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予選を観戦しよう。え?またですか?

ブクマ・評価・いいねなどいつもありがとうございます。読んでいただけるだけでありがたいです。お楽しみ頂けると幸いです。

ティートの話を聞いてから少しだけ経過した今日は武闘大会個人戦の予選だ。正直言って俺もトワも免除されているから本当は見に来る必要は無いんだが、それはあくまで出場者としての理由だ。毎回お世話になって言うザールさんより指令が出た。


「グレイブ村にある『極上の果実』に連れて行ってもいい人材がいればスカウトです。可能なら本戦出場者が良いですが、そうでなくても今回の武闘大会で選別すると言っているのですから視察してください。フリでも構いませんから」

「誰が来ても最初はお荷物だから性格の良い人で秘密が守れる人としか言えない…。むしろあんまり秘密を知る人を増やしたくないんですけど」

「だからフリでも良いと言っています。多少顔を売っておかないとイレブン君だっていつまでも田舎者扱いは面倒ですよ?」


そのたびに何らかの対処をするから気にしないけど、そこまで言うなら仕方ない。


「行きます」

「よろしい」


なんて一幕があった。そんなわけで見学に来ている。予選は今日を含めて二日間にわたって行われる。既に客を入れて観戦することが出来るようになっている。ちなみに観戦するのも出場者というだけでなく金級冒険者が一人いれば関係者席に入ることが出来る。

金級銀級がそれだけ優遇されているのは武闘大会の主催が王国の冒険者の組合だからだ。ある意味出場に関しては早い者勝ちだった。人数が溢れれば金級でも予選から出場しなくてはならないそうだ。あれだけ早くしろと急かされるわけだ。


「ここ人いない」

「本戦出場が決まっている選手が全員見に来るわけでも無いからな」

「私には勉強になっていいが、イレブンたちにとってはどうなんだ?」

「そのやりとりはもうザールさんとしたんですけどね。見学のフリですよ。これだけの人数でここにいれば目立つでしょう?」

「まあな」


言うなればここは何かのコロシアムのような形になっている。中心に円形の舞台があり、それを囲むように階段状に観客席がある。その上に特別観覧席、俺たちが今いるのはここだ。一番広い席を俺たちだけで使わせてもらうことになった。

ちなみにゲームの時も特別観覧席から見たときだけ手に入るレアアイテムが手に入ったが今回はそんなことは無いようだ。特別席に入れるだけでありがたく思えって感じみたい。

何せゲームの時はアングルに関しては公式の流している映像以外にも手に入ったけど一番良いのは公式がいろんな角度から切り替えて映していた映像だったもんな。あれはやはり大本を握っている運営にしか出せない味だったと思う。

現実世界でいうところのドローンを飛ばして映している映像なんて運営じゃないと手に入らないものだったし。


ロイーグさんにお願いしている魔導具の開発が進めば似たようなものを作ることも出来るようになるだろう。何せ技術の大半は魔法でプログラムすればどうにでもなるからな。今から楽しみである。


話は変わって、特別観覧席も下から覗こうと思えば覗くことが出来る。俺たちからもそういった観客の顔が見えているからね。ここで少し俺が顔を売っておく間に、ザールさんの仕込みで少し噂が流されるのだ。


「グレイブ村にダンジョンがあるらしい」

「村が放棄されたのはそれが理由だ」

「そのダンジョンを攻略しようとする動きがあるらしい」

「ダンジョンに踏み入れて帰ってきた冒険者はいないらしい」

「この武闘大会でそのメンバーに声をかけるらしい」

「既に中心となって動いている商会に委託された冒険者が視察しているらしい」

「金級クラスの冒険者が複数動いているらしい」

「銀級以下や冒険者でなくでも役に立つと判断されればスカウトされるらしい」

「スカウトの人材はそこら中にいるらしい」


らしい、が付いているがほとんど事実だし帰ってきた俺たち以外の冒険者はいないってところだけ違うが。まあほとんどが事実ってことで。ここから尾ひれがついていくだろうから最初からド~ンと真実だけでいきましょうとのことだ。


「既にダンジョン攻略をしているイレブンがいれば何とでもなるもんね」

「リセルも入れるだろ」

「私は責任者って立場じゃないもんね」

「でもイレブンが動けない時に動くのはリセルの嬢ちゃんだろ」

「そんなこと起こると思いますか?」

「イレギュラーは起こると考えておいた方がいい。一時はイレブンと敵対した私たちが言うと説得力が無いか?」

「うっ…、すごくある。覚悟はしておくけど、あんまり期待しないでね。イレブンお願いだよ~」

「はいはい」


気になる一言を聞いてトワ、ティートとセラの子ども組が首を傾げている。


「敵対?」

「俺たちとコトシュさんが所属してた組織がな。あ~…、俺は一応観戦しないといけないから。そのあたりはロイーグさんが一番苦労してただろうからそっちから聞いて」

「間違ってないだけに腹の立つ推測だな!頑固な上司と色々と振り回してくる敵対者と大変な思いをしたよ」


トワにも俺たちの昔の話はしていなかったので後からすり合わせたが敵対していたことの話をロイーグさんから子ども組にしてもらうことになった。大きな流れだけね。意外と興味津々に聞いているし、いつもは黙って作業のロイーグさんも口が回らないながらも楽しそうに話している。

