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味の改良と今後の展望

お楽しみ頂けると幸いです。

次の日は夕方までザールさんに指示された工作活動から取り掛かることになった。大掛かりなことではあったけどやり始めると楽しかった。それが終わるとメディさんの店で実験だ。

メディさんには俺が顔を出すまでに、材料をお渡ししてSPポーションの研究を先に始めてもらっていた。研究といっても最初は総当たりで当たっていく。


味の改良を行っていくには段階があった。原料は同じだがとりあえず完成の直前に少量の魔力を込めながら色々と味のベースになりそうなものを加えていく。簡単に言えば味付けをしていく。

SPポーションと親和性の高いものはここで味が変化する。何を加えたときに味が良くなるのかを探すことから始めるのだ。今までに研究されていればある程度ベースはあるが、SPポーションを研究するような奇特な人間は存在していないだろうとのこと。

完全に手探りで一から探っていくことになる。最初から味が無いだけのものはシンプルに混ぜるだけで事足りるそうだ。だがSPポーションのまずさはいくつか効果の高いものを探して、更に混ぜ合わせていく必要があるらしい。

だからかなりの数を作って試しに飲んでいく必要があるそうだ。


うん。試しに、たくさん、飲まないといけないんだって。


「ウワー、コンナニタクサン、ツクッテクレタンデスネ~」

「とりあえず店に取りおいてた調味料やら果物やらで加工してみた。合計30種類だ。嫌でも我慢して飲んでいくしかないよ。いずれ辿る道ならあたしが手伝っているうちにやる方が良いだろうよ」

「そうでしょうけど!これのまずさ知ってるでしょう!?」

「知ってるよ。レシピを知った以上一度は作ってみるのが薬師の性ってもんさ。無臭の代わりに味に全ての負が詰め込まれてるってのが特徴で、その上に効果がイマイチ良く分からないって言われてるよね。人生で一度しか作る必要が無いってことの理由は飲めばわかるのがSPポーションだ。名前だけは見れば特別なのかと思ってたけどね」

「スペシャルポーションですか。そう取れなくも無いですね。うぅ、飲むしかないのか」

「覚悟を決めな」

「はい…」


2回目の試飲で悲鳴をあげると、『店の評判が悪くなるから叫ぶな!』と理不尽なことを言われてしまった。声を出さずに悶絶することをひたすら繰り返した。


でも30種類のうち3つだけ少し味がマシになっているものがあった。それがハチミツとショウガ、自信は全く無いけど砂糖も。喉に良さそうなラインナップだ。

一番マシになったのはハチミツだ。線引きをするならまだまずい範囲に入るんだろうけれど、他の物に比べたら明らかにマシだった。絶対に外せない。

次に口の中がピリッとしたがショウガが効いていた。体にも良さそうだ。砂糖はその直前が塩だったから少し違うかなって感じだった。

あとはこれらを基本に食材として合うものをかけ合わせてみたり、入れるタイミングや魔力量の調節、素材同士の相性などを探っていく。

あくまで今のは第一段階だ。手に入りやすいものから相性の良さそうなものが3つも見つかるのは少ない方だろうが。


それとなぜかスキルポイントが上がっていたのがレッドチゾン。こちらの世界にしかない調味料で辛くするときに使う。これはまずいまま辛くなって地獄だったが普通の10ポイントではなく15ポイント増えていた。毎回チェックしておいて良かった。

他の26種類は、まあさまざまだった。簡単に言えば我慢しながら飲んだ。マシな時はまだ記憶が残っている。モノによっては更に…、いや、忘れさせてくれ…。


ということで305ポイント増えた。水分で腹が膨れてしまったので、そこも課題だ。


「ポーションが液体なのは理由がある。そのまま飲んでも良いし、怪我したところにぶっかけても効果がある。でも効果を聞く限りSPポーションはそこまで液体にこだわる必要が無いな。アイディアとして考えるだけだったけど、効果をそのままに濃縮して違う形にする可能性を探るのも良いだろうね」

「味は…どうなります?」


俺としてはそこ以外に心配することは無いが、メディさんはめちゃくちゃ視線を逸らして答えられる。


「……同時並行で試してはダメか?」

「味を!最優先で!!!あんた、まずいものを濃縮したらもっと大変なことになるよな!?分かるだろ!?まじでやめろよ!フリじゃないぞ!もったいないから飲むのは飲むけど。もっと地獄になるだろ!?」

「飲むのか…」

「もったいないお化けって言うだろうが!でもマジでやめて。液体でキツイのに濃縮されたらもう本当に無理だから!お願いします!」

「薬にして飲み込むだけにすれば味は関係なくなるぞ?」

「危険性を考えてほしい。口に入れた瞬間に味が広がったらどうする?マジでこの通りです!」


頼んだ時よりも綺麗に土下座を決める。あれ?おかしいな。意図せず目から熱いものが溢れてきたぞ?


