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はじめ!……そこまで!!

ブクマ・評価・いいねありがとうございます。じわっと増えているようで嬉しい限りです。重ねて感謝申し上げます!

お楽しみ頂けると幸いです。

「制限時間なし。先に二本取った方の勝ち」


淡々と前に出て勝負の方法を説明するトワだが、異議を唱えたのはバイスだ。


「いや、待て。イレブン、キミが相手してくれるんじゃないのか」

「わずかでも俺が消耗しないように弟子ががんばってくれるそうだ」


弟子って言うほど何かを教えただろうか。強くなるための環境だけは整えたかな。


「なるほど。イレブンの弟子の女の子より弱ければついて行く意味もないということだな。良いだろう。受けて立つ!」


納得してくれたから問題無いようだ。じゃあそれで。トワがどんな勝ち方をするのかも興味あるしな。


まずは町を出て西側に5分ほど歩く。昨日リセルが手助けした平原が遠くの方に見えたあたりで止まる。

魔物が来るとするといつも同じ方向なので、この辺りは誰も寄りつかないのだそうだ。今はそれが好都合である。


準備ということで手の内がバレないように分かれて体をほぐすことになった。俺が決めて良いということだったので大体10分後に試合開始だ。

間には土魔法で大きめの壁を作ってお互いに見えないようにした。これが崩れたら合図だ。


トワサイドに付くことになるのでトワのウォーミングアップを観察する。軽く走ったり、風魔法の使い勝手や短剣の扱いについて確認しているのを見守る。


「トワのレベルっていくつだっけ」

「84だったかな。文字通り根性で鍛え上げたよ」

「すごいね。スキルに関しては私の持っているものを教えておいたよ。カンストまではまだまだ時間かかるだろうけど。身のこなしはさすがに上手だね」


言ったら悪いが、促成栽培みたいな感じでゴリゴリにはしておいた。レベルは簡単に底上げできるがスキルは俺やリセルと違って使って上げるしかない。何か手伝えることは無いかと言えば、見せるか体験させるかしか方法が無かったのでリセルにみっちりとしごいてもらった。だからどちらかと言うと現状ではリセルの弟子と言った方が正確だ。俺はレベル上げの手伝いを何回かに分けて行っただけだ。そのおかげで簡単には負けない子に仕上がっているぞ。

リセルのステータスから数字の部分だけ拾ってくるとこんな感じだな。素早さと器用さが高いところなんて忍者っぽいな。


>>>>>>


名前:トワ 種族:人間 年齢:10

レベル:84

HP :954/954

MP :610/610

筋力 :554

頑丈 :402

素早さ:1040

器用さ:888

魔力 :564

運  :346

 

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「問題はステータスの高いところを目指してそのスキルばっかり練習することなんだよね。忍者ってモノづくりもするから生産系スキルも練習するようにイレブンからも言ってよ。技術があるって大事なんだから」

「潜入任務とかすることを考えたらそうかもしれないけど、そこまで本格的なことはしないだろう。あくまでも戦闘に使えるだけでもいい…、何でもありません」


ものすごい蔑んだ目で見られてしまった。


「私はトワちゃんと殺伐とした訓練だけじゃなくてもっとお菓子作ったりとかなんか一緒に作ることを楽しみたいの!コトシュさんだって趣味じゃないって付き合ってくれないんだから!」

「あ~そうか~」


コトシュさんの方を確認すると腕組みをしたまま視線を逸らしている。そのままだとトワの試合見れませんけど。


まあ確かに村だと作業として何かするのが普通だっただろうし、メディさんと一緒にいたときはポーション作りだけじゃなくて料理とか色々学んでたもんな。同じことをしたいけど、あれからそういったことを一緒にやってくれる人がいないというわけだ。こればっかりは俺のせいではないだろう。


「これ以上同行者が増えると大変なんだけどな。グレイブ村が本格稼働したら料理教室でもする?」

「そういうんじゃないよ!もう分かってないな!」


俺からすると理不尽な怒りを受けながら待った。こういう時は誰も助けてくれない。


気が付いたら11分経過していたので慌てて壁を崩す。こちら側のトワは体が温まってほぐれた様子だ。バイスは軽く汗ばんで本気で動く準備を整えたようだ。


時間がオーバーしたことなんて誰も気が付いていないだろうから何食わぬ顔で声をかける。


「時間だ。二人とも壁のあった手前まで来てくれ」


少し遠目に見学者らしき人がいるが、そんなに遠くでは何が起こっているか分からないだろうし、近づかれる前に終わらせてしまってくれ。

そして二人がお互いを正面にとらえて立つ。


「確認するぞ。トワが勝ったらバイスはついて来るのを諦める。バイスが勝ったら俺たちについて来るのを許可する。細かい話は勝ってからだ。お互い良いな?」

「いい」

「構わない」

「よし。判定に関してだが、俺が代表で立っているだけで特には立てない。ここにいる全員を納得させてくれ」


この条件を二人とも飲んだので、実際に始めることにする。こんな感じで良かったのかな。立会人なんて俺もしたこと無いんだけど。


「イレブン、もう2人から離れないと邪魔だよ~」

「あぁ、すまない。離れるよ」


リセルの注意を受けて後ろに下がる。2人は大体5メートルほどは離れているだろうか。お互いに2歩ずつ近づけば武器で打ち合うことが出来るだろうな。出来ればだけど。

下がったうえで2人を見てみるとトワは自然体だ。目つきは鋭いが気負いも力みもない。

対するバイスは緊張しているな。お互いに実力は未知数だが、周囲にいる人間の強さが違うからな。その差だろう。さて、と始めるとするか。


「じゃあいくぞ………。はじめ!……そこまで!!」


バイスからはトワの姿がかき消えたように見えただろう。実際には合図とともに姿勢を極端に下げた上でステータスの素早さ由来のスピードで走り寄って後ろへと回り込む。


バイスの死角に入ったトワは手に持った短剣をバイスの首元にそっと近づける。


しばらく動けなかったバイスだが、トワが短剣でバイスの身に付けた鎧をコンコンと叩く音と気配でトワが後ろにいることに気が付いたようだった。トワは隠蔽や隠形も使ってたんだな。そうなるとバイスはレベル差もあって見つけにくいな。


