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一路空の旅へ

ブクマ・評価・いいねなどいつもありがとうございます。読んでいただけるだけでありがたいです。お楽しみ頂けると幸いです。

青龍に会いに行ってから3日後、もう一度青龍の眠る洞窟へとやって来た。あの時言っていたように本当に眠って待っていた。これを起こすのか?


「私がやろうか?」


「頼んだ」


「了解!」


まだ2回目ということもあって念のためリセルを連れて来て良かった。トトトッと走って青龍へと近づいていった。朱雀は俺が封印を解いたこともあってまだ気やすかった。その後に弱ってたからあんまり気圧されなかったのも大きい。

青龍は違う。弱っても無く神獣らしく存在していた。それに海を荒らされて機嫌が悪かった。ベースがそのレベルだから多少気は引けるよな。これは仕方ない。


「せーちゃん、起きて」


ペシペシ叩きながら起こすリセルを見て思わず頭を抱える。何で同じタイミングが初対面だったのにそんなにアグレッシブに接することが出来るんだよ。


≪ん~、もう少し寝かせて~≫


寝起きの声の感じはいつものオネエなんだな。やっぱりそっちが素か。少しは慣れてきたけど。


「ダメだよ。もうこっちの準備は全部終わったんだから。王都までついて来てくれるんでしょ」


≪あ~、リセルちゃん?そういえばそんな約束してたわね。ん~~~~~~~!≫


そう声を出しかと思ったら体を大きく持ち上げ震わせた。バシャバシャッと身体に付いていた海水が飛沫となって飛び散る。俺はまだ距離を取っていたが、触れるほど近くに寄っていたリセルは思い切り頭から浴びてしまった。


「冷た~い!せ~ちゃ~ん~~?」


≪あら、ごめんなさいね≫


ふ~~~と息を吹きかけるとリセルに付いていた水滴そのものを操って『濡れた』ことそのものをなかったことにした。水を司るだけあって何でもありだな。リセルの身体の中の水分には干渉してないんだから凄いことだ。

しかし、なるほど。殺傷目的であれば似たようなことは俺にも出来そうかもしれない。機会があればやってみよう。


≪3日じゃあ寝た気にはならないわね。でも仕方ないわね。もう飛び立っても大丈夫なのかしら?≫


「上空で待っていてくれないか。洞窟の入り口付近に連行していくやつらをまとめて置いてきているから」


≪分かったわ。お先に失礼♪≫


青龍はそう言うと大きな声で叫ぶと上空に開いていた穴に向かって飛んでいった。寝起きに少し飛んで体操代わりにするんだろう。こちらはこちらで案内をしに行くとしよう。


「リセル~、行くぞ」


「あれ?濡れてない」


「傘代わりに結界張ったからな」


「せ~ちゃんひどいよ。また濡れるところだった」


「いつまでも近くにいたからってのはあるぞ。リセルサイズだと小さくて意識しないと目に入らないとかありえそう。あと言ったところで寝起きだったしとか言われそうだ」


「まあ濡れなかったから良かったと思うことにしよう」


「そうだな。急いで戻ろう。待たせても悪いし」


「はいは~い」


洞窟を急いで走って戻り、入り口に待機していたメンバーとその他もろもろを回収して俺も結界で作った飛行板を浮かせる。


飛行版の構造としてはシンプルで一枚の大きな板の上には人が乗るようになっている。先頭付近には俺が座って制御することになっている。後の皆はついて来るだけなので各々好きなことをして空の旅としゃれこむことになっている。


連行する奴らは板の下にぶら下げていくつもりだ。


結界を紐状に変形させて一人当たり3本で両肩と腰を固定している。巻きつけているわけではなく輪状にしているので余程暴れたりしない限りはすっぽ抜けることは無い。はず。


早い話が空を飛んでいるような感覚を味わっていただける。聞いたところによるとやはり飛行するための技術はまだ本格的に開発されていない。よってこの連行も罰になると判断した。


ダコハマリからここに来るまでを試運転としてやってみたけど、足元からは悲鳴、横からはそれを聞いて少し引かれ、見送りの人からは声が上がることも無く見送られてしまった。それだけ珍しいということで気にしないことにした。こういうのは気にしたら負けだから。


「じゃあここから本格的に飛んでいくぞ。近くに神獣の青龍もいるから不敬なことはしないようにな。下手したら全員下に落ちて死ぬぞ」


上に乗っている面々は飛ぶなり着地のタイミングで衝撃を和らげるなり出来るから大丈夫だろうけど、下にぶら下がっている連中は為す術も無く落ちて死ぬだけだな。無駄な抵抗するかな。もしそうなら見せしめに一人くらい落とそう。


