せっかくなので楽しませてもらおう
とりあえずこれで1つ区切りです。
いや、待て待て。整理しよう。ゲームの設定ではデテゴは何らかの理由で死んだ扱いになっていたはずだ。ザールさんが薬の取り揃えが良い道具屋をしていることから毒殺かなとは考えていたけど。
デテゴの本名、デクロズ・ド・ゴルドグランは帝国が大きくなるきっかけを作った人物として設定されていた。孫が即位する前には亡くなっている。
ゲームの中で帝国が最悪の国になっていったのは、皇帝として即位していたデテゴの孫が精神を乗っ取られたことから始まる。中盤で主人公が追い詰めるが、さらに皇子に憑依されてしまう。そこで解放されたら正気には戻るが、記憶はあるらしい。
憑依が解けたその皇帝は狂人にならずに必死に指揮を執る姿にまず感動する。以前にも言ったがここでラスボスへのヘイトが上がる。最終的に憑依していた奴を引っぺがして止めを刺す。ちなみに皇子はきちんと助かるぞ。
素直に信じてみると、デテゴは死んだと思っていたけど実は生きていたという良くありがちな設定の下、ゴルドグラン王国へと連れ戻される。毒で死んだと思われていたのだろう。
そもそも第三王子ということは知らなかったが、兄2人との帝位の争いの結果皇帝として即位して、帝国を導いたとしか考えられない。こればっかりは設定を考えた人を連れてこないともう分からない話だ。
そうなると連れ戻される可能性がまだあるか?もう毒殺の件は抜けたんだから自衛してもらうことで良いかな。
「ちなみになぜ帝国を出てるんですか?」
「兄上たち二人とは仲は良かったと認識していたんだがな。母上が3人とも違うのだ。私は母の実家が弱かったこともあり帝位争いには勝てなくてな。逃げることになった。その最中にはぐれてしまって付き添いの者たちを犠牲にしながらユーフラシアに流れ着いた。母がどうなったのかは分からん。そこからは一人で生きてきた。元から鍛えてはいたし、勉強は得意では無かったのでな。冒険者は性に合ったぞ」
「連れ戻される可能性はあるんですか?」
「ふふっ。そこをやはり心配してくれるのだな。二人と同じだ」
既にザールさんとメディさんは知っているのか。驚いてるのは俺だけだしな。生暖かい目が3人から向けられる。やめてくれ。
「それについては冒険者組合に正式に所属したことで王国民になったことが役立つだろう。恐らく居場所はバレただろう。先程言っていた一度の迷惑はそれだ。勧誘なら拒否するし、拉致されたなら戻ってくるだけの努力は約束しよう」
「まさか帝国が自国の皇子を連れ戻すのに毒を使うことは無いでしょうが。同じことが起こらないように薬系は整えておきますよ」
「そのためにも知っているレシピは全て吐き出しなよ。あんたの協力もするんだから」
「分かりました。あと、恐らく僕が危険だと感じたのは今回の事件のことだと思います。ただ、何があるか分からない立場の人だと理解しました。僕が言うのも変ですけどちゃんと自己防衛してくださいね。なんなら…」
「私がお前に譲ったものはお前のものだ。間違っても返却などしてくれるなよ。その方が無礼な行いだぞ?イレブンには感謝しているのだ。命を救ってくれた礼を更に要求するというのか?」
「う…。では頂いておきます」
それなら何も言うことは無いか。これ以上はゲームにあったことではなくなるから俺も何があるか分からない。漠然とした不安は残るが、それはまたその時に考えることにしよう。
「デテ…じゃなかった、デクロズ様が隠していた秘密は以上ですか?」
「うむ。協力してくれたのに秘密を持ったままというのは些か嫌でな。打ち明けた次第だ」
控えめに笑っているが、心に刺さる話だ。俺も隠し事はしている。どうしよう…、話すべきだろうか。
「イレブン君、人には誰しも秘密があります。脳筋には秘密が耐えられなかっただけです」
「おい」
「キミは気にしなくて良いのですよ。今回君がいなければ死んでいたかもしれなかったのですから。これは礼です。受け取るだけで構いません」
デテゴを無視して、ザールさんが諭してくれた。俺が普通じゃないことはもうバレているが、それは踏み込んで聞くことはしないのか。まだここがゲームの世界だということまでは話してないからな。話したところで意味が無いことではあるが。
俺は得体のしれない人間なのに、感謝するしかない。
