表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

264/335

誇りある依頼

時系列としては前回ラストから数日遡っていると思ってください。分かりにくくてすみません。


ブクマ・評価・いいねなどいつもありがとうございます。読んでいただけるだけでありがたいです。お楽しみ頂けると幸いです。

ダドーとの一件があったのは数日前のこと、見ていない間に勘当っぽい扱いを受けたらしく公爵本人とダドーを中継してくれる係が出来上がっていたがそこまでの興味はもはやない。好きにしていいよと言ってこれだから好きでやってくれていると判断する。なんだかフレンドビーたちが俺に過保護な気はするけれど。


「少し荒れたからね。ここは一つ、『誇りある依頼』でも受けてみるかい?」


ネマさんから提案された『誇りある依頼』とは、今まで受けたことは無いが説明は聞いたことがある。簡単に言うと割に合わない依頼のことだ。ただ依頼数をこなしたというなら普段からやっている納品系をこなしてしまえばいいが、単純に誰もやるものがいなかったり、危険度が高い割に費用が安かったりする依頼のことだ。達成したところで名誉しか手に入れるものが無い。そういったことを揶揄してそう名付けられた。ちなみにゲームの中ではサブイベントが起こる依頼のことだったりするのでそこまでカッコイイ名前は付いていない。


「まあそうですね。受けることにします。なんか適度に王都から離れられて武闘大会までに戻って来られるのが良いですね」

「予選があるのは一週間後だけどあんたは免除だろ?」


ざっと依頼を見ながら選ぶネマさんが不思議そうに聞く。


「そうですけど見れるなら見ておきたいじゃないですか」

「気にするような相手がいるとは思わないけどねぇ」


俺もそう思うけれど、祭りの気分に乗せられているのだ。そんなやり取りをしている間に一枚選んで、というよりも見つけたが正しいだろう。最初からこの依頼をさせたかったみたいだ。


「これを頼みたい。と言っても村の様子を見てくるだけだ」

「それだけで『誇りある依頼』ですか?」

「村と連絡が取れなくなったんだ。ここから東にある村なんだけど、ここ数日定期的に来る村の人も見なくなったし様子を見に行くと言って行った者も戻って来ない」

「村に何かあったとしか思えないわけですね」


ネマさんはコクリと頷く。


「これが盗賊の仕業なら捕まえて拷問して終わりだが、村人が生きているとなると盾にされる恐れがある」

「兵士は動かないんですか?」


村1つが存亡の危機なのだ。兵士が動くには十分な理由ではないだろうか。


「武闘大会前に貴族街シャーグの貴族どもが移動に兵士を奪っていってね。兵士の仕事がこっちに回ってきたんだよ。武闘大会でケガを嫌がる奴らが多い中、あんたなら気にせずにやってくれるだろ?」

「もちろんです。断る理由があるやつの気が知れません」


ネマさんが俺から視線を外しているから断った奴の方を見ていたんだろう。


「じゃあ目的地はディライという村だ。村だけど避暑地としてすごす冒険者がいるからか宿屋は大きいからね。安全確認だけしてきてくれよ。いくら何でも王都から馬車で2日の距離の村に押し入る盗賊がいるとは思えないからさ」

「了解です」


そう言って引き受けた後に、皆に確認して行ってくることを伝える。従魔隊(糸太郎・福来・ソウガをまとめてそう呼ぶことにした)は連れて行くとして他の皆はどうするのかを聞くとロイーグさんとコトシュさんだけ残ることになった。


「金級が受けてくる依頼に同じパーティでも乗るわけにはいかないだろう。今回は遠慮しておく。お前らが行っている間は火山地帯にでも行って獣人たちに紛れさせてもらうよ」

「近接格闘担当としては学ぶところが多いからな。団体戦で迷惑をかけないようにしてくるぞ」


二日くらいなら俺や福来がいなくても空間接続は使えるが完全に別行動になると自由に行き来は出来なくなるが、それが本来は普通のことなので構わないらしい。


「ではお互い行ってらっしゃいですね」

「ああ、ではな。トワ、イレブンとリセルの言うことをちゃんと聞くんだぞ」

「うん。コトシュお姉ちゃんも気をつけてね」

「ありがとう!」


そう言ってムギュッと抱きついた後、名残惜しそうに離すと二人で別行動していった。たぶん合流した時に何か驚かしてくれるはずだ。最近2人でコソコソしてたからな。コトシュさんは七剣の練習だろうな。


「さて、2人に負けないように俺らも帰りには模擬戦でもするか」

「行きはしないの?」

「早く行く方が良いだろう。何かあるんだったら早く助けないとな」


見送った後に早急に準備を整えてソウガを巨大化させて準備を整えるとこっちも出発する。王都から出るまではソウガが珍しいのか変に視線を集めてしまった。王都東の門から出て道を急いだ。


行きに何があったかは覚えていない。俺は御者に集中して先を急いでいた。リセルとトワで忍術の風遁以外を開発しようとしていた。道具に精霊を宿らせて加減すればって言っていたからとてつもない威力の忍具が出来たのだろう。正直着いてからのことを思うとそれらはどうでも良かった。


