手伝わせろ!
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どこか誇らしげなトワを前にして評価タイムだ。それが分かっているのか少しトワも緊張感を漂わせる。
「風化か、よく知ってたな」
「勉強した中に砂漠っていう土地があることを知った。風が出来ることなら私でも出来ると思った」
「たしかに風化の前では金属類は弱いかもしれないな。魔法ではなく闘気由来の忍法で現象を再現したから通用したってところか」
ゴーレム専用の即死魔法みたいな扱いだな。
「いや、砂漠の再現ってことは生物にも通用するのか?」
「試した。効果ある」
「おぉ。その探究心は良いことだけど、なるべく生物相手には使わないようにな。危険だから」
「分かった。それで結果は?」
目がどうなんだと言わんばかりに期待している。実際にオーダー通りに倒したわけだからな。
「合格は合格だ。ただし、言っていた通りに薙刀隊は連れて行ってもらうぞ」
「む。仕方ない」
自分でも分かっているようで何よりだ。ただ、戦闘をあまり経験していていないリセルは分かっていなかったようで質問が来た。
「なんで薙刀ちゃんたちを連れて行くことになるの?」
「理由は簡単だ。トワは自分で言えるか?」
「言える。一対一なら同じことが何度でも出来るけど、複数の場合には対処できない可能性がある。一対一の戦闘になるよう引き付けてもらう必要があるから」
「正解だ」
実際今回も俺が一体倒している。一人で2体を相手するには最初から忍法を仕掛けるくらいのつもりでないと成立しない。しかしある程度傷をつけていないとただ弾かれて終わりになるのかもしれない。ん?ということはもしかして…。
「もしかして今までにミスリルゴーレムに試したことあるのか?」
「前に来た時に試した。実験したからこそすぐ倒せた」
「そうだったのか」
確か行きたいところを好きに言ってもらってフリーで通していたことがあった気がする。その辺りを福来に任せていたな。まあ敵わなければ逃げるくらいは考えていたんだろうし、それくらいは自分で判断してもらわないといけない。あのコトシュさんのことを考えると単独行動でも無かったのだろう。俺が事細かに口うるさく言うのはやめておくか。それよりも判定だ。
「まあ言いたいことはあるけど今日はやめておく。一対一なら問題無く倒せるから及第点にしても良い。ただし薙刀隊は明日以降ちゃんと一緒に行動するんだ。一人で生きているわけでも無いんだ。助け合えばいいしな」
「じゃあ最初から薙刀ちゃんたちを連れてくれば良かったね」
「仕方ないだろう。いきなりついて来いって言っても予定があるんだし。トワ、自分で説明して連携取るんだぞ」
「りょうか……御意」
それ久しぶりに聞いたな。あえてツッコミはしないけど。
「あとな、忍法について色々聞いておきたいんだが闘気で発動するのか」
「そう」
「火遁とか水遁とか出来るのか?」
「ムリ。風遁しかできない」
「そのあたりは魔法の属性と同じなのかな。分かった。ありがとう」
「役に立ったなら良かった」
今度俺もやってみよう。楽しみが増えた。
「あと、あの手で結んでた印はなんだ?」
「忍法をやる時にあれをやると集中できてやりやすい」
カッコいいと思う指の形を教えただけだ。右手でチョキを出すつもりで伸ばして左手で包み込み、左手もチョキを作るつもりで伸ばす。当然だけど指を広げたりはしない。あとはこれで念じるって感じだ。魔法と発動の感覚が違うのはトワは何となくで使い分けているらしいが、この手の形をすることでスイッチを入れ替えているようだ。両手が塞がるからその内違う方法を考えた方が良いかもしれない。俺も実際にやってみてから考えることにしよう。
最近はスキルを増やすことを考えてはいたものの色々あって後回しにしていたし、既存のスキルを育てる方に重点を置いていたから新しく増えているだろうスキルのチェックはしてなかった。ちゃんとやっておこう。これで増えてなかったらトワを褒めるしかないな。
「それで?今日はこのままミスリルゴーレムを倒していくの?」
「せっかくだからそうしようか。納品分だけじゃなくて自分用のストックも押さえておきたいし」
「イレブンがいる時にやっておいた方が良さそうだもんね。トワちゃんとのタッグは私がやるよ」
「分かった。いつも通りの単独行動で」
本気で動くとなると久しぶりだ。ストレッチをして体をほぐす。
「イレブンだけ単独行動ズルい」
「興味のある方向にすぐ行くからついて行くのも大変なんだよ?」
