何言い出してくれてんの?
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「それなら痛い目に遭わせるってことは可能だな。冒険者組合としては言うことは出来ないけど、個人的にはガッツリやってやれって感じだ」
「良かった。じゃあそれなら早速行動開始ですね」
「しかし、本当に大丈夫なのか?普通なら違約金金貨10枚なんてとてもじゃないが払える金額じゃあないんだぞ?それだけで受けなくても良いくらいだ」
「現地に行けるだけであっちは誤算でしょ?行きさえすれば何とでもなりますよ。一番大変そうなミスリルもメタルマウンテンの中なら慣れたもんですしね」
言葉ではいくら言っても心配してしまうのだろう。心配させるのは申し訳ないが方針さえ立ってしまえばあとは行動あるのみだ。
「え~い、もう女は度胸だ。受理するからな!絶対に達成して来いよ!」
「問題無いです。むしろ諸々の心配するのは向こうの方です」
「こういうときは大丈夫!って言いきらないと」
「だんだん心配するのがアホらしくなってきたけどね」
ぐだぐだになったところで応接室から出る。すると受付の前で仁王立ちする男が一人立っていた。顔が自信満々だが誰だろうか。思いっきり俺の方を見ているが。
「どうだ?我が公爵家からの依頼は受けることにしたのか?」
今のセリフから思い当たったがイマイチ自身が無いのでネマさんにこっそり聞く。
「誰ですか?」
「えぇ…」
リセルだけでなくトワまでが同じリアクションだ。やっぱり知ってないといけない顔だったってことだよな。俺の記憶正しかったのか。
「こいつがダドーだよ」
「やっぱりそうでしたか」
「なんで忘れてるんだ?」
ネマさんに言われて思い出した。そう言えばこんな顔をしていた気がする。覚えていた振りをしよう。
「そうですね。受けますよ。せっかくなんで」
「我が家の依頼を受けたということはぼくの配下も同然というわけだ!」
何その理屈、アホの上に馬鹿なの?救いようがないのかな?
「稽古でも付けてやる。来い!」
「え、普通にイヤですけど。依頼を受けただけでそんな勘違いですか。じゃあ毎日銅貨1枚で黙って家に引きこもるって依頼を出しますね。直接渡すので良いですかね」
銅貨を差し出したら手を払われそうになったので避けておいた。当たらなかったことに関してまたしかめ面をされてしまった。
「ふざけるな!!」
「ぶふっ!」
ネマさんには受けた。同じようなことをし返しただけだが、ダドーには分かってはもらえないらしい。だが依頼を受けるということだけを確認したかったらしい。
「それよりもダドー様、先日の試験の無理な挑戦によりしばらくの間組合への立ち入りを禁止させてもらっているはずですが」
なんとダドーは試験への横入りが原因でしばらく組合には立ち入り禁止だったらしい。これにはお付きの人たちも慌てている。
「坊ちゃまひとまずここは出ましょう」
「いいか!依頼書に書いてあった違約金は絶対に払わせるからな!1つ受けるだけで全部受けることになるようにしてあるからな!」
「そうなんですか?」
「そんなわけないだろ。依頼書が別なら別の依頼だ」
ネマさんが即否定してくれたので安心する。自分の考えた案が通ったと思っているのだろう。お付きに誘導されたダドーがボナソンとは違う別の職員によって追い出されて行くのを見守る。彼も荒事担当っぽいな。
「どう育ったらあんな感じになるんでしょうね」
「周囲から注意を受けたり否定されることがなく育つとああなるんじゃないか。自分の思うとおりにならない方がおかしい!ってな。あたしにも分からんよ」
「まあその分の代償はしっかりと払うことになるんで。では行きますね」
「ああ、気を付けなよ」
少しずらして外に出るとダドーたちはいなかったのでそのまま家に戻って分担を確認する。
「まず、ケンカを売られたのは俺だから俺だけでやっても構わないんだが」
「そんなのダメだよ!パーティで指名されたんだから私たちもやるよ!ね、トワちゃんも!」
「あたりまえ」
思った以上に鼻息の荒くしたトワが、グッとサムズアップを決めながらトワが、協力を申し出てくれた。いや、リセルの言葉を借りるなら強力って言葉がおかしいのか。協力してくれる人がいるってことがすごくありがたい。
「よし、初の指名依頼があんな奴からというのは腹は立つが十分に搾り取らせてもらおう」
「そうだよ。びっくりさせるんだから!」
「ギュッと搾り取る」
それぞれの言葉で意気込んだところで分担を決めよう。
「さっきも言ったがリセルはフレイムウッドの木炭を頼むな」
「了解!」
出身地の特産品みたいなものだ。獣人の村で聞くだけで相当な量が集まるだろう。
