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確保

評価とブクマありがとうございます。アクセス数も増えてやる気を取り戻せました!

今回もお楽しみ頂けると幸いです。

「学術都市帰りのワイーロが持ち帰った即効性の毒霧だ!これで死ねぇ!」


毒霧が迫ってきて周囲にまとわりつかれてしまった。


「ゲホッ。結構キツイ毒みたい」


でも、ノーマルシンボルという装飾品の効果は伊達ではない。多少内臓がやられているが、即死はしない。


「『風壁』、上空へ飛ばして包め」


俺以外の人には即死級の毒のようなので、風で散らしたりして周囲にばら撒くと危険なことになりそう。一旦毒霧を含んだ空気を上空へと隔離する。

念のため高解毒薬を1本を飲んでおく。これで毒の汚染は抑えられる。口から血が出てくるが、今は一旦置いておこう。ただ、想定よりもやることがショボかったので、あまり張り切らなくても良さそうだ。


この2日間で作っておいた解毒薬をアイテムボックスから取り出す。試しにテーブルごと収納できるか試したら出来たので笑った。接触していれば良いみたいだ。

次に大きめの桶1つを取り出し、その中に解毒薬をドンドン入れていく。たぶん即効性のあるとか何とか言っていたからレベル9あたりかな。よくもまあ作れたものだ。

取り出した中に回復薬も混じっていたので1本は自分で飲んでおく。体の中が癒されていくのが分かる。液体の良さはこれだな。体の中に入って行くのが早いし、カバー範囲が広い。濃縮したものだと効果は同じでもここまで一気に治癒はしないな。今後の参考に覚えておこう。


「な、何が?お前何なんだ?何をしているんだ!?」

「毒霧をそのまま君に返して殺しても良いんだけどね。一旦殺さずに確保って言われてるからさ。余計なことして集中乱さないでね。あれを無毒化しようとしてるんだよ。あ、でも逃げないようにしておかないとダメか」


正直言うとイラっとした。なぜこいつの仕出かしたことの後始末を俺がするんだと思うが、それが友人からの依頼であれば仕方ないというもの。

即死したはずの俺が、魔法を使うわ、作業を続けているわと問題無く動いているのを見て耐えきれなくなったようだ。ダニイルが信じられないという表情で声をあげる。

ダニイルが俺の行動を見ているのは分かっていたが、発言したことで呆然自失状態から回復したと判断する。対処する必要があるな。同時並行で色々と作業しているから魔法の操作がしんどい。単純な操作なら良いけど細かい操作にはまだ慣れない。

『風壁』の複数発動ののち空中での持続、『風壁』を薄く伸ばして毒霧を包み込むように球状に変化するように操作して維持、で2つ操作している。連魔のレベルは3なのであと1つ、無理をすれば2つは同時に使える。MPの消費がキツイけど。まだ余裕があるからあと1つの枠を使って拘束しておこう。


「氷魔法『氷の枷』、もう一つ『氷の枷』、これで手足の確保完了。逃げないようにしてねって言わなくても逃げられないね」


ダニイルの両手首と両足首をそれぞれ氷の枷で拘束する。細かくジャンプすれば移動は出来るだろうけど。足が動かないんじゃ走るどころか歩くことも出来ない。あの分厚い氷を砕けるだけの力はないだろうからこれで行動制限完了だ。無毒化の作業に戻る。


桶の中の解毒薬へと上空の風壁を下ろしてくる。『風壁』の一部を開けて桶を中に入れるとシェイクする。最初こそ中の解毒剤が減っていたが、1分もシェイク状態を維持していると量の変化が無くなったように見える。

解毒剤を液体と認識して再度桶の中に入るように水魔法で操作する。一旦魔法を『風壁』を解除して、桶に残った量を確認すると半分くらいは残っていた。


「念のため多めに用意してくる必要も無かったかな。こんなものか」


倒れたままのもう一人も拘束しようとしたときに、ダニイルたちが出てきた通路の奥から走ってくる足音が聞こえてくる。

あれ?デテゴが確保できたのは1人だけ?病み上がりで厳しかったかな?


