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守られる側も『守りたい』と思って、そのチャンスを伺っている

お楽しみ頂けると幸いです。

「『覚醒』」


ボスコカトリスからすれば自分が死ねばあともう1体も確実に殺されるのは分かっている。分かっているからこその背水の陣だ。しかし並大抵のことではないことまで理解しているだろうか。

なぜなら俺は10体のコカトリスをほとんど一撃もくらわずに倒しているからだ。子どもらしきコカトリスは勝手に身代わりになって倒されてくれているので攻撃を仕掛けたつもりも無い。


いきなり秘奥義を放ってもあの脚力で避けられる可能性もあるしな。完全に当てられるように状況が整うまで少し相手になろう。覚醒状態の動きにも慣れておかないといざというときに使えないしな。


先に仕掛けたのは俺の方から。炎槍多連でどう動くのかを確かめる。ボスコカトリスは無数の炎の槍を、大きく動くことで躱していく。かといって俺からの攻撃を許すほど近寄らせてはくれない。


いきなり失敗かな。近寄ること自体を嫌がられているようだ。覚醒状態の俺が危険であることを察知したかな?そうなると次の一手は――。


ダッ!!という音にふさわしくこちらは視界に収めつつボスコカトリスは大きく距離を取る。完全に覚醒を警戒している。遠距離でも使える四色螺旋光やさっき使った七星の裁きを使っても良いんだが。あぁ、七星の裁きを見せたから躱すために距離を取っているのか。近距離で俺が仕掛けたら絶対に躱すことが出来ないから。


「そうくるなら俺の行動はこうだな。『結界』」


コカトリスの広場を半分くらいの広さでカバーする大きな結界を構築する。結界内に閉じ込められているのはボスコカトリスとコカトリス1体に俺だ。これで分かっただろうか。

俺を倒さない限り目的がどうあれ森の中には逃げこめない。下手に長引かせるのなら戦闘経験も少なく身を守る手段も少ないだろうもう1体の方から倒すことになる。つまりボスに残された手段は特攻を仕掛けて来るしかない。一応脅しで天昴を弓に変えたりロングソードに戻したりを見せておく。最後に弓状態で狙いをコカトリスに定める。


ボスコカトリスはじっと俺を見たまま横向きで俺をしたから睨み上げるような体勢を取っていたが、正面に向き直り首を高く持ち上げて見下ろしてくる。その方がいいね。正面からの勝負の時は真正面から始めないと。


これ、ふと思ったんだけど、俺の方が人質を取った悪役みたいに見えるよな?

言い訳をしておきますが、コカトリス達はタッツの町に面白半分かどうかは知らないけど数千から一万単位の魔物のスタンピードもどきを起こしているし、人間や魔物を石化してどれがカッコいいかみたいな品評会やってますからね!

殺されたくなかったら殺されるような理由があることをしてはいけません。そして、殺すなら殺される覚悟が無くてはいけません。殺した側が自分の大事を殺されて嘆くなど最初からするなとしか言えないね。この世界にいる以上は誰も彼もがこんな因縁に悩まされてる気がするよ。それにこういうことを考えるたびに自分にも当てはまるからと思い当たって気分が沈むんだよなぁ。


元の世界に帰れるようになっても帰ってはいけない思考の持ち主になっちゃったな。


まあいいや。こっちの世界も結構気に入ってるし。


ロングソードの状態で天昴を構える。ボスコカトリスも突進で攻撃することを選択したようだ。陸上の短距離の選手がスタートダッシュをするための器具のように地ならしをしている。最速にこだわるのに足元を整理するのは賢いな。

じゃあ俺も少しだけ手を加えることにしよう。そうして向かい合っている間に覚醒の有効時間の限界が近づいて来ている。見た目には分からないはずだが、それまでに向かってきてくれるのだろうか。


ただ、耐えきれなかったのは戦闘態勢の一人と一体ではなく、見守っていたコカトリスの方だった。


「コケ!!」


俺が動かないのを隙と見たのか、羽根飛ばしを遠距離攻撃として繰り出してきた。


完全に悪手だ。完全に横から現在の立ち位置に攻撃を繰り出してきたとしても俺が少し動くだけで躱すことが可能だ。そのままボスコカトリスを攻撃することにしてもいいけど、真剣勝負に水を差したのは頂けない。


「『氷嵐刃』」


ロングソードから刀に変化していた天昴を俺なりの抜刀術で抜き放つと同時に振り抜いて先程よりもより鋭い一閃を飛ばす。ボスコカトリスも間に合わない。振り抜くことに関しては刀は一番適していると言って良い。そこに魔法の補助も付けたのだ。さっきよりも速くて当然だ。


