ダコハマリの街の商人は強い
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『金の生る木』をボコって情報を聞き出した日の晩、可能な限り全員集合をかけて集まった。内容を軽く説明しておいたら武闘大会のスカウト組は最初から棄権をされてしまった。会議の棄権ってなんだというツッコミは軽く流されてしまった。
それでも会議らしきものは進む。
「とりあえず何か起こりそうだけどダコハマリに行きます」
「お魚でも仕入れに行くの?」
「ちっがう!神獣の一体がいて夏の間じゃないと活動してないらしいみたいなことを朱雀が言ってたからでしょうが!リセルが関することだぞ!」
「おっと、それは失礼。大人しくついて行きます。ボス」
最初からドッと疲れるようなやり取りをして仕切り直しだ。なんてことは無い。誰が行くのかという話だ。
「誰が行くのかという話をしたくて集まってもらったわけだ。ちなみにリセルは絶対な」
「は~い」
会うだけでも良いらしいから青龍に一目お目通りさせてもらう。話慣れれば気やすい関係になれれば良いなと思う。
確かめた結果、少数精鋭になった。もちろん俺も行くし、リセルは強制参加だ。トワも従魔組も来るし、蜂娘たちもメインどころは当然ながらついてくる。
残るのは特訓と開発をしたいからとコトシュさんやロイーグさん達だ。冒頭の通りスカウト組もいきなり第一線にでるのは憚られるとやめておくことになった。ここまで見越していたということね。
ちなみにリセルの神獣関係は教えている。目立つところに朱雀からもらった羽根を置いているからイヤでも目に入る。なんだこれって聞いてくれたらこちらの思うつぼだ。その副産物か誰も俺と模擬戦をしてくれなくなったのが悲しい。ちょうど良いように手加減するのに…。
大人組が誰も来ないこともあるが、仮にも武闘大会の優勝者と準優勝者がいて、金級冒険者が3人いるのだ。よほどのことが無い限り年齢とみかけだけでどうこうなることは無いだろうと結論付けた。
思い立ったが吉日ということで翌日すぐにダコハマリに空間接続で到着した。既に何度か行っていることもあるが、街の雰囲気が少しおかしい。活気が無い感じに見える。最後に来たのは1ヵ月前か。そのときには感じなかった違和感だ。
「やっぱり税率が上がったことが関係あるのかな」
「年に一回の税率が上げられただけでここまで影響あるかな。ちょっと聞いてみよう」
ダコハマリに来ていた時に必ず寄っていた焼き魚の串焼きを出していた店に行ってみる。
「おじさん、串3本ちょうだい」
「あいよ、銅貨12枚ね」
「あれ?高くなった?前来た時は銅貨6枚だったと思ったけど」
「ごひいきにしてくれてありがとよ。旅行者かなんかかい?」
今の格好は街中で不自然でない程度に武装を解除している。襲われたところでステータス差を考えれば危険な目に遭う方が難しい。
「一応冒険者だけどね、今日は街を見て回ろうかなって」
「そうかい。悪いことは言わないから見るもん見たら大人しく次の街に行きな。そうでなきゃ高い金をふんだくられちまうことになるよ」
「たしかに高くなってるよね。不漁だって聞いたけど本当なの?」
「仕入れの時に聞いたが本当らしい。時化なんて起きる天気でも無いのに急に風が吹いたり、魚も棲み処を変えているのかいつものポイントにいないんだよ」
「なるほどね」
だから高くなっているのかと納得したところで、驚きのポイントがもう1つ出てきた。
「おまけに領主が年に1回だった税を年に3回取るって言いだしたらしくてね。1回目は終わったけど次の2回目までに貯めなくちゃいけないってみんな値上げせざるを得ないんだよ」
「実質税3倍!?それって街から逃げ出すレベルじゃないの?」
「そうは言ってもこの街で仕事を得て生きてきた人間にとっちゃあ簡単には決断できないよ。冗談かもしれないからね。何とか外と繋がりがあるやつが街の現状を王都に知らせようとしているんだけど、なかなかね」
王都には俺が知らせればいいか。移動日数0日の直通で知らせることが出来るしな。
「分かった。じゃあおじさん、3本と言わず全部ちょうだい。割引もしなくていいからさ。ここの焼き魚串気に入ってるんだ」
「ええ!?いいのかい。助かるよ。少しは売れ残っちまうんだけども今日は完売にできそうだ。今は何よりも金が手に入るのがありがたいよ」
まだ焼いていない分はこれからのお客さんのために残してもらって焼けていた20本は丸ごともらうことにした。食べきれなければアイテムボックスに入れれば良いしな。ソウガは魚も食べるからあげても良いし。
「それにしてもラゴギグ侯爵だっけ?悪い奴だね!」
「微妙に惜しい。ラグギゴ侯爵な。理由は何だろう。金が急に必要になったのかな。やり方が悪すぎるよな」
「やっつけに行くの?」
「闇討ちで良いなら行くけど」
「出番?」
闇討ちイコール忍者の仕事じゃないから。
「リセルが余計なこと言うからトワが勘違いしただろ」
「え~、そんなつもりは無かったんだけど」
ヤル気になったトワを諫めて理由を説明する。
「『金の生る木』のことだってとぼけられたらこっちが悪いってされかねない。真正面から行けばこちらが逆賊にされかねない。あくまで俺はいち冒険者だからな。だが、どうせなら表立って裁いた方が良い案件だろう。もう少し公式な権力を使った方が良い気はするな」
「強くなったからって気にすることは気にするんだね」
「こうやって気軽に食べ歩きできなくなるのはイヤだぞ。お尋ね者にされないように気を付けるくらいのことはするさ」
強いから何をしても良いと振舞うようじゃ税を引き上げたりする横暴な貴族とやっていることが変わらなくなってしまう。守るべき一線は守っておきたい。今までに破っていたらゴメンナサイしよう。
「あの~兄さん」
「え?」
焼き魚串をかったおじさんが話しかけてきた。その後ろには出店を出していた人たちが一緒に付いてきている。何事?
「ついでだから他の店のも見てくれないか?少しでも買ってくれると助かる」
おじさん一人だけを助けるのではなくて出店の人たちまとめて助けろと。まあそれくらいなら出来なくはないけど。そうでもしないと貨幣を稼げないということだろうし。俺は稼ごうと思えば出来るしここは一肌脱ぐとしよう。
拠点を確保する前に人助けをすることになった。こんなことでもしないと生きていけない街というのはまともでは無いな。現地民ではないとはいえ何とか出来ないかと考えてしまうな。
お読みいただきありがとうございました。毎回の文言は同じですが、毎日感謝しております。




