ヒャーズさんの新しい武器を見る
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改めて考えてみると個々人の戦闘については秘密にしたい人もいるのではないか。見ない方が良いかと一瞬頭を過ぎったが、むしろ試させてくれと言われたので見させてもらうことにする。
ヒャーズさんが取り出したのは完全にリボルバー銃だった。銃弾が飛んでいくわけでは無いみたいだけど形状は限りなく似ていた。
「火薬の開発って出来てましたっけ?」
「カヤク?なんだそれは?」
細かいことはおれもよく分からないが推進力自体も魔力で補うらしい。まっすぐに飛ぶだけでなく曲射も可能とのことだが、なぜか分からないがヒャーズさんには出来ないらしい。
「そのシリンダーのところには何を入れるんですか?」
「ロイーグが言うには魔法を込めようとするとセットしてある弾丸に封じ込めるらしいな。今のところ俺が使うと射程距離が遠くまで伸びるくらいしか効果は無いが。色々と出来るようにはなるものらしい。それこそジグザグに飛んで着弾させることが出来るようになったりとかな」
それはもう曲芸の域だな。詰まるところ要するに魔法銃か。既にそこまで言っているならヒャーズさんの戦闘能力は一段上に上がっていると言っていいな。
「どれくらい込められるんですか?」
「MPでいうなら集中すれば50くらいは込められるが、まだ入りそうだ。俺ではそれ以上は難しい。飛行経路の調節もだが、あとは連射が難しいんだ」
「なるほど。とりあえず見せてもらえます?」
「的は?」
「俺が的になります」
表情を見れば分かる。何言ってんだこいつって顔をしている。だが、納得したような表情に変わる。
「何言ってんだって思ったけど、不意打ちでもしない限り死にそうにないか」
「まあ命の危機を感じれば本気出しますからね」
「朝一のランニングも本気じゃないとか…」
少しへこませてしまったが、準備を整える。結界を念のため二重で用意しておく。今回はどれくらいの効果があるのかを検証したいので色付きで皹が入れば分かりやすくなるようにしている。
「用意できてますよ」
「ああ、行くぞ!」
バァン!!と破裂音をさせて銃弾が飛来する。結界に接触すると同時に中に封じ込められていた爆炎が解放される。前面にしか結界を準備していなかったので回り込んできた熱が少し熱い。連続攻撃は出来なかったみたいで少し風を吹かせると拡散していった。
「これが最大量ですね」
「そうだ。ダメージとしてはどうだ?」
「結界に皹は入ってないですね。でもそのあとの爆炎の広がりは不意を打たれました。着弾までに何をされるのか初見で対応されないので良いのではないでしょうか」
「そうか。他には?」
「良ければ俺が銃弾に魔法を込めてお渡ししましょうか?そうでなくても他の人に込めてもらうのでも良いと思いますがどうですか?」
「そのあたりはロイーグに聞いてみないと分からないな。これを開発したときにイレブンに聞いていないのが不思議だ」
「それもそうですね。今度聞いておきます」
ちなみに後日聞いたところによると、充填しても長時間銃弾に魔法を留めておくことが出来ないらしく、使い手自身が魔法を込めないといけないそうだ。ということはヒャーズさん自身ががんばるしかないようだ。
それと俺は自分に似たようなことはやろうと思えば出来るのでもらったりはしない。ただ、銃自体が簡単に広めてはいけない感じの武器なので扱いには注意するようにロイーグさんにも注意してもらっておく。
「次は連射性を見ましょうか」
続いて同じように試してみた。連射の方が先程に比べて爆炎は小規模になっていたし、爆発するのではなく火の玉が飛んで来たり、着弾と同時に炎の刃が炸裂するものもあった。思ったよりもバリエーションがあるんだな。
「こっちはどうだ?連射でも一発に込める時も俺が魔法を使っているのと変わらないから俺が使っているのと同じになるんだが」
「発射と同時に何が飛んでくるのか分からないやつは対応に悩むこともあるんじゃないでしょうか。火の玉は飛んで来た瞬間に魔法と変わりが無いので何かしらの対応が取れそうですね」
「そこまで見極め出来るのもお前くらいのものだと思うがな」
そう言われてみればそうか。発射音はするから気づかれるのは間違いない。着弾してから予想外のダメージを食らわせることが出来るかがポイントか。
「だったら爆炎と着弾前に攻撃範囲を広げる刃状が良いと思いますね」
「そうなるよな。よし、わかった。命中率がイマイチなんでな。訓練あるのみだと思って続けることにするよ」
「期待してます。それはそうと俺も撃たしてもらっても良いですか?」
やはり一度は手にしてみたいものだ。俺が知っているものとはだいぶ違う物であるにしても。ということで手に取らせてもらった。
「試し打ちして見ても?」
「いいけど壊すなよ」
「分かってますよ」
魔力の数値自体も耐えられない可能性があるから少しずつ注ぎ込むことにしよう。
自分で用意した岩の的に向かって同じ火魔法の弾丸を撃ちこんでみる。最初は威力を抑えめで速射のつもりでダダダダダンと。弾丸軌道の調節もやってみたが、意外と簡単にできた。火魔法だけでなく風魔法も一緒に使うと良いみたいだな。火魔法だけでやると真っすぐ飛んでるロケットが横からも火を出して軌道を調節する感じだ。それはいくら何でも無理があると言っていいだろう。上手くいかないはずだ。
次に一撃に魔力を込めていくつもりで入れていく。ヒャーズさんが限界に感じていた50を超えて100まで。まだ余裕はありそうな気はしたが壊したくはなかったのでそこまでにとどめておく。そして撃ち込んだら的を爆散させた。
「自分の武器を自分よりもうまく使われると何かが折れそうだな」
「そんなつもりでは無いんですけど、すいません」
「いや、いい。どちらにしても俺にもまだまだ鍛えるところがあるのが分かったわけだからな」
やる気に変えてもらったのなら良かった。
「差し当たって何を鍛えるかの中で一番聞きたいのだが、どうやって魔力をあんなにも込められたんだ?」
「やっぱり魔力操作じゃないですかね。素早く込めていくのにスキルレベルを上げておいて損は無いと思いますよ」
「やはりそうか。よし、改めて鍛えていこう。あとは数だな。いつでも今のイレブンのような集中が出来るようにやっていってみるか」
俺の方が完全に年下なのに、ここまで色々と相談してもらえると嬉しい。射撃の練習となると色々な訓練があった気がする。ロイーグさんにまた色々と吹き込んでおこう。
「あと銃だけでなく火魔法と相性の良い風魔法の習得をしてはどうですか?」
「考えたことはあるが身に付かなくてな。諦めていたんだ」
「そうでしたか」
余計なことを言ってしまったようだ。
「いや、だが改めて鍛えるんだ。過去出来なかったことでも再度挑戦してみるのも良いだろう。良いきっかけだ。やらせてもらうよ」
「そうですか。がんばってください!」
ついでだからと風の現象について話しておいた。空気とは何も無いのではなく気体が存在していること、気圧の変化によって大きな偏りが生まれてその気体の移動が風となっていること。精霊としても気まぐれが多いのもその辺りが原因ではないかということを伝えておいた。
気体という概念は驚いたようで、一般的な知識くらいは勉強してもらうのも有りかもしれない。一応はこれでも色々と勉強してきた身だ。ティートとセラがいることもあるし勉強できる環境をグレイブ村に準備するのも有りかもしれない。これも覚えておこう。
「では、次は」
「私だな」
ミルティナさんだ。
お読みいただきありがとうございました。毎回の文言は同じですが、毎日感謝しております。




