トラップを仕掛けてみた
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相対している男たちは全部で5人、その服装は裏仕事してます!と全力で主張する黒づくめに目の部分しか開いていないマスクを被っている。この姿をした男たちを見た人に聞けば百人が百人とも通報案件だと判断するだろう。
得物を叩き落されたことで予備が無かったのかまず一人がそのまま襲い掛かって来る。その後ろでは残りが手を腰の後ろに回しているので武器を手の取るまでの時間を稼ごうというのだろう。そのための特攻ということだ。潔い決断だね。でも俺はそういう命がけの人間は嫌いじゃないよ。
トラップその1、結界によるエレベーター
結界魔法を足元に展開しておき、相手がその領域に入り込んだ時点で上空へとご案内した。およそ200メートルほどだろうか。いつも飛ぶ高さくらいまで上げておいた。少し広めに用意しておいたので襲い掛かって来るときに走っていた時の勢いが止まらずに落ちてくる、といったことは無いようだ。では放置して次に向かうことにしよう。
と思ったのだが、後に続くはずだったらしい男たちは新たにナイフをそれぞれ取り出している。が、その視線は上に向けられている。さすがに仲間が空へと浮き上がっていく様子を見て平静ではいられなかったらしい。敵である俺の目の前で呆然としている。
「ちょっとちょっと!よそ見してていいの?」
俺が手をパンと叩きながら注意するとハッとしたように意識を戻し、2人が立ち向かって来た。
『直感』が何かはたらきかけてくる感じがある。奴らの持っているナイフから感じるということは何か毒が塗られているのかな。今の俺の直感が働くということは触れない方が良いんだろう。たとえほんの少しでも。
トラップその2、光玉そして影魔法
時刻はしつこいけど夜明け前の深夜。とりあえずは自分の後ろに光の球を発生させて自分の影を長く伸ばす。逆光になったとしても俺自身が光の前を陣取っているから目が眩むことも無い。ほんの少しの動揺は見えたけど構わず前2人が突っ込んでくる。これ自体は攻撃じゃないからね。何かされる前に確保しようと考えるのは悪くない。
でも今回ばかりは立ち止まった後ろの2人の方が正解だと思うな。
というわけで自分の影を操って男たちの体に這わせる。暗いけれど魔力のこもった影の動きは見えたようで慌てて回避に移ろうとするが、いかんせんこちらの方が動きは速い。先に向かって来た男2人のナイフを持った腕を拘束そのまま自分の胴体にナイフの刀身が全て埋まるように刺す。表現としては刺させると言った方が正確か。
刺した瞬間から体が痙攣する。マスクの下の口の部分から泡を噴いて倒れる。
「うわ、即死の毒かよ。どんなレベルだ…」
これは触らない方が良いですわ。船の近くでは出来ないけど死体は十分に燃やした方が良いな。海に捨てたら毒が広がりそうでダメだし。
この時点で勝ち目がないと判断したのか撤退の判断を下してナイフを収めると2人は別方向へと逃げ出す。
「あっ、卑怯な!」
と口では言っておくが、既に準備は出来ている。それぞれの男の足元に向かって魔力を放つ。
トラップその3、王道の落とし穴
次に着地しそうな地点に10メートルほどの穴を開けた。これくらい地魔法が使えれば準備は容易い。完成するための速度は力業なところがあるので、簡単ではないかもしれないが。
あるはずの足場が無くなってしまった2人は落下していく。もしかすると昇ってくるかもしれないので雷魔法を叩き込んだあとに、氷の塊を落としておく。動く気配が無いことを確認して穴の中を確認しに行くと焦げた臭いと体をぐったりとさせた姿が確認できた。
落とし穴の中から回収すると、お馴染みの海老反り拘束をしておく。もう一人の方も同じ処理だ。
毒で死んでしまったらしい二人が確定であることを確認するとアイテムボックスの中に収納しておく。燃やす前に明るいところで検分する必要もあるだろう。死体そのものが脅しに使える気がしないので燃やすのは確定です。
ちなみにこれらのトラップは2ヵ月の間に色々と土木作業をしていた最中に使っていた作業用魔法だ。エレベーターはそのままよく使うし、光玉と影魔法は夕方が近づいて来てどうしてももう少し作業をしたいときに使っていた手段だ。
最後の穴掘りは作業中の遊びの部分もあったが、なんだかんだ処理をしようと思った時に穴がすぐに出来るのは便利だったのだ。そのあたりは色々ということで。
最後に拘束した男たちを結界で覆うと上空の結界を下げるように操作する。最初に襲い掛かってきた一人がどうなっているかだ。
上空を見上げていると徐々に黒い点が見えてくるが動く様子が無い。下りれないと諦めてじっとしているのだろうか。下りられるくらいの高さになってからが注意だ。降りて逃げられたら元も子もない。ということで結界を変形して拘束する。が、それでも反応がない。
もしかしてと思っていたら、ナイフを刺して自害していた。死体は他の2体と同じようにアイテムボックスに収納する。となると任務失敗すなわち即死となっているのか。捕まえた奴らも起きたらどうなるか分からないな。
ナイフ以外に死ぬ手段か。攻撃手段に等しいと考えていいだろうな。ありがちなのは歯に毒を仕込んでかみ砕いて死ぬとか?厄介だな~。死体も情報を持つと言うからこいつらの体には情報は無いと考える方が良いだろうか。
せっかくの証拠を死なせては困るので身に付けている物を全て剥がしてみる。まあつまりは見たくもない男の全裸だ。女性のなら見たいというわけでも無いが。全裸にした後で再度縛って拘束する。
持ち物から毒物の反応を確認してみると持っているナイフ以外にもそこそこ強い毒物の反応があったので全て取り上げる。思った通り歯にも仕込んでいたので抜歯する。
抜歯のときの痛みで気絶から復活した男たちだったが指しか動かせない状況は想定していなかったようだし、頼みの綱の毒も取り上げられているで何も出来ないでいる。もぞもぞしている様子は虫のようだ。近づけると問題なので間には結界で仕切りを入れておこう。
「さて、もう一回落とし穴に落としておいて、いるだろう監視役も拘束しますかね」
実働隊はこいつら5人だろうが、その成否を見届ける奴もいるのではないだろうか。思っていたよりもしっかりと部隊として成立しているようだ。そしてそいつこそが責任者として情報を握っている可能性が高い。どんな組織でも責任ある奴が報告することが多いもんね。
「ちなみに君たちは組織の責任者だったりするのかな」
質問を投げかけるが話せないようにしているので返事は無い。ただ、言葉が無くても反応はある。そして感情を読み取る魔眼がある。
「違う訳ね。わかったよ。ん?なんで分かったって思ったね。また当たった?そういうことが出来る人なんですよ~。ご愁傷様だったね」
ここまでしてようやく恐怖の感情が出てきた。得体のしれない怪物とでも思ってくれたらしい。さて次に行ってみましょうか~。
お読みいただきありがとうございました。毎回の文言は同じですが、毎日感謝しております。




