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まずはご挨拶から

今日もありがとうございます。お楽しみ頂けると幸いです。

殲滅するのは簡単なんだよ。フレンドビーに負けるのは子どもでも難しいくらいと言われている。そのため唯一戦闘描写なく倒すことのできる魔物とされていた。イベント進行中の選択肢によるから助けて放っておくとした方が良かったやつだったな。

弱いことを自覚しているからか、契約した魔物に自分たちを守らせる特徴がある。交渉材料は自分たちの集めたハチミツだ。契約相手に任せてしまって自分で戦う必要が無い分、こいつらは自分で花を育てて蜜の収穫を行ってくれる。食料を提供する代わりに守ってもらうって契約を交わすわけだな。


このフレンドビーも結構大きな巣だし、周囲に花やら果実のなる木が植えられているから自分たちで手入れをしたんだろう。巣の周りに配置していた守護役の蟻たちはたぶん巣へと呼び戻されて俺がプチッと倒してしまったんだろうな。今更だが罪悪感が少し湧いてしまう。


蟻たちを潰しまわった俺なんてフレンドビーからしたら極悪人にしか見えてないだろう。だからと言ってあのまま蟻を放置するわけにはいかなかった。こいつらの作る食糧のおかげで繁殖にブーストがかかっていたんだ。ハッキリ言って異常なほど1つの巣に大量に存在していたわけだから。

限界を超えたら恐ろしい数の飢えた蟻が広がるところだった。こいつらが生きるためには適正に管理してやらないとそういう意味でも危険だ。だからといってこいつらのハチミツを諦めるのは正直惜しい。


そういった推測と悩みをミケンダを始めとした一緒に来ている獣人たちに説明する。


「あの蜂が今回の原因というなら退治するしかないだろう」

「オイラもそう考えるっす」

「普通はそうだよな」

「あ~、でもマッツさんは喜ぶと思うっすけどね」

「「あ~」」


獣人たちだけで納得している。俺も話に混ぜろよ。

えっと、確かマッツって言ったらミケンダと同じグループの巡視隊の一人だ。無茶苦茶無口のやつだったな。何の種類だったっけ?あ~、そうそう。


「ゴリラの獣人じゃなかった?」

「あいつの嫁さんが熊の獣人なんだよ。あいつ嫁さん大好きだから」

「なるほどな~」


そう返事して再度巣の方を見てみる。俺だってSPポーションの材料として使うハチミツがおいしいならその方が良い。だから悩むんだよな。こいつらだって悪気があってここにいるわけじゃない。生存本能に従って行動しただけだ。

考えているとミケンダがこっちの表情を見ていることに気づく。俺が目線に気が付くと苦笑しながら話してきた。


「そこまで悩むってことは何か手段があるってことっすか?」

「無いわけじゃないけど、とにかく最終的には巣のクイーンと交渉しないといけない。でも言語が通じるかどうか…、そもそも話を聞いてもらえるかどうか…」

「魔物の蜂に話が通じるのか?」

「オイラも聞いた事ないっす」


それはそうだろう。俺だって前にそんな話を聞いた事があるだけだ。自分でやったことがあるわけじゃない。

どうやって契約するのか知らないが、フレンドビーとの契約に成功って話があった。細かく以前の『俺』が聞くことも無いし、調べるはずもない。


「聞いた事はないっすけど、信用できるはずがないと思ってた人間とたった数日で友達になった経験がオイラにはあるっす。話してみると悪いやつじゃなかったからっすけど、まずは相手に話を聞いてもらう態勢になってもらうのが良いんじゃないっすか?」


最初はそんなこと考えてたのか。知らなかった。初めて出会った時と今もそんなに表情変わって無いくせに。でも、まずは対話するための状況を作るってのは確かに必要だな。


「クイーンともなれば長く生きているらしいから多少の言葉は通じるはずなんだ。イエス・ノーくらいは返事がもらえるはずだ」


なんかそういうフレンドビーに関しての説明文を読んだことがあった気がする。意思の疎通は『テイム』の基本だ。敵対感情がない魔物に関しては多少の言葉は通じるようになる。


「じゃあやるしかないっすよ。はいはい。敵対を思われるようなものは外して行くっす」

「全部防具だよ。装備を剝ごうとするな!まあやってみるか」


獣人たちには全てを丸投げされて一人で巣に近づいていく。魔力を練ることも無く、敵対しないから話をしようと言いながらだ。

蜂たちからすると一人でも巣ごと全滅させてくるようなやつが集団で巣の近くにいたらストレスの原因だろう。こちらの確認ができるくらいけれどフレンドビーの警戒範囲からは遠くへと下がってもらった。ついでに村への伝言も。

