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国王公認のハニートラップだったらしい

ブクマ・評価・いいねなどいつもありがとうございます。読んでいただけるだけでありがたいです。お楽しみ頂けると幸いです。

「なんでこんなことをしなくてはいけないのかしら」

「そんなこと言っても良いの?金級冒険者でも複数だと苦戦するフレアワイバーンをも仕留めた方に会えるのよ」

「私は魅力には感じないわ。そんなの野蛮よ」

「まぁ、よくおっしゃいますわね。さっきからソワソワしっぱなしですわ」

「う、うるさいわね!余計わお世話よ!」


そんな会話をされているのを耳にしつつ、フレアワイバーンに指示を出した女を探す。


あのとき拡声魔法を誰かに使わせていた時点で平民出身の魔法使いではない。その上で口調や言葉から溢れていた無駄な自信から考えると貴族であることを推測できた。

貴族なら公式に出された王命を無視できない。覆せるだけの何かが無い限りは。


「これで全員なの?」

「全員では無いが、始めていこうか。上級貴族様の中には特別扱いされるような場でない限りは出て来ないようなのもいるからな」

「めんどくさ…」


思い込みかもしれないが生まれだけを誇りに思うやつの気が知れない。偉いのは過去の人たちであってお前じゃないと言いたい。何か成し遂げたのなら別だけど。


「貴族ってのはそんなもんだよ」


元王族のデテゴが言うならどこの国でもそうということだろうか。


「まあ文句言いつつこれだけの人が集まってくれてるんだ、さっさと始めちまおう」

「そうだね。みんなをあんまり待たせ過ぎてもいけないし」


闘技場入り口から会場内での警備は全てこの国の兵士が担っている。貴族令嬢さん達も先日の試合を見に来ていた人たちばかりで実際の舞台上に上がれるとなると少々テンションが高くなっているのも仕方ないと言えるだろう。

まあテンション上げている時点で犯人でないことは丸わかりだ。もっと慌ててるはずだし、あんなに目立つことをするんだから個人席で観戦していたやつが犯人だと思う。おそらくこの国の上層部、もしかしたらデテゴも既に犯人の目星は付いているのかもしれない。


こうやって大事にすることでもっと確証を掴もうとしているのかもしれないな。


付き合わされる俺が面倒なだけである。俺は舞台上で拡声された声の判別役をしつつ、優勝者として潔白を証明した貴族令嬢たちの簡単な握手会になるそうだ。


「握手会は必要なのか?」

「王たちからしてもお前を敵に回したくないからな。誰か令嬢を見初めてもらいたいという思いがあるのは否定しない」

「こういうときだけお役所仕事かよ。もう少し自由を愛する冒険者根性見せろよ!」

「自分の家庭を守る方が大事でな」

「ひでぇ!!」


言い合いをしている間に準備が整ったようだ。


審判さんがOKサインを出してくれている。一人目が始まるようだ。


試される令嬢は一人ずつ円形舞台の中央に立ち、審判さんに拡声の魔法をかけられた後で、あのときに発せられていた言葉を読み上げる。


『これでもう良いのかしら?…そう。いくわよ。フレアワイバーンよ!暴れなさい!!』


「一人目からは出ないよね。当然違うよ。というか今聞いて思ったけど若い女性の声じゃなかったぞ」

「じゃあ次は挨拶行くぞ~」

「待て、おいこら!」


デテゴを止める間も無く、実験が終わった女性が目の前にやってくる。よく見たらめちゃくちゃ着飾ってるじゃないか。なんでだ?


「お初にお目にかかります。わたくしはタオレイル男爵家の次女のアプリコットと申します」

「あ、はいどうも、イレブンと言います」


簡単な挨拶を済ませると握手をして終了だ。



かさり。



握手のタイミングで何かを渡された。こっそりと小声で囁かれる。


「我が家への地図でございます。もしよろしければまたお会い頂けるのを楽しみにしておりますわ」


バシンとウィンクを決めて去っていかれた。思わず目で得体のしれないものを見たと追いかけてしまうが、感じた寒気に視線をまっすぐに戻す。

すぐに手元に目をやるが確かに家名と家の場所が記された地図が書いてある紙だった。なんというか若干の罪悪感を感じながらこっそりと燃やす。行く可能性が皆無だからだ。


「もったいないとか考えてないか?」

「考えてないから安心しろ。次行こう…ってもしかして全員やることになるのか?」

「そうだな。国一番の娯楽だったし玉の輿を狙ってなくても家と関係を持つためなら何でもやるってのが下級貴族の根性の見せ所だ」

「マジか…」


見えているだけなら十数人だが観客席に使用人たちに世話をさせている令嬢たちまでいる。全員やるのか?

