゴだけが立っていた。馬車とザールがいないが、先に移動しているのだろう。


「おし、じゃあ冒険者組合まで行くぞ。身分証の発行だ」

「あ、はい!」


デテゴに置いていかれないようについて行く。5分も歩かないうちに入り口の扉の斜め上に大きな看板が吊るされている建物を見つけた。


「あの看板は覚えておけよ。冒険者組合の看板だ。どこの町でもあの看板を出している建物は冒険者組合に関係しているからな。規模はその町や村によって違うが、冒険者を助けることに関してはどこも同じだ。何か困ったことがあれば行って相談すれば良いし、仕事が受けたければあそこで受注すれば良い。決まり事や何やらは中で教えてやるよ」


そう言って見た看板は大きな木の板にまず大きな盾が描かれていて、その手前には両刃剣と宝石の付いた杖が斜めに交差し、交差した点を貫くように穂先が上向きの槍も描かれている。

剣、槍、杖は基本の装備として『ホシモノ』でも割と強力なものや色んな性能が揃っていて充実していた武器だ。実際、武術スキルもその辺りから伸ばしていきたいと考えている。盾だけを持ったタンク専門のキャラクターはゲームにはいなかったが、この世界では専門にしている者もいるのかもしれない。


ゲームでは相棒とは契約できても一体だけだったし、パーティプレイって現実の友達と組むものだったから『俺』は中々出来ないことだったからなぁ。この世界では、どうなるんだろう…。


「イレブン、行くぞ~」


考え事をしていたイレブンの背中を叩いて、デテゴは冒険者組合の建物内へと後押ししてくれた。

お読みいただきありがとうございました。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
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婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
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