「ロイヤルハニーの方は作ってくれている万花たちがどれくらいくれるのかによるから任せようと思う」
「異議なし」
リセルも同意見で、トワも頷いてくれているので問題無いだろう。
「ということだ。最低限の量はもらいたいがどれくらいかは任せるよ。量を増やせと言われたところで増えるものでもないと思うからさ」
「かしこまりました。一度毎果と相談してからまたご報告させていただきます」
「分かった」
「では、早速行動に移したいと思いますので失礼します」
「あぁ、無理するなよ」
俺の言葉にお辞儀をすると毎果を伴って万花は飛んでいった。
「無理すると思う?」
「半々だと思うな。魔物が自分たちの作った物を売り買いされることについてどう感じるのか分からないし」
お金を使うという概念が分かっているかどうかだ。魔物の世界に社会性が無いわけでは無いだろうが、物々交換が成立するくらいだろう。
「こればかりは考えても仕方ない。万花たちに任せよう。最低限はくれるんだから俺たちはあと3つについて考えた方がいい」
「そうだね」
「で、食材の宝庫で大量に食材を集めるのとメタルマウンテンでミスリルゴーレムを狩りまくるんだけども。どっちかを俺とトワで分担するわけだが…」
「ミスリルの方を私がやる」
「え?」
「ト、トワちゃん?」
トワからの意表を突いた一言に俺とリセルが硬直する。
「待て待て。ミスリルゴーレムだぞ。一番トワが苦手にしているタイプじゃないか」
ゴーレムには痛覚も無ければ感情も無い。搦手が利かないということは力押しでいく必要があるのだが、トワにはまだそこまでの攻撃を通しきるだけの攻撃手段が少ないはずだ。弱点はあるが、顔面となるとなかなかに突ける弱点ではない。
何よりトワの攻撃は特性として鋭すぎるんだ。壊すというよりも切ることに特化していると言っても良い。得意な風魔法の扱いがそんな方向性だったからこればっかりは仕方ない。
「だからこそ私がそっち。アサシン技術使えばいける」
「でもね?量が量だから安全にいった方が良いと思うんだよね」
「だったらイレブンが終わってから手伝いに来ればいい」
いやまあ確かにそうなんだけど。いつもよりも意思表示が固いな。これは譲ってくれそうも無いな
「最初は見てくれてもいい。無理だと思ったら食材の宝庫の方を担当しても良い」
「自分から譲歩しだしたタイミングで許可するしかないだろ。いいよ、一旦倒せるかどうかを見よう」
「テストするなら良い…かなぁ」
「ただし!テストの結果がどうであっても不慮の事故を防ぐために薙刀含めて薙刀隊も付けるぞ」
「ん~~…。分かった」
何を悩んだんだろう。まあ協力しながら倒していくのも手だな。万が一に備えて薙刀にも攻撃に出るように言っておこう。
「じゃあ分担が決まったところでいくとするか。リセルもすぐに獣人の村に行くか?」
「明日からでいいよ。今日はみんなでメタルマウンテンにしない?私も心配だし」
相性の悪さを考えると心配になるよな。気持ちは分かる。
「よし、じゃあ別行動は明日からだ。今日はトワのテスト含めて一緒に行動しよう。ミスリルは在庫が無いからそういう意味でもたくさん集めておきたいしな」
「了解!よ~し、がんばるぞ~!」
「本気見せるよ」
何を見せられるんだろうか。
☆ ★ ☆ ★ ☆
メタルマウンテンまでやってきた。
「ストーンゴーレムで試す必要は無いだろうからまずはアイアンゴーレムを試しに倒してくれ」
「分かった」
とはいえ移動しながらトワを見ているわけだが、道中に出てきたストーンゴーレムは俺から見ても危なげなく倒せている。何よりも切った瞬間しか見えないがスパッと切っている。切り口が凄まじい。行動パターンはほとんど一緒だ。近づいて来て腕の一撃で大打撃を加えてくる。重心が安定していてバランスを崩して倒れることは無いから如何に一撃を躱して大打撃を与えるかどうかがポイントだ。これがミスリルゴーレムにまで通用するのかが気になるところなのだが。
「イレブンはゴーレムはどう倒すの?」
「あいつらの攻撃だけでなく、俺が本気を出したら余程でない限りダメージなんて喰らわない。重力魔法でこかしてしまえば起き上がるまで殴り放題だしな。他にも削ろうと思えば削れるしやり方は色々ある。リセルは?」
「ここなら土ちゃんの影響が強いからその力を借りるかな。盾で防御していれば私もダメージが通ることは無いと思うし、時間かければ削りきれるかな。もちろんイレブンよりも時間はかかるよ」
2人で目を合わせるとそのままトワの方を見る。
「あいつどうやる気なんだろ」
「だねぇ」
お読みいただきありがとうございました。毎回の文言は同じですが、毎日感謝しております。




