表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

287/335

準決勝第第二試合サティアーナ対イレブン①

ブクマ・評価・いいねなどいつもありがとうございます。読んでいただけるだけでありがたいです。お楽しみ頂けると幸いです。

さて、いよいよ始まるな。俺が初めて会った金級冒険者との戦いだ。色々と考えることはあるけど純粋に楽しむことにしよう。サティさんが本気の本気で来るなんて分からないじゃないか。デテゴとのデートだってユーフラシアに帰ってから何度も出来るはずだし。俺に当たって来るなんてそれこそ八つ当たりだ。あのザ・大人の女性って感じのサティさんがそんなことするはずがない。勝ったのはトワだし、デートをしなかったのはデテゴだ。俺には何の関係もない。


少しだけ前向きに考えていたが、それは対面したサティさんを見てまだ甘かったことを悟る。


無表情に微笑むという器用なことをしながら背後には黒いオーラを滾らせている。悪魔でも背中に背負っているんですかと聞きたいくらいだ。これはあれだ。真剣にやらないと痛い目見るやつだ。終わってからデテゴに文句を言うことだけは忘れないように心のメモに書くとすぐに切り替えて戦闘モードに切り替えて正面から向き合う。


審判さんの話を聞き流している間にも隙があれば切るという意思をぶつけてくる。実際に石を指で弾く指弾くらいは飛んでくる。あれは既に俺の知っているサティさんではないのかもしれない。俺がやると大事になるから黙って防御に徹しておく。開始前から闘志というか石をぶつけられる状況になっていた。それが分からない審判さんじゃないから適度に切り上げると準備を整える。


「開始前からの小競り合い見逃してるんだから、もう少しくらい大人しくしてなさいよ!」


舞台上にいる人間にだけ聞こえる声で審判さんが言うとサティさんからの圧が一旦治まる。悪いという意識はあったらしい。無いと困るけど。


「そ・れ・で・は!準決勝第二試合!サティアーナ対イレブン、開始!」


サティさんの姿が消えるのを確認してから対応に動く。観客からは二人とも見えない感じになるんだけど俺も対応しないとダメージ喰らうし仕方ないんだ。二刀を抜いてサティさんの攻撃に合わせる。


ガキン!と大きな音がして初撃は防ぐことに成功する。刀ってあまり受けるのに適さない武器なんだけど、丈夫な金属を使ってるから大丈夫だ。天昴はその気になれば自分で治せるし、もう一本の方は予備がいくらでもあるし改めて作り直すことも出来る。


さて、サティさんだ。使うのは得意の双剣術みたい。その時点で本気じゃないかと言いたくなるが、それは今更だ。分かっていたことだ。前に聞いた話では持っている剣そのものは二本とも特に何か能力があるわけでも無く、ひたすら丈夫なだけの剣らしい。だけど彼女が使えば無双と言い切っても過言ではない代物へと変貌する。


戦いは既に乱打戦に突入している。右の天昴で切りかかれば交差して受けられ、滑るように俺の懐に入ってくる。左の刀で牽制すると捻るように躱して突きが飛んでくる。弾いて躱すが体勢が良くない。何合かサティさんに主導権を取られるが、まだ少し余裕があると見破られたのか距離を取られる。


サティさんが横回転しながら接近と攻撃を繰り出してくるのを受けて切りかかるが、目を回した様子も無く対応される。二刀と二剣を鍔迫り合いに持ち込まれた状態で会話になる。


「本気は出さないつもり?」

「いえ、そんなつもりは無いのですが。なんかこう、圧倒されているといいますか」

「いつまでも煮え切らない男は捨てられても文句言えないわよ!」

「誤解を招きかねない発言な気がするのと、口調がいつもと違いませんか?」

「問答無用!」


鍔迫り合いの状態から弾かれて距離を取ったかと思えば間を置かずに飛び掛かって来られた。今度は正面からではなく、左から掠るように攻めてきている。サティさんは両利きらしく右からでも左からでも一撃の重さが変わらない。俺はどうしても右が強いから左から来られると防御の意識が強くなってしまう。