 ☆ ★ ☆ ★ ☆


「なんだ、これ……」


既についていないが残る焦げた臭いが、確かに燃えたいや村は燃え尽きたことを教えてくれていた。


異変に気が付いたのは少し前だ。村に着くまでに馬で二日と言われたが、ソウガならそんなに時間はかからない。村が近くなってきたと思われる農村の光景が近くなってきたが誰も作業をしているように見えなかった。夕方とはいえ誰もいないのはおかしい。急いで良かったとこのタイミングでは思っていた。

そこから道なりに村に急いだが、既に気配は掴めそうもない。到着したところで目に映るのは既に誰も動く気配の無い村だ。


「イレブン、生きている人がいないかを探そう」

「分かった。『探知』」


俺が戸惑っている間にリセルは冷静に判断し、トワはフレンドビーたちを外に出やすいように狼車の入り口を開放してくれている。一瞬呆けた自分が情けない。


「いた。固まって隠れている。こっちだ」


移動しながら万花たちに薙刀隊を中心に村の外の索敵を命じて周囲に拡散させる。その後は生存者に向けて歩いていく。


かつては村だった場所は魔物の襲撃にでもあったようだった。木の壁には爪で切り裂かれたような跡が残り、燃えた跡が人間を食料目当てだけで見ていたのではないことを教えてくれる。甚振っていたつもりだろうか。胸糞が悪くなる。

村の外に出ると離れた場所に従魔隊にキャンプの準備をしてもらう。毎果隊もいるので簡単な設備なら作れるだろう。従魔隊もかわいい見た目だが魔物にやられたかもしれないことを考えると連れて行かない方が良いだろう。


「ここだ」

「あの洞穴だね。ここまで近づけば分かるよ」


村の近くの山肌に隠されていた洞穴があった。そこに2人ほどの気配がある。


「お~い、俺は冒険者だ。王都から依頼でこの村に来た。誓って君たちに危害を加えないことを誓う」

「お姉さんもいるから安心してくれていいよ~」

「大丈夫。いい人だよ」


それぞれ何を言って良いのか分からなかったが声をかけてしばらく待つと2つの気配の内1つが警戒をしながらこちらに近づいてくる。


姿を現すとトワよりも幼い雰囲気を持った少年だった。村人がしているような一般的な服装に似合わない大きさの木のこん棒を持っている。


「お、お前たちが、盗賊じゃ、ないってしょ、ショーコはあるのか!」

「冒険者証で良ければ見せよう。これでどうだ?」


もう一人の方はこの子よりも更に気配が小さいから年下の男の子か女の子なのだろう。ただ、日常がいきなり崩された中でもう一人を守ることで必死に自分を繋ぎとめようとしている目の前の子の気持ちを尊重してやりたい。


「なにを、しに来たんだ?」

「王都からの確認だ。乗り掛かった舟だ。キミ達も保護するよ。とりあえずお腹空いてないか?子どもはいっぱい食べるのが仕事だもんな」


おにぎりを目の前に出して見せる。炊き立てご飯で握ったから熱々だ。良い匂いに鼻をひくひくと動かす。ついでに少しよだれも出て来ている。


「見たことない……」

「おにぎりって言うんだ。知り合った記念にいくらでも食べていいぞ。どうする?」


ハッとすると俺たちをじっと見回して俯くとボソッと言った。


「ついてきて」

「ありがとう」


信用は勝ち得たらしい。冷めてもいけないので見えないところでおにぎりはアイテムボックスに戻しておく。


奥まで進むと同じような木のこん棒を持っていたのは男の子と同じくらいの年齢の女の子だった。


「ティート!ケガ無い?」

「心配しなくてもだいじょうぶだよ、セラ。この人たちはきれいな服をしてるし、冒険者だよ」


男の子の名前はティート、女の子はセラという名前か。2人でしばらくここで生き延びていたようだ。普通なら部屋の中にありそうなものがここは雑多に置かれている。


「信用はしてくれたと思って良いのかな?」

「うん。おれは宿屋の息子だ。だから冒険者は見たことがあるから知ってる。盗賊の格好はもっと汚い」

「そうか。じゃあ知り合いついでにサービスだ。『清潔』これできれいになるぞ」


食糧の調達で精一杯だったのだろう。多少の汚れは隠れるのに好都合とも言わんばかりにしていたのできれいにしてあげた。

セラの方はまだ警戒していたがティートの方は悪い感情は向けて来ない。初対面とこの状況を考えるとティートの方がいささか浅慮に見えるから2人併せてちょうど良い感じだろう。


「おにぎりだが、ここで食べるか?それとも村の外にだがキャンプを張ることにしたからそこで一緒に過ごすか?夜の見張りは俺たちがするからぐっすり寝てくれて良いぞ」

「……ちょっと待ってて」

「ああ」


そこからはティートがセラを説得した。結局はついて来ることになった。洞穴からキャンプ場所までの移動中に従魔隊のことを説明したらティートは大丈夫という反応、セラはまだ誰にも心を許してくれていないという感じだ。


「何があったかだけ聞いても良いか?」


夜の警戒に関わることだからと説明するとセラは明らかに顔色を悪くし、ティートも話しにくそうにしていたが一言だけ教えてくれた。


「ワイバーンの群れに襲われた」

お読みいただきありがとうございました。毎回の文言は同じですが、毎日感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
私の魔法の使い方
https://ncode.syosetu.com/n8434ia/
婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
https://ncode.syosetu.com/n1262ht/
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