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王都に行く前に

お楽しみ頂けると幸いです。

当然ながら困ったときのザールさんだ。仕事で忙しいだろうに会う時間が欲しかったと言って会ってくれた。


「スルマウ家ですか。侯爵家の地位を持っていますね」

「それって偉いんですか?」

「イレブン君は貴族は知らないんですか?」

「昔はいましたけど、俺のいた世界では遠い外国の話か、もしくは物語の中です。俺はその辺りは詳しくなかったので」


ゲームの中でも貴族とひとまとめにされていたから詳しいことは知らない。辛うじて覚えているのは何時代か忘れたが帽子か何かの色で官位を分けていたとかではなかっただろうか。紫が一番上だったことだけは覚えているが、あとの5色は順番も何色だったか忘れた。


「せっかく王都に行くんですから覚えておいてください」


そう言ってザールさんにレクチャーされた。王族が一番上、次の公爵は王族と血縁関係のある貴族を指す。そこから下は順に侯爵・伯爵・子爵・男爵と繋がるそうだ。

正確にはそれらにも序列はあるし、騎士爵だとかもあるらしいが、一旦覚えておけと言われたのは男爵までだ。そこまでなら何とか分かる。

あとは平民に対して横柄なのか、あくまでも導き守る人という立場で見るかは家の教育によって違うらしい。王都では安全で物が色々と手に入るのを引き換えに貴族には十分注意する必要があると言われた。

まともなこの国の人間がいない俺たちには必要な情報だった。


「銀級冒険者であれば一応公式な身分の証明にはなるでしょうから、目立とうとしなければ問題ないでしょう。で、現スルマウ侯爵ですけど宰相の地位に就いています」

「宰相は政治のトップですよね」

「そうですね。色々と言いたいことがあるのも分かりますが、掴んでいる情報では今回のタッツの町を壊滅させるような手段を用いるような人物ではありません」


王国は現状貴族の腐敗が進んでいる中、民衆の先頭に立って何とか国内を安定させようとしているのが現宰相のボルトム・スルマウ侯爵だそうだ。

表向きには民に優しい有能な宰相閣下らしい。裏があるのか探ってみると少し奥さんの金遣いが荒いという欠点はあるものの、そこから何かが出てくるわけでも無かったらしい。

ザールさんから言わせてみればボルトム侯爵は宰相という地位にあって珍しく毒の無い人間なのだそうだ。


普通は組織のトップに立つには清濁併せ吞むことが必要だ。それが出来ないようでは人の上に立つことなど出来ない。しかし、ボルトム侯爵本人だけを見ているとそれが出来るような人物ではないらしい。


「じゃあその情報自体が怪しいってことじゃないんですか?」


スルマウ侯爵家の家紋を持った者が石化花粉を吐き出すゴンゴルの花をタッツの町に仕掛けようとしたのが事実として間違いないわけだし。


「そう考えるしかないでしょうね。現時点で考えられるのは裏の活動をしている人間が別にいる、とかですかね」

「よっぽどの人物ですよね。もし今回の作戦が成功していたら町1つ全部の人間が石化していたし、街道が使い物にならなくなってたんですから」

「そうなるとスルマウ侯爵に裏が無い、今回のような事件を起こす人ではないと判断するのは早計だったかもしれませんね。僕も疑問に思ってきました。王都周りの情報を更新しましょうか。イレブン君が王都に着いたら頼めますか?」

「追及されることに関してはザールさんが自分で処理してくださいね」

「何とでもしましょう。あと、王都に行く前にお知らせがいくつか」


そう言って渡されたのは、『王都に行く前に必読!』と表紙に書かれた紙の束だった。


「何ですか、これ」

「イレブン君たちに周知しておきたい設定です。王都にはさっきも言った貴族もいますし、僕と違って悪徳な商人もいます」

「はい」


ここはツッコんだら負けのところです。


「何かあってからの対処も出来なくは無いですし、実際に問題が起こったときに物理的な解決手段で片付けることも出来るでしょう」

「得意分野ですから」


王都が真っ平になるかもしれませんけど。


「ですから事前にこれだけは守っておいてくれってことを書いておきました」

「分かりました。では」

「待ってください」


受け取るだけ受け取って帰ろうとしたら止められた。


「今ここで読んでください。不明点はここで確認してください」

「え~…。わかりました~」

「はい。どうぞ」


お茶請けが追加で出てきた。一緒にのむ紅茶もザールさんが手ずからやってくれる。まあ必須技能か知らないけどお茶淹れるの上手なんだよな、この人。たぶん、メディさんに飲ませたいとかそんな理由だと思うけど。


「え~と、なになに…」


・通称四輪はイレブンが作った試作型魔道具である。極魔石数個をエネルギー源としている。運転に関してはMZDS商会で技能研修を受けた者だけが可能としている。詳しい内容に関しては製作者のイレブンが全てを把握している。


