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夕方の店先で坊主たちの土下座

お楽しみ頂けると幸いです。

「誰がそういう処理をしたかということはまだ分かっていません。正確には候補が複数いるという話なのですが。それに無罪放免にはなりましたが、彼ら全員があなたに会いたいと伝えてきています」

「どういうことですか?」

「言葉の通りです。逆にあなたは彼らに何をしたんですか?」


えっと、死ぬほどひどい目に遭わせた?村にいたときは獣人に任せてたけど。扱いは普通だったはずだ。最初以外に俺が関わったのは、ああ移送の時か。


「あれ厳しかったかな?」

「えっと、ミケンダに聞いたやつかな?ウソだと思ってたけど」

「多分そうだと思う。上空の高所にいかだを浮かべて運んだくらいだね」


サティさんが固まる。えっとリセルはまだ反応がある。どういうことかピンと来ない。


「イレブンの世界はどんな人間でも自由に空を飛べたのか?」

「空を飛ぶ大きな箱というか船があったな。飛行機って言うんだけど。お金さえ払えばだれでも乗れるぞ」

「ミケンダからは、いかだが豆粒みたいな小ささになっていたと聞いたけど本当?」

「そうだな。そんな感じだったと思う」


思い出してみるが、どうせ死ぬことは無いみたいな感じで調子に乗ってたので特別待遇にした気がする。俺自身ももう少し出力が大きい状態にならない限りは飛びたくない。

今更だけど、肉眼で見てただけだからな。乗り心地とか知らんし、上空の風とか強いらしいけど落ちないようにしただけだからね。寒いとか突風で吹き飛ばされそうになってるとかそこまで俺は責任持てないよ。

リセルがものすごく大きなため息を吐く。


「それはどれくらいの高さになるの?」

「俺も飛んでみないと分からないけどかなり高いんじゃないのかな。少なくとも俺はイヤだな。もう少し安全対策をしてからにしたい」

「それが怖かったんじゃないかな」

「そんなことでか?」


人並みに高いところは怖いけど、過剰過ぎないだろうか。


…いや、待てよ。高層建築とかテレビで見慣れている俺とこの世界の人間との間隔は違っているのかも?


「この世界の建築物ってどれくらいの高さですか?」

「ぼくは知らないよ」

「それはわたくしがお答えしましょう。わたくしの祖国の王城で6階です。この国はそれを超えると聞いていますが、詳しい高さは存じ上げませんわ」

「あとは、空を飛ぶ方法ってあるの?」

「イレブンがやったみたいに風魔法のゴリ押しくらいかな」

「鳥の大型魔獣や飛竜などをテイムしてその背中に乗るというのは聞いた事があります。それでも最初はかなりの恐怖を伴うと聞きます」


耐性の有る無し以前に、聞いた事も見た事もないっていうよりも、想像したことすら無い人たちにいきなりスカイダイビングに連れて行ったようなものか。

う~ん。凄まじい鬼畜っぷりだな。それは人生観変わるかもしれない。高いところから落ちると人生観変わるって聞いたことあるしな。


よし、結論が出たな。


「完全に俺のせいです。ごめんなさい」

「村出た時を見てたけど、そのときはそこまで高くなかったよね?」

「森の木に引っかからないようにってのだけを気にしてたからな。森を抜けて少ししたらずっと同じ上位で飽きてさ。興味本位でどこまで上がるか試してみたくなったんだ。俺、凧あげとかやったことないから似たようなもので試してみたくなったんだ」


(分からない単語が出てきてますが、この人の感覚だとまだ遊び感覚ですわよね。万が一、拷問のレベルまでやらせるとなるとどんな方法が出てくるのでしょうか)


