1週間の猶予が出来たら何する?
お楽しみ頂けると幸いです。
「というわけでごめんな。考えたけど何の神獣かまでは分からなかった」
「いや、何というか…。自分のことを知ることが出来て良かったよ」
何とも言えない表情をしてリセルが許してくれた。ステータスを覗くなんて場合によっては非常識だ!なんて言われてもおかしくないかもしれないことだった。
本来は自分で真実の瞳を使用して、自分にしか見えないそうなので覗いたところで分からないそうだ。うまく使えば自分のステータスをごまかすことが出来るな。子どもだったら大人に聞かれると素直に答えてしまうそうだが。
「ほぼ確実にだが、言ってくれたら自由にスキルを取得することが出来るぞ。何でもというわけでもないけれど。どんなのが取りたいとかあるか?」
「取得できるスキルまで分かるのか。どんなのが取れるんだ?」
実際に見ながら伝える方が良いだろうとステータスを表示してリセルを表示した瞬間に、リセルが反応する。
「わっ!ぼ、ぼくが見えるよ!」
その人のステータスは一緒に見ることが出来るようだ。そのまま試させてもらったが、俺のは俺だけ見えるしアイテムボックスなんかもリセルには見えなかった。実験終了。
もう一度リセルを表示させる。自分のステータスを確認して、少しホッとしたり触ろうとして画面が切り替わると驚いていた。俺は昨日見たので見たいだけ見るようにと自由にさせた。解説を頼まれたのでもう一度表示を上まで戻して説明していく。
「基礎スキルは大体取得できそうかな。ステータスの底上げが出来るぞ。上位スキルになると武術でも直接攻撃系はあまり取れなくなりそうだな。生産系も力仕事系よりも手先の器用さを活かすようなものならできそうだ」
「料理は取れそうかな?」
なにやら心配そうな顔で聞いてくる。気になるならさっき見ておけばいいのに。
「ほら、取れるぞ」
スキル一覧には取得可能なものしか表示されていないから、表示されているということは取得できるということに等しい。前提のスキルが無くても取得できるようになっているのはこの世界の人だからだろうか。俺の種族の変人は何か変な業を背負っているのだろうか。
説明してやるとリセルは安心してすごくニコニコしだした。何かあるのかと考えたら思いついた。
「だったらここでしばらくがんばってメディさんに料理を教えてもらえばいいぞ。腹ペコ小僧だな」
はっはっはと笑いながら頭をぐりぐりと撫でてやると一気に不機嫌になった。
「ご飯遅れちゃダメって言われてたでしょ!はやく行くよ!」
驚いて固まっている間に怒りながら先に部屋を出て行ってしまった。何が起こらせてしまったのか分からなかったが朝食の時間に遅れたら怒られると昨夜も念を押されていた。俺も追いかけて食堂へと向かった。
相変わらず朝食はおいしかった。リセルも昨日あれだけ食べていたのに朝食からしっかりと食べていた。
朝食後に一旦部屋に戻って、再度確認しておく。
「最初に取得するのは『料理』のためのスキルで良いのか?」
「う~ん。魔物を攻撃しても止めを刺してもレベルが上がらなかったからね。思い当たることをやりたいし、一旦それで良いかな」
「じゃああとこれも飲んでくれ。SPポーションだ」
壁際まで後ずさると、ゆっくりと指差す。
「……ぼくでも知ってるよ。悶絶するほどまずいんでしょ?朝ごはんを食べた幸せを失いたくないんだけど」
「大丈夫だ。メディさん監修のもと飲めるくらいには改良されている。これは自分で作れるようになっておいた方が良いぞ。俺たちの要になるものだからな」
SPポーションとスキルポイントの説明をして、これで増えるならリセルが『料理』を覚えてくれることはものすごく意味があることだと熱弁する。
その上で効果があればより伸ばせることを伝え、出していたものを飲み干してマズくないことを証明する。恐る恐る飲んで何ともなかった。一口目は味が分からなかったそうだが、飲み干して納得していた。
「さあ確認してみようか」
見てみると…、効果があった!俺と同じように増えている。
「喜んでいいのかな?」
「何言ってるんだよ。スキルが増えれば色々と出来ることが増えるぞ。やれることが増えれば何か分かるかもしれないしな」
「そう…だね。わかった。がんばってみよう!」
では、それも踏まえてじっくり時間が取りたいけれど。ザールさんの話を聞きにいかないといけないしな。行ってみるか。
「『料理』に関するスキル上げておいてね」
忘れるところだった。歩きながらでも出来るのでメディさんの店に向かいながら操作する。
「じゃあSPポーションをたくさん作らないといけないってことだね」