「これはなぜですか?」

「イレブン君にとっては気にならないかもしれませんが、馬無しで動いている時点でとんでもないものです」

「たしかに」


町の近くでは使わないようにしてはいるけど、途中ですれ違う人がいないわけじゃないもんな。


「何か連絡が来た時は僕の方で引き受けているので問題ありません。ほしいと言われても断っています」

「そんなことがあったんですか?」

「あったんです。でも関係者がイレブン君だと言えば静かになります。今やユーフラシアでイレブン君の名前を知らない者はいないので、トラブルにはなっていません」


俺の名前で無理矢理黙らせているように聞こえるのは気のせいかな?まあ、いいか。

昔の偉い人が言ってた。車は限られた人だけが乗るもんだって。誰も彼もが乗ってはいけない。


それはさておき、エネルギーのMPだって一般の人、多少できるくらいの冒険者でもには難しいしな


「理解しました。いつもありがとうございます」


・アイテムボックスに関しては必ずマジックバッグだと装うこと。

・マジックバッグに関してもあまり人通りの多いところでは使うのを控えること。商人にとってはいくら積んでも欲しがるもの。裏組織にとっても認識は同じ。


「これは分かります。今まで以上に気を付けますよ。でも裏組織なんてあるんですね」

「ありますよ。関わらないようにしてくださいね」

「了解です」


自分からはいかない。向こうから来た時は知らない。


・蜂娘たちや糸太郎、福来は一時的に誰でも構わないのでパーティメンバーと一緒に行動すること。特に戦闘能力の無い万花は誰かと常に一緒にいること。毎果と薙刀に関しては状況に応じて対応すること。単独行動は可能な限り避けること

・フレンドビーたちに関しては可能であれば王都外に集団で固まっておく方が良い。


「これはなぜですか?」

「魔物でも珍しいからですよ。冒険者組合で登録していたとしても無理矢理奪ってくる貴族はいるでしょう。特に横暴だと言われているものほど王都にいます」

「めちゃくちゃ面倒じゃないですか…」

「運が悪くなければ出会いませんよ」

「イベントごとは全部回収しそうな気がするんですよねぇ」


出会わないことを祈るしかないか。あとは隠蔽や隠形を使っておくことにしようかな。この辺りは王都の様子を見てから決めるか。


「あと、毎果も戦闘能力は無いですよ。時々強いけど」

「非常に時に強いのなら良いんですよ。聞いてる限りでは万花は戦った事すらないんでしょう?一応ですよ。本当は強いというなら関係ありませんが、やり過ぎるとイレブン君が出ないといけなくなるので気を付けてくださいね」

「やり過ぎ注意ってことですね」

「そういうことです」


・暫定冒険者資格試験があるので登録している者は試験を受けること


「暫定冒険者資格試験って何ですか?」

「冒険者資格を持つ者なら時期さえ合えばですけど、誰でも本部で試験を受けられるんですよ。昇級試験の合同版みたいなものですよ」

「受けた方が良いんですか?」


ザールさんがため息を吐きながら教えてくれた。


「面倒だとは思いますが、王都の一部には王都以外は全部田舎と考えている者がいます。ですから地方であろうとも優秀な者がいると知らしめるための試験です」

「つまりユーフラシア代表として出て王都の冒険者を凹ませると」

「そこまでとは言いません。しかし冒険者が多く集まる手前、正確に国内の実力者を測っておこうとしています。受験するかは任意ですが、キミ達なら余裕で一段でも二段でも上がることでしょう。実績さえ積んでおけば武闘大会での内容次第で昇級も間違いないでしょうし

「じゃあ希望者は受けてもらうようにしておきます」


俺は何がおきても矢面に立つわけだから上げられるときに上げておく。他は聞いてみないと分からないな。


・武闘大会の登録は忘れずに


「これは言われなくても気を付けますよ?」

「個人はともかく、団体は参加者全員で参加する必要がありますからね。揃って行ってください」

「分かりました」


他にも色々と気を付けることをやり取りはあった。特にタッツの町の行方不明問題も解決したが、内容が内容だけにユーフラシアから内容の真偽を問う必要がある人が行かざるを得ない。

嘘ではないから大丈夫だと思う。今思えば魔物の石像だけでも町の人に見せておいて良かった。


ザールさんとのやり取りを済ませ、受けた依頼についての報告書を提出してからタッツへと戻った。



戻ったら情報共有が一番優先だってことは忘れていない。各自気を付けることの確認と武闘大会と資格試験への参加もどうするかを各自の判断に任せることにした。

そこで俺が皆の前で宣言する。


「明日にはタッツの町を出発する予定だったけど、1日か2日延期しますそれでロイーグさん手伝ってください」

「何をするんだ?」

「ザールさんの話を聞いて分かったんですけど。四輪だけだと面倒なことに巻き込まれる可能性が高い。だから馬車もどきを作る」

「今更だと思うけどな。イチから作るのか?馬はどうするんだ?」

「馬車部分は今あるやつを買って来て改造します。馬は考えてあります!」


俺とロイーグさんの技術とどうしようもないときの裏技だってある。とりあえずは作るための時間をくれ!と頼んで了承をもらった。よし、作るぞ!

お読みいただきありがとうございました。

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