コトシュさんは観戦にかぶりついている。俺も半分意識はそっちに持って行きながらどちらかというと周囲に気を配っていた。この状況で俺たちを意識している奴がいる方が面倒だからだ。耳が早すぎるという意味で。


でもまあどちらかというとあの席に子どもがいるぞ、不公平だなんていう平和な難癖だったので聞き流し一択だ。この闘技場の警備は組合から依頼された真面目な冒険者と共同運営の王国の兵士だ。

早い話が相手が悪い。祭りによくいるスリなど見つかった瞬間にフルボッコだ。命を懸けて魔物と索敵をしている冒険者の索敵能力を舐めてはいけない。ついでに犯罪者に対しての暴力行為は法的にも認められている。さすがに欠損させるのはやり過ぎだが、顔面が腫れ上がるくらいはセーフだ。

それを知らないってことは犯罪組織にも入れないような小物に過ぎない。犯罪者だから容赦する必要も無いけど。


あ、一人捕まったな。子ども2人を連れたお母さんから財布を盗もうとした奴だ。うまく取ったつもりで走り出したところで鼻の骨がひしゃげる勢いで拳骨を叩き込まれてるわ。

お母さんに財布を返して現行犯確認済み、と。観客席の移動でもこういうことをする奴がいるから怖いね。会場に入った段階でチェックされているんだろうな。冒険者のスキルの中に有効なのを持っている人がいるんだろうな。何かは分からないけど俺の知らないものがあるんだろう。

そんなチェックもしながら各々で自由に時間を過ごす。


「お昼ごはんもこのままここで食べる?」

「そうしようか。適当に買って来ても良いし、作り置きから出しても良いけど」

「せっかくだから闘技場に出てる屋台を買ってこようか。誰かついて来る人~」

「「「行く!」」」


子ども組が反応したところでソウガも付けて行って来てもらうことにした。さすがに半日も見ていると強者の1人2人は見つかる。


「とはいえ、わざわざ連れて行くかって言うとそういう感じにはならないよな~」


個人戦の決勝の相手はトワであるような気がしてきている。どう考えてもトワが俺に次いで一番強いのだ。

ハッキリ言おう。ゲームの基準で考えて強くなりすぎた。ここに俺以上に効率良く鍛えてきているやつはいないのだ。そうなると少しだけでも指導して俺と戦う想定をしているトワが勝ちあがってくるような気がしてならない。


「決勝以外は仕方ないな。あ、別ブロックにトワが配置されたらの話か」


そんなところにフレンドビーが飛んで来た。緊急事態のようだ。


「すぐに行く」


観戦しているコトシュさん達を残して観覧席を飛び出す。フレンドビーの案内に従って進む。一体で先導するのではない。経路となるところで滞空して進むべき方向を指し示してくれている。圧倒的多数で隠密能力もあるステルスビーの能力のおかげで誰にも気づかれていない。あとは俺が目立たないように急ぐだけだ。おかげで自分のスピードを維持したまま進むことが出来る。


辿りついた先にいたのは買い出しに出ていたリセル達と何の因果かゾルガンたちだった。あいつは俺と一緒にいたリセル達のことは覚えていないのだろうか。最後に待っていた毎果に依るとリセル達を懐柔して連れて行こうとしていたようだ。


「俺について来いって。貴族の妾にしてやるぞ」

「ついて行きません!変なこと言うなら警備員の人が来ますよ!」

「全く来ないよ。俺に手を出すとヤバいことになるがはぁっ!!!」


色々な思いを込めて顔面に一撃を入れておいた。出場者がどうこうではなくここまで来ると暴漢である。暴漢には鉄拳制裁あるのみだろう。


「イレブン!ごめんね。手を出したらいけないかと思って」

「手を出そうとしてきたのは相手側だ。しかも前回と違って色んな人の目があるところでこんなことやってたら誤魔化しきれないだろう。自分よりも弱い相手にあんまり遠慮するな」

「みんなに迷惑かかるかと思ってガマンしたんだよ!」

「そうか。それはありがとうな」


リセルに労っておくのと合わせて気にかけるべきはティートだ。前回と違って睨みつけはするものの恨みをぶつけるというよりは我慢してくれていたみたいだ。


「因縁のある相手に対してよく我慢したな。えらいぞ」

「イレブンさんがどうにかしてくれるって言ってたからね」

「こんな早くにどうにかなるなんて思ってなかったけどな」


周囲の警備している冒険者たちには出場者同士の争いをどうするかの判断は出来ないようだ。俺はリセル達が無事なら見逃しても良いんだけど。


おっと傍にいるのは先程から活躍している風魔法をメインに使って勝ち残っている人じゃないか。ゾルガンの身内だったのか。では、魔力を放出してビビらせておこう。ゾルガンは気絶しているしな。


「ひっ!」

「起きたら言っておいてくれ。三度目は無いってな」


コクコクと頷いて退散していった。自分の予選を戦いながらパーティメンバーの介護までしないといけないなんて彼は苦労性だなぁ。


え?原因の俺が言うな?いや、原因はゾルガンだと思うよ。

ことわざで考えてたらやりたくなっただけです二度あること~ってのと仏の~ってのなんですけど。

お読みいただきありがとうございました。毎回の文言は同じですが、毎日感謝しております。

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