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地雷

お楽しみ頂けると幸いです。

石化ってこんな感じなのか。神経が通らなくなって何も感じない上に筋肉も動かせなくなっていくみたいだ。しかも顔やら腕やら肌が出ていたところが石化していくだけじゃなくて布の上からでも石化の進行がじくじく進んでいる気がする。


あ~、実際に味わってみると今更ながらあの威嚇姿勢で石化してたフォレストウルフのやつすごいな。俺でも少し怖いなって思うわ。完全にフォレストウルフの方が格下だってのにあんな表情でコカトリスたちに立ち向かったのか。人間型が残されたのはその表情の豊さかな。魔物や動物に比べて表情に感情が現れているから優先的に残されていたのかも。

石化とコカトリスの恐怖で表情が歪むのも仕方ないもんね。自分を蝕む石化症状を妙に冷静に分析していた。ノーマルシンボルの効果と確率の3割減少もボスコカトリスには負けてしまったようだ。いや、減少させたからこそ一瞬で石化していかないんだろうな。


俺が体の各所が石化していくのを見てまだ鋭い眼光を放ってくるボスコカトリス。さきほどのコカトリスの方には視線は動かさない。もう動かしたところで無意味のが分かっているのかな。怨敵である俺が戦闘不能になるのを見逃さないとでも言うつもりだろうか。俺の探知にも目の前のボス以外に周辺に魔物はいない。

このまま俺が石化したらどうなるかな。ボスコカトリスは自ら森を出てタッツの町を石化の毒で飲み込みに行くかな。それとも人間に関わらないように逃げていくかな。


リセル達はどうなるだろう。俺の敵を討つためにがんばることになるだろうな。数は減らしたから出来るだろうけども。そう言えば俺が死んだらテイムした魔物たちはどうなるんだろう。それにロイーグさんやコトシュさんは、リセルと一緒に悲しんでくれるかな?



ま、そろそろしょーもないことを考えるのはやめよう。


石化させられたとして一番守らないといけないだろう心臓の前後に福来に押してもらった肉球印にMPを全開で注ぐ。押してもらったのは前側が状態清浄で背中側が治癒再生だ。まだ欠損してないので前側に気持ち多めに注ぎこんでいく。2回目ともなると勝手知ったる感じだ。自分の体だから治っていくのも分かるので過不足なく行えている感じがする。

瞬く間に全快状態で元に戻る。手を握ったり開いたり、関節部分を回したりと試して動くことを確認する。もちろんボスコカトリスの動きにも気を払っておく。悟りでも開いているのかこちらをじっと見て追撃はかけてこないようだ。攻撃を仕掛けてきたら今度は魔法で撃退するけど。


「当然だけど石化の対策はしてあるよ。むしろ対策をしていないわけが無いよね」


コカトリスが余計なことをしなければ倒れていたのはボスコカトリスの方だった。それを命がけで介入することで結末に変化させたんだから大したもんだよ。魔物にも色々感情やら思うところはあるんだね。テイムする前の毎果もそうだったもんな。生きてるんだもんね。


「というわけで危険生物であるお前にはこの場所で生きていられると困るんだよ。町が危ないんでな」


先程が脚力で仕掛ける攻撃だったとしてもあまり関係は無かった。一撃で死なないようにするくらいは出来るし、動きもまだなんとか見える。躱せなくても直撃を外せば治癒して終わりだ。

最後に止めを刺すために、もしくは最後の生存をかけての一戦を始めようとした時だった。


「全滅させられるのは困りますね。せっかく育てたのですから」

「誰だ!?」


声のした方向を見てみると怪しい黒マントを纏った人物が立っていた。嫌味な感じがするが、声からして男であることは確かだと思う。

一応乗っておく。いきなり現れて驚かせたかったみたいだから。ただ、遠慮なく氷槍多連を打ち込んでおく。


「何を!?」

「いや、このタイミングで現れるなんて黒幕だから、ダメージを与えておいて損は無いよなって」

「話を聞くところでしょう!常識が無いのは本当のようですね」


誰に何を聞かされたのかは知らないが、全弾躱したことからそれなりに強いことだけは分かる。ボスコカトリスも動かずにじっと固まっている。俺の時よりも警戒心高くないか?


「それにしても色々と邪魔が入るものですねぇ。全く仕事がしにくいったら無い。こいつも思ったよりも役に立ちませんでした。処分してしまいましょうか」


腕を振るうと何かが走る。ただ、それは俺を狙ったものではなくボスコカトリスを標的にしていたため、動きが遅れた。ざっくりと切り裂かれる。

そして直後、ボスコカトリスはなぜか俺に向かって走り出してくる。状態異常と言って良いのか分からないが出血がひどい状態にも関わらずだ。表情としては既に覚悟をしきった表情に見えた。


最後の相手に俺を選んだということだろうか。だったら俺の取る行動は決まっている。


先程の5倍にもなる量の氷槍多連を生み出して黒マントに投げつけておく。余計な横槍を入れられないようにするためだ。時間差で発射されるからしばらく避け続けておかなくてはならないだろう。

