噴火を告げる!?3位決定戦
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これで準決勝が終わることは終わった。サティさんは納得してくれたのかな?話し方がいつも通りに戻ったし、俺よりも先に戻っていったから本当のところを聞く間も無かったし。
少しの間勝ったことの実感がないまま固まっていると審判さんから早く降りろと指示されたので舞台から降りる。すると今後の説明が始まった。
「3位決定戦と決勝は休憩時間の後に始まることになります!今年最後の熱戦を制するのはトワとイレブンのどちらか!乞うご期待でぇーす!!」
ざわざわと観客席が動いている。元から承知していたと弁当を取り出している人たちと今から屋台に買いにいこうとする人たちである。
よく見るとサティさんも3位決定戦が出来るのか確認されているみたいだ。俺にもあるのかな。勝ったら大丈夫んだろとかそんなこと言わないよね?
しかし3位決定戦ってどうなるんだろう。恋人同士でやることかね。そういう形もあるのかもしれないけどちょっと想像つかないな。
決勝に関してはトワがヤル気ではあるがデテゴと戦ったダメージから復帰していないなら別途機会を取っても良いと思う。不完全燃焼のまま戦ったところで意味は無いし。
「とりあえず戻るか」
念のため決勝に出場するのに問題無いかを聞かれた上で戻った。聞き取りのときは妙に怯えられてしまった。秘奥義のせいかな?威力がハンパなかったもんね。
「もどったよ~」
「お帰り」
「お帰りなさいませ」
「お帰りなさい!!すごかったです!!」
色々と声をかけてもらったが昼食中だったのでとりあえず食べ終わってから話をすることにしてもらった。無事に全員いることを確認すると一度外に出る。トワはいなかったけどどこ行った?
「秘奥義はやり過ぎじゃない?」
「リセル、いきなりそれか。あれくらいしないと俺が競り負けてたよ。画的にもな」
「友人の情よりも大会の盛り上がりを気にするなんて思わなかったな」
「対面してたら俺の判断が間違ってなかったって分かるよ。秘奥義を使うくらいの必要はあった。それくらい追い込まれた感じはあったんだ」
「実際に戦った人が言ってるならそおれでいいよ。サティさんもすぐに治癒してたしね」
「回復の秘奥義を使うのが出来なかったから危なかったな」
「もう。だと思ったよ。この話題はこれくらいにしておこうか。トワだよね?」
さすがだ。俺が一番気になることを言い当ててくれた。
「そうだよ。どこに行ったんだ?」
「イレブンに余計な心配されたくないから一人でいるって」
どうりでいないはずだ。探知で探せないことも無いが、絶対に嫌がるだろうからやめておこう。
「まったく…。余計心配になるってーの!」
「そう言わないで上げてよ。最後まで対等な相手として見てほしいって気持ちの表れなんだから。完全に大丈夫とは言えないけど」
「まあ完全だと思ってやらないといけないんだろうな」
「っていうか絶対にそうしてあげて」
「危なかったらまた何かしらの対応はするけどな。それなら余計に秘奥義が使えるようにしておかないとな。どこかで適当に少し魔物倒してくるよ」
「あ、じゃあ昼ご飯におにぎり作ってあるからこれ持って行って」
どこから手に入れてきたのか竹の皮で作った包みを一つ渡される。そこまでされなくても自分でいくらでもどうにでも出来るのだがしてもらったのならありがたく頂戴する。気持ちは込めて対応せねば。
「お、ありがとさん。じゃな」
「はいはい。いってらっしゃい」
「行ってくるよ」
周囲に誰もいないことを確認してリセルの頭を撫でると空間接続を発動して移動した。
「なんで撫でるだけでこんなに緊張しないといけないんだよ」
≪いきなり何独り言をグチってんのかしら?≫
「あ、朱雀!聞きたいことがあったんだ!」
移動したのはサティさんの鳳凰について疑問があったからだ。あれは余りにも朱雀を連想させるに十分な技だった。もし聞けなくても魔物を倒すという当初の目的は達成できる。そのために朱雀のいる火山の火口付近にやってきていた。季節も冬を越して春のせいか既にかなり暑かった。
≪何?サティアーナって子のことなら私の加護をあげたわよ≫
「正にそれだよ!神獣の加護って珍しいんじゃなかったのかよ!」
≪加護を与えるに相応しい人物だったら他のに取られる前に授けるわよ。ただでさえ力が落ちてるんだもの。力を広げる手伝いになってくれる子はいくらいてもいいわ≫