「人を子どもみたいに言うな」
「事実ですぅ~」
「すいませんね!じゃあ2人はこの辺りで待っていたらミスリルゴーレムがリポップするからそれを倒していてくれ。俺は少し離れて周回してくる」
「了解~」
「御意」
今更ながらトワに仕込んだ言葉遣いが使い方あっているのか不安になるが、それこそ今更なので気にしないことにした。今出来ることをやることにしよう。秘奥義を使わずとも少し留まれば倒すことは出来る。道中でスキルポーションを飲みながら進んでいった。
☆ ★ ☆ ★ ☆
そして半日かけてミスリルゴーレムを倒しそこそこに手に入れた後に合流する。そこには浮かない顔のトワがいた。
「どうかしたのか?」
「それがね。武器としてもらってた短刀が欠けちゃったんだ」
「見せてくれ。……あ~、皹が入ったんだな。仕方ないな。同じ材質なんだから何度も打ち合っていればこうなる」
「だよねぇ。でも武器が欠けるのはショックだったみたいでね」
それで落ち込んでいたのか。無理もない。武器が欠けることは持ち主が未熟だからだ!とか言う人もいるもんな。
「トワ、気にするなよ。この武器はお前の武器である防具でもある。皹のはいり方から見て防御に使った時に入ったんだろう?」
トワはコクリと頷く。
「だったらこいつは役割を全うした。褒めてやりこそすれ悲しむことは無い。こいつをベースに使ってもう一回新しく鍛え直すから」
「……ありがとう」
「よかったね」
そこまで気に入ってくれていたとは作った人間としては嬉しい限りだ。となると、悔やまれるな。
「1つだけ注意点だ。鍛え直すって言ったが、現状ではミスリル以上の加工が出来ない。作ったとしても前よりも少し丈夫なくらいだ。安全には注意した上でゴーレムとは戦闘してくれ」
「ミスリルよりも丈夫な金属は無いの?」
「あるよ。設備の関係だ。技術はあっても道具が無くて出来ないんだ。それこそ鍛冶の技術を持っていそうな種族に教えてもらわないと」
「魔国のドワーフだね!」
「そうだ」
子どもくらいの身長しか無いが、大人よりも太い腕を持ち、髭がたっぷり生え、酒と技術をこよなく愛する種族であるドワーフ。そんな紹介でほぼ正解のドワーフに早く会いたいものだ。
「今度からは気を付ける」
「安全管理はつまるところ自分にしか出来ないからな。大したケガが無くて良かった」
「私が治したんだけどね」
「結構痛かった」
トワが痛いって言うんだから相当だったんだろう。これは予備のポーションや短刀も持たせておいた方が良さそうだな。同じことをリセルも考えているようだ。これで明日の予定は決まったな。
「何事も準備が大事ってことだな」
「そうだね。時間の使い方が決まったところでがんばろうか」
「そうしよう」
やることが決まればさっさと帰るに限る。
ただ、帰ったら帰ったで詰め寄られる。
「俺たちは頼りにならないか!?水臭いって言葉知ってるか!?」
「なぜ私たちに何も言わずに3人だけで行動した!?」
ロイーグさんとコトシュさんにビガリヴァ家からの指名依頼について何も言わなかったことを責められた。
「力不足は分かっているがよ」
「いや、言おうとは思ってたんだけど別行動だったから伝える時間が無かっただけだよ」
「じゃあ何をすれば良いかの指示はすぐ出せるな?」
なんで指示を出される側のコトシュさんが脅迫する姿勢なんですかね。
「じゃあ2人で食材の宝庫に行ってもらえますか?明日はトワも含めて3人で」
「了解した。ロイーグもいいな?」
「まあ出来ることをしますんで」
「俺をリセルは必要なものを作ってるんで、一日で可能な限り整えます」
「それでこそ分担だろうが、糸太郎たちはどうする?」
「糸太郎と福来は拠点防衛に適してるんで、待機で。ソウガは折角なんで一緒に連れて行ってもらえますか?」
「狼なんだし狩りでこそ輝くだろう。連れて行こう」
「お願いします」
頼ってはいけないとは考えてなかったけど怒られるとまでは思ってなかったな。そうなると予備を作り終えたら俺もメタルマウンテンに行こうかな。
「イレブンは相談をしに行け」
「誰にですか?」
「貴族、しかも公爵家相手だろう?大物を相手にするのに生半可な作戦ではいけない。ザールのところに行くべきだ」
「やっぱりそうですよね…」
このまま納品するとヤバいのが分かっているから少し追い詰めることをするつもりなんだが。この思い付き、商人のザールさんに言ったら怒られそうなんだよなぁ。実行可能かも含めて相談しに行こう。
お読みいただきありがとうございました。毎回の文言は同じですが、毎日感謝しております。




