表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/335

デテゴの本名は嵐の予感

今日もありがとうございます。お楽しみ頂けると幸いです。

デテゴがどうやって前の組織を潰したのか?ザールさんに教えてもらった話だ。本人は話してくれなかったからね。


特徴は一人も殺してない。捕まえてそれこそボッコボコにはしたらしいけど。それから力づくで押さえつけたとはいえ、大説教をかましたらしい。


「お前らは今まで自分を負かした奴に、勝てないと思った奴について行ったんだろう!その結果がこれだ!だとしたら俺の言うことを聞くのが筋ってもんじゃないのか!」


猿系の魔物でも同じことが起こるらしい。群れのボスが立場をかけて決闘して、それで新しいボスが勝ったら君臨することが認められる。そうなると新しいボスの言うことを全員が聞く。それが他所の群れから来た者であったとしても。暴論でいえばそんな感じ。


「それなら新しいボスとして一つ決めごとだ!まずは裁きを受けろ!命で贖うことしか許されないなら仕方ないが、生きて償う機会を得たなら一生をかけて償え!それが俺からの唯一の命令だ!」


それに元の幹部連中の中に筋を通した話だと思ったんだろうな。中には死罪になるってのに受け入れた奴もいたらしい。中途半端に苦しい罪になる奴ほど逆らったらしい。そうしたらデテゴはこう返したそうだ。


「文句があるならもう一回相手になってやる」


見事に誰も何も言わなくなったとさ。それからは大人しく裁かれて、納得できていなかったやつも仲間やデテゴと話すうちに納得したそうだ。恐ろしきはデテゴの説得力だ。いい人であることは認めるけどね。

そこからは労働力として国の各地へと散っていったそうだ。ザールさんとデテゴの二人が10年も旅をしていたのはそいつらの様子を見たり、被害を受けていた人たちへの見舞いも兼ねていたらしい。

それらが一段落して、もう戻っても大丈夫だろうと戻って来ての今回の事件だったそうだ。とんでもなく長い因縁のある話だとは思う。


ちなみに今回の犯人たちは、そのときに捕まらなかったやつらみたいだ。組織を潰された恨みしか残らなかったのだろう。


最初は何も話さなかったそうだが、デテゴが何をしたのか、言ったのか、この10年間で誰と会ってきたのかを話したそうだ。ダニイルの祖父は処刑されていたけど、父は国への無料奉仕とはいえ鉱山奴隷として納得して生きていることを話すと全てを話し出したそうだ。

今回関係したのが4人だけで、他にもまだ数人潜伏しているようで、連絡を取って同じように話すことが決まった。そいつらが捕まったという話を聞いたのが今朝の話だ。


4人を捕まえてから4日後の話である。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「ようやくSPポーションが普通の水と同じくらいの感覚で飲めるようになってきました」

「叫びながら飲んでいただけじゃないか」

「ただの水を飲むくらいならSPポーション飲んだ方が良いじゃないですか」

「顔色が青くなってるのに飲んでたらやめれば良いと思うのが普通なんだよ?」

「飲んでるうちに段々我慢できるようになってきたんで」

「我慢って自分でいっているじゃないか!」


も~、メディさんは短気な人だなぁ。

懐かしのCMで見たことがある。まずいって言ってるくせに強面のお爺さんがお代わりを頼んでいたCMがあった。実際に飲んだことは無いけどお代わりを頼むくらいだから癖になる何かはあったのだろう。

俺にとってのSPポーションがそれに該当するだけの話だ。何もおかしなことは無い。


「でも困ったことがあるんですよ。メディさん聞いてくれます?」

「聞けることなら聞くよ」

「最近何食べてもSPポーションの味しかしないんですよね」

「しばらく研究期間取るからしばらく飲むのやめろ!!!」

「え~!?」


そこから抗議したが許可を得ることは無かった。どちらにしても困ったことが一つ起きているからその解決をしてからになる。

一番の貢献者であるハチミツが無くなってきているのだ。もとからハチミツは高級品である。おまけにこの世界には蜂はいない。魔物としての蜂なら存在している。

つまり養蜂という概念自体がテイマーの領域なのだ。それを生業にしている人もいるが、その人たちの生産量にも限界がある。

そこで考えたのが自分で養蜂を始めるのだ。既に上級スキル『テイム』に必要な基礎スキルを習得した。何もステータスが上がらないものばかりだったが、他の上級スキルにも繋がるためここは我慢だ。

あと毎日の努力のおかげで上級スキル『栽培』も今日手に入れた。これで魔力草、生姜、レッドチゾン、最終調整に必要な砂糖の原料になる甜菜も自分で育てることが出来る。


「それから今日はザールとデテゴはもうすぐ帰ってくるだろうからね」

「はい。何かお話があるんでしょう?それを聞くまでは討伐は控えていたので、早速明日から行って来ようかと思ってます。SPポーションも一先ず材料集めですかね」

「何を討伐しに行くつもりなんだい?」

「えっと…」


ディスガイズアントとは言わない方が良いかと躊躇した。存在を知らないだろうから言ったところで問題無いだろう。とはいえ、変に危機感を持たせることも心配させる必要もない。


