表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/335

空飛ぶいかだ

この前の話も予約投降にしていたはずがすぐに投稿していたことに驚きました。次から気を付けます。あとは短かったので今回は少し長めにしました。お楽しみいただければ幸いです。

「それではもう構わんかね?」

「すいません。ご迷惑おかけしています」


どなただろうか。リセルの方を見ると何かが伝わったようでドクターだよ、と紹介してくれた。


「診て頂いたんですね。お代は何をお渡しすれば良いとかありますか?」

「それは後ほどにしましょうか。しっかりと治ってから話すことですじゃ」


彼は医者の通称ドックさんだそうだ。何の獣人かは教えてもらえなかった。獣耳はあるものだと思っていたが、彼にはその特徴が無かった。毛のある動物ばかりを獣人と呼ぶのではないそうだ。

ただ、他の獣人とは何か違うような気がしたので、あまり踏み込んで聞くのも悪いと聞く気にはならなかった。それもそうか。出会う人の全てを聞く必要も無いなと思うし、俺も人のことはいえないのでお互いさまにしている。

ドックの診察の方法は似通っていた。現実世界を参考に設定されているからだろう。どう作ったのかは分からないが聴診器も持っていた。一通り俺をチェックするとドックは考え込んでしまった。


「何か気になることでもありました?」

「うむ。一時間ほど前にも診たのだが、体が段違いで良くなっておる」

「あ~。倒れた原因がMP枯渇だったようなんです。手持ちのポーションは飲みました」

「それだけではないような気もするのだが。まあそれでももう少し安静にしておるのが良いだろう。明日には自由にして良いぞ。隊長からこの村の中での自由行動の許可が出ておる、リセル様や、イレブン君が起きたことを知らせてきてもらっても良いかな?」

「りょ~かい!行ってくるよ~」


そう言うとリセルは走り出していった。ドックも寝ておれずとも横になるだけはしておけと言って一人にしてくれた。手持無沙汰だなと考えていると、すぐに誰かが近づいてくる音がした。


まず来てくれたのは、リセルの友達というニッツとラッシーだった。人質になっていたところを助けてくれてありがとうとのお礼を言いに来てくれた。ついでに少々酸っぱいが2人ともが好きだという果物も持ってきてくれた。

見た目はミカンに似ているけど少し違うらしくタンジンと言うらしい。獣人の爪くらい鋭くないと皮を剥くのは難しいらしい。もしくはナイフを使う必要がある。せっかくだからと2人ともが1つずつ剥いてくれた。まあ2人も一緒に半分食べたのだが。

俺からは不快な思いをさせたことを謝ったが、いずれ狩りをすることになるのだから気にしないと言ってもらえた。獣人は見かけよりも大人なのかもしれない。リセルが幼いだけだろうか。


次に現れたのは今日は非番だと言って隊長以外の巡視隊が来てくれた。特に怪我もなく件を収められたことを教えてもらった。

あのあとに何が起こったというのは割とシンプルで、他の巡視隊のメンバーが来ていてので手分けしてくれたそうだ。村から更に応援を派遣してもらい、自分たちの足で歩かせたそうだ。俺が気を失っているのを見たとはいえ、起きたときに反抗していれば今度こそ消されるぞと脅したのも効果があったらしい。


俺を運んだり、連行したりといそがしかっただろうに回復を喜んでくれている。ありがたい。


脅しとして機能したのなら良かったが、『雷魔法』なんてよほどのことが無い限り使い手の現れない魔法だしな。周回数が少ないときは使える魔法は教えてもらわない限りはランダムだから気に入ったものが欲しい人はここで何度もロードをくり返すところだ。種族『変人』はその辺りの枷が外れるからカスタムし放題だ。いつか取ろうと思ってはいたけど、勢いで取るのはもったいなかっただろうか。それについてはまた考えよう。


どういう処分をするかと言っても二十数人もこの村では抱えることのできない人数のため早急に送り返したいとのことだ。森を抜けるまでは一緒に運んでもらえるが、そこから先は俺が請け負うことになる。戻って来れるように案内も付けてくれるそうだ。

森を抜けてからはどうしようかな。まあ後ろから追い立てて走れば良いか。物資の当てもある。吐かせた情報にこいつらのアジトがユーフラシアに帰る途中に寄れるから接収すれば良いだろう。案内役の人にも見てもらって獣人たちに利用してもらうのも良いだろう。夢が広がるなぁ。


それから聞きたいことも聞いておく。蟻のことだ。詳しい話をしていくと巡視隊は顔を青くすることになった。

ディスガイズアントの存在も認識していたそうだが、数が多く体制を整えてから一当てする予定だったそうだ。亜種のアサシンアントも獣人なら気づくことが出来るだろうしな。アーミーアントが弱い種とはいえ巣が分かれるほどの規模の大きさだとは把握していなかったそうだ。すぐに討伐隊を組まないとと、慌てたが俺が全滅させたことを聞くとしばらく固まらせてしまった。


他に巣が無いかについては獣人たちが探索してくれることになった。リセルや子どもたちを助けてくれたお礼だとのことだ。倒れたのを助けてくれただけで礼としては十分だったのだが、譲ってくれなかったので勝手に押し付ける用の何かを準備しておくことを決意する。他にも巣があれば俺も力になることを伝えると、それは大いに期待していると言われた。任せろ。貴重な経験値で一人で狩り尽くすぞ。


