数時間で成果に繋がったから驚かれた
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問題無く船が帰ってくるのを見届けた後はそのまま帰ることにする。漁師さん達に感謝される理由は横で宙に浮かんでいる男を止めたことで心当たりはあるけど、受け取る気はない。漁師さん達の役に立ったのは俺の都合の副産物みたいなものだし。
よし、見つからないうちにずらかるとしよう(小物感)
漁の結果がどれくらいなのかとか少し興味はあったけど、とりあえずは希望の出ることができたのだから自己満足しておこう。
浮かせたままだと目立つので気絶した男は肩に担ぐふりをして直接は触らないように浮かせたまま冒険者協会へと戻った。町中では肩に男一人を担いでいるのは変な目で見られたが逆に誰にも止められなかったので問題無いことにする。アイテムボックスに生きてると判断しているものは入れられないからな。この運び方で仕方ない。
途中で衛兵に止められたらどうしようと思っていたが、出会うことも無く冒険者協会の前に戻ってくることが出来た。
入るとさすがに午前中に暴れていた冒険者たちはいなかった。おそらく自己鍛錬にでも行っているのだろう。感心感心。
受付で協会長さんに繋いでもらうように受付でお願いした。ローブの男を抱えていることは変な表情はされてしまったが、ニコニコとした表情で押し切ったらうまくいった。元から通すように言われていたのかもしれないが、止められないことを少し不思議に思いながら応接室に案内された。しばらく待つと協会長さんがやって来た。
「待たせてしまって悪いな。怪しい男を担いできたと聞いたが?」
「嵐魔法を悪用して漁の邪魔をしていた男を連れてきました」
床に転がしていた男を指で示す。
「ただ、こいつ一人で毎日早朝から深夜までカバーできるとも思えません。だからって嵐魔法を使えるような人材が他にもいるとは思えないですけど。とりあえずずっと俺が抱えてるのも何かと思ったので連れてきました」
「ちょっと待ってくれ。こいつが原因なのか?」
「とりあえずこいつを抑えてみたら海が荒れることは無かったです。調べてもらったら分かりますけど先程漁が出来たって話が回ってくると思いますよ」
俺も嵐で荒れ狂う中で漁をしてきましたとは言わない。その魚は自己消費しようと思っているからだ。
なぜか頭痛が発生したらしいブーランさんはこめかみを指で押して絞り出すように聞いてきた。
「お前に頼んだら一気に解決するのか?」
「いや~、どうでしょう」
力ずくで解決して良いなら何でも出来るけど、言ったら引かれそうだから言わないでおく。
「とりあえずこいつらの交代の時間までに何らかの対策をしないと次が来てしまうんで。預けにだけ来ました。これだけ拘束してあれば大丈夫だと思います。無詠唱魔法を使うとなると厄介ですが、心を折ってしまえば大丈夫だと思うんで反抗するようならまだ詰めます」
「待て待てこれ以上は不要だ。それに現状を客観的に見れば逆らえば命が無さそうだと分かりそうなものだ」
「とりあえず起こしますか?」
話を早く進めたいのだ。
戻って来ている最中に考えたのが、一人で出来るわけが無いということだ。漁に出る時間なんてまばらだ。それを常に邪魔するためには常に張りついてスタンバイしていないといけない。どう考えても一人では実行不可能だ。少なくても3人、多いなら多いほど一人の負担は減るだろう。まだ何かあると考えた方が良い話だと判断する。が、人を抑えた時点でこちらが有利だ。
向こう側の有利な点は漁師の邪魔をしているのが不明だと考えられていたことだ。魔法で人為的な現象だったのだと分かれば漁師さんはもちろん、街の人たちも黙っていないだろう。よほどの相手でない限り街が総出で立ち向かうことになるだろう。扇動はしないまでも味方はしよう。
つまり捕まった時点でこの男は私刑を食らう可能性が非常に高い。それを俺が助けたのだから感謝されるべきだろう。え?腕を一本落としたのはお前だって?それは敵意を見せたからだ。普通の人ならそれで同じ目に遭っていたのは間違いない。人にされてイヤなことは自分もしない。するならいつか仕返しされることを覚悟してやらねばならないという俺の信念に元図いての行動だ。やり返して見たければやってみろの精神である。どんな相手でも受けて立つつもりだ。
「起こしてくれ。背後関係を吐かせるにはそれしかないだろう。あ~その前に魔力封じをしておかなくてはな」
魔力封じの首輪。魔力の動きを阻害する魔道具だ。首が急所であることもあって装着されたら並みの力では簡単には外せない。安全を考えるなら専用のカギを使う方が着脱には安心だ。もちろん一つ手に入れてカギ無しでも外せるかの練習はしてある。こういう無効系は対策しておかないとね。
それはさておき。
「首が反ったままでは装着しにくい。起こした後の会話にも影響するから拘束を緩めてくれないか」
「え~。マジですか」
「一応、情報を素直に話すまでは丁重に扱わなければ。話さないかもしれないだろう」
「話さないと死ぬくらい追い詰めれば良いでしょう。俺の故郷には、犯罪者に人権無しという言葉があります!」
「ジンケンが何を指しているかは知らないが貴重な情報源に手荒な真似はするなと言っているんだ!」
「死ななければ治療は出来ます!死ぬか話すかの2択で聞いていけば良いじゃないですか」
「…お前と話していると頭が痛い…」
協会長であるブーランさんの意向を無視するわけにはいかないため、仕方なく、本当に仕方なく、首だけ海老反りの拘束を外し魔力封じの首輪を嵌めた。顔面を蹴って起こそうとしたがさすがに止められたので、手持ちのポーションを頭からかけた。そして交渉に関してはブーランさんが行うことになった。俺がやるとダメだと判断されたらしい。解せぬ。
「……が、う…ここは?」
「起きたか。ここはダコハマリの冒険者協会の建物内だ。俺は協会長のブーランだ。お前が漁の邪魔をしていた現場を冒険者が抑えてな。話を聞かせてもらいたい。首には魔力封じの首輪が嵌まっているし、お前を確保した冒険者もそこにいる」
いきなり起こされて入ってくる情報量かとは思ったが、受け入れたらしい。転がしたままの男の顔の角度から俺は見えていないが、言葉は全部信じるらしい。
さて、何が出て来るかな。
お読みいただきありがとうございました。毎回の文言は同じですが、毎日感謝しております。




