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自身の潔白が確保できたときやる気が出る

ブクマ・評価・いいねなどいつもありがとうございます。読んでいただけるだけでありがたいです。お楽しみ頂けると幸いです。

扉の向こうには腰を抜かしたきらびやかな服を着ている奴らだった。おっさんと同じ服装ということは荒事は担当では無いんだな。扉の陰から覗かれていたから派手に破壊させてもらった。


「あの中には侯爵はいなさそうだな」


侯爵が紛れ込んでいたらもう確保して尋問しようかと思っていたんだけど、当てが外れたなぁ。


「なんで分かるの?」


「もし侯爵が混ざってるなら服装が違うだろう。この場で顔が見れるかと思ったんだけどそういうことにはならなかったみたいだな」


リセルと話している間にトワが隊長にアッパーを決めて吹き飛ばしていた。また顎だ。なぜトワは執拗に顎を狙ったんだ?


「トワちゃんが顎狙ってる理由って聞いてる?」


隣に立っていたリセルが顔を覗き込みながら聞いてくる。


「それは俺も今考えてた。何か理由があるのか?」


「あっはっは。忘れてるの~?イレブンが言ったんだよ。顎を揺らせば意識は残ったまま体の自由を奪うことが出来るって」


「言ったか?言ったような気がしなくも無いけど…」


言われてみればそんな会話、いや偉そうに講釈を垂れた気がしなくもない。その話をいますると言うことは…。


「トワからすればあれで同じことが出来ていると?」


「う~ん、話で聞いただけだからイメージが仕切れていないか、力の加減が出来ていないか…」


「あれは脳を揺らしてないだろ!完全に顎を砕きにいってるわ!」


「いや、私もそう思うけど…」


俺たちとトワの間で大きな認識の差があった。字にしてみれば確かに昏倒はさせることは出来ているんだが、中々派手な色の液体が口から溢れている。しっかり治療しないと固形物を食べられなさそうだ。


「だからといって顎を揺らして気絶させる練習なんてさせるのもどうかと思うし」


「それはそうだよ。イレブンも見たことあるの?」


「俺も話に聞いたことがあるだけだ。実際に見たことは無い」


「出来る人もどうやって練習したんだろうね」


リセルのその一言で練習はやめさせることを決意した。気道を塞いで気絶させる話をしたような気もするのでそっちも危険だからやめるように言っておこう。首をもげさせる可能性がある…。うん…、背筋が寒いな。


次はどうしようかと考えている時に軽く地面が揺れた。それは魔力によって無理矢理揺らされていた。


「地震…?うわっぷ!?」


大地魔法が使えて世界でも類を見ないほど地震大国で生まれたのだ。少し揺れるくらいでは何も思わない。


が、他の人たちにとっては少しの揺れでパニックに陥っていた。


「ぎゃあああああああああ!!!!!」


分かりやすくリセルが半泣きで叫ぶと俺の胴体部分に抱き着き、トワは顔面にしがみついてきた。それはさすがに苦しい!タップして何とか剥がそうとするが全力で抵抗されていて剥がせない。


後ろに下がっていた街の人たちもパニック状態だ。まだ屋敷内に人がいたようで悲鳴がちらほら聞こえている。みんながみんな冷静では無いようだ。この世界では地震は滅多に起こらないものらしい。


1分ほどそんな状況で待っていると、地震の余韻がなくなる。そうすると混乱も次第に落ち着いてくるのだが、トワがしがみついているため視覚的な要素は全く見えないままだ。


魔力的な話をさせてもらうと地震は魔力で起こされたようなものみたいだ。おまけに肌感覚からして嵐魔法が発動しているような気配がする。風が強まり気温も幾分下がってきている。


「トワ!もう大丈夫だから離れろ!リセルももう落ち着いただろ?」


「ふぇ?ゆれて…ない?」


「まだ揺れてる!」


「それは俺が動いてるだけだ。振り落としたいところを少しだけにしていると思え。とにかく離れてくれ。それで冷静になれ!なんか大きい魔力が動いてるから俺はそこに行く!」


まだ周囲の目があることを思いだしたリセルがトワを何とか引き剥がしてくれた。2人で手を繋いで地面が揺れていないことを確認している。


集まっていた人たちにもケガが無さそうなことを確認するともう一度落ち着いたらしい2人に声をかける。


「屋敷の中から妙に大きい魔力が動こうとしているからそこに行ってくる。2人は様子を見て来るか町の人を守るか決めて行動してくれ」


「分かった。気を付けてね」


「ああ!」


既に侯爵にはケンカを売っている身ではあるが屋敷の中に踏み込んだとあっては言い訳はできない。ちゃんとそれだけの理由を見つけることが出来れば良いのだが…。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