その間に、ボスコカトリスに駆け寄る。もう既に息も絶え絶えになっている。


「抜刀術・抜打ち」


先程の黒マントは体を大きく切り裂いているので、俺はより直接に首を狙った。振り切った直後にすぐに煙になった消えていく。そしてドロップアイテムが出現する。

何となく1つも拾われたくなかったので追加の弾幕を用意する。その間に拾っていこう。


「いい性格してますねぇ。ここで接触する予定は無かったのですが、ここで一戦やり合いますか」

「どっちでもいいよ。あんたなんかには興味ないし」

「そうですか?これを聞いても興味なしでいられますかねぇ。さっきの狂乱コカトリスは私たちが作り出したと」

「へえ。じゃあ素直にしゃべってから話す?それとも四肢全部捥がれてから話す?」

「ほほぉ。さすがに邪獣人を倒したらしいだけありますね。見事なものだ」

「わかった。四肢捥がれコースだね」


念動魔法も使って手早く集めて戦闘態勢に再度入る。


「念動魔法に高性能なマジックバッグもお持ちなのかな?途中で弓を使っていたようだが手にしているのは剣だし、非常に興味深いですね。どうですか?あなたも我々の仲間になりませんか?」

「なると思う?胸糞悪いものを見せられた上にマルクトとタッツの両方ともに害悪な影響及ぼしておいて」

「それはこの国が悪いのですよ。我々の崇高な教えを信じなければ天罰が落ちるには当然のことです!」

「天罰じゃないだろ。自分たちでやってるんだから人災じゃないか」

「い~え~。崇高なる神の使いである私たちが為すことは即ち天の采配です。つまりは天罰!」


上空を仰いで両手を広げている。教わらなかったみたいだから良いだろう。縮地で近づいて天昴で右腕を叩き切る。


「イダイ~~~!?何をする!!?」

「四肢捥がれコースって言ったじゃないか。それに戦闘中に敵から目を離すなって習わなかった?基本だと思うんだけど誰も教えてくれなかったんだね。残念だったね。その身に刻んであげるよ」


習わなかった?の時点で左腕もいこうとしたのだが全身を使って回避をされたので躱されてしまっていた。


「碌な組織じゃないでしょ。人が生きていくにあたって心豊かに暮らせるようにってのが宗教に必要なものでしょ。人を害するものになった時点でそれは教えの中でも邪教の類いだよ。それを信じてるお前も俺の基準では邪教徒だね。ついでに言っておくと人を勧誘するときは良さを見せないと、ドン引きしているのに勧誘しても信じるわけないじゃん」

「私たちの教えを侮辱するのか!!いや、一度だけは許してやる!膝をついて額を地に擦り付けて許しを請えば許してやる!」

「いきなりキレるなよ。そこの浅さが出てるよ」


他人の振り見て我が振り直せだな。心穏やかに生きるようにしよう。


「あとそれからもう右腕から先は不要だよね?」

「私の右腕!!」


左腕への攻撃を避けられたときに回収しておいた。いや、回収って言っても天昴を刺してるから手も触れてないけど。


「良いもの見せてやるよ。炎魔法+呪魔法『獄炎』」


魔眼スキルはスキルポイントが1万も必要だっただけに効果は色々あった。感情が何となく色で分かるというのが分かりやすいところで、魔法を2つ合成することが出来るというものだ。氷嵐刃は攻撃に合わせて氷魔法と嵐魔法を組み合わせたものになる。今までは同時発動って感じだったけど組み合わせているって感じで発動しやすくなったぞ!

その代わり、半永久的にだと思うけど瞳の色が変わった。金色から黒に変化した。元が黒だから自分としては違和感は無いが、他の人からはまず聞かれることになってしまった。ステータスの補助が一切ないのだからこれくらいはあってほしいものだ。○二っぽい感じはあるが、まあ仕方ない。


「この『獄炎』は完全に燃やし尽くすことを目的に使ったんだ。どんな高精度の治癒魔法や高性能なポーションを使っても、何をしてもお前の右腕はもう戻らないぞ。こういう風に周囲に危害を加えた奴に罰を食らわせるのが神であり宗教の存在意義だと思うぞ。お前のところは自浄作用が足りないな」


ビシィッ!とポーズを決めて指摘してあげた。


ふるふると体を震わせた後、冷静な声で黒マントが叫ぶ!


「お前の命は!たった今、失うことが確定したぞ!お前だけではない!!周囲全ての者が苦しみ、死に絶えることになるだろう!そのときに後悔しても遅い!我が神は貴様の蛮行を決して許しはしないだろう!!」

「あ~、言うことが2つある」


指を2本立てて数を示す。


「1つ目、神が許さないなら今すぐ神罰とやらを落として見せろ。気に食わない人間一人瞬殺できなくて何が神だ」

「な、なんだと!!」


本物の神獣を見たことがあれば嘘だと分かる。本気で来られたら人間なんて神に比べたら一息で殺せるくらいちっぽけなものだ。だからこそ自分の加護を何に与えるかはよく考慮して決めるらしい。強力だからな。


決して目の前のようなポンコツマヌケ自身には得られない。それにこいつが所属するような団体に与えたりはしない。与えても個人だと朱雀が言っていたからな。


以上から嘘だということが分かる。


「落とせないなら神じゃあない。お前らが好きに嘯いているだけの偽教団だ。教団かも知らないけど、偽物だ。ほら、やってみろよ」


ほれほれと挑発する。嘘だと分かっているし、周囲の魔力の流れは観察している。変化無しだ。


黒マントは必死に祈るが、何も起こるはずがない。だが起きなければ俺が調子に乗ることが分かっているのだろう。額に脂汗がにじんでいる。片腕無いのも影響してるかな。


「それで2つ目だ」


黒マントもここでようやく周囲の変化を悟ったらしい。春先とはいえ森の中のこの広場は少し寒い。森の中だと気温が下がるというやつだ。それを差し引いても寒くなっていることに。むしろ現在進行形でどんどんと気温が下がっている。


ほら、自分の吐く息が白くなってるだろ?


手がかじかんでうまく動かないと思わないか?


「誰の仲間に手を出すって?」


俺の一番聞きたくない言葉を言われた気がするんだ。

お読みいただきありがとうございました。

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