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この会話は走りながら行われています

お楽しみ頂けると幸いです。

「とりあえず理由くらいは説明してくれよ」

「ん?なんの?」

「ごまかすなら今からでも村へと置いてくるぞ」


相変わらず肩車で乗せて走っている状態だ。獣人の村の村長という肩書が名前だけというのも納得するほどリセラの身体能力は低かった。これでよく囮を引き受けようとしたな。初めて会ったときに間に入らなかったら確実に捕まってたな。


ただ、何の理由もないのに村を出るほど無責任でも無いように感じている。あのときにはニッツとラッシーを逃がすために一人犠牲になろうとしていたのだから。

見かけはただの子どもだがそれ相応に責任感はあるとは思っていたが、言った通りしっかり理由を説明しないなら連れて行く理由はたぶんない。


「さて、引き返すか」

「あ~、ごめんなさい!ウソです!話します!」

「一緒に行くなら一蓮托生だ。俺は仲間になった人は絶対に守りたい性分みたいだからな。でも隠し事はしても良いけど、嘘だけは言わないでくれ。それがほぼ唯一の条件だ」

「他には条件あるの?」

「俺も色々と変な人間だからな。これはするな、とかいう条件はこれから擦り合わせよう」

「…うん、分かった」

「じゃあ時間がもったいないから走りながら聞くから話してくれ」


もう一度進路を戻すと『風壁』で声が聞こえやすいように状況を整える。


「まず走らなくても空飛ぶいかだを使えばいいんじゃないの?前は使ってたんでしょ?」

「体を動かせるときは動かしたいからな」

「朝から結構走り回ってたと思うんだけど…?」

「いいから早く話せよ」

「わ、わかったよ。わ!なななななん」

「暴れるなよ。走りにくいだろ」


肩車状態では話を聞きづらかったのでお姫様抱っこに変更する。男にするには恥ずかしいかもしれないが、我慢してもらいたい。


「こここここんな運び方するなんて」

「男が細かいこと気にするなよ。時間があるとはいえ耳元に近いところで叫ばないでくれ。周囲に魔物が寄ってないかも確認しながら走ってるんだから」

「はぁ!?」


声が一段低くなったので見ると何が怒りポイントだったのか非常に不機嫌になっている。なにが?なんで?

なんとなく逆らってはいけない雰囲気を発している。簡単に言うと気圧されてしまった。


「お兄さんさ。気づいてないわけ?」

「何に?」

「あ~そう。そうだね。みんなもわざわざ説明することでもないと思うもんね。別にもういいや。じゃあ説明するよ。理由は大きく2つ!」


怒ったり心底気の毒そうな顔をしたりと表情がコロコロ変わったのち、何かを諦めて説明が始まった。とりあえずそちらに集中しよう。


「まず1つ目は村の危険を取り除くのにお兄さんの力を借りたい。明らかに意図的に探られているように感じたんだ。そこに自身の損を考えないようなお人好しみたいな人が来たら言い方は悪いけど利用させてもらおうと考えてる」

「利用するって言葉をその相手に対して正直に言うのか?それもすごいと思うんだが」

「良いんだよ。何か差し出すって言っても労働力とかくらいしか対価が無いんだから。それで一番便利な扱いが出来るのがぼくだからついてきたんだよ」

「便利な扱いってどういうことだ?」

「お兄さんも冒険者やってるし、ミケンダと一緒にいたから自分のステータスは見たことはあるよね」

「ああ、あるぞ」


いつでも閲覧可能ですが。むしろ俺の場合はスキルポイントでステータスの変更すら出来ますが。そこまでは言わなくていいか。

そういえば俺じゃないこの世界の人たちはどうやって確認しているんだろう。疑問に思ってなかったな。


「魔石を加工すると真実の瞳って宝珠が出来上がるんだ。それで自分のステータスを確認することが出来るんだけど…」


あの魔物図鑑を埋めるために戦闘中に使うアイテムか。たしかにHPMPやドロップアイテムに耐性まで調べることが出来たな。この世界では一般人のステータスを調べるためにも使えるのか。一瞬余計なことを考えていると、次の言葉に息を飲んでしまった。


