準決勝第一試合トワ対デテゴ②決着
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【トワ視点】
デテゴ強い。攻撃してもほとんどダメージにならない。少しだけのけぞるくらいで関係なく向かってくる。
「風球」
「もう効かないって分かってるだろう!?」
知ってる。最初はのけぞらせてた風球も着弾と同時に踏ん張ることで全く効果ない。
普通状態の風球だと当ててもダメージにならない。もう数十発くらい当ててるけどダメージになってない。このまま攻撃を続けていても距離を詰められるようなミスをしたら私の負けになる。
じゃあこのまま終わりにするか?イレブンの声が聞こえた気がする。
「それは絶対にヤダ」
「何がイヤだ?」
「デテゴに負けるの」
「諦める気が無いようなら俺も攻撃に移らせてもらうぞ」
デテゴは攻撃に積極的じゃない。今までずっとそうだった。私相手にもそれで来てた。受けきって勝つスタイルみたい。だから本当は負けてたのは私かもしれない。
「負けるくらいなら決勝戦で勝てなくてもいい」
「ん?」
「奥の手使う」
よっぽどの時じゃない限りは使うなって言われてたけど、今がそのとき。見られたところでマネできる人なんてほとんどいない。
体の中心にエネルギーを溜めるイメージで使うのが闘気の使い方の1つである忍術。
体の外にある力を自分の力を混ぜて使うイメージで使うのが魔法。私が使えるのは風魔法。
その2つを同時に使うことでより大きな力を使うことが出来るようになる。私が編み出した戦い方―風神の術!!
足元から集まった風が私を中心に上空へと抜けて行く。小さなタイフウみたいだなってイレブンには言われた。そういうゲンショウがあるって言ってた。
制限時間はあるし、消耗もすごく激しいけど2倍じゃなくて数倍から数十倍の風を操ることが出来る。決勝戦でイレブンに使おうと思ってたけどここで負けるくらいなら使ってやる!!
「すげぇ風だな!!今度こそ吹き飛ばされちまいそうだ!」
デテゴが攻撃してきそうだからと風を体にまとわりつかせていたらそれで十分防げるくらいにはなっていたようだ。この状態で風球を使う!
「風球」
1つ作るだけですごく体から力が抜けたのが分かる。早くしないと決勝で戦う分の力がなくなってしまう。
「いけ」
今までよりもずっと速いスピードで飛んでいく。でもデテゴには見えていたようで正面から受け止める。タイミングはバッチリだ。デテゴ思ってたよりもずっと強い?
「簡単には流せねぇな。俺ももう少し本気を出すとするか」
私の繰り出す強風の中、デテゴが何かポーズを取った。
「ぬううううぅぅぅぅぅ!!!我が身を鋼鉄に変える!正に!『アイアンボディ』!!」
体の色を少し濃い目に変化させて風に負けないどころか体の表面に闘気を纏わせたようだ。遠慮どころか本気を出さないと負ける?捕まえられたら引きちぎられそう?
「負け……ない!」
「来おおおぉぉぉぉぉい!!」
小さな風の粒を配置することでイレブンの天歩みたいに空中を駆けることが出来るようになる。そのままぶつけてもいいのだが、デテゴには効果は薄いようだ。
直接攻撃を加えることで少しはダメージを与えられるようになっていた。私の方が魔法と忍術を併用してるから通用するようになったみたいだ。そのままデテゴの周囲を駆け巡りながら攻撃を加えていく。
「そんな薄皮を削るよりマシになったくらいの攻撃でいいのか?」
ゾッとした瞬間に大きく距離を取るとデテゴの大剣が振りぬかれる。危なかった。避けなかったら一緒に切られてた。まだ私の攻撃じゃあ効果的なダメージにはならないみたい。だとしたら取る方法は1つだけだ。
とにかくやれることをやってみよう。風刃を武器に纏わせて攻撃力を上げてみる。デテゴの大剣と打ち合いが出来ることが出来るようにしないとダメだ。
「風刃の術…っ!」
何とか出来た。でもいつもは放つだけの風刃を留めておくのって難しい。でもやらないと負けるならいくらでもやってやる。
「やあああぁぁぁぁ!!」
「いくらでも来い!受けてやる!」
体格からいって私とデテゴの攻撃が互角なんてことは無いはず。だけどデテゴが受けに回ってくれているからか鍔迫り合いを何度か繰り返しながらときどき私の攻撃がデテゴに入ったりもしながら攻防を繰り返した。