「なにも…、見えなかった…」


スキルの底上げも必要も充分に効果はあるが、基本的に上昇幅が良ければレベルが高い方が有利だ。そしてパワーレベリングが可能な環境と人材がいるのだから中々勝つのは難しいだろう。

ましてやトワは自分の気持ちをして『こうなりたい』という願いと、ステータスの上昇が噛み合ったようだからな。相性が良いと言えるだろう。


「もう一本……やる?」


短剣をどこかから取り出して合計5本でジャグリングする。途中で不規則に増えたり減ったりしているが、それについてもバイスは気が付いているだろうか。中々に短剣スキルが育っているようだな。トワはスキルの同時発動が巧いな。

トワがやっていることに関して多少はバイスも理解できたようだ。


「いや、無駄だということが分かった。降参だ」


やる必要はないね。町に魔物が来たら追い払うことに専念するよと言って、抜く間も無かった剣から手を放して降参のポーズで気持ちを完全に示した。


お付きの3人からすると危険地帯に行ってほしくはなかっただろうから敗北の結末で良いだろうが、感情的には複雑かな?そんな表情をしているのも仕方ない。思いっきり負けたもんな。


「では、これにて一件落着ということで良いか」

「ああ、もちろん。それで図々しいがもう一つだけ戻って来てから考えてほしいことがあるんだが、後で聞いてもらう時間をくれるだろうか」


改めて思うが、こういったところで自分の意見をドンドン通そうとしてくるのは貴族らしいかもしれない。いや、まず自分の意見をきちんと周囲に伝えるのが大事なんだろうな。

聞くまでは引かない気もしたから聞くだけ聞いておこう。


「後でと言わずに今言ってくれて良いよ」

「本当か。では伝えさせていただく!」


ん?口調が変わった?


「弟子にしてください!!!」


見た目が平凡とはいえどちらかと言えば顔の整ったイケメンが土下座で叫んできた。地面への頭突きの勢いで俺の足元まで衝撃が伝わってきたぞ。

内容は受け入れがたいが、しっかり聞こえていた。となると当然きちんと聞いておかなくてはいけない。


「なんで?」

「私が手も足も出なかったトワ嬢を育成した弟子育成能力!そこから推測されるイレブン殿の戦闘力!そして、年齢など関係なく美女を3人と一緒に行動しているにも関わらずに平常心を保っている強靭な精神力!ぜひあやかりたい!」

「先の2つだけでしゃべるのやめてたら真剣に考えたな~…。あとコトシュさんの相手は俺じゃないし、トワは行きがかり上で預かった子だから。ハーレムなんて他所でやってくれって話ですよ」

「王国でも推奨はされていませんが、そこは私の勘違いでしたか!」

「頼むから口調だけでも戻して…」


弟子だから今までのようには無理とか言っていたが、敬語を続ける方がその可能性を下げてると思えと言ったら何とか元に戻ってくれた。

そして昨日から気になっていたこととして、バイスだけでなくお付きの3人も呼び捨てにしてくれと言われた。口調で舐められるとかの話ではなく勝者としてお願いしたいと言われた。

自分たちでこれ以上強くなることに関して限界も感じていたようで、武闘大会でふさわしい人がいたら元から弟子入りを頼むつもりだったそうだ。


「口調は最低限元には戻すが、イレブン殿とは呼ばせてもらうからな」

「ちぐはぐな気もするけどまあそれで納得するならいいや」

「こいつ、弟弟子?」

「そうだな」


トワがホワホワしている。嬉しいみたいだな。


「弟弟子、まずは私がしっかりと下準備を教えてやる」

「ありがとうございます!」


はやくも上下関係が成立したようだ。なんならトワは置いていっても良いかもしれないな。鍛えるなら一日でも早い方が良いわけだし。今は俺に相手してもらう前にまずは基礎体力を十分に付けろと言う話をしている。


「自分の装備を身に付けた状態で長時間走れるように。平原でも、森の中でも関係ない。とにかく走る」

「まずは足腰が基本ということですね!それであの速さか…」


バイスの後ろでパーヴィがメモを取り出した。後で見直すようなんだな。グーボンはどう頑張っても長時間走るキャラには見えないけどなぁ。スキルとか教えてもらったら4人まとめて面倒見るか。トワの相手をしていて思っていたけど、弟子って別にイヤじゃないしな。


そのあたりで数回トワの相手を直接したときのことに話題が移った。


「イレブンの指導は鬼。直接指導されるときは死を覚悟しろ」

「死を…。分かりました!覚悟します!」

「待って!そこまで厳しくしてないから!あと、なんでトワには敬語だ!?」


しかもそれを今言うと…。ゆっくり後ろを見ると案の定だ。


「イレブン~、後で詳しく聞かせてね」


ほ~ら、リセルが怖いじゃないか。


安全に十分注意してやっていたからトワが誇張しているだけだと理解してもらって何とか治まった。


って、いつになったら出発できるんだよ!

お読みいただきありがとうございました。

ポイントが伸びたときはPVも伸びるんですかね。PVが安定しないのはそういうことなんでしょうか。ポイントの増減もどこかに記録されてないんでしょうかね。

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