「ぼくは獣人ではなくて神獣らしいんだ」

「しんじゅう?」

「そう。かみのけものと書いて神獣。でも神獣って言っても色々いるんだよ。有名なところだと水を司る青龍さまとか、火を司る朱雀さまとか」

「あとは風の白虎に、土の玄武か?」

「そう!他にも有名どころだと獣を統べる獅子とか、海を統べる蛇龍とかいろいろね。でも…」


言いにくそうに黙り込んでしまった。すごく個人的なところまで話そうとしてくれているらしい。何がそこまでの信頼感を得てしまったのか不明なので、緑色の髪をぽんぽんと撫でてやる。


「まあ言いにくいならまた今度にしよう。飯食いながらでもいいし、寝る前に話す時間もあるだろうしな」


しかし、神獣か。無かった要素だな。精霊とか神とかもいるらしいこと言ってたもんな。色々呼び名はあるけど四神とか他にも色々といるんだな。ということはリセルを連れて色々と旅に出れば見ることが出来るのかな。

設定としてはなんだろう。レイドボスかな。そのあたりが一番可能性がありそうだな。ラストアタックのやつにはレアドロップ入手だったし、それぞれに関連する装備やらアイテムが手に入るのかな。

それにしても髪の毛ってこんなにサラサラなものなのか?ふと視線を下にすると涙目になってリセルが震えてきた。


「あたま、なでた!」

「え?ダメだった?」

「ダメとかじゃなくて。えっと、えっとね」

「お前体温上がってない?熱ある?体調悪いのか?」


俺の言葉に一瞬固まったあと更に顔を赤くした。


「あ~!もううるさい!黙って待て!」

「はい」


大丈夫らしいので黙る。というかキャラがまだ掴めてないな。色々と話したり聞いてお互いの理解に努めないとな。俺も人間関係が上手い方ではないし。

リセルは深呼吸して息を整えると続きを話す。赤い眼たまっていた涙は自分の服でぬぐっていた。顔を上げるとしっかりと意志を乗せて見つめてきた。


「ぼくはなんの神獣かわからないんだ。ただの神獣としか見えなかった。だから表示が間違っているのか、正しいのなら自分が一体何なのかを確かめたいんだ」

「なるほどな~。いいぞ。ただし準備はきっちりとしてからだ」


静かなので何かと思ったら、ぽかんとした表情ってこれだなって顔をしていた。


「どうした?」

「今の話全部信じるの?」

「ウソなのか?ウソはやめてくれって言ってから話し出したんだから本当のことじゃないのか?」

「ははは…、みんなが許してくれるはずだよ。お兄さんお人好しだね」

「あ~それな。俺の事情も聞いたら分かってもらえるかな。とりあえず善人っぽいなら助けながら生きようと考えたんだけどな。その前に、お兄さん呼びはやめてくれ。対等にイレブンって呼んでくれよ。パーティになるんだし、他人行儀な感じは良くないぞ」


何か言ったようだが、口がわずかに動いただけで声にはなっていなかった。溜息を吐かれたのは間違いないが。というかすごく呆れられてないかな。


「あともう一つ言っておくけど、ぼくはこの見かけだけど既に20年以上生きてるからね」

「一応年上」

「一応ってなに?今から敬ってもいいんだよ?」


精一杯偉く見せようと胸を張るが威厳は感じられない。


「まあ無理だな」

「なんでだよ!」


走るのに邪魔にならない程度に暴れられたが、気にせずに走っていたら大人しくなった。再度溜息を吐かれた上で。


「まあいいや。これからよろしく頼むよ。イレブン」

「おう。でも俺の事情聴いてから判断しても良いんだぞ?リセル」

「ぼく以上にややこしいやつなんてそうはいないよ。しかも君は人間じゃないか。なら聞くから話してみなよ」


叫びこそされなかったが、小さい声で負けたって言ったのは聞こえた。

主人公が気が付くのはまだ先の予定です。上手く表現できているとは思ってませんが、どうか生暖かい目で見て頂ければ。

お読みいただきありがとうございました。

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[一言] 神獸とはまた新しい要素が沸きましたね。皇子に神獸とは大変です。 色々と展開が楽しみです。 しかし、この手の主人公が鈍感系なのは定番過ぎですね。
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