「アーミーアントですよ。前に狩りに行った時に思っていたよりも規模が大きくて巣を潰しきれていないんですよ。おまけに複数だったんで危険だと思うんですよ」

「………あんたは大丈夫なのかい?」

「一度帰って来れてますし、そのときから考えたら防御の性能は自分のステータスも装備自体もかなり向上してますよ。問題ありません」


半分嘘で半分本当。この配分が一番バレにくい。実際攻撃力そのものは上がっていないが、使える魔法が増えたし防御も上がっているから問題のは真実だ。今度は森を全て巡回してでも全滅させてくるつもりである。


「本当に大丈夫なら構わないけれど、ザールにこっぴどく怒られたのは忘れないようにね」

「は~い」


前回の装備品全損をどこからか掴んだザールにだけは本当のことを伝えた。アーミーアントの生息地を伝えてきた商人仲間も今回の捕縛の対象であった。俺も間接的に消されそうになっていたってことだね。あの後街中をウロウロしていたのに見つからなかったのは笑い話だ。

ダニイルだけでなく平然と信用を裏切るような者が近くにいたことに、ザールも少々衝撃を受けていた。とはいえ、しかし、それだけでは危険を冒した俺が許されることは無かった。内容は知られてないけど、デテゴとメディさんにも叱られていることは知られている。


次からは本当に相手にならないことを伝えているし、今回の話が片付いた後に絶滅しに行くことも伝えてある。あの蟻たちは放置していてはいけない。何か起こってからでは遅い。討伐完了まで各所に黙っていてもらう代わりに、ドロップアイテムについてはザールが捌いてくれることになっている。

王国内ではあまり出現例のない魔物のドロップアイテムだから良い値が付くだろうとのことだ。必要以上のお金は今のところ必要なくなってきているが、ザールが役立ててくれるならば良しとしよう。

その代わりにもろもろ自分で育てるための下準備もろもろをお願いしている。持ちつ持たれつなので気にすることは無いと言われている。


「邪魔するぜ~」

「メディ、イレブン君いますか?」


デテゴ毒殺未遂事件(俺が勝手に一人で呼称している)についてはどうなったかについては既に聞いた。なんせ体に入れ墨をしているか、肌身離さず持っているようなものに組の印が入っているから見つけやすかった。

既に関係を絶つなら消すなり捨てるなりしている。そう決断した人物には一度声をかけたとしても仲間には引き入れていなかった。脅すことをしない代わりに活動を再開したことを黙っているようにという取引をしていた。グレーな気はするが、それで片は付いたそうなので、部外者の俺がとやかく言うことではない。


デテゴも毒は抜けて、あとは訛った体をもう一度喝を入れることにしている。数日後には組合で実務研修員として働くことになっている。新人育成や昇格試験の対応、組合員が現地で指揮を執る場合の筆頭人員とこき使われることが決まっている。地に足を付けて生きるからそれで良い、のだそうだ。


ザールさんは事件の時に開店準備で止まっていたのはほとんどなく、既に店を自分好みに建て直すべく図面を依頼している。その間に今ある建物は取り壊している。今回の事件を教訓に薬関係については国一番の品揃えを徹底すると決めた。そういう意味でもメディさんは絶対に一緒にいたい存在だそうだ。

15歳を前に何を言ってるんだとのツッコミはメディさんの顔を見たら言う気を無くした。あとは10年も旅をしていると何があれば良いとか。こういうものが欲しかったとかアイディアはあるそうなので随時作成していくそうだ。その技術者も募集している。


そんな二人に目を付けられてしまった俺は組合の厄介な依頼や、道具屋の準社員みたいな扱いをするつもりだと公言されている。力試しとかSPポーションのためと了承している。


「さて、話はある意味すぐに終わる。今回話が大きくなってしまったせいで今後一度だけだとは思うが、厄介なことに巻き込まれると思う」


それを聞いてまあ別にどちらでもと考えてしまうのは薄情なのか、巻き込まれても構わないと考えているのかどちらか正直分からない。


「まず俺の本名を伝えておく。デクロズ・ド・ゴルドグラン。ゴルドグラン帝国の第三王子だ」

「ゴフッ!!」


意外な言葉が出てきたことに動揺が咳を誘った。水でも飲んでたら吹いてた自信がある。その間に3人の話が進む。


「わ~!大丈夫か!?イレブン!」

「おまっ、俺の本名だけでそんな反応をするんだ!?」

「いや~、初対面で国の名前を聞いてきた割に反応が大きいですね」

「デテゴが王子に見えないからだろ!」

「今更それを言うのか?」

「見えないのは本当ですよね。この図体のデカいのが王子(笑)」

「お前らな…」


息を整えながらデテゴをそっと見る。マジか。ザールさんとデテゴの繋がりだけで『ホシモノ』ファンが喜ぶ熱い話が出来上がりそうだよ。


デテゴさんよ。あんた、帝国を率いた勇敢な王として歴史に名前を刻んでるよ。あんたの子孫がラスボスに身体を乗っ取られたことでストーリーが始まるんだぜ?

お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
私の魔法の使い方
https://ncode.syosetu.com/n8434ia/
婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
https://ncode.syosetu.com/n1262ht/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