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トワとの追いかけっこの行方

ブクマ・評価・いいねなどいつもありがとうございます。読んでいただけるだけでありがたいです。お楽しみ頂けると幸いです。

舞台の上で勝者宣言を告げられて舞台の上にいても撤収モードが伝わってくる。


「これにて本日の予定は以上となります!明日以降の観戦チケットは既に売り切れとなっております。転売はバレた時点で叩きだしますので愚かな行為は慎むようにしてください」


えらく現実的なアナウンスが流れる中、皆がまだ観覧席にいることを確認してそこに向かう。


誰に需要があるのか濃い相手だった。混乱したところを指示に従わせて勝ちを掠め取る、か。思いついても普通は実行しないと思うんだけどな。貴族って何しても許されると思ってるのかな。あれだけやってまだ立ち上がって来るならある意味尊敬するけど。

まあいいか、済んだことだし忘れよう。


今日、一回戦が全部終わったことで全行程の半分が終わったことになるが、ここからは少し試合時間には余裕がある感じでの進み方になる。明日は2回戦と3回戦が行われる。勝ち上がると2回は戦わなければならないので一番の山場と言える一日だ。

ちなみに明後日には準決勝と3位決定戦、決勝と時間を置いて行われることになる。結局は2回戦うことになるな。特に波乱が無ければ明日の2回戦だけ気を使えば良いだろう。あとは身内との対戦だ。順当に言って準決勝のサティさんとは模擬戦もしたことないくらい初めての手合わせだから少し気を使う感じになるな。


さて、夕暮れも差し迫った時間で完全に夜を迎える前にすることは決まっている。観覧席に到着だ。みんな……、いるな。


「なあリセル、夕食の準備は任せていいか?」

「いいよ。さすがに武闘大会出てた人にはさせないって。しばらくは出てない人でご飯の用意はするよ」

「そうか、助かる。ありがとう」

「当然だよ~、でもどういたしまして」


しかし、その理屈だと団体戦のときはどうするんだ?ロイーグさんくらいしか普通の人間で出ない人がいないぞ。買い食いにするかアイテムボックスにある保存食で済ますことになるかな。


おっと、思考が逸れた。ではやるべきことを始めようか。俺がいなくなるタイミングを見計らって観覧席に戻って来ていたようだな。忘れたわけじゃあないぞ。


「じゃあ、お説教を始めようか」


そう口にして振り返ったときには先程までいたはずのトワが姿を消していた。


「後は頼んだ。トワ、逃がさん!」


皆に後は任せて追いかけることにした。こういう時は公平に他の手は借りない。仮にトワが糸太郎の手を借りたとしたら俺はソウガに手伝ってもらうように手を増やしていくつもりだが、見た感じ独力で逃げているようなのでそのまま追いかけるようにしよう。


まずは闘技場の柱や壁をうまく使って天井にから屋根に飛び移ろうとしている。空中を蹴ることで足場にするスキルである『天歩』を持っている俺には関係なく一直線に追いかけて行く。トワが闘技場の屋根に着くのと俺が少し距離を置いて到着するのはほぼ同時だった。


「さすがイレブン。隙をうまく突いたと思ったのにすぐに追いついてきた」

「ほほう。俺と争おうってのか?」

「決勝で勝ちを取るには多少荒い手は必要」


意外と現実的なところを探って来てたな。


「先に聞いておくけど場外になりそうなときにその空中を飛ぶスキルは使わないよね」

「さすがにこれは使わないよ」

「よし」


一番手軽に空を飛ぶならこの天歩だ。しかし空を飛ぶだけならもっと簡単な方法がある。トワも使えるだろうけど、眼下では闘技場から帰宅しようとしている観客たちがいるところでは使えない。音が大きすぎるからな。お互いが同じ条件になるだけで一旦は良いのだろう。俺の方が強いのに俺の方が手札が多い状態では勝ち目無いもんな。本当にいつのまにこんな堅実な方法を取るようになったんだか。


「俺の方も聞いておきたいことがあるんだが」

「それはまた追いついたら」

「あっ、こら!」


話をするタイミングだと思っていたらさっさと移動を始めてしまったため、またトワが目の前からいなくなる。目の端に映っていたおかげでどっちに移動したかは分かっている。ついでに『探知』発動。トワの捕捉完了だ。

見下ろしてみると闘技場から比べると遥かに小さい建物の屋根を飛び乗りながら逃げて行っている。この高低差であそこまで辿りついているのなら風魔法で上手く風に乗って移動することも出来るようだな。そのうち凧に張りつかせるのも教えようか。イヤ、機動力的に問題あるか。


「見てないで追いかけるか」


俺の方はMPに余裕があるので天歩と風魔法を使いながら追跡していく。少し追いつくと追っていることを察知したトワが路地に逃げ込んでいく。


「あいつは、どこまでやる気だ?」


探知で一度捕捉した以上、よほどのことが無い限りは外れることは無い。一気に距離を取って離れるか、俺の気を別のものに逸らすしかない。そんな都合の良いことが起こるわけが無い。