あと、猫の青年の名前はミケンダ、羊の女性はメラノというそうだ。オスで三毛猫はかなり珍しいのではないかとか、道理ですごくおしゃれだなとか色々言うことはあったような気がするけれど。ジェイブの話がうるさすぎてまた今度にすることにした。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


2日ほどは獣人の村にて様子見で休養させてもらった。ドックの言う通り翌日には出発することも出来たが、どちらかというとリセルのわがままの側面が強かった。外を歩くときには必ずついて来たし、食事をもらうときは必ず横にいるし。その時間を有効に使わせてもらったので悪くも無かったが。

獣人の村は、なんというか自由度の高い村だった。普通に木材で出来た家もあるが、ツリーハウスのように大木の上に建てている家もあった。前者は平地に住む動物の獣人が暮らしていて、後者は木の上や鳥の獣人が暮らしていた。地面を掘って暮らしている獣人もいた。その方が落ち着くそうだ。そう言われると何も言えない。

無理に統一することは無いそうだ。まあ見た目も様々な種族だし、自由度が高いことは元から知っていたので全く気にしなかった。実物が見れたことが新鮮だったくらいだ。


そんな村での過ごし方を見て警戒を解いて少しずつ話をしてくれる獣人が数人増えたのは嬉しかった。

だが、仲良くなったとはいえ村の方針を決める村長には会えなかった。招待されても無いのに行くわけにもいかないし、挨拶しなくても良いのか聞いても誰もが不要だと言うから仕方ない。

とりあえず注意された耳や尻尾には本人からの許可が出るまでは決して触らないようにすることだけは守っている。触ってみたいなとは思うが、ダメと言われたことをするつもりはない。


慣れてきたとはいえそれでも食糧問題はあるし、人さらい集団をいつまでも村に置いておくわけにもいかない。というわけで一時的にユーフラシアへと戻る。

見舞いに来たのと過ごす中で仲良くなった面々が見送りに来てくれている。誘導も兼ねているから完全に見送りの人だけというわけでもないが。


森の調査結果を聞きに来るのでまた間を置かずに戻ってくるつもりだ。元々俺の用事だから人に任せっぱなしで済ますつもりは無い。俺も戻ってきたら一緒に行うつもりである。


「何日後には来れるの?」

「こいつらの進むスピードに寄るけど遅くても5日後には来れると思うよ」

「分かった。森にはしばらく入れないから村で待ってるからね」

「ありがとう。気を付けて行ってくるからね」


リセルはもう少しわがままを言うかと思ったら今日は聞き分けが良かった。滞在している間にずっと張りつかれていたのだから満足してくれているのだろう。外から来た人間は珍しかっただろうしな。

こうした振舞いをくり返すことで大人になっていくのだ。でもニッツやラッシーは元からそこまで絡みには来なかったな。まあいいか。


「えらくリセル様に懐かれたっすね」

「うん。ちょうど考えてたところ。ミケンダはなぜか分かる?」

「心当たりがなくはないっすけど、おいらから言うのはちょっと勘弁っす」

「そうか…。獣人にも色々あるって思っておけば良いのかな」

「じゃあ、それで」


納得はいかないが、それで打ち切って顔見知りになった人たちと雑談寄りの挨拶を交わす。いつまでも続けてはキリが無いと隊長の声が飛んだ時点で慌ててやめて出発することになった。


「じゃあミケンダよろしくな」

「了解っす」

「あとは離れててくれよ。俺もイメージはあるけどどんな感じになるかやってみないと分からないからさ」


そう言って離れてもらう。森の中での移動は力業で行うことにした。不揃いの木材を俺が持っていたロプでいかだのようにまとめて、連行の対象たちはその上に乗せた。森の中であちこち自由に逃げ回られても面倒だったので。逃げようとしても高いところから落ちて大ケガ、動く前には動ける獣人たちに確保される。残るのはケガだけで、そこから俺との再度対面を果たすことになる。よく言い聞かせておいたので逃げることも無いだろう。


そういう作戦で俺が『風魔法』で森の上空へと飛ばす。いかだの下に上昇気流を発生させる感じで運ぶのでうまくいきそうだ。安定して浮くようになったら方角を示してもらってそちらへと動かしていく。やったことは無かったが、ドローンの操作がこんな感じなんだろうか。俺は地上でミケンダに後ろ向きに背負ってもらって、目で確認しながら操作している。パッと見は情けない感じだが、全く見ずに操作するには重いし、木が高いから地上からは少し遠い。


1時間少しで森は抜けた。森の中だけの案内だった隊長たちとはそこでお別れだ。帽子などで隠せばついて来ることが出来るミケンダとメラノの2人はまた村に戻れるように一緒にユーフラシアまで来てもらう。

ザールと顔見知りになれば少しは村の暮らしも良くできるかもしれない。獣人たちが手放しで全員を信用するとは限らないので少しずつしんらいが 広がれば良いと思う。問題はこいつらを何の罪で引き渡すかだな。


「他に罪を犯していないか聞き出せばよいのではないでしょうか」


それだ!メラノさん、ナイス!

お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
私の魔法の使い方
https://ncode.syosetu.com/n8434ia/
婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
https://ncode.syosetu.com/n1262ht/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