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男のツンに需要はありますか?

上手に書けている保証はありません

拘束するためとはいえ魔法を使うのがMP消費が激しくて使いたくなかったのでロープで縛っていると、隊長たちが戻ってきた。子ども2人は連れてきていなかったが、猫の青年がいなかったので彼が別の場所に連れて行ったのだろう。


「お~い、無事か~?」


手を振って俺も全く怪我をしていないことをアピールする。声が聞こえていなくてもまっすぐにこちらへと向かっていたから、最初から場所は分かっていたのだろう。

無事に戻ってきている。送った魔法は攻撃を加えようとしたタイミングで静止させることは難しいと思ったので、少し強めに攻撃した。でも死なせてはいない。襲ってきた人攫い集団のナンバー2を一撃で殺したらマズイと思ったからだ。

ここに転がっているやつらも目を覚ました時に、一人ボロボロに死にかけているのが混じっていれば反抗することも無いだろう。実際無傷で抑えた2人も大人しく自分の足でついて来ているようだし問題無いだろう。


と、思っていた。


「馬鹿野郎!!」


めっちゃ怒られた。


「子どもに見せるなと言ったが、我々は耳も鼻も良いんだ!分かるだろうが!」

「それはすいません。遠くだったので、つい…」

「隊長~」


怒っているのは隊長だけ、というよりも怒る役目を隊長が担っているだけという印象だ。


「あぁ。だが、助けてもらったことには変わりはない。確かにお前はこの人間たちとは違うことが分かった」

「ご理解いただけて良かったです」

「こいつらと違って遥かに危険人物とは思うが、何も無ければ害は無いのだろう。要注意人物扱いとしておく。村には案内するが自由行動までは許可しないぞ」

「はい…。はい?」


返事はしたけど、今のって褒められてる?貶されてる?


「獣が強く出ている方の獣人はあまり人間に心を許すことは無いですが、その隊長がここまで言うのは初めてのことです。褒めていると受け取っていただいてよろしいかと…」

「あ…どうも」


褒められているとは、到底思えないお言葉だったとは思いますが。


「私は隊長の副官をしていますシマウマの獣人のジェイブと申します」

「ご丁寧にありがとうございます。俺は、」

「隊長は狼型の獣人なので、あまり優しい言葉を使うのを得意としていないんです。若いころは単独で行動することも多かったらしいのですが、今は後輩指導にも心を砕いてくれまして…」


ジェイブはしゃべりだしたら止まらないタイプのようだ。もう一人のゴリラの獣人っぽい人はずっと無言なんだが。こっちの人は俺が氷魔法で滅多打ちにしたのを担いでいる。

手がちぎれたのは自己責任だから俺は治癒するつもりは無いけど、致命傷になりそうなところまで抉ってたみたいだな。危なかった遠かったから操作ミスしたかな。もう少し上位スキルが無いとダメだったな。

隊長は俺が気絶させた奴らを確認している。直接殴ったからこちらは気絶だけで済んでいる。重症だったのはボスに圧し潰されたやつね。こいつにはさすがにポーションをぶっかけた。


ジェイブさんの昨日の晩ご飯の話をしているときには手伝ってくれたのもあるし縛り終えた。拘束を手伝わなかった隊長も一通りの確認を終えたようだ。


「おい、貴様。こいつらを運ぶことは可能か!?」


誰を呼んでいるのか分かるけれど、呼び方よ。


「隊長があんなに楽しそうにされるのは久々です。ぜひお返事を」


抗議の声をあげる前に若干涙声のジェイブが後ろから声をかけてくる。獣人のキャラが思ったよりも変な奴が多くないか。もう少し野性味あふれるキャラではあったとは思うけれど。親しみの裏返しなのだと思うことにする。


「距離にもよりますけど、どれくらいですか?」

「貴様が先程のはやさで走れるのならそう遠くはない」

「じゃあ少しだけ休憩させてください。少し回復すればいけます。あとはお近づきの印にお菓子でもいかがですか?」


血の匂いについては止血も完了しているし、獣人たちも気にしないだろう。メディさんお手製のクッキーを出して見せる。ただポーションを飲むよりもお菓子でも摘まむ方が気持ち的にも安らぐだろう。