「な、なんだ!?」

「うお!?」


路地裏にふさわしいというと失礼だろうか。トワが逃げ込んだ路地に上から飛び込むとその前に野太い男の声が起こった。


「え?何?」


目の前にいるのはいかにもな感じの風体の男2人に若干涙目の女性1人だ。


「なんだ、お前。どこから来た?」

「上から来たような…」


俺の登場で自分たちのしていたことを忘れているようなので聞いておく。


「あんたたちは何?女性に乱暴をしようとしていたのかな?」

「あっ!!てめえはどっかに行け!」


クロ確定。速攻しばき倒す。


「大丈夫ですか?」

「はっ、はい~…」


助けた女性にはドンびかれている。ちょっとやり過ぎてしまっただろうか。ほぼ私刑だしな。


「何かあったら冒険者組合でイレブンって名前出してください。あとでこれしたのは俺ですって言っておくんで。で、俺やることあるんでこれで失礼しますけど大丈夫ですか?」

「はい!」


ちょうど考えていたことを起こされてしまった。ここで男2人が狼藉をはたらこうとしていたのは偶然だろう。おそらく偶然目にしたトワは俺を振り切るために擦り付けたというところだろう。


「見失ったけど、それでも探知は外れてないぞ」


その後、子どもの迷子、売れ残った商品に困っていた商人さん、同じように路地裏に連れこまれそうになっていた女性を2人助けてもトワを捕まえることが出来なかった。


「うまいこと逃げやがって」


既に夜も更けてしまっている。いつまで追いかける前提で逃げているんだ。なんとなくピンとくるものがあった。


「常に―――。だったら帰るか」


戻りながら探知をチェックしていると距離そのままでトワがついて来る。こちらの動きを観察できる距離ということはこの距離がトワの観察可能な範囲ということか。思っていたよりも広いな。闘技場の大きさくらいなら余裕で全部の観察が出来そうだな。

これでお互いに少し情報開示をしたということになる。トワは俺に天歩の制限をかけたし、俺は常にトワの観察をされていると思ってあと3戦を勝ち抜かなければならない。


忘れてたな、今は忍者のなんちゃって技術を一緒に考える仲だが最初は俺の命を狙う暗殺者だったんだから取れる手段を全部考えてやってくるだろう。俺がそう簡単に死なないことも分かってるだろうしな。


「どちらにしたところでおやつ抜きの刑には変わりないからな」


少し動揺したところを突いて一気に距離を詰める。あと20メートルくらいの距離になったところでトワも回避行動に移るが、ここまで距離を詰めることが出来ればそう簡単には振り切れまい。周囲に擦り付けることも出来ずにしっかりと確保した。


「俺の手の内を見るためか?無茶し過ぎだ」

「無念」

「手段を選ばないのは時と場合によるからな。俺が苦しむ手段を取れば良いってもんじゃないぞ」

「……分かった」


小脇にトワを抱えたまま移動するのは周囲の視線が痛かったので、逃げたら夕食も抜きだと言い含めて下におろした。


「とにかく正々堂々と戦うし、どこまで力を解禁するかも考えておくから変にダメージを与えるようなことはやめてくれよ」

「分かった。手あたり次第はやめておく」


色々とあったがこれで本当に一息つけると帰途に着いた。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「イレブンが強すぎるってのもあるよね」

「え?何、俺が悪いの?」


夕食を取りながら話題はトワの行動の理由が俺の底を測るためだったことだ。俺が怒りそうなことをしたところで仲間相手に本気で怒ることはないというのがわかっただけでもトワ的には収穫らしいが、リセルから見るとまた違うらしい。


「ずっとこんなもんじゃダメだっていう方それを信じてたけどさ。頭1つどころか全身抜けるくらいイレブンが突出してるよね。イレブンの対戦相手の人だってあれたぶんちゃんと治らないよ?」

「実力のある割に相手に危害を加えないことにためらいがない奴なんて仕方ないとわりきってもらいたいね」


自分もそうならないようにという分別は俺にだってある。自分から攻撃するのではなくて大体攻撃や悪事を認識してからにしているのもその心の表れだと思ってもらいたいね。


「だったらもうこの場で今回はどれくらいの力で戦うかを明言したら良いのではないか?」

「コトシュの言うとおりだな。勝てそうだと思った時に力を段階的に解放されたら勝てる気がしない。イレブンもいつも言ってただろう。ステータスでいうと1割くらいで同じくらいだって。スキルの有利もあるんだからそう決めちまえよ」


コトシュさんとロイーグさんが今回の件については外野として意見されたことをきっかけに話が進んでいき、俺の意思関係なく俺はステータスを1割で戦うことが決定された。制限しているのは主にリセルの意思を優先する精霊たちだから余程のことが起こらない限りは決定だ。早速ステータスの制限が行われている。


「ここまでがトワの狙いだとしたら狙い通りだな」


グーボンに対する実費諸々はあるとしても食事を取らせないのはダメだろうからと口一杯に頬張るトワに一言物申してみる。


「ふふん」

「本当かよ…?」


まあ勝つ気の無い試合をされるよりは加藤って気概を持ってもらう方が良いよな。納得することにして食事を終えた俺は面倒だが冒険者組合に向かう。途中で助けたあれこれの責任の所在を確認するためだ。迷子とかは良いけど、女性への乱暴狼藉は違う問題だ。組合でも政党に警備隊と連携しているらしく、処遇に怒られはしたものの見せしめになると所々褒められた。


何をしたかって?


男である証明をないないした。直接手は触れないようにして串刺しにしたよ。わざとへたくそに処理したから今から元通りに治癒するのは不可能さ!

お読みいただきありがとうございました。毎回の文言は同じですが、毎日感謝しております。

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