「そうだな。ニッツとラッシーの働きに期待だな。あとは中魔石の確保と味を何とかするための食材の確保だな。組み合わせの発見は今のところメディさんにお願いするしかないけど」
「ぼくがいずれ何とか出来るってことだね!」
俺の前で不思議な踊りを踊りをしながらクルクルと回っている。ね!のところで俺の前でビシッとポーズを決める。
「そうなんだけど、たぶんそれだけじゃダメだ」
「なんで?」
「コツコツ上げてきた人たちと積み上げてきたものが違う。だからメディさんに弟子入りするつもりで色々とやらせてもらうんだ。それこそ『調合』スキルも身に付けた方が良いかもしれないな」
「メディさんの秘密はそれってこと?」
頷いて肯定して、向かうことにした。できれば飲み物ではなく、手軽に食べるお菓子みたいに出来たら一番なんだよな。飲み物は一日飲める量に限界があるから。さすがに言わないけどこの年齢で寝てるときに事件を起こすのはイヤだ。
「まだ色々と改良する余地があるからな。頼むぞ、相棒」
「任せとけ♪」
☆ ★ ☆ ★ ☆
「首謀者は領主の三男であるアルバッド・ピューンリです。領主である父親や長男次男はシロですね。盲目的に信じていることから間接的に加害者と言えなくは無いですが」
「まあその辺りの周辺事情はお任せします。本命だけ叩ければ俺はいいです。リセルは?」
「あんまり人間の国と事を起こすつもりは無いぞ。ぼく自身に魔国と繋がりは無くてもそれくらいは分かってる」
繋がりないのかよ、と内心思ったけどまあいいや。リセルも現状打破したいみたいだし、お互いに利用する感じだしな。
「それで1週間くらいしないと戻って来ない、と」
「はい。屋敷の中にも忍び込んでもらいましたがおそらく奴隷商と繋がりがありますね。そちらと交渉に行っているのかと」
「うわぁ~…」
異世界の代名詞が奴隷がここで来るのか。ゲームにはスラムはあっても奴隷は無かったな。
「イレブン君は奴隷はダメですか?」
「犯罪者を人間扱いせずに使い潰すのは有りですけど、一般人を奴隷扱いするのはキツイです。子どもを奴隷にさせていたらもう軽蔑の対象ですね」
奴隷扱いの社畜ってのは聞いたことあるし、国によっては子どもが学校も行けずに食べ物のために安い賃金で働かされているとかは見た事があるけど、職業奴隷ってのはちょっとキツイわ。
「では、少し説明しておきましょうか。借金を返すために身分というか職業として奴隷になる者もいますよ。もちろん希望しない人を無理矢理奴隷として扱うのは犯罪です。子どもを奴隷にするのも同じくですね。境遇にもよりますが大体孤児院に行くか、どこかの家に引き取られることになります」
「じゃあ自分で責任を取れる大人だけですか?」
「そうです。それにあくまで労働です。拒否権も有りますし、国が公に管理しているので粗末に扱ったり、ましてや殺したら通常通りに処罰されます。むしろ権力者が権力を振りかざして罪を犯すと罰が厳しいときもありますよ」
黒い笑顔になってきたから、ザールさんのところが関係してるっぽいな。
「奴隷は分かりました。とりあえず1週間は時間が出来たってことですよね」
「そうですね。屋敷の全てを調べるにはもう少し時間がほしいですね」
「じゃあ、別に道具屋のザールさんにお願いしてもいいですか?」
「なんでしょう?」
一枚のメモを取り出す。アイテムボックスに入っているドロップボックスの在庫だ。『調合』に使えるものや、食材になるものは残しておいてそれ以外の全てを数を含めて昨晩に書き出しておいた。
「これらからザールさんが捌ける者は全て渡すので、その分に見合うだけSPポーションの材料とメディさんを1週間雇わせてほしいです」
「拝見しますね」
そう言ってメモをじっと見ていく。リセルも移動して横から覗いている。二人ともメモの同じところで反応があった。リセルはその後に何度も俺の顔とメモを交互に見てくる。
蟻の素材のところだろうな。ディスガイズアントの通常ドロップの迷彩殻なんて800個超えるほど持ってるからな。
「金銭のやり取りではなく、物々交換ですか?」
「今お金持ってないんで。お金が良いなら冒険者組合に持って行きますけど、全部出したら相場崩れそうなので代わりに調整してもらいたいんです。メディさんの分も含めて人件費もそこから取ってもらって良いですよ」
SPポーションの材料もご存知ですし、と理由を付け加えておく。
「まあ、良いでしょう。やりますよ。この1週間で手配可能な分で構いませんか?」
「はい。一般の方に迷惑をかけるつもりは無いので、可能な範囲でお願いします」
「それで、イレブン君は何をするんです?」
ふふふ。よくぞ、聞いてくれました!
「SPポーション限定の俺の『調合』の本気を見せようと思います!」
お読みいただきありがとうございました。