フレンドビーに話を聞いてもらえるようになるまではガマンだ。敵対意思がないと納得してもらえるまで地面に座り込んで待つことにした。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


数時間もすると警戒態勢は解いてもらえていた。

何をしたかっていっても、特に何もしてない。ただされるがままにじっとしていただけだ。害意が無いことを示すには何もしないことが一番かなって考えた。それに何をされても怒らないでいれば次第に怒りの感情も抜けてくれるかなと思っただけ。これでダメージでも入れば良かったんだろうけど、非力の代名詞みたいなやつだから無傷です。


発散は出来たみたいだけど、敵意100のところから攻撃意思が抜けて警戒状態に変わっただけ。まだ会話できるような状況でないけれど。ひたすらガマンかなぁ。しかし、今日帰るつもりだったしどうしたものか悩む。

仲良くなるにはどうするのが良いかな?友達には……、旅行先でのおみやげを渡すとか?ここでじっとしていたことで次に来た時も警戒されずには近づけさせてくれるかもしれないかな。そうと決まればまた今度来ようかな。


立ち上がるけど怖がらないでくれなと一言断って立ち上がる。待ちくたびれて寝転んだりもしていたので、ところどころ土がついているのをはたいて落とす。

断りを入れたとしても聞いてないやつもいる。驚いて警戒を示すのもいる。そこまで配慮するのも面倒なので、言いたいことだけ言っておく。


「じゃあ俺は用事があるんで一旦帰るわ。仲良くなりたいのは本当なんだ。また来るからそのときはよろしくな。危険な目に遭わないように見張りは立ってもらうから危なかったら遠慮せずに守ってもらってくれよな」


獣人たちはどこにいるのかな~っと探してみると遠くの方で手を振ってくれていた。あれは、マッツだ。呼ばれてきてくれたらしい。ありがたい。

ハチミツを定期的に手に入れることが出来るようになって一番喜ぶのはハチミツ好きな熊かもしれないが、乳幼児でもない限りハチミツはどんな人でも好きだろう。この世界でも赤ちゃんには食べさせたらダメなのかは知らないけれど。

もしかしたら仲良くなれるかもしれないから蜂の警護役を付けてほしいとお願いした。俺もついて来てくれる蜂はほしいが、獣人たちの方がずっと一緒にいることが出来るだろう。なんなら分蜂を考えてもらえれば良いや。

というわけで、仲良くなるきっかけを作っていくのは俺かもしれないが継続的な警護役はご近所の獣人にやってもらうことになった。


「また来るからな~」


そう蜂の巣に言ってまずは村へと帰る。


「何か気を付けることはあるんすか?」

「特には無いと思うよ。逆に蟻の異常繁殖のおかげで森の中の変化が無かったかを気にしてなかったよね」

「特に変化なかったんで気が付かなかったっすね」


危なかったかもな~。かなり背筋がぞっとする。本当に何事もなくて良かったよ。


「でも、気になることは2つある」

「なんすか?」

「1つは疑問なんだけど。なぜ獣人たちはフレンドビーの巣に気が付かなかったのか。いつ見つけた?」

「えっとオイラが聞いたのは昨日の夕方っすけど、見つけたのはいつだろう。誰か分かるっすか?」

「昨日聞いたって時点で最近だと思うけどね。巣を見たら分かると思うけど、そんな短時間で出来上がる大きさではないよね。まあ一応確かめておいてよ」

「了解っす。2つ目は?」

「うん、フレンドビーって弱いんだよ」

「みたいっすね。あれだけ数がいてもまったく問題無く倒せてしまいそうだと思ったっす」


走りながら話すことにも慣れたなぁ、と余計なことを考えつつ懸念点を話しておく。


「蟻たちと契約することは同じ昆虫だし、そこまで珍しいとは思わないけど、蟻も蜂も両方ともここにいるような魔物じゃないんだよね。都合よく同じタイミングでここに来たりしなければ出会うことも無いだろうし」

「それはつまり…」


そう。誰かがこの森に持ち込んだということ。何が目的かって考えるとキリが無い。獣人を誘拐することか、蟻の大発生を狙ったのか、単に蜂の繁殖か。


「…っは。悪意を持ってやってるんだとしたら」

「したら…?」


声に出てしまっていたか。少し聞こえてしまったからか、復唱して聞いて来たミケンダににっこり笑って教えておく。


「潰し甲斐があるよね。ここまで大掛かりに迷惑行為をばら撒かれるとさ」


そのあと村に着くまでミケンダは決して目を合わせてくれなかった。あれ?友人さっそく無くした?

お読みいただきありがとうございました。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
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