予想されていたのか、二本一気に突きを繰り出される。左一本だけでは防げない。左に躱しつつ両手を使って逸らす。そのときサティさんの声が耳元で聞こえた気がした。


「暗闇の梟」

「えっ?」


左側にいたはずのサティさんの姿が消えている。周囲を、上空まで含めて探すが見つからない。


「どこに―――!?」

「後ろよ」

「!?」


前に縮地で踏み出すことで何とか回避できた。


「惜しかったわ」

「本気じゃないですか…」


剣そのものには当たらなかったが、振ったときの剣圧には掠ったような気がする。しかも後ろからだ。前に踏み出していなかったら体が縦3つに割かれているところだった。


「いつ本気じゃないって言ったかしら」

「お~い、イレブン!サティが本気の時はいつもより口調が乱暴になるぞ~!」


デテゴから解説交じりの野次が入る。


「自分が身を持って知ることになるなんてね」

「凄いわね。暗闇の梟は相手の認識そのものから外れて闇夜から襲い来る梟みたいに仕留めることが出来るのに」

「必殺の奥義ってやつですか」

「いくつかある中の特に何でもない技よ」

「それはすごいですね」


俺でも見つけられない隠密技が特に何でもない技か。やっぱり金級冒険者って本気で当たるとなると強いな!戦いに入り込むためにより深く集中する。

サティさんはトーントーンと軽くジャンプをすると身構える。


「瞬きの隼!」


一瞬で距離を詰めて片手突きを放ってくる。両手の刀で受け流し。体の外側から迎撃しようと天昴を振り下ろす。


「俊敏の蜂鳥」


今度は何人にも見えるかのように分身する。構わず振りぬくが霧を払うかのように姿が消えてしまう。


「氷槍」


見えているうちの1体に放つ。


「おっと危ないわね」


軽く逸らされてしまう。だが、それをきっかけに見えていた幻は解除される。当てたら解除できる幻のような技だったらしい。


「初見から見破られるなんて初めてだわ。デテゴ様ですらまだ一回で見破ることは少ないのに」

「あいつよりも魔法に適正あるんで」

「それもそうね」


強い!


強いよ!サティさん!


剣術の冴えなら見てただけだけどガンジャスの爺さん並に出来る。打ち合ってたんだし当然か。体力こそデテゴには負けるけど金級冒険者のウリはそこじゃない。

頭も良ければ精神力も強い。非の打ちどころは魔法関連が多少弱いくらいか。攻撃というよりは補助にしか使えないみたいだけど有効な使い方をしっかりと編み出してる。攻撃手段が剣だけで金級になってるんだから魔法の攻撃が使えなくても十分か。


あの感じだとスイッチ入ってるしヤル気満々だな。どういう意味なのかはさておき。


「イレブン君、そろそろあたしの分析は終わったかしら?遠距離の攻撃手段が無いとでも思ってるんでしょ?」

「そういう言葉の入り口ってことは使えるってことですね」

「話が速いわね。金級冒険者になるってことはいついかなる時でも迎撃が可能な者に送られるのよ。もしくはとんでもなく一芸に秀でているの。あたしは―――前者よ」


サティさんは腕を交差して斜めに振り下ろす。


「行くわよ!白刃の飛燕!!」


飛ぶ斬撃か!本当は一振りずつ使うんだろうけど乱れ打ちで放ってくる。切ることに特化した斬撃を正面から受けるのは気が引ける。避けよう。


そうすると乱れ打ちだから回避し続けなければいけないが、ある程度の距離を保ったままでサティさんからを中心に円を描くように移動して攻撃を散らしていく。俺の後ろで結界魔法に当たっている音が聞こえる。間近にいた観客は怖いだろうな。


最初の位置から180度移動したところで、サティさんも追いかけて来ていたため隙を突くことが出来ないことが分かった段階で切り替える。


「氷槍多連!」


お互いの攻撃が一つずつ相殺されていく。ただ、剣を振らなくて良い分、俺の方が動作に余裕がある。


「クッ」


初めて競り合いでは俺が有利で終わる形で仕切り直しになる。


「じゃあ次は俺から行きます!」


慣れない左の刀を納めて、天昴を両手で握り締めてサティさんに肉薄する。

今更ですけど戦闘シーンって難しい。なぜ武闘大会なんて始めたのか…?


お読みいただきありがとうございました。毎回の文言は同じですが、毎日感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
私の魔法の使い方
https://ncode.syosetu.com/n8434ia/
婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
https://ncode.syosetu.com/n1262ht/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