ディースとは
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まずは逃げ場封鎖!
「多重氷壁!」
元からあった多数の扉の前に氷の壁を発生させてこの場から逃げ出せないようにしておく。残る逃げ道は俺が通ってきた地上への穴くらいなものだが、ここを通ろうと思うと装置を登って俺の横を通り抜けないといけない。
まあ、無理だよね。
「戦うのはいいんだけどさ。この装置で何をしていたのかくらいは聞いておきたいんだけど?」
白衣の研究者たちのほとんどは魔法使いのようで俺が作った氷壁がどのくらいの強度か悟ったようだ。抵抗する意思が一気に減少し、諦念がその思考を占めている。中には安堵を覚えている者もいて、あまり良い環境でも良い研究でも無かったのだろうことがそれだけで理解できる。
特徴的なのは諦めずに俺の氷壁を突破し逃げようと考えている者も一定数いることだ。そんなに簡単にはいかないくらいにMP込めたけどどうなるのかな。お手並み拝見といこう。
肝心のラグギゴ侯爵はディースとやらに対して叫ぶだけでほぼ何を話しているのか分からない状態になっている。
必然的にその言葉を背に受けて退治しようとするディースに向けて話しかけることになる。しかし、質問の答えが返ってくる様子はない。じっと見ていると徐に口が動いた。
「俺にも分からん」
「あ、そ」
門外漢だと分からないか。概要だけでも聞いているとか無いかという意味なんだけど戦闘への嗅覚はあってもそれ以外には興味無しって人かな。まあ詳しいことはその道の人がたくさんいるわけだから聞けばいいか。
「この装置で出来ることか、地震を起こすとか天候を操るとかそんなところ?」
声は聞こえたらしく、諦念を浮かべていた白衣たちを中心に動揺が見える。
当たりなのかよ!!
となるとさっきの地震は偶然ではなくてこいつが原因か。原理は分からないけど大地魔法と嵐魔法のあたりが使用可能ってことかな?どちらにしたところでもう魔力の欠片も感じることは出来ないから無力化には成功している。
これって法律的に大丈夫なものなのかな。これはなるべく壊さずに、その辺りにいる白衣や侯爵も傷つけずにいきますか。とりあえず装置の上からは降りよう。問題無く着地。
の瞬間にディースが狙っていたかのように近づいてくる。かなり鍛えこまれたすり足で、刀はまだ抜かない。こちらも迎え撃つように最近は専ら刀にして腰に提げている天昴に手をかける。
空中で迎え撃つ体勢を整えたにしても空中では踏ん張りがきかない。ほぼ同時に刀を抜き鍔迫り合いの状態になったのは一瞬のこと、助走付きの攻撃を捌けるわけも無く俺は足からの着地は出来たものの大きく体勢を崩してしまう。
今のやり取りでお互いの技術を読み取ったのか手を止めることなく追撃を仕掛けてくるディース。連続の斬撃は迷いなく一流と断ずることが出来るほどだ。
吹き飛ばされた勢いが残っている間は防戦に回るしかない俺は天昴と鞘を使って攻撃を捌く。
そして俺が完全に止まる前にカウンターを恐れてか一旦距離を取られた。
「惜しいな。次に一撃くれば何とかしようと思ったんだけど」
「俺も馬鹿ではない。わざわざ死地に飛び込むほどではない」
そうだね。次は俺から見て右からの攻撃だったから天昴で受けて左の鞘で頭かち割ろうと思ってたよ。手加減抜きで。スキルの『手加減』ではなく力加減という意味での方ね。まあありていに言えば殺す気でってことだ。本当に死ぬのか確かめたかったのだ。
一生懸命思い出そうとしてたんだけどね。このキャラあんまり良いキャラじゃないんだな~。お金のためならどんな護衛でも引き受けるって伝統を作り出したキャラなんだよな。
ゲーム本編ではディースの18代目が出て来るんだけど、もう少し雇う側の人を見極める目を持てないものか!?って突っ込まれるネタキャラなんだよな。おまけに戦闘後も死ぬわけでは無い描写をされるせいで仕事関係なしで主人公に興味を持ってからんでくるようになるんだよね。選択肢によるけど最大で7回もイベントバトルが用意されている。愛すべき邪魔ネタキャラである。
特徴的な話として血統で引き継がれるのではなく、弟子を一人取ってディースという名を継承していくらしいのだ。こいつは見た目としてまだ20代後半だから弟子云々はこれからだろう。
正直こいつがいなければストーリーとして色々と平穏に終わっていた部分が大きいため、ここで根絶やしにしておいた方がこれからの歴史が安泰である。
悪だくみを考えた悪役が逃げる時間を稼ぐんじゃない!
どう見ても危害を加えた方を雇い主というだけで守るんじゃない!
早く逃げないと即ゲームオーバーになる場面でケンカを吹っかけて来るんじゃない!(←戦闘時に時間制限有り)
などなど厄介なことを仕出かしてくれるキャラの初代なのだ。血縁関係があるわけでも無いから全くにて無いので思い出すのに時間がかかった。初代らしきやつからしてこの街一つ苦しめる領主に雇われるという所業なのだからここで始末することを考える俺は悪くないと思う。
早い話がこんな仕事運の悪い輩にはさっさと隠居するかこの世から退場してもらうことが世の平和である。
さて、再度確認だ。今の俺は右手に天昴、左手に鞘の変則二刀流だ。対してディースの方は王道の一刀流で獲物を正眼よりも少し斜めに構えている。そうなると俺が手数を上回ることをするとあっさり押し勝ってしまいそうだな。
よし、鞘を使うのはやめよう。腰に差し直して同じ条件にする。
無防備を晒していたにもかかわらずそれを見守っていたが、どうも先手を譲ってくれるらしい。でもそのお気持ちにお応えしようではないか。攻めの気持ちに切り替えるとグッと足に踏み込む準備を整える。
ディースが少し迷いを見せたが、さっきの感じから考えてこのくらいだろうというあたりをつけて踏み込んでみる。
突進の勢いに任せてまっすぐ打ち込んでみれば軽い感じで避けられる。追撃に左の払いを仕掛けると弾かれる。力の加減はうまくいっているらしい。本気なら弾かれずに横にずっぱりと切れているだろうからね。
力加減をしている理由?たまには全くの初見の相手と戦うことをしておかないと自分の技術を磨くとかじゃなくて力押しだけで全部終わってしまうようになるからだね。
次は弾かれるのを覚悟しての乱れ切りを仕掛ける。
左、右、左、右、回転して下からの右切り上げ、切り返しての袈裟斬り、再度振りかぶっての真正面切り!!
躱すのは最初だけで弾くがほとんどか。少し速すぎたかな。力は弱くし過ぎたな。余裕で受けられたし。
最後の一撃を鍔迫り合いに持ち込んだ後に大きく距離を取る。
「お前、楽しんでないか」
間髪入れずにディースに話しかけられる。
「そうだね。いつも同じ相手しかしてないし、対人戦って最近あんまり出来てないんだ。ここまで踏み込んでくるような人なんてほとんどいないから少しくらい相手してくれても良くない?」
本当ならそんなことをしている時間は無いんだが、久しぶりに天昴を振り回していたら楽しくなってきてしまった。勝負を決めるだけならすぐ終わらせようと思えば出来る。ディースからすれば手の平で遊ばれるような話だから気分は良くないだろうけど、まあ本音を言えばバレなければ良いだろう。
「いいだろう。少し胸を借りる」
「どうぞ」
今度は同時に仕掛ける。
お読みいただきありがとうございました。毎回の文言は同じですが、毎日感謝しております。