デテゴの攻撃は私に掠りながらも本格的には入っていない。まともに入った時点で即負け確定だ。しかもうまく攻撃を散らさないと即死かもしれない。それくらいデテゴの攻撃の一撃は重い。防げているのは風刃の術による威力の軽減と風神の術による私自身の防御力の上昇だ。着地をミスったら大ケガかもしれない。いっそ場外に落ちた方が安全かもしれない。
いや、逃げるのはイヤ。
掠った攻撃のせいで色んな所が痛いけど。
暗殺者として死ぬはずだったイレブンが余計な人たちをスカウトしてるけどそんな人たちなんていなくても私がいれば十分だって認めさせるためにも決勝でイレブンと向き合うのは私だ。
本当はイレブンにも勝ちたかったけどそれは本当に無理だって分かってるから、せめてイレブンが一番認めてる人に勝つ。
「これで十分」
「何かやろうとしてるな。いいぜ。来な」
そう言われたので体に纏わりつかせていた術を全部解除する。
「あ?なんだ?」
応える余裕はもうない。だって押さえつけるだけで精一杯なんだもの。
「デテゴ気づいてる?会場の空気が動いてないこと」
「ん?………なるほど。そういうことか」
初めてデテゴが焦りの表情を浮かべてくれた。今からの一撃の重さを理解してくれたみたいだ。
いつでも風は私たちの身近にいる。建物の中でも野原でも。その風を思い切り集めて一点に集中させるとすごい大きなエネルギーになる。でも途中までの戦いで起きた風じゃあまだデテゴは倒せなかった。だから消耗覚悟で風を作り出したらデテゴも一緒にパワーアップして大きな風を何度も起こしてくれた。だから制御できる範囲で大きな風を作り出せることが出来た。
少しずつ溜めていたそれを今、風神の術も全て解除して注ぎこんだ、『それ』は今私の右手の中にある。
「昨日の試合みたいに受け止めてくれる?」
「それは避けるなっつう挑発か。いいぜ。ここまで来たら受け止めてやる!来い!!」
「ありがとう。いくよ」
風遁―風魂
【イレブン視点】
ヤバいヤバい!!おれはヤバい!!トワは気づいてないけど風の精霊がわんさか手伝っとるって感じがするやんけ!あんなもん暴発したら会場が消し飛ぶぞ!?少なくともデテゴが逸らしてもその方向の観客が死ぬって。あかんて!今ある結界じゃ持たんて!
余りのことに突っ込み気質が強く出てしまった。俺は一大事だと会場に飛び出す。
トワの緑色の光が右手から一直線にゆっくりとデテゴに向かって行く。半分も過ぎたところで揺らぎが生じる。俺は慌てて会場のいわゆる場外と呼ばれる場所で結界魔法を発動する。舞台に直接張ると場外を予防してしまうから仕方ないのだ。舞台から少し離れた地点を始点にして円形になるように囲っていく。
いつもは言葉が聞こえない精霊たちがトワの声を届けてくれる。
「大丈夫だよ。そこまでしなくても大丈夫って言ってる声がする」
悪いな。念には念をだ。精霊たちのそれは自分の気に入った人間が傷つかないって意味かもしれないからな。
デテゴにぶつかったところで暴風が吹き荒れて始めた。トワの周りには優しい風が吹いている。少しだけ回復効果があるっぽいかな。
「こ、な、く、そ、お、おおぉぉぉぉぉぉ!!!」
受け止めた状態で何とかとどまっていたデテゴが一歩踏み出そうとしたとき、風魂がまた一際強く輝いた。そうすると一気に舞台の端まで押していく。足がギリギリのところで踏みとどまっている。それもそれですごいな。
「デテゴ!上なら結界無い!飛ばせ!」
俺の声が聞こえたのか上に向けて打ち上げるデテゴ。
「あ」
だがその反動で足を踏み外して落ちてしまう。デテゴが地面に落ちるのを同時に
ッパアアアァァァァァァァァァァンンンン!!!!!
トワが作り出した緑の光が弾けて大きな音が響き渡った。
すり鉢状の結界を上空に作っておいたから音は響いても衝撃は来なかった。王都は広いからどこかで何かがあったかもしれないけど因果関係を突いてくるようなことはないだろう、たぶん。
いやぁ、会場内で弾けてたら衝撃で観客がミンチになってたかもしれないな。あっぶねぇ~~~。
少しだけ手を出した件についてはどうなる?全部を見ていたらしい審判さんは舞台上でフラフラしながら半分気絶しているトワと完全に場外に落ちているデテゴを見て宣言した。
「勝者!トワ!!!」
ありがとうってことばにじんと来たので使ってみました。ストップ海賊版!
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