何を考えているのか分からないけれど、サティさんが恐怖感を抱えた目で俺を見ている。汗を拭くのにハンカチを使うあたり、さすが貴族のお嬢様だ。


「貴族のやり方も中々ひどいものがあるのはわたくしも貴族の端くれとして存じておりますが、店の前で正座した成人男性が20人以上も居座られては非常に迷惑です」

「それは俺のせいではない気がします!」

「正座は違うかもしれないけど集まってきた理由はイレブンのせいだというのはぼくでも分かるよ」

「味方なしか!あ、ザールさん怒ってます?」

「いえ、さすがのザール様も正座軍団に同情していました」

「あのザールさんが同情するレベルだったのか!」


改めて自分のやったことの恐ろしさを痛感する。


「ミケンダとメラノさんは何も言ってなかったよ?」

「彼らは前を向いて走っていたのではないでしょうか」

「休憩取るときにどこに行ったのか見上げて、何かの間違いかと思ったって言ってたよ」

「うん…、そっか」


そう話しているうちに順番が回ってきたので初回入門のリセルのチェックについて行く。特に問題は無いように思ったが、視線がいつもと違うことだけが気になった。これは恐怖と警戒?


「取り調べ内容は憲兵を中心に広まってます。伝聞の方々は本当かどうか疑われていますが、あなたの実力を見抜ける人には本当だと確信を持たれています。デテゴ様とかですね」

「気に入らない奴を誰彼構わず飛ばしたりしないからね。すっごく集中しないと出来ないんだからさ」


本当は『連魔』のレベル上げてもう少し違う種類の魔法も取得したらもっと色々できる。拷問にジェットコースターならぬ魔導コースターを開発してやろうか。コース内容は完全に俺の気分です。2分で気絶をお約束!みたいな触れ込みを作ってやろうか。


「本当は中に入ったらリセルの身分証作らないといけないけど、そんな時間ないよね。もう日暮れだし」

「そうですね。冒険者組合にお勤めのデテゴ様、商人組合に顔の効くザール様の観察下にいれば良いのではないでしょうか。門もこうやって通ることが出来ているわけですし」

「じゃあ、メディさんのお店に行こう」

「では参りましょう」


元とはいえ貴族で金級冒険者のサティさんに先導してもらえるなんてすごいことだよな。歩きながら初対面の二人も軽い自己紹介はしておく。


「ねえねえ、メディさんって人間は料理が上手なんだよね?」

「話聞いた感じではすぐにご飯食べられるかどうか分からないよ」

「え~」


頬をふくらませるんじゃない。突いて空気を抜くと余計に怒られた。子どもの反応なんてこんなものだよな。


「お話は男性方にお任せしてわたくし達は食事をいただきましょう」

「えっ!?」

「やった~」

「わたくしも色々とリセルさんのお話をいろいろと聞いてみたいですから」

「うん、仲良くしてね!」

「ええ、もちろんですわ」


年上のお姉さんの色香に惑わされてるな。今から会う人たちは超が付くくらい美人だが、既に人妻が確定しているぞ。好きになったところで枕を涙で濡らすことは確定しているからな。

そういうことを言わないでいることも大人の優しさかな。一人で結論を付けて歩いていると、角を一つ曲がれば到着というところまで来ていた。


「心を落ち着けて見るようにしてくださいね」

「「はい…」」


サティさんの妙な迫力に言葉少なく答える俺とリセル。ごくっと唾を飲み込んで角を曲がる。こっ、これは!


頭を坊主にした成人男性が横二列に並んでこちらを向いて正座している。うわ、関わり合いになりたくない。隠れようにもいつの間にかサティさんに掴まれている。くそ!リセルだけ逃げないようにと捕まえる。

サティさんが手を振って合図したことで俺の到着がバレる。当然ながらデテゴが店の前に立っている。窓から家の中にメディさんとザールさんが見えた。


「裁きを受けずに卑しくもお天道様の下に出てきてしまいました。平にご容赦を!!」

「「「「「「「「「「平にご容赦を!!!!」」」」」」」」」」


これ営業妨害で訴えられたら負けるよね。絵面がひどい。

お読みいただきありがとうございました。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
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婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
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