「分かったからやめるよ。泣きながら震えられたらさすがに…やらないから…」

「ありがとうございますぅ~~~…」


そしてメディの考えることとは。


(作ったら飲むんだよな。残すことはしないみたい…。ならイレブン用の罰ゲームか協力のお願いの手段として使えるかな。ザールやデテゴに対抗するためにもこの子の手綱を握る手段を確保できたかもな)


ザールとデテゴの幼馴染をやれるからにはメディにもそれなりに理由がある。悲鳴があがるのはまた近いうちに、ということで。


「そうしたらさっきの3種類を軸に仕上げてみるよ。それからレッドチゾンも加えて良いかい?」

「はい。ぐすっ。効果が高いに越したことは無いので。それでお願いします。レッドチゾンが味の邪魔になりそうなら一旦除外してもらっても良いですけど」

「この作業は料理してるのとあまり変わらないからね。何とかしてみせるよ。ただ、味を調える方の3つはどれも手に入れるのが手間だからね。大量に必要となると結構な大金だよ?あと魔力草もね」

「う…。やっぱりそうですよね。自分で栽培とか養蜂したりとかどうですかね?」

「私は専門外だね。それこそザールに聞いてみな」

「呼びましたか?」


店の扉を開けて入ってきたのはザールだった。抱えているのは食料やらSPポーション調合の材料である。


「魔力草は在庫も含めて少なくなっていたからね。助かるよ。それからハチミツとショウガとレッドチゾンを可能な限り集めて来ておくれよ。あと砂糖はハチミツがあれば良いかもしれないけど一応ね」

「本格的に料理屋さんみたいですね。分かりました。大丈夫ですよ。イレブン君、表に他にも積んでるから運ぶのを手伝ってもらって良いですか?」

「頼んだ」

「分かりました!」

「助かります」


しかし、土地や蜂の手配は道具屋の範疇超えている気はするんだけど、頼んでも良いのだろうか。


「それはそれとして。ザール、あとでイレブンの相談を聞いてやってよ」

「構いませんよ。栽培や養蜂と聞こえましたが」

「はい。SPポーションの改良に使えそうな材料がさっきメディさんが伝えてくれたやつなんですけど。自分で育てるようなことって出来ますか?」

「ん~、さすがに時間をもらえますか?土地の売買はややこしいのでね。今から言っておきますが、お金必要ですからね」

「了解です!いざとなったら溜めてる素材を引き取ってもらって良いですか?」

「捌く量にも限界があるんで小出しにしてもらっても良いですかね。とりあえずこの件が終わってからで」

「大丈夫です」


持つべきものは優秀な友人だったようだ。前途は明るい。


「じゃあ、作業方法も教えておきたいから夕食後には作業を手伝ってくれな」

「分かりました。お願いします。色々と頭に入ってるレシピもお伝えするんで」

「レシピさえ分かればあとは何とかするさ」

「僕の店の商品が充実しそうで嬉しい限りです」

「は、恥ず…、余計なことを言うなっ!」

「メディ、痛いですよ」


ザールさんの頭にメディさんの拳骨がきれいに決まった。そのまま言い合いになっている二人は置いといて夕食の準備を始める。

俺のアイテムボックスから出したり、ザールさんが買ってきてくれたものを広げるだけだ。あとは取り分けさえしておけば大きく問題はない。


「あの二人が静かになるまでにスープでも温め直しておいたら良いかな」


この前切っていた木材は薪サイズにしたので、いくつか竈に入れて『着火』で火をつける。お玉を持ってかき混ぜながら温めていく。


「大体、お前は!」

「いや、落ち着いてくださいって。静かにしないと」

「うるせぇ!馬鹿!あんなやつ放っておけ!」


先に食べてようかな…。

お読みいただきありがとうございました。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
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婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
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