「ありがとうございます」
「礼を言うのはこいつだよ。いつまで偉そうな話し方してるんだよ!気持ち悪い!」
「戻すけどよ。こんな時くらい昔取った杵柄を見せても良いじゃねぇか」
「違和感しかないのでやめてください」
「お前ら俺が傷つかないとでも思ってるのか」
「「傷つくのか?」」
「……もういいよ」
「…はは」
デテゴが何者だろうと受け入れた二人だし、その二人と一緒に過ごしてきた元皇子だから、俺のことも受け入れてくれるようだ。この人たちと知り合うことが出来て良かった。最初に決めた通り、可能な限り恩を返させてもらおう。
「僕も話し方はおかしかったと思います」
「いや、もういいから。二度としねぇからな……」
まだ考えることはやめてはいけない気はするが、一旦はこれで良いのだと思っておく。戦争が起こらないように、惜しい人を亡くさないように、守れるようにしていこうと思う。
「この後はどうするんだ?」
「予定通りです。アーミーアントと、それよりも強いディスガイズアントの巣ですね。ちょっと危険生物だとは思うので」
「まだ本調子じゃないから付いて行くのはしんどいな」
「現地には5時間は走りますから厳しいと思いますよ」
「リハビリに良いんじゃないか?」
「止めませんよ?」
「お前ら、本当に俺に厳しくないか?」
3人集まっているときはこういう流れになることが多くなるらしい。こういうことをしつつも仲が良いのって羨ましいな。
☆ ★ ☆ ★ ☆
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名前:イレブン 種族:変人 年齢:15
レベル:29
経験値:9406/23907
保有SP:200P
HP :440/440
MP :675/675
筋力 :119
頑丈 :149
素早さ:199
器用さ:89
魔力 :229
運 :29
攻撃力:159
魔攻力:229
守備力:224
魔防力:255
取得スキル一覧
○基礎
武術:格闘術(☆)
知識:運動学(☆)植物学(☆)薬学(☆)魔物学(☆)
感覚:視覚強化(☆)聴覚強化(☆)嗅覚強化(☆)目利き(☆)虫の知らせ(☆)集中(☆)心の余裕(☆)根性(☆)
技術:走行(☆)分析(☆)正確な動き(☆)作業が得意(☆)歩行(☆)口笛(☆)世話が得意(☆)
戦闘:強打(☆)疾風(☆)精度(☆)受け流し(☆)体術(☆)練気(☆)呼吸(☆)連魔(3)
魔法:生活魔法(☆)魔力センス(☆)魔力放出(☆)風魔法(☆)水魔法(☆)嵐魔法(☆)氷魔法(☆)
○上位
索敵(☆)調合(☆)採取(☆)テイム(☆)栽培(☆)
○特殊
ステータス閲覧 アイテムボックス(MAX) ドロップ率上昇 装飾品装備増加 取得SPアップ 生産成功率100%
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蟻退治の前にSPポーションを飲みまくって得たスキルポイントを振った結果を確認しておく。各種魔法とテイムや栽培を取得したことでほぼ使い果たした。
成長がかなり魔力に寄ってしまった。言い訳をさせてもらうと、魔法が便利過ぎることが悪いのだ。現実になると魔法の柔軟性が凄い。条件としてスキルレベルを上げきる必要はあるけれど、その属性に関することはかなり自由に出来るようになる。おまけに連魔があることで同時発動が更に容易になる。二連続で使うだけだったのはゲームの仕様だったんだね。もう少し使える属性増やしたら、対軍団でも勝てる人間魔法砲台になりそうだ。場合によっては必要になる可能性があるので頭の片隅には置いておこうと思う。
そんな関係で武術スキルがいらなくなりそうだ。武器が弱いのも原因である。頼りになりそうな鍛冶屋も探したいところだけど、いっそのこと魔国行ってドワーフに頼むのも有りかもしれない。
がんばって思い出すけど、99年前だとそんなに歴史的な出来事もないはずだ。起こるとしたら次は封印されていたラスボスの発掘とか、登場人物が各地で生まれていくことくらいだろう。
激しく周回するほど好きなゲームの世界に異世界転移したんだから、せっかくなので楽しませてもらおう。
お読みいただきありがとうございました。
まだ色々と遊び要素があるゲームとして考えているので、まだ続きます。今後も楽しみにしていただけると幸いです。