倒れている人たちを横目に俺は屋敷の中を走る。目標の魔力まで一直線に進んでも良かったが、それをすると屋敷を破壊しなくてはならない。万が一を考えて暴挙に出るのは自粛しておいた。


しかし、屋敷の中にいるのは服装からして普通の使用人の人たちのようだ。地震のこともあって顔色は悪いが、けがはしていないようで何よりだ。おまけに俺を体を張って止める人もいない。地震がある意味功を奏している。だからといって褒めることも無いけどな。


走っている分には気が付かないが、使用人たちが立てずにうずくまったままなのは屋敷自体は微妙に振動しているのが原因のようだ。大地魔法を使えば止められるがそれをする義理も無ければ立ち止まる時間が惜しい。


しばらく走っているうちに魔力を感じる真上にやって来た。なんてことは無いただの部屋である。使用人の使っている部屋らしい。


「魔力はこの下か。下に行く階段があるんだろうけどそれを探す時間も惜しい。こればかりは仕方ない!」


意を決して右手に魔力を込めて、床へと振り下ろす。


「『爆破』!!」


大穴を開けるつもりで叩きつけると凄まじい音と共に床がはじけ飛んだ。部屋は無残なことになったし、少し屋敷も揺れたことで悲鳴が起きたが許してくれ。謝罪終了。


爆破の煙が晴れると見えたのは土の層だ。どうやら地下深くに部屋か何かがあり、そこで魔力があるようだ。


「土なら穴を掘るまでだ」


むき出しになった土に触れると、魔力をガンガン注ぎ込んで穴を大きく開けていく。土に干渉して穴のスペースが出来るように圧力をかけていると考えてくれればいい。


みるみるうちに下へと進んでいくと魔力が近くなってきたのを感じる。もう少しだとなったところで土の層がなくなり、金属で出来た何かにぶち当たる。


俺からすれば床だが、中から見ればこれは天井なのだろう。ならば再度『爆破』!!開けてみると中から人の気配と共に目当ての魔力が溢れてきた。


「ビンゴ!」


ためらいも無く飛び降りると何かの装置の上に着地する。装置の高さとしては10メートルほど、部屋の広さとしては俺が過去に通っていた小学校の体育館くらいあるだろうか。そこには先ほど見たのとは違った服装をした一団と見るからにお金のかかった服装をしている小柄の爺さんがいた。


「だ、誰だ!貴様は」


片眼鏡に口ひげとあごひげはピンと尖ってそれぞれが3方向に伸びている。頭には暗い色の帽子を被っていてそれと同系統のコートを纏っていた。今はもうすぐ夏だぞ?暑くないのか?それと手には杖をついているが武器ではなさそうだ。センスを疑うほど宝石が付いている。悪趣味が過ぎるとは思えないけどあれが普通か?


「どうも!怪しい魔力を感じたので突入させてもらった次第です」


「勝手に私の屋敷に入るとは無礼な!私兵隊は何をしている!」


「庭で連れがきれいに倒しましたよ。あんまり強いのはいなかったですね」


「何だと!?」


追撃の言葉を飲み込んだが、一人鋭い目つきでこちらを見据える男がいた。立ち位置からして侯爵の用心棒かな?とりあえずの相手はこいつかな。


「まあ落ち着きましょうよ。この魔力抑え込ませてもらいますけど、嵐魔法ですよね。船を沖に出して漁をする邪魔をしている証拠となると考えて良いですか?」


「ディース!奴を始末しろ!!」


「こいつを相手取るには今貰っている給金では割に合わん」


「何だと!後でいくらでも払うからこいつを今!何とかしろ!」


用心棒の男は青紫色の挑発をしていて、腰に提げているのは珍しいことに刀系の刀剣だ。服も軽装の鎧を着けているがあくまで動きを邪魔しない程度に抑えられている。籠手や具足も見栄えよりは性能を取っているのが分かるほどに良い物みたいだ。


ついでに部屋の中にいる他の人は研究者ですって主張する白衣を着ている。この人たちはそれだけで十分でしょ。


向こうが交渉している間にやることをやってしまおう。


「とりあえず、ば~ん」


魔力タンクになっていたらしい箇所の機械を破壊すると装置の動きは停止する。装置全体が爆発しなくて良かった。だがこれで嵐魔法の発動も止まったし、微妙に動いていた地震も止まることだろう。


「じゃああとはここにいる人たちを拘束して話を聞けばおしまいだね」


侯爵の身柄を考える必要はほぼ無い。白衣の一団が一人でも残ればこの装置という証拠がモノを言ってくれるだろう。安心したらヤル気出てきた!行くぞ!

お読みいただきありがとうございました。毎回の文言は同じですが、毎日感謝しております。

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