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2カ月の間にしていたことは

グレイブ村に本格的に入植し始めて2ヵ月が経過した。何せただ武闘大会で優勝しただけのいち冒険者がアンタッチャブルとも言われているダンジョンの攻略に乗り出そうというのだから何かされることも覚悟していた。


非公式ながらドラゴンと友好を結んでいることやザールさんとの繋がりや冒険者協会の後ろ盾もいつの間にか掴まれていたことで国から公式には何も言われることは無かった。むしろスタンピードが起こったときに壁になるとか100%不可能だと思っているだから見逃しているのだろう。


実際のところはダンジョンの探索は既に着手出来ている。その成果をまだ市場に流していないだけだ。理由は色々ある。

果実なんて貴族にピッタリなんだけど何か大事になりそうな気がして商品にする気にもならない。ザールさんも時期尚早と判断してくれているのだが、逆にいつになればGOサインが出るのだと聞いてみたい。怖いから聞かないけど。


「はい、追加の申請書だよ」


リセルが持って来たのは住民や冒険者や商人などの旅行者から言われたことを紙にまとめた要望を形にする申請書だ。

この2ヵ月で挙げられた例でいうなら酒場が欲しいやら鍛錬場をもっと広くしてほしいというのが冒険者から。商人からの要望は俺には届いていないザールさんフィルターがかかっているからそっちで何とかしてくれているんだろう。ただしそれでも。


「勘弁してくれぇ。俺の思っていた生活が遠い…」


「そんなこと言っても一番の責任者はイレブンでしょ。みんなの声を聞くのに適しているとも言えるんじゃないの」


「俺がリーダー役やってるのは一番強いからだろ。こういった事務面の能力に秀でているのとはまた違わないか?」


「でも出来てるじゃん」


「そうだけど」


思い出すのは最初のころの住居や生命線となる道の整備をしていた頃に始まり、色々と要望が出てきたから集約して、と気が付いたらこんな生活になっていた。


「稽古つけてくれって要望がここまで届いた時には何事かと思ったよ」


「言った本人もまさか通ると思ってなかったみたいで焦ってたじゃない。良い息抜きにもなったでしょ」


一日限定だったし、色々と篩にかけられていたから礼儀正しくかつ強いという人たちしかいなかったため、運営はスムーズだった。気持ちよく戦った上で広く出来なかったけど村の外の空いているスペースを第2鍛錬場として開放してしまったのは後悔していない。今もたまに俺も使うし。


「だからって書類仕事にまみれるのは想定外だ」


「最初ってそういうものじゃないかな。紙で残すだけすごいと思うよ。私たちはそうじゃなかったから」


「口約束だけで終わったらいけない気がするからな」


決めたことは必ず掲示板に挙げているし、更新も矛盾が無いように確認しながら行っている。そういう手足となって動いてくれる人材はザールさんが商会からやトワの元同僚たちから見つけてくれた。見て分かるものなのかと聞いたら、何となく分かるものらしい。どんな嗅覚を備えているのだろうかと突っ込んだら笑っていた。


「それでも最初だけだよ。名目上は村じゃなくて大きいキャンプだもんね」


「村を作ることも出来るだろうけどな。税金とか俺には難しいよ。自分が好きなようにしてるだけだし、粗暴な奴は追い出すだけだしな」


そうなのだ。『極上の果実ダンジョンを攻略するためのキャンプ』をグレイブ村に作っている。そのついでに建物の補修を行っているだけに過ぎない。

自分たちが入りたいだけのために温泉を掘り当てたり、要望に合った酒場に併せて飲食店を開業していたりするが、俺の中では全部ひっくるめて趣味の範囲に入っているのと変わらない。


何せほとんどの経費が自前の労働だけで済んでいるのだ。上に挙げたものに加えて警備もしているが、どの現場も衣食住完備の仕事になっている。


警備担当の装備も酒場の制服も俺とリセルがノリで作った物で間に合わせることが出来た。食料に関しては毎日交代で『食材の宝庫』にいく部隊がいるから問題が無い。不足しているものは獣人の村とのやり取りかザールさんが仕入れてくれるし。

住居に関しても俺がみんなと一緒に建て直したものに住んでいる。お客さん用の建物はゆくゆくは家族が出来た従業員用にしてもいい。色々とバリエーションを加えておいたので独り者しかいない従業員用の寮が満タンである。あ、当然ながら男女は別ね。



…………


「なあ」


「何?」


「ここまでやったら村だな」


「今さらじゃない?」


「うん…、まあ今さら、だな。いざとなったら土台から全部アイテムボックスに入るからな。キャンプということにしておこう」


そういうことにした。


「それに2ヵ月くらい攻略しなくても『極上の果実』も逃げないよ」


「そうだな。俺が動けない間に自由に鍛えてもらったと思うけど、今入れるのはどのくらいだ?」


まとめ役は得意と言わんばかりに秘書役をかってでてくれていたリセルはよくぞ聞いてくれたと話し出す。


「単独で入れるのはトワちゃんと薙刀ちゃんかな。安全のためにってことでペアで行動してるよ。後の人たちはまだ厳しいかな」


「そうか。やっぱりレベルの高いダンジョンだから仕方ないよな。しっかし、連戦に対してここまで厳しいとは思ってなかったよなぁ」


「普通はそんなに連戦しないからね。イレブンのやっていたことはおかしいんだよ」


「体力の続く限りやるだろ」


「素材が持ち帰れない時点でやめるんだけど、その心配が無かったんだもんねぇ」


「アイテムボックス抜きにしてももう少しみんなレベル上げに勤しむものだと思ってたよ」


何度言われても不思議である。ステータスの数値が問題無ければどんどん動くものだろうという常識は打ち砕かれた。

レベル上げ自体は分かっているが、何がきっかけかが明確になっていなかったのだ。


曰く、魔物を倒す。

曰く、知識を身に付ける。

曰く、走り込みなどの特訓をくり返す。


戦闘系のスキルでなく技術系のスキルが練習で成長することもあってか、迷走していたのだ。結論を言えばどれも正しいけど、素のレベルを上げることとスキルレベルを上げることが混ざっていたんだろうな。まあ普通はステータスなんて見えないから仕方ない。

ということで分けて考えるように指示して、訓練を促したのだが魔物を倒すのが捗らなかった。大規模な魔物の巣に飛び込むわけじゃないんだからどうにでもなるだろうと思っていたら感覚の違いが浮き彫りになったというところだな。


「おおよそのことは対応したはずだ。俺もまた冒険者としての生活に戻るぞ!


「まあ大丈夫だと思うよ。たまに帰ってくれば対応できるだろうし」


帰ってきたらまた領主もどきの働きは必要らしい。

まあ仕方ないよな。みんなが安心して生活するのに必要というなら少しくらいはしようじゃないか。


「あ、でもその前にこの案件だけは処理してね。ザールさんからこれだけはこれからのためにも自分で対応するようにって回されてきてるから」


「なんだ?」


えっとなになに?金級冒険者達からの合同攻略作戦の受け入れ要望?

不定期更新とか言いながら完全に更新していませんでした。期待して待っていてくれた方がいたら申し訳ありませんでした。そんな奇特な人(失礼)がいると思わずに置いてしまっていました。今度こそ定期的な更新はお約束できませんが、更新していこうと思います。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
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婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
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