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一足早く歓迎会

ブクマ・評価・いいねなどいつもありがとうございます。読んでいただけるだけでありがたいです。お楽しみ頂けると幸いです。

こうして準決勝以上にはほぼ身内だけという結果になった。


準決勝第一試合はトワとデテゴが、第二試合はサティさんと俺だ。身内の模擬試合でもやっているのかと言いたくなる状況である。逆に実力がある程度分かっているから安心して戦えるというものだ。どうにも相手が思ったよりも弱くて意識的な加減が難しかったと言える。


「さてと、ではとりあえず観覧席に戻ってみんなと合流しましょうかね」


戻ってみると和気藹々した雰囲気だった。スカウトしてきたヒャーズさんと、まだ結果を効いていないがミルティナも場に馴染んでいた。いち早く俺に気が付いてくれたのはいつも通りリセルだった。


「あ、お疲れ。まだまだ手加減してたねぇ」

「これが武闘大会でなければ再起不能にして放置くらいはしたね。貴族を嫌うだけ何かはあったんだろうけど、なりふり構わず全てに噛みつくなんて危なくて味方には出来ないよ。あれはいらない」

「まあまあ。落ち着いてね。ミルティナさんも一緒についてきてくれるってさ。トワに付けてくれてた伝言も聞いてやる気出してくれてるよ」

「伝言というかその方が出来ることが増えそうだと思っただけなんだけどな」


トワと話していた時は思いついたことを言っただけだし、まさかこんなにはやく本人に伝えるとは思わなかった。


「あなたがイレブンね。私の名前はミルティナ。よろしくね」

「あ~、俺がイレブンです。生意気なことを言ってしまってすいません」

「そんなこと無いわ。自分でも思いついていたけど出来なかったのよ。でも他の人から見ても同じことを考えるのなら可能性を考えてみるわ」

「参考までに、なんでやらなかったんですか?」

「単純に加減が難しいのと、マナポーションのためにお金を稼ぐ必要があったのよ」

「だからね。私が作ったのをあげることにしたの。そうすれば訓練に集中できるでしょ」

「その辺りが落としどころだと思ってたよ」


マナポーションは思ったよりも高い。しかも常飲しなければMPが枯渇して戦えなくなる。ミルティナさんにとっては致命的だろう。そうなる前に稼ごうとすると訓練する時間が取れないという悪循環。そう簡単には逃れられなかっただろうな。


「この借りはいずれ必ず返すわ。一旦はついて行くことが借りを返すことに繋がるならしばらくお世話になるわね」

「そんな大層なものでもないですけどね」


これで一通りスカウトは済んだ。本当はデテゴやサティさんも連れて行きたいが、ユーフラシアで仕事を持っている人たちを連れて行くわけにもいかない。手元にある分だけで何とかしよう。

スカウトして回っていたのも『極上の果実』ダンジョンで生きて帰れる人たちを育ててみようとしているだけだ。最初はパワーレベリングになるか他のダンジョンで底上げするかは様子を見てから考えるが世の中にあるダンジョンをクリアしていけるようにはしていきたい。元からダンジョンの数はゲームの時から多いしな


それと、ゲームと比較出来ない程ダメなのが貴族の傲慢さだ。観覧席は金級冒険者という看板とお金を支払って貸し切りにしているが貴族というだけで横取りして来ようとしたやつがいたらしい。

断固として拒否しているから実害は無いがただの平民だと逆らいようがなく言われるがままになることが多いらしい。ゲームの時は貴族がらみのイベントなんてそこまで多くは無かったけれど王族が率先して抑えてくれていたのにそれが無い。

真っ当な貴族だけを残すにも少し手が足りないのでそのために人手を確保しようかと思ったに過ぎない。やらかすことはクーデターにならないように何か名目は作るし、旗印も必要だけど準備は今からやっておく。


万が一ゲームの歴史通りに進むとして今の王国は邪魔にしかならない。もう少し平民にも開かれた感じだった。ゲーム程自由度があるのは無理にしても貴族が横柄に歩いているのくらいは排除したい。


とまあ目的は2つほどあるわけだ。あとはグレイブ村で俺が好き勝手出来るように戦力を増やしておきたかったとかもあるけれどそれはおいおい考えていくことにしよう。


「お互いに目的があるわけですし、お互いに歩み寄っていければ良いかと思いますんで」

「ええ、これからお願いするわ」


あとはミルティナさんに関しては勝手にだが彼女の保護もあるな。彼女には俺がエルフだと知っていることはまだ黙っている。魔国に行けるようになってから話すことにしようと考えている。あ、リセルがもう話したのかな?あとで聞いておこう。


「では帰って夕食会にでもしましょうか。ヒャーズさんも行くよな?」

「見ての通りロイーグさんと仲良くなったし来ると思うよ」

「そうみたいだな。じゃあ帰ろうか。今日はもう色々と疲れた」


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


スカウトも一通り済んだので武闘大会はまだ終わっていないが歓迎会をしようと思う。しかし全員で闘技場に押しかけている都合上夕食の用意をしてくれている人などいない。ということで今日はもっとも準備が少なくて済むメニュー、焼肉だ。

