さて、スキルなどについて新情報
お楽しみ頂けると幸いです。
そうか~。お付き合いってのに憧れる気持ちがないわけではないのだが。ある程度自分がズレていることを考えるとそこまで焦ることではないか。
気持ちの通じ合っているパートナーがいるってのにはうらやましく感じるところはあるけれど、もう少し正常になってからでも良いかな。それよりも恋愛よりも生きるために必要な部分とか、この前の蟻まみれになって戦ってた時の興奮の方が俺は良いかな。
ダメだな。何言ってもうらやましがって拗ねているようにしか聞こえない気がする。ちょっとはうらやましい!でも相手もいないのに探すくらいなら現実見て、いつか出会った人を守れるようになるくらい強くなる。
一緒に楽しめるように趣味を見つけるなり、特技を身に付けておこう。そうするってことで!この話はこれでおしまい!
「じゃあ時間もちょうど良いですし、これで出発させてもらいますね。もう行ける?ミケンダ、メラノさん」
「了解っす」
「良いものが見れて良かったのよ~」
途中で話について行くのをあきらめていたと思ったがそうではなかったのかな?雰囲気で楽しんでいたのならそれでも良いか。そういう空間にいるだけで楽しく感じるって人もいるしな。
「お待ちくださいませ。今後のために少しよろしいでしょうか?」
「はい、どうぞ?」
「細かいことで申し訳ないのですが、イレブン様とお呼びしても?」
「ええ、ぜひ。でも呼び捨てで構わないですよ?」
「うふふ。ありがとうございます。慣れればそうさせていただきます。まずはデテゴ様とお呼びすることから始めますので」
そうだね。そっちからだよね。そのあと似たようなやり取りをミケンダとメラノさんとも交わすと俺たちに向かってきれいなお辞儀を見せる。
「お時間取らせてしまって申し訳ありませんでした。そうですわ。今は既にただのサティと名乗っておりますので、そう呼んでください。長いお付き合いになると思いますので」
「わ…わかりました」
ただの挨拶のはずなのに最後に付けた言葉のせいで少々本気度の違いを感じた。デテゴを見ると顔を赤くしている。長い付き合いってものに関して前向きなんだろう。
デテゴも冷静になったときに本気でイヤなら逃げるだろうし、逃げなくても何らかの手段を取るだろう。まあ会うことすら十数年ぶりなんだし時間が解決してくれると見た。正しい見立てかどうかは知らない。
「それではこれで一時解散ですかね。では少しだけ。まずイレブン君、可能なら2日後か3日後に一度戻ってきてください。面倒かもしれませんが相談があります」
「2日後か3日後ですか。今日ではなく?」
「まだ状況が確定では無いので。一つだけ先に言っておくと可能な限り怒らないように、とだけ」
(それって確実に俺が怒る事態になるって話じゃないですか!)
まあ面倒ごとに巻き込まれるのは覚悟していることだ。獣人たちが人間や王国に悪感情を持たないように味方でいるために必要なら仕方ない。ザールさんが言うからには俺が知っておくべきことなんだろうし。
「分かりました。可能な限り戻ってきます」
「はい。ではそういうことで。サティさんも契約内容を見直しましょうか。デテゴもせっかくですし残りなさい」
「感謝いたします」
「おぅ。そうさせてもらうよ」
「すぐにお会いすることになるでしょうし、見送りは無しでも構いませんか?」
「大丈夫ですよ。子どもってことも無いですし」
せめて店の前まではとメディさんが言ってくれたのでそれだけ受け取っておいた。
☆ ★ ☆ ★ ☆
「イレブン体力ありすぎじゃないっすか!?」
「びっくりなのよ~」
「なんというか走ることに関しては疲れにくいんだよね。スキルのおかげだよ」
「どんなスキルでレベルはいくつっすか!?」
「簡単に聞いて来るなよ。冒険者の基本じゃないのか?」
「オイラたちの本質は巡視隊っすよ。村の安全のために秘密は無しっす。無理なら別に言わなくても良いっすけど」
中間地点での休憩中の話題は俺の異常性についてに焦点が当たった。
獣人の村への帰り道は行きと違って俺に荷物は無い。自分で走ってみたら獣人の走るスピードには及ばないものの、疲れにくい俺はいつまでも走れることに驚かれてしまった。