「ダニイル?ダビドもどうした!?やったのはお前か!?」


えらく身なりが良い男が出てきた。仕込み杖の剣でこちらを牽制している。あまり強くは無さそうだけど、毒とか使って来られたら面倒だよな。


「ワイーロ!あいつは良く分からんが魔法が得意なようだ。気を付けろ!」

「分かった!火よ!巻き上がれ『フレイムトルネード』!!」


周囲を取り囲むように火の竜巻が発動する。こうなると対応は1つしかないか。再度自分を守るように『風壁』を発動して球状にして熱から身を守る。冷たい水も含ませたので対応は完璧だ。

終止符を打つのは俺がやらなくても良いだろう。索敵を使うまでも無い。病み上がりでも本気を出すとここまでなのか。


「聞こえないかもしれないけど一応言っておくよ」


『風壁』と火の竜巻に阻まれているから、声は届いていないだろうと思っていても言わずにはいられない。


「デテゴがキミたちの前進の組織を潰したのはたった一人でやったらしいよ。組織を一人で潰すには何が必要かわかるかな。そこそこ戦えるレベルのやつらが百人以上はいたらしいね。それを一人で叩き伏せるんだからほぼ無限の体力だよね。デテゴはね、普通の人が思ってる以上に体が丈夫だよ」


2人は隠し通路の出口から一歩出たところに立っている。目の前の俺に集中して後ろへの警戒を怠っているのだろう。正に意識の外からの攻撃だ。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


あとから来たワイーロからしても必殺の毒霧を浴びせてきた。先程イレブンが解除したことまでは知らないが、もう手持ちの毒は無かったから自分が得意の火系の攻撃を仕掛けた。

フレイムトルネードは対象を包むように発動する。正しく対処しなければ5秒で空気が無くなって動けなくなる。屋外で一人ならば適した選択だった。その対象がイレブンでなければということと。後ろを気にしていれば。


2人が凄まじい音を認識した時にはデテゴが2人を猛突進で吹き飛ばしていた。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「お~、飛んだ~」


ダニイルともう一人は何が起こったのか分からないまま意識が刈り取られていただろう。目算で3メートルくらいは上に、距離にして20メートルほどは吹き飛ばされている。当たったのはデテゴだ。トラックに轢かれたくらいの衝撃で済めば良いな。生きているとは思うけれど、死んでても良いし骨がどうなっていようが、この場合はデテゴに責任があるから知らんぷりしておこう。

後ろの出口から猛牛ですら真っ青になるかのような勢いで飛び出してきたデテゴに轢かれたのだ。ただでは済むまい。よく見るとショルダータックルの体勢だった。うん、合掌。


「イレブン!こいつらが密談してた部屋で結構な毒がばら撒かれちまった。俺はお前のこれがあったから良かったが、拡散するとマズイ!」

「防毒マスクも効果有りでしたか。良かった~。これでメディさんとザールさんが喜びそうです」

「言ってる場合か!」

「やりますって。ちょっと待っててくださいよ」


もう一度アイテムボックスから解毒薬を大量に取り出す。先程と比べて数倍の量だ。デテゴも桶の中に入れるのを手伝う。全て桶の中に入れるとさすがに初めて使う魔法だから集中する。


「嵐魔法『雨雲』」


大量の解毒薬を細かい水滴へと変化させる。通路から逆流していく流れと建物の上空から向かう流れの2つを作り出す。


「集中してやっとくんで、その連れてきてるやつも含めて4人ですか?きっちり抑えておいてくださいね」

「あぁ、お前がいてくれて本当に良かったよ」

「自分の発想を広げるのに良かったですよ。もう良いかな。『雨雲』派生、降雨」


犯人4人が使用していた建物を外から中からと解毒剤の雨が降り注ぐ。声から判断するに表の入り口の方からまだ中に残っていた客が出てきているようだ。


「あの感じだと派手な魔法がぶちかまされていたのに中に残っていた奴はまだいたようだな。これで出てきただろうが」

「店の外だけならともかく中まで雨を降らせてますからね。異常事態なのは見れば分かるでしょう。毒の被害者がいないようで何よりです」

「あぁ、助かった。…さて、素直に吐いてくれるかな」

「デテゴさんがどんな風に潰したかを言ったら良いんじゃないですかね。内容を理解できれば少しは違うんじゃないですか?」

「まあ憲兵の取り調べには立ち会わせてもらってみるよ」

お読みいただきありがとうございました。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
私の魔法の使い方
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婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
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