納刀するころには真っ二つに裂けたコカトリスが出来上がった。しかし、狙い通りに笑うのが切られたコカトリスだ。


「なるほど。ボスが勝つならそれでいいってことか」


俺の目の前には全身の羽根を立てて翼を振り上げるボスコカトリスが迫っていた。一撃のダメージを狙うのではなく状態異常を狙ってきたのだろう。そしてボスが一番年を重ねていて石化に使う羽根も一番多いのだろう。

一撃を食らったところで俺に致命的な一撃を食らわせるよりも確率で石化させてしまう方が戦闘能力を落とせると判断したんだろうな。そして俺に羽根を打ち込む隙を作らせるためにコカトリスは命を投げうったというわけか。


「助けたかった方に命を懸けて助けられるってのは、どう感じるんだろうねぇ」


抜刀術は精神を削って使うってのは本当だな。納刀したからできるってもんでもないや。そう感じるころには柔らかな羽根に包まれ、体全身に何かが刺さっていく感覚を受けた。そして体の感覚が失われていくようなそんな寒さを感じた。






【誰かに説明するイレブン視点】


最後を決める前に福来の動きでも伝えておこうかな。最初はさすがにどう動いて良いのか分からずまごついていたんだ。実戦に出すのはほとんど初めてってのもあったと思う。


でもすぐに冷静に判断をしてくれたよ。理由はトワや薙刀を相手に稽古つけている時の方が激しいから。どんな環境でも戦えるようにってことで暴風や豪雨みたいに天気が悪い状況を作って戦うことが多いから、これくらい普通だって思ったんだろうね。

ふん!って感じで覚悟を決めてくれたよ。そしたらこっちも俺に引き付けて福来の動きやすい状況を作らないとってなるよね。目論見通りにチャンスが来たのはやっぱり陽動係の俺が動いた時だった。


秘奥義を繰り出した段階でコカトリスたちの警戒は完全に俺に固定された。それまでは多少なりとも周囲へも警戒していたけど余裕がなくなったんだろうね。

『七星の裁き』の主矢は俺が魔力で作ってるからとんでもない威力になってるしね。


そういえば天昴が変形することについては何も説明してなかった気がする。話せば長くなるから手短に伝えるなら、素材を吸収させて成長させている途中に鋼鉄で作られた大剣を要求された。そうしたら俺の意を汲んで変形するようになったんだ。


初めて試したときは全員がいる場だったんだけど、聞いてことない!って焦り倒したよ。


それから時々武器そのものを要求されることが度々あって、予備として作っていたものや双武乱舞のときに壊してもいい武器と思って残していたのを吸収させていったんだ。小太刀や短剣なんかの体積が少ない奴は2本作れるみたいで2本装備になるんだけど、マンガの読み過ぎかな、結構気に入ってる。

でもミスリルで作った装備よりも強いから使いどころが限られるんだよね。あまり乱用できないけど今回は最初から全力で使わせてもらった。武術スキルってまだ育つ余地があるんだけど費用対効果が薄いと思ってやめてたんだよね。もう一回やろうかな、スキルポーション生活。


っと、話は福来の活躍だった。『七星の裁き』でコカトリスたちが浮足立っていたときにはもう行動は開始してたね。二重発動した隠密スキルで目立たないようにして石像に近づいたら肉球印を押した石を使ってどんどん石像を回収していくんだ。

誤算は人間型のだけではなくて魔物の石像も回収していっていたことだけど、途中で止めるわけにもいかないし。まあ角鹿の石像が破壊されたことに福来も思うところがあったのかもしれない。


どうしてもと言われたら魔物の石化解除もする。野に返して再開した時に襲ってくるようなら倒すことにはなるけども。それはどうしようもなく避けられないことだから仕方ないと思うことにするよ。

これ以上テイムしたとしても大所帯になってしまうから微妙な話になってしまうからね。面倒とも言う。


それで福来の回収作業が完了したのは『炎槍多連』やらを放っていた時だ。操作をミスすることは無いと思ったけど弾かれて福来に当たったらどうしようってことまで考えてなかった。考えが浅かったことを自覚したよ。

問題無かったし、完全にこちらに警戒を引き付けていたから福来が自分で空間接続でいなくなるまでの時間稼ぎも充分だったね。


だからある意味良かったのかもしれない。子どもを殺された親みたいな動きをしているボスコカトリスを見られることが無くて。

そうでもしないとタッツの町を守れなかっただろうから良いんだけどね。それにその後のことも見られなくて良かったと思う。あんまり見せたくない顔をしていただろうからね。

お読みいただきありがとうございました。

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他にも書いた小説です。短編だけでも時間潰しに良ければどうぞ。
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婚約破棄は構いませんが…、本当に私がそんなことをしたとお思いですか?私の本気は少々刺激が強いかと思いますけれど
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