黒い考えをしながら空の旅へと出発する。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


空の旅へと旅立って数十分、距離を考えるとあと2~3時間で着くはずだ。最初は悲鳴をあげる元気があったようだが、時間が経てば静かなものだ。自分たちがダコハマリに生きる人たちの生活を壊そうとしたのだから自分たちの価値観がひっくり返る経験をしてみるのも悪くは無いだろう。

無駄に暴れてもノーロープバンジーどころか安全装置なしのスカイダイビングなのだから静かになる気持ちも分からなくもない。ちなみに俺は自分の力で何とかなるといっても空から飛びたくはない派です。


≪なんかこう飛んでいるだけじゃ暇ねぇ≫


「びっくりした!青龍か?どこから声がしたんだ?」


声をあげたが周囲のみんなは何を言いだしたのかという顔をしている。リセルだけ笑いが我慢できないって顔をしているが。どういうこと?


≪あんただけに聞こえるように念話してるだけよ≫


「じゃあ今の俺は独り言をするヤバいやつ?」


≪自覚が早いわね≫


『褒めてねぇ!いきなりやめろ!』


とんでもない神獣である。リセルが青龍とお話してるんだよ~と説明してくれている。それを聞いてのリアクションは薄い。俺だと何でもありだと思われてるんだろうか。


≪要領掴むのは上手いみたいね。さっきまではリセルちゃんと話してたんだけどあんたとも話しておきたいのよね≫


『制御しながら複雑な話は出来ないぞ』


≪だから慣れるまで待ってたんじゃない。もう大丈夫でしょ≫


少し余裕が出来たなと思った瞬間に話しかけて来るとか芸が細かい。


≪そうねぇ。いきなりあたしの話をするのもなんだからあんたから聞きたいことは無いの?≫


『あるといえばある』


≪何かしら≫


『なんでこんなに協力的なのかってことかな』


神獣なのに人の世に干渉してくるなんて変というか変わってるというか。疑問には思っていたのでちょうどいい。


≪あ~そうね。その質問に答えるには少しあたしのライフサイクルってものを知ってもらう必要があるわね。あたしがあの洞窟を何としているかは分かるかしら?≫


『そうだな………。寝てたし寝床か?』


≪正解。じゃあ寝てる以外の時は何してると思う?≫


『なんだろ。イメージとしては見回りとかかな』


≪まあ正解と言ってもいいわね。見回りや成長を促したりしているわけよ。それを秋から春にかけてやって、夏は暑いからお休みするの。夏は海も元気になる生物が多いからあたしが何かしなくてもいいしね≫


ほうほう。俺が地球で持っていた常識を打ち壊してくれる話だ。青龍が勝手に海洋資源として生物を育ててくれているのか。それって魚が子ども扱いってことか?


≪半分正解ね。海や川に感謝して生きているのなら人間もその範疇よ。だから弱肉強食や食物連鎖って言うのかしら?そこに関してとやかく言う必要は無いわ。海に出てきた人間を食べる子もいるし≫


「程度差はあれ命のやり取りはお互い様ってことだな」


≪そういうことね。今の声に出てるわよ≫


『慣れないんだよ。心に思うだけってのは!』


≪色々と同時にこなすことに慣れなさい。単純に強くなるだけじゃなくてね≫


『へいへい。それで、俺の質問とどうつながるんだ?』


≪協力する理由でしょ?人間が捕まえることや広い海全体のことも考えて秋からがんばってるのに、寝床の近くでアホみたいに嵐が起こって寝れないわ増やした分も意味無くなるわって腹立つと思わない?≫


『ってことは何か自分の思い通りにならないから機嫌悪かったってことか?』


≪要約すればそういうこと≫


『こっちに合わせてくれたのにも理由はあるのか?』


≪たまに人間社会に出て存在のアピールとか直接言うこと言っとかないと生贄とか出されるのよ。ナンセンス!そんなもの無くても要望くらいちゃんときくときは聞くっての!≫


あたしが見つける前に食べられてて気づかないことの方が多いから無駄だしね~と軽く言ってくれていた。青龍が大きいといっても海の大きさに比べたら小さいだろう。他のところに行っている間にどこかで生贄を捧げられても気づかないのも道理か。


『うん、まあ納得した』


≪それなら良かったわ≫


声しか聞こえないけど笑ってるのは分かった。

お読みいただきありがとうございました。毎回の文言は同じですが、毎日感謝しております。

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