握手会をしているアイドルたちの大変さをほんの少しだけ理解できた気がする。しかもこっちは握手しに来る側が仕掛けてくるのが公認だ。剥がしてくれるスタッフがいないわけでは無いが令嬢を手荒に扱えない以上いてもいなくてもあまり変わらない存在になっている。

あまり長引かせると後ろに並んでいる方々に後で睨まれることになる。最後の王女とか出て来るんじゃないだろうな。もう帰りたくなってきた。


「はい、次だぞ~」



『これでもう良いのかしら?…そう。いくわよ。フレアワイバーンよ!暴れなさい!!』


「……違うよ」

「だろうな。がんばってくれ」

「めちゃくちゃ面倒なんだけど…」


「初めまして。私は……」



とりあえず初日には見つからなかったとだけ残しておく。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


2日後。


「もう勘弁してくれ」

「女とただ話してるだけでいいんだから気楽なもんじゃないか」

「お前は見てるだけだからそんなこと言えるんだろうが!最初の結婚相手見つけに来ましたって人たちはまだマシだったよ!その次の婚約者いるけどあなたなら攫われても構いませんわってやつらは何だ!色んな意味で人生詰まされるわ!」

「まあ確実に色んな方面にケンカ売ることになるな」

「そんな色仕掛けが国家公認ってどういうことだ!!」

「喜べ。今日からはそんなことは無いぞ」

「もう油断しないぞ」


絶対に何か裏があるはずだ。戦うわけでも無いのに身構える。


「今日からは奥様方だ。既に相手がいて子どもを産んだ方もいらっしゃるぞ」

「そうか、それなら少しは安心なのか…?」


そう呟いたが何か見逃してはいけない何かがあると直感が告げている。しかもよ~く見たらデテゴの口がピクピクと震えている。面白がってやがる。


何か裏がある!なんだ!?…………分かった!


「婿に入れとかそういう勧誘か!」

「ぶはっ!良く分かったな!この2日で来てた令嬢方の母親が増えてくるからな。手練手管が込んでくるぞ。精々惑わされないようにな」

「ふざけんな!」

「こわいこわい。しばらくしたら呼びに来るからよ。ちゃんと仲直りしとけな」

「それこそふざけんな~~!!」


軽やかに動いてデテゴは控室から出て行った。3日目ともなれば俺も慣れたものではあるが、今日は少し違う。


「喜んでやってたの?」

「違うって面倒に決まってるだろう!俺の顔が引きつってたのは見てただろ?」

「ふ~ん……」


部屋の中にはリセルがいた。初日から戦闘が出来るメンバーは闘技場の中にいたのだ。リセルがいないはずがない。

自分が呼ばれた日に騒ぎを起こすとも思えなかったため何があっても怪我人が出なくて済むように兵士に加えて俺たちも警備に参加していた。

しかし、いつまで経っても当たりが出て来ないだけでなく俺に対してのアプローチが続くだけ。俺も飽きるが、みんなも飽きる。


それが分かっているのに煽っていくデテゴに俺は何か悪いことでもしただろうか。


「どこでも婿入りしてくれば~?」

「そんなことするわけないだろう!」


少し大きめの声で言ってしまった。そのため少し驚かせてしまった。


「そんな大きい声で言わなくても分かってるよ」

「な…ならいいよ。でかい声で言ってすまん」

「イイって」


「子どもの前で変なことを始めるんじゃないぞ」

「ロイーグ。そういうときは黙ってみておくのがマナーだ」

「イレブンとリセル仲良い。私は嬉しい」


全員集合している。少し血迷ってしまった。


「そういう関係なんだな」

「ほっほっほ。若いとは良いことじゃの」

「私だって里に帰れば…!」


思わずリセルと一緒に赤面してしまった。


そこに外から激しく走ってくる音がしてくる。デテゴっぽいかな?


バン!と勢いよく扉を開けられる。非常に慌てていることが分かる。


「竜が現れたぞ!」

お読みいただきありがとうございました。毎回の文言は同じですが、毎日感謝しております。

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