ジェイブとゴリラの獣人のマッツ(という名だとジェイブが教えてくれた)は匂いを嗅いで受け取ってくれた。一つ食べてみて笑顔になってくれた。そのあとにもいくつか摘まんでくれた。


「隊長さんは甘いもの食べないですか?」

「好かん!」

「肉の方が良いなら干し肉とかもありますけど、こっちは買ったものなんですけど」

「いらん!」


本当に楽しんでいるのか全く分からないが、ジェイブを見るとまた涙ぐんでいる。マッツも頷いているし。分からん。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


少し休憩している間に目覚めた奴らもいたが、何も言わずに大人しくしている。圧倒的に倒されたボスだけでも衝撃だったようだが、ナンバー2の姿を見て完全に抵抗する気が無くなったようだ。これは狙い通りで良かった。

狙い通りにいかなかったのは、村から加勢に来た人たちと一緒にいた3人が話していた時に人攫いの一人に話しかけられたことだ。


話し合いといっても出会ってからの説明だ。避難先でも先に行っていたリセラや子ども2人に護衛で行った2人も知っている範囲のことを伝えてくれていたようだ。驚きの表情と一緒に視線がこちらに飛んでくる。

小声で話しているので聞かないように目の端にしながら、代わりに引き受けた人攫いの見張りをしていた。まあ見張りと言ったところで視界に入っていれば何かあれば分かるのでと、森の方も見ていた。

そういえば森の調査をするために来たけど、獣人たちに聞いてみても良いかもしれない。少し距離はあるが、蟻たちの巣も行動範囲内でもおかしくない。そんなことを考えているときだった。


「おい…、おいって!俺らをぶっ飛ばしたにいちゃんよ…!」

「あぁ、俺に話しかけてたのか」

「そうだよ。にいちゃん強いな。まさかボスを吹き飛ばすとは思わなかったよ」


見ていたどころかお前も殴ったんだから何を今更言っているのか?という感が強い。それが伝わったのだろう。


「そうだな。俺はひとつかませてもらいたいってだけだよ」


何を言っているのか分からなかったので、まだ何を言いたいのかはっきり言わないことに不快感だけを示す。


「にいちゃんもやり手だなって話だよ。俺たちがかち合ったのは偶然なのかもしれないけどよ。独り占めするくらいだったら俺も手を貸すから少しだけ取り分をくれないか?」


さっぱり分からないので何も言わずに正面に見据える姿勢に変える。いや、少しだけ何が言いたいのか分かった気がする。


「あんたも俺らと狙いは同じなんだろう?懐に入ってからの方が仕事がしやすいもんな。俺たちはそういった信用を得られる顔をしている奴がいないからよ。考えつきもしなかったよ。その点…」

「お前はこう言いたいのか?」


まだ話の続きがありそうだったが、それを遮って尋ねることにする。左手でステータスを操作して、今の気分にぴったりなスキルを会得する。正直氷と迷っていたけど、氷入りのSPポーションが飲みたいがために後回しにしていた。

自然現象の中でも殺傷力はかなり強い。あまり弱い扱いされることも少ない、ザ・主人公の扱う魔法の『雷魔法』を取得する。すぐに最高値まで上げる。最初は扱いに慣れていないと制御が甘くなったり、込めたMPに比べて威力が見合わないことが多い。

だけどそれがちょうど良かった。残っているMPをギリギリまで注ぎこんでも良い気分だ。


「俺が獣人たちに害するために潜り込もうとしているように見えるって言いたいのか?」

「ひっ!!」


両の手の平には激しく放電現象を起こしている『雷球』が暴れている。さすがにこのときには獣人たちにも気が付いているが、それが人攫いの方であるためにすぐには動けない。

薄いが『氷壁』を展開したので、意図を理解してくれたのだろう。入って来てくれるなという意味だ。


「俺がお前らを殺さなかったのは獣人たちに裁く権利があると思ったからだ。ついでにお前らが売りさばく先も潰したいから聞き出そうと思ってのことだよ」


使わないと慣れないので、当てないように気を使いながら手の中の暴れ馬を放つ。悲鳴をあげるのが不快だった。だけど当ててしまうとそれで終わりになってしまうから当てないように気を付ける。


何にこんなに腹が立つのか分からないが、怒りが抑えられない。


お目汚しして申し訳ありませんでした。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
私の魔法の使い方
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婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
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