仲間に引き込んでいるのはデテゴと戦ったウォーレンさん、サティさんと戦ったガンジャスさん、ミルティナさん、トワと戦ったヒャーズさんだ。


勝手知ったるメンバーがいるので焼く場所と食べる場所さえ準備してしまえば俺はホストとして美味しく提供できるように切る傍から順に焼いていく。

色々とスキルを併用すれば美味しく焼けるように火を調節し、焼き加減を見逃さず、量を提供することなど造作もない。


あとはそれぞれが自由にやってくれたら良い。この場に来てくれた時点で仲間になることはほぼ確定だし。


「これだけの食料はどこから出て来ているんだ?」

「イレブンがマジックバッグを作れるからな。それぞれに配給してる備蓄分だな。あいつ自分のにはとんでもない量を入れてるからな」

「ちょっと待て!マジックバッグを作れるとは何だ!?世界の常識を覆す発言だぞ!!」


ロイーグさんが俺の秘密の1つをバラしたせいでヒャーズさんから詰め寄られている。見ないふりをして俺は焼く作業を続けよう。広めの網を3つ担当してるから忙しいんだよ。

焼けた肉を運ぶのはフレンドビーたちがやってくれる。人間たちを優先してくれているが、従魔隊の3体のところにも運んでくれているので助かる。コトシュさん、トワも一緒に食べている。


また違うところでは、


「このソース、甘いな。肉をうまく引き立てているようだ」

「それはね、極上の果実で収穫した果実を熟成させて作ったソースだよ」

「げほっ、ごほっ……。ちょっと待って待って。難攻不落のダンジョンのはずなのに!!?詳しく説明しなさい!!」


いきなり爆弾を落としたリセルはミルティナさんに説明を要求されている。そっとあの場から皆見ないふりをしている。

俺も焼くのに集中していることにして見なかったふりがいそがしい。


なんでこうもっと落ち着いた席で少しずつ小出しにしないかな。とはいえ、それだけ世間に言えないようなことをしている俺が言うとまた誰かが突っ込んできそうってところか。


「しかし俺たちまで来ても良かったのか?」

「え?今日はデテゴもお腹空いたでしょ?そういう時は肉だよ」

「お前の目利きで食うんだ。間違いなく美味いからそれでいいんだけどな。か~。これだけ旨いと酒が欲しくなる!」

「明日の試合を考えたらダメだよ。米でガマンしとけ」

「さっきからそれで食ってるよ」

「なら良し」


見た感じだと十分しっかりと食べているようだ。ウォーレンさんと張り合うように食べていたからな。


「ガンジャスさん用に焼いた焼き鳥はどんな評価だった?」

「ネギと交互に焼いた串の塩味がお気に召したようだぞ」

「オッケー」

「俺には魔牛の肉オンリーをタレで焼いてくれな」

「順番な」


リクエストされたネギマをアイテムボックスから取り出し塩を振りながら串焼きのスペースで焼いていく。炭焼きが出来るんだったら焼き鳥やるでしょ。


「お前は食べてんのか」

「そこそこ食べてるよ。少し焼きすぎたけど誰も引き取り手が無かったやつを偶に摘まんでる」


ホストとしては自分のよりも先にお客さんに届けるべきだと思うが、みんなの食べたいものと違う場合がある。回転寿司のレーンよろしくフレンドビーたちが戻ってくるから戻ってきたやつは置いてもらって食べている。火の近くが熱いから少し冷めたやつの方が食べやすい。


「それと火の近くにいるとそっちの方が楽しくて一段落するまでは食べるよりも焼きたい」

「お前が良いなら良いけどよ」

「まあそういうことにしといてよ。焼けた肉と牛串だよ」

「ありがたい。熱いなら水飲めよ」

「うん。ありがとう」


一通り満足してもらったら最後はデザートだ。じっくりと火が通るように炭の中に眠らせておいた焼き芋と焼きリンゴである。

ほぼ満腹になっていたに違いないのに用意していたものは残らなかった。俺も味見の一口しか残らなかったのだから相当満足してもらえただろう。良かった良かった。


「ということで、最終的なプレゼンですが食には困らせません。ついでに自分でもこれくらいは調達できるように強くなってもらいます」


少しざわつく。途中の果実ソースや最後の焼きリンゴのことを考えると極上の果実に入れるようにってことだもんね。

でもきちんと準備していけば入れないことは無いんだよ。知識も準備もないまま突っ込むから帰って来れないだけで。


「まあガンジャスさんを満足させるお酒なんかも今後の課題にしてるので少々待ってくださいね」

「問題無いぞ。酒は楽しむ心が肝要なのじゃ」


おお。言ってみたいセリフだな、肝要。


「ただし、秘密は守ってもらいます。俺個人の能力なんかは特に」


途中で既に大混乱するレベルの情報を得ていた人もいるけどね。その二人は深く頷いている。


「まあなんとなくですけど悪用しそうな人もいないんで大丈夫でしょ」

「軽いな」

「バレても誰かに利用されるほど弱みもありませんからね。これからよろしくお願いします」


それぞれに返答をもらって一足はやい歓迎会を終えた。明日は飲みたい人用にお酒を確保しておこうかな。

単純に焼肉を食べたいってだけですね。


お読みいただきありがとうございました。毎回の文言は同じですが、毎日感謝しております。

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