「ああ、そうかい」
自覚のあって厄介なやつだった。まあこれで疑問は解決した。デテゴに引き続きサティさんも朱雀に加護をもらったようだ。お互いにお揃いなら良いことじゃないだろうか。完全に一緒っていうのもどうかとは思うのだが。
「まあいいや。俺は魔物を倒しに行ってくるから」
≪はいはい≫
少し移動して挑発を発動させる。
「やり過ぎた。もっと少なくて良かったのに…」
思ったよりも多く集まってしまったので倒すだけで休憩時間をほとんど使ってしまった。おにぎりを食べつつアイテムボックスにドロップアイテムを入れていく。早く戻らないと3位決定戦が始まってしまうかもしれない。
それでも滅多に来ることが無い上に毎回会うわけでも無いから朱雀にも挨拶をして帰ろうと火口付近に戻るとまだ姿を残してくれていた。何かに悩んでいるような心配しているような感じだ。
なぜだか絶対に聞き逃してはいけないような気がしたので遅れることを覚悟して聞いてみる。しかし俺が声をかける前に朱雀から声をかけてきた。
≪ああ、そうだ≫
「なんだ?」
≪……まあいいか。やっぱり何でもない≫
「っなんだよ。それ!途中まで言って気になる終わり方するなよ。むしろ気にしろってポーズにしかなってないぞ」
≪そう?そこまで言うなら言っておくわ。あの二人にケンカだけはしないように言っておいてね≫
あの二人ってデテゴとサティさんのことだよな。
「え?なんで?」
≪あの二人には鳳と凰の番になるようにしてるからあんまりケンカしてほしくは無いわね≫
えっと3位決定戦はあの二人の戦いなんだけど。
「ケンカじゃなくて模擬戦なら大丈夫か?」
≪何にしてもあまりにムキになり過ぎるとどんどん白熱しすぎてしまって周りに悪影響が出かねないのよね≫
「悪影響ってどんな?」
≪ここが噴火するみたいなことになるわね≫
「規模がヤバすぎる!!?」
この国でも一番デカい山と言われている上に朱雀が根城にする火山が噴火するなんてことになったらヤバすぎるじゃないか!しかも王都の闘技場が発生源になるとか、それなんて悪夢?って夢じゃな~い!
トンデモナイ3位決定戦になるどころか王都が滅亡してしまう!
「俺戻るわ!じゃあな!」
≪あらそう?ま≫
朱雀が途中まで言いかけていたが急いで空間接続に飛び込んだ。
でたところは特別観覧席だ。俺が目印用に作った物を持っている人たちがたくさんいるから当然ここに着きやすい。
「あ、おか」
「それは後で!3位決定戦はどうなった?」
「人の言葉を途中で遮らないの。挨拶はちゃんとするって約束でしょ?」
「謝るからどうなっているか教えてくれ!」
「今からちょうど始まるところだぞ」
「ヤッベェ!はやく止めないと!」
「というか決勝戦で呼ばれてる。っておい!どこから行く気だ!」
別にガラスで仕切っているわけでも無く会場の最上段付近に取ってある席なんだ。中を走って行くよりも空中を行く方が速い!
「目立つぞ~~!!」
遠ざかっていくロイーグさんのアドバイスも今はそれどころではない。ここにいる人たちの命が懸かっているのだ。せめて始まる前に冷静に行って、兆候が見られたら落ち着くという約束だけでも取り付けたい!
「では3位決定戦はじめ!」
だが無情にも始まってしまう。いや、声援の中に声を紛れ込ませて説明しよう。最悪の場合は俺が何とかするしかない。色々と覚悟を決めて着地体勢を取ったそのとき、デテゴが右手を挙げた。
「降参する!!」
「だ~~~~~~!?」
落下の勢いそのままに顔面を激しく強打する。それくらいでは鼻血も出ないのですぐに顔を上げる。場外で良かった。俺が変な登場をしたってだけで済む。済むよね?怒られないよね?
「何してんだ?イレブン」
「いや、あの。えぇ?」
「あのな~、どこの世界に自分の恋人を殴る男がいるんだよ。試合と言われても俺はサティにはいつでも白旗だ!」
「デテゴ様はいつでもそれなんですから~」
「あれ~、もしかしてお二人は恋人同士でいらっしゃるんですか~?」
審判さんも入って何だか武闘大会らしからぬ雰囲気の舞台上になる。椅子を用意してこけさせたら伝統芸みたいな雰囲気すらある。まだその二人も結婚まではしてないはずですけどね。そうか。試合は無くなったか。良かっった~~~~~。
「たまにはケンカもしてみたいものですわ」
「本当にやめてください!?」
お読みいただきありがとうございました。毎回の文言は同じですが、毎日感謝しております。