そういえばスキルについて詳しく話すのは初めてだ。冒険者としては隠すべきものとデテゴには言われたが、獣人たちは自分たちだけで生きているからか情報は共有すべきという考え方らしい。
「既婚者がスネるなって。『走行』ってスキルだよ。レベルは10ね」
「レベル10!?」
「はじめて聞いたのよ!?」
「そこまで驚く?はじめてってのも本当か?」
そういえばスキルについてガッツリ話したことはなかったな。NPCたちはスキルが成長することは無かったが、この世界では誰もが生きているもんな。どういう成長の仕方をするのかは知っておいて損はないだろう。
「オイラが知ってる中で一番高いスキルはリーダーの『爪牙獣術』のレベル8っす。オイラは7っす」
「それに『走行』なんてスキルも聞いた事がないのよ」
「よく考えたら相当数の魔法も使ってたっすよね?氷と風と、格闘術の心得もあるのにそんなにたくさんのスキルを身に付けているなんてスゴイっす」
「ちょっと特異体質でね。俺も『爪牙獣術』って初めて聞いたよ。獣人特有なのかな」
「肉食系の獣人が持っているスキルっすね」
なるほど現実世界になると種族によって特異なスキルがあると。相当気を付けないとふとしたときに危険だな。魔物が特有のスキルを持っている可能性もあるもんな。気を付けよう。
それにまだスキルポイントのことは話していないから少し誤魔化しておく。今回戻ったことで少しだけメディさんが作ってくれたSPポーションも大っぴらには見えないところで飲むことにすればバレないだろう。スポーツドリンクのように飲むほどではない。モノによっては辛いし。一つずつ色々と俺の好みや効能を探りながら作ってくれているからきちんと返事をしなくてはいけない。あまり無計画にガバガバ飲むとこんがらがって分からなくなる。
「まさか精霊付き!?もしかして何かの神の祝福を受けてるとかっすか!?」
「ミケンダ、私はあまりズカズカ聞くのは良くないと思うのよ」
「そうっすね。ごめんなさい。知りたいことがあるとつい…」
「いや、構わないよ。ただ言えるのはあまり理由は分かってなくてさ。スキル取得がすごくしやすいってことくらいだと考えてくれたら良いよ」
誤魔化しはしたが、知らない要素が出てきた。精霊は単語として出てきたけれど実在するのか。神も初めて聞く。普通は作成者のことを指すとは思うけどそうではないだろうしな。
話題になったのだからスキルについて聞けるだけ聞いておこう。
「スキルに関しては知らない間に増えてる感じでね。スキルは使えば成長するって感じだよね?気づかないうちに取得することで合ってる?」
「使えば使うだけ成長するのはその通りっすね。本当に気合を入れて使わないと成長しないから上げるのが大変っす」
「でも上がれば格段に上手になるから嬉しいのよ。私も『裁縫』のスキルを生まれたときから持っていたから、服飾学についての本を買って勉強したのよ。実際に発現して良かったのよ」
「知識系のスキルを本で勉強するの?」
「チシキケイ?」
「知らないことは本で勉強するのはどんな種族でもそうだと思うっすよ」
なるほど俺の異常性はここもか。知識をスキルポイントを代償に得るなんておかしな話だもんな。
それに使えば成長するのはこの世界の人だけ。俺はスキルポイントを振らないと成長しない。
スキルも元から持っているし、何かの原因で発言することもある、と。
「いや、あまりスキルに関して本に触れたことがなくてさ。もっぱら物語とか字を覚えるためとかだったから」
実際に役に立つかどうかはともかく学校では知識を詰め込んでたし、実用的な話は体を動かしながら覚えることが多かったしな。調理実習なんて座って勉強するよりも包丁を使ったり自分で焼いたことの方が印象に残ってるし。これも嘘ではないな。ごまかしはしてるけど。
「学者さんの家とかっすか?それだとこんなに強いのも?う~ん……もうわかんないっす。イレブンが変わった人間ってこともういいっす」
俺も自分のことが良く分からないからそれでいいと思うよ。苦笑いしておいた。
お